第12回原子力委員会定例会議議事録(案)

1.日時 2002年3月19日(火)10:30〜11:50
2.場所 中央合同庁舎第4号館7階 共用743会議室
3.出席者
藤家委員長、遠藤委員長代理、竹内委員
内閣府
 浦嶋審議官
 榊原参事官(原子力担当)
原子力損害賠償制度検討会
 谷川座長(成蹊大学 名誉教授)

4.議題
(1)原子力損害賠償制度検討会の報告について
(2)日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構の統合について
(3)竹内委員の海外出張について
(4)その他

5.配布資料
資料1 原子力損害賠償制度検討会報告書
資料2 日本原子力研究所及び核燃料サイクル開発機構の廃止・統合と独立行政法人化に向けての基本的な考え方(骨子案)
資料3 竹内委員の海外出張について
資料4 第11回原子力委員会定例会議議事録(案)

6.審議事項
 (1)原子力損害賠償制度検討会の報告について
 標記の件について、谷川座長より資料1に基づき説明があり、以下のとおり質疑応答があった。
(竹内委員)  原子力損害賠償制度については、事故の定義などについて議論があるとのことだが、責任限度や免責などについて、電気事業者や海外と取引をしている原子力産業のメーカーなどが、それぞれいろいろな意見を持っていると思うので、こういった事業者も含めて、こうした問題を幅広く討議していくと良いのではないかと考えている。
(藤家委員長)  無限責任とはどういう意味なのか。有限責任と無限責任との法的な違いは何か。私の知る限りでは、かつて米国の原子力船「サバンナ」が日本に寄港しようとした時、米国は有限責任であるのに対し日本は無限責任であるので、結局寄港を断ったということがあった。実態としては、事故による損害賠償は、有限責任しかありえないのではないか。無限責任の法律的な意味合いを教えてほしい。
(谷川座長)  外国の原子力船については、後で法的な手当てをし、有限責任制度を認めている。
 原子力の話ではないが、5年前に日本海でナホトカ号重油流出事故が起きたが、こういった場合、制度上、船主の責任については、船の大きさにより制限することができ、船主はある金額以上は損害について責任を負わないで済む。国際的には、油受け取り業者の拠出による国際的な補償基金があり、そこから不足分を支払うことになる。このように、一定の限度以上の責任を負わなくても良いという制度になっている場合がある。この場合には、事故による損害賠償は、破産手続きと同じようになる。まず責任制限基金を設けて、損害賠償は、その基金の破産手続きと類似の形で処理する。具体的には、債権額とその責任限度額との割合に応じて弁済され、賠償はおしまい、という処理になる。これに対し、「そういった処理は認めない」というのが無限責任である。ただ、原子力事業者が負う責任に限度を設けないと、原子力産業への新規参入が難しくなり、原子力利用の推進の障害となる、という問題がある。
 損害賠償責任の限度をどこまでにするのかという問題は、理論的に決められるものではなく、実際の賠償金は保険で補填されるので、世界中の保険会社のマーケットがどこまでそれを引き受けうるのか、ということで決まる。つまり、あくまでも保険会社のプロフェッショナルな推測で決まるものである。ある限度を超えた額を設定すると、保険料が急激に上がり、原子力産業が事業として成り立たなくなる。そこで、限界に近い保険料で賄える範囲で責任限度額を設定し、それにより事業推進のインセンティブにする、という有限責任の制度ができている。その責任限度まで強制保険をつけさせ、被害者に対する救済のための原資を確保する、というように1つのセットとなった制度である。
(藤家委員長)  損害賠償に関する国の責任は、どのように考えておけば良いのか。
(谷川座長)  国の責任は2種類ある。1つは、今問題となっている法律上の免責事項に当たる場合で、この場合は、政府が被災者に対して必要な措置をとることになる。これは、事業者は免責されて責任がないので、事業者に対する援助ではなく、被害者に対する国の措置である。
 もう1つは、保険者が引き受けない責任である。例えば、地震、噴火により生じた損害や、保険で面倒をみることができる期間は10年、除斥期間は20年であるので、この間に生じた損害、に対しては、国が原子力事業者と補償契約を結んで、国が保険の役割を肩代わりする。しかし、これは無料ではなく、国は事業者から補償料を取ることになっている。
(遠藤委員長代理)  このようにすばらしい報告書を提出していただいたが、今後どのようにしていくのかといったことや、原子力委員会としてどうかかわっていくのか、といったことを検討する必要がある。どの条約に、いつ加盟したら良いのか。こういった条約締結に関することは外務省が担当し、条約締結により生じる国内法の改正に関することは文部科学省が主な担当となる。そのほかに関係する省庁としては、経済産業省があり、また、除斥期間の変更については法務省、輸送の問題を考えると国土交通省も関係するかもしれない。このように複数の省庁にまたがるので、私の提案であるが、この報告書を元にして、「それではどうするのか」を検討するタスクフォースを原子力委員会の中に設けてはどうか。東アジアやKEDO(朝鮮半島エネルギー開発機構)について考えると、かなり急ぐ必要がある。時間を念頭におきながら、なるべく早い時期にタスクフォースを立ち上げてはどうかと思う。
(藤家委員長)  21世紀の新しいアジアの時代において、原子力の国際的問題にどう対応していくのか、そして、日本が自ら率先して進めていくためにどうすべきか、がとても重要だと思っている。原子力委員会としては、引き続き重要な問題として、早急に対応していきたい。
 (2)日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構の統合について
標記の件について、榊原参事官より資料2に基づき説明があり、以下のとおり意見交換があった。

