第9回原子力委員会臨時会議議事録(案)

1.日時 2002年2月28日(木)10:30〜 11:50
2.場所 経済産業省別館10階1012号会議室
3.出席者
藤家委員長、遠藤委員長代理、竹内委員、森嶌委員
秋元参与、南参与
内閣府
 榊原参事官(原子力担当)

4.議題
(1)日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構の統合について
(2)その他

5.配布資料
資料1−1 日本原子力研究所、核燃料サイクル開発機構の統合について
資料1−2 日本原子力研究所、核燃料サイクル開発機構の統合にあたっての意見
資料2 第7回原子力委員会定例会議議事録(案)

6.審議事項
 (1)日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構の統合について
 標記の件について、秋元参与より資料1−1に基づき、また、南参与より資料1−2に基づき、それぞれ意見が述べられた後、以下の質疑応答及び意見交換がなされた。
(遠藤委員長代理)  両参与がおっしゃるように、今回の統合を好機として、どのようにしたら日本の原子力政策を発展させられるか、という観点から取り組むべきである。
(森嶌委員)  大変建設的なご意見であった。両参与とも、民間の経営に携わっておられる方だが、秋元参与は、ご提言の中にもあったが、民間の運営ノウハウを国の機関に取り入れるということに関して、具体的にどのような点が重要とお考えかうかがいたい。また、南参与は、役割分担に従った活動、とご提言されているが、独立行政法人となった場合、役割分担について、民間からどのような形の関与が期待でき、その結果どのように国としての責任を果たせるのかについて、具体的にお考えをうかがいたい。
(秋元委員)  民間の運営ノウハウの実例ということだが、例えば、米国の原子力研究所、これは国の機関だが、運営しているのは民間の会社である。何年かに一度、政府と契約を交わした民間の会社、例えば、石油会社や化学会社といった、いろいろな会社の経営陣が研究所の運営について競争原理が働くようなシステムを作り上げたり、保証システムを作ったり、それなりの知恵を働かせてやっている。一例として、このようなものが挙げられる。国の研究機関には、なかなか時間的な「ものさし」が入りにくい部分があるが、独立行政法人となれば、市場原理を生み出すというところまではいかなくとも、少なくとも、民間の中で成立している健全な競争原理が、この中に取り込まれていくということが、是非とも必要と考える。
(南参与)  まず大前提として、電気事業の大きな環境変化、すなわち、電力市場の競争、自由化に向けた議論の進展などがあり、実質的には全面的に競争が始まっていると理解している。その中で、従来の必要原価をベースに料金をいただくという総括原価主義についても、これからは、市場で決まる料金を元にやっていかなければならないとすると、超長期を見通した研究開発の実施が困難となってくる。将来を見越したような研究開発については、従来にも増して、国の役割をお願いする点が増えざるを得ない。
 つい最近まで、高速炉の実用化も民間でやると言っていたし、現在、サイクル事業も全て民間でやる、と言っている。それはそれとして良い方向で進んでいると思うが、それで全てやっていけるかというと、市場との関係で非常に難しい問題が生じるのではないか。もちろん、可能な限り、民間の自己責任で全てを担っていけるよう経営努力していくつもりである。
 また、従来の人材の相互交流、相互乗り入れについてやりにくかった部分は、聞くところによれば、国家公務員の身分の制約とか、国の予算制度の制約などによるところも大きかったようなので、今後、独立行政法人となることで、良い方向にいけば、と考える。
(森嶌委員)  大学は、非公務員型の独立行政法人になる方向で議論されていると思うが、今、南参与が言われたような制約を減らそうという方向に進んでいるようである。
 次に組織内部の問題だが、南参与のご発言の中に、「新法人が研究開発と実用化開発の二つの役割を担うことから、バランスと統合のシナジーが効くような組織体制となるように」とある。ごもっともだが、今までのご経験からすると、どのような点をきちんと押さえれば、バランスが取れ、統合シナジーが効くような組織ができるようになるのか、具体的にうかがいたい。また、これに関連してお話しされた「一元的で組織横断的な意志決定、マネジメント」についても、いろいろなやり方があるかと思うが、どのような方向に持っていくことが、組織横断的な意志決定やマネジメントにつながるのかについてうかがいたい。