(竹内委員)日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構の統合については、これまで原子力委員会参与からもヒアリングを行い、考え方がまとまりつつある。原子力委員会としては、今回に限らず、関係省庁や関係機関と連携しながら、これからも時宜に応じてコメントを発信していきたいと考えている。

との発言があった後、骨子案について以下のコメントがなされた。
(竹内委員)  まず「1.基本的な認識」についてであるが、今回の統合に際し、現行の原子力長期計画を改定する必要はないと考えている。むしろ、今回の統合は、一層効率的な組織を作る良い機会ととらえている。また、新法人での研究開発の具体的な展開については、原子力委員会の専門部会等でも検討すべきことがあるかもしれないと考えている。
 資料の「2.新法人に求められるもの」の「1) 組織運営」については、新法人は、我が国の原子力科学技術の研究開発とその実証をほとんど受け持つことになり、巨大事業を実施する責任を負う。新法人では、原子力技術の制約を踏まえつつ、新しい時代の研究組織のあり方を積極的に追求したいと思う。
 また、統合により、内部での技術交流やシナジー効果が期待できる。日本原子力研究所の基礎・基盤研究と核燃料サイクル開発機構の実用化開発・実用化実証は、目的や趣がかなり異なるが、新法人では、その個性が平均化されるということではなく、お互いの個性をバランス良く発揮できるような、時代に合った活力のある組織体制を考えていきたい。
 また、新法人は巨大組織となるので、外部評価制度等も充実させ、透明性の向上を図ることも大事である。
 今回の統合は、文部省と科学技術庁が統合された昨年1月の中央省庁等改革に続く、原子力関係の研究開発や教育に係る第2弾の行政改革と考えている。大学においては、人材育成に必要な研究資材などが十分でない状況にある。特に大学の研究用原子炉や放射線を取り扱う設備が減少しているので、新法人では、実物教育の場を提供する、ということで、今後の人材育成の責務を担うべきではないか。
 次に民間との関係については、我が国は、外国と比べ、官・産・学で新しく「もの」を研究開発し実用化するという点で弱いと思う。これから産業立国を目指す我が国の共通的な問題である、いわゆる「ヒト・モノ・カネ」が時宜を逸しないで動くということが、技術立国として国際競争を勝ち抜くための危急な課題だと思う。ぜひとも、統合の前に、こういったことを十分に検討し、動きやすい仕組みを考えていただきたい。
 新法人の役割の1つである実用化実証のプロジェクトについては、巨額の予算を要するものであるが、統合により資金のかかるものについてはやりにくい、ということにならないようにしていただきたい。長期的に見れば、エネルギーセキュリティや環境問題により、原子力の役割はさらに深まると思うので、金がかかるという理由でプロジェクトがひるむ、ということがないようにしていただきたい。これから予算が緊縮していくと思われるので、電源特別会計の多様化勘定の投入が拡大することも期待したい。
 安全規制については、安全研究の中立性に関して、2つの法人の役割はこれまで極めて大きかった。規制については、客観性や透明性を確保していく、という組織運用面での配慮が必要であると考えている。
 国際協力については、特にアジア地域における役割が極めて大きく、新法人で研修生を受け入れるということが、将来的には技術協力にもつながり、産業創生にもつながる。そういったことで、外国にも開かれた運用を図ってほしい。核燃料サイクルについても、どのようにアジアで展開していくかがこれからの課題であるが、国際的に議論していく時に主導的な役割を担えるよう、技術的な準備をするべきだと思う。また、プルトニウムの管理や核拡散防止については、2国間やIAEA(国際原子力機関)をベースとした多国間協力において、国際的な期待に応えられるようになってほしい。
 技術移転のところで言い忘れたことだが、核燃料サイクル事業は、現在日本原燃で進行中の事業であるが、高速増殖炉サイクルや軽水炉使用済燃料再処理技術高度化、高レベル放射性廃棄物処理・処分技術についても、現行の原子力長期計画で述べられているように、引き続き実施されるべきテーマであり、新法人でもこれらを積極的に進めていけるような仕組みが必要である。
 核融合については、ITER計画において、国際的な取組みがかなり進んでいる。これらについては、今後も関連機関が連携し、国際的なフレームが決まっていくのに応じて、体制を柔軟に組み替えていけば良いと思う。
 加速器については、その技術進歩は日進月歩であり、特にその応用面は新しい産業の創生のカギになっている。先端的な技術開発の面と、放射光や中性子、重粒子を利用した装置での応用の面とはかなり異なっている。応用の面はかなり脚光を浴びているが、ライフサイエンスやナノテクノロジー、IT、医療など、日本全体としてどうしたら良いか、ということも含め、科学技術の進歩に応じて、法人ごとの役割分担も考えていくべきである。
 放射線利用については、我が国における新産業創生の1つの柱であり、新法人では、基礎・基盤研究の成果が早期に実るよう、官・産・学にわたって技術が円滑に交流できるような交差点の役割を果たしてほしい。また、JCOの事故での安全評価や低線量の評価のように、さらに民間とタイアップして、さまざまな活動を視野に入れて積極的に展開してほしい。
(遠藤委員長代理)  これまで原子力委員会で一緒に議論してきているので、竹内委員の意見に追加することはない。
 資料で1つ気になるところは、「2.(1)A透明性の一層の向上」に「外部評価制度の充実強化」と書いてある点である。もちろん透明性の向上は非常に重要なことであるが、この記載では、外部評価の目的は透明性の向上だけ、という印象を受ける。透明性の向上は、外部評価の目的の1つであるが、それだけではない。
(藤家委員長)  この「透明性の向上」については、さらに注意しなければならない。基礎・基盤研究では、すべてオープンにするわけにはいかない場合がある。なぜなら、新しい原理・原則や新しい方向を出していくことは、まさしく競争だからである。そういった点と透明性の向上とのバランスを考えていかなければならない。
(遠藤委員長代理)  新法人は、外部から見た場合、我が国で唯一とも言える原子力の総合的な研究開発機関となるので、原子力に関して、「これをやっている」ということが非常に重要となる。
(藤家委員長)  竹内委員の意見に尽きると思うが、少し補足すると、資料の「現行の原子力長期計画を維持」ということの意味を誤解なく理解していただきたいと思う。ここで言いたいことは、政策をゼロから見直すべきだということではなく、原子力長期計画で述べているそれぞれの政策が重要であるという認識を変えていない、ということである。例えば、核燃料サイクルの輪を完成させる、その最初のステップとしてプルサーマルをやっていかなければならない、それからITERについては我が国への誘致を考えて検討してほしい、といった政策の重要度が変わることはない。むしろ、緊急性が増大しているものがある。したがって、そういった中で、今度の統合は「廃止・統合」だ、ということを再認識しておきたい。「廃止・統合」によって新しくできる法人が、そういった政策に対し、従来よりも効率的にきちんと対応できるようになってほしい。そういった観点から、いろいろと意見を発信していきたい。