(南参与)  バランスについては、先程申し上げたことにも関連するが、原子力委員会の今回のヒアリングについてのこれまでの議事録を見ても、新法人は従来よりさらに基礎研究にウエイトを置くべき、といったご意見が出ている。私もこれに共感するところはあるが、あまりそれにシフトしすぎるのは如何か。大きなプロジェクト開発を伴ってようやく実用化される原子力の特徴から見れば、民間で大きく担う部分はあるものの、しかるべきプロジェクト開発には、国として予算を投入していただきたい。もんじゅにしても、しっかりと、長い目でやっていただく必要があると思うし、燃料の再処理プロセスについても、これから本格的にやらなければならないと思う。これらについては、国でやっていただくしかないと思っているが、今の国の財政状況を考えると、お金のかかることよりは、どうしても相対的にお金のかからない基礎研究の方にシフトしやすくなるのではないか、ということを懸念して申し上げた。
 一貫性のある運営については、単純に言うと、この2つの法人が一緒になっても、得てして一つになったように見えて、中味は実は離れたままになりがちであるということを、過去の統合例を見て感じているということである。例えば、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)は、新エネルギー専門でできたところに、石炭が加わり、新技術開発が加わった。一つの機構でやってはいるものの、統一性、効率性に関しては今ひとつと感じている。我々民間の経営でも、部門ごとのセクショナリズムは、放っておいたらどんどん強まっていく。その中で、相乗効果、シナジー効果を出していけるようにするには、人材の移転や必要なところへの予算の流用を、マネジメント層が意識的にやらないとできないものである。国の関係機関の場合には、いわゆる所管官庁の方で、何とかそのようにならないようにうまく作っていただければ、と思っている。原子力委員会もリーダーシップをとってもらいたい。
(竹内委員)  原子力委員会としても、統合された独立行政法人が仕事をしやすいよう、積極的に関与していかなければならないと考えている。
 文部科学省がかなりの部分について主務官庁になろうかと思うが、エネルギー関係には、電気事業者が深く関与しており、経済産業省とともに、運営しやすいような仕組みを作っていかなければならないのではないか、という観点もあろうかと思うが、南参与から特段のご意見はあるか。
(南参与)  その辺は私にも良くわからないところもあるが、今度の両法人の統合に関して、経済産業省は全く静観されているというように聞いている。私としては、文部科学省だけでなく、エネルギー政策の観点から、もっと経済産業省が入ると良いと感じている。そもそも原子力政策を議論する際に、エネルギー政策やエネルギー環境政策についての議論も必要であり、そういった中で一緒に議論するといったことになるべきではないか。必要であれば、環境省にもお入りいただき、関係するところが大きく一つの目的に向かって議論できるようになると良いのだが。
(竹内委員)  原子力政策を巡る状況として、電力自由化の議論や、京都議定書を巡る地球環境問題などの議論も進行している。そういった面では、経済産業省や環境省も関与する部分があろうかと思うが、そういったところとの関係も、新法人が体系的に展開していけるようにしなければならないと思っている。
(秋元参与)  総合科学技術会議も、いろいろな形でリーダーシップをとって、各省庁間の手綱裁きをしている。まだ各省庁間の壁は厚いかもしれないが、例えば、競争的資金による研究開発費の配分方針や、研究開発の基本方針については、総合科学技術会議から各省庁に示されている。原子力委員会は、総合科学技術会議と並んで内閣府にあり、内閣総理大臣に直結しているわけであり、原子力委員会にも、各省庁の壁を壊して、原子力政策を進めていくうえで一番必要な枠組みは何であるか、というところを提言し、関係する省庁を集め調整する、という役割を是非お願いしたい。
(藤家委員長)  もう2、3回委員会を経た後に、これまで各参与からいただいたご意見を参考にまとめていきたいと思っているが、今は、原子力委員会が基本的な見解を出すという前提に立って、まず、各参与からご意見をうかがっている。委員会が基本的な考え方を示した後、関係省庁なり、関係機関なりに来ていただき、この場で話をしていただこうと思っている。秋元参与のご指摘のとおり、各省庁間の調整は原子力委員会の大きな仕事の一つである。
(遠藤委員長代理)  両参与とも、人材育成の重要性を述べられたが、南参与のご意見にあった、博士号授与機能については、私もそうすべきではないかと考えている。これについて、もう少し具体的にお考えをうかがいたい。また、秋元参与のご意見にあった、アジアの原子力機構のようなものも、作るのは大変難しいが、重要なことであると思う。この点についてもお考えをうかがいたい。
 また、核不拡散については、私が見る限り、現在の両法人は必ずしも本格的には取り組んでいないという感じだが、秋元参与はもっと重視すべきだとお考えなのか。
(秋元参与)  学位授与については、今は大学院でないところでも授与できるようになってきており、そこでいろいろなスペシャリストが育ってきている。そこで学位を取得できることは、動機付けになるとともに、活性化にもつながり、大変すばらしいことだと思う。
 原子力の場合、日本原子力研究所でなければ扱えない技術や装置がいくつもある。これらを各大学にばらまいて研究をすることは事実上不可能であるし、仮にできたとしても効率的ではない。むしろ、大学で持て余しているような放射性物質を扱う研究設備を日本原子力研究所に集約し、1つのセンターのようなものとして、大学もそこを活用していく方が望ましいのではないか。先程説明したプラットホームとは、新法人が全て主体的に行うことだけを意味しているのではない。大学の方々にも場を提供する、ということもあるのではないか。いずれにせよ、人材を育てていく責任と資格の両方を持っているのは、この両法人しかないと思っており、是非そのように進めていただきたい。
 国際貢献については、原子爆弾の被爆国である日本は、昭和30年に原子力の平和利用を旗印に掲げた時から、国際貢献についても謳っている。日本の原子力平和利用は、核兵器を保有している国で育ってきた平和利用とは異なるものである。日本は、これをいつも旗印に掲げていかなければならない。アジアと技術協力をしていく時も、日本が育てた技術が元になって核拡散が起こるようではいけない。核拡散抵抗性については常にチェックし、新しい技術を取り入れていくことが必要である。米国の核不拡散の論理に必ずしも従う必要はないのであって、本当の意味で拡散が起きないシステムを作れば良い。そういったことが常に組み込まれた技術で貢献することが、日本の国際貢献の大前提になると考えている。
 原子力機構については、ヨーロッパには、ユーラトムという原子力分野をヨーロッパ全体で推進していくシステムがあるが、アジアには、まだそのようなシステムがない。日本が貢献できるのは、まさにこういったところではないか。ODA(政府開発援助)などでこのような貢献ができることが望ましいが、今のところ、ODAにはなかなか原子力関係が入っていかない。
(竹内委員)  そのご意見に関連して、日本でも核拡散抵抗性のある再処理技術を作っていかなければならないと考えており、アジアへの技術協力についても、そのような再処理技術をパッケージで提供できれば良いと思うが、このような点についてはどのようにお考えか。
(秋元参与)  現在再処理で使っているピューレックス法という技術は、核兵器の原料とするための純度の高いプルトニウムを抽出する技術として開発されたものであり、この技術に核拡散抵抗性を付加するという発想である。再処理技術については、最初に戻って技術を考え直すことを、やらなければならないのではないか。日本には、既に52基の原子力発電所があるが、再処理はまだ動き始めたところである。すなわち、再処理技術については、初期段階のものがようやく動き出すところ。これから、東南アジアなどで使ってもらえるような技術を考えていくとすれば、その辺りを基本的に見直していかなければならない。両法人は、そのための要素技術をたくさん持っており、それらをシステム化し、新しい再処理技術を作り上げていくことが可能であると考える。このようなプロジェクトは、日本だけでなく、アジア全体の問題、世界共通の地球環境問題にも貢献するものである。この点についても、もっとイニシアティブをとっていただきたい。
(竹内委員)  そういった面では、「シナジー効果」も大変期待されると