 組織としては、新法人は唯一の原子力研究開発機関であり、世界に向け発信すべき機関なので、大局観を持った組織であってほしいと思う。個別の課題に対応するために今回の行政改革を行うわけではない。
 また、最近弱気なところがあるが、難しいことに挑戦していく、という気概のある組織運営をしてほしい。難しさに対する挑戦の気概は、科学技術立国あるいは原子力先進国としての我が国の位置付けの上からも非常に重要である。
 これまで、原子力の研究開発は着実さ・確実さを狙ってきており、非常に長期のタイムスパンでやってきたところがある。しかし、全体像を見据える上で、また、社会に認められるためには、アウトプットの出やすい組織形態にする必要がある。
 組織としてのシナジー効果を各分野で出していくことは、非常に大事なことであるが、今回の統合において最も共通点の多いのは、核燃料サイクルも含めた核分裂エネルギーの研究開発である。これは、日本原子力研究所も核燃料サイクル開発機構も担っている分野であり、エネルギーセキュリティの確保という課題を含めて研究開発を行ってきている。そういった意味で、この分野においてシナジー効果が格段に現れなければならない。そのためにどのようなことを考えていかなければならないのか、ということが今後の重要な課題であると思う。
 放射線利用については、資料のとおりであるが、これもとらえ方がバラバラであり、一体としてとらえるためにはどうすれば良いのかが重要である。医学利用や環境利用、材料開発などいろいろと分野が広がっているが、これは別々にとらえて良いことではない。そういった意味で、放射線専門部会でも議論していきたい。
(竹内委員)  廃棄物関連についてであるが、両法人は、これまで生じた放射性廃棄物をかなり保有している。これをそのまま新法人に引き継ぐべきではなく、かなりの資金が必要になることもあり、国の担保も考慮する必要があると思う。現在運転中のものについても、将来廃止されれば廃棄物となるので、この処分費用の拠出方法についても、新法人が発足する前に国でも方策を検討していきたいと思う。
(藤家委員長)  この廃棄物という負の遺産については、原子力委員会としても、この統合が始まる前から関心を持って対応してきており、参与の方々からも同じように意見があった。これからも、大変重要な問題として対応していきたいと思う。
 この統合について大分意見がまとまってきており、最終的な文章化の段階に入ってきたと思う。原子力委員会としては、今後も何回か意見を発信していきたいと考えているが、今回の発信は第1回目であるので、慎重さを求めることになるかもしれない。次回でまとめられれば良いが、その次にもう1回かかるかもしれない。いずれにせよ、できるだけ早い時期に原子力委員会としての考え方を発信したいと思う。

 (3)竹内委員の海外出張について
 標記の件について、榊原参事官より資料3に基づき説明があった。

 (4)その他
  • 事務局作成の資料4の第11回原子力委員会定例会議議事録(案)が了承された。
  • 事務局より、3月26日(火)の次回定例会議の議題は、「核燃料サイクル開発機構の低レベル放射性廃棄物管理プログラムの公表についての報告」等を中心に調整中である旨、発言があった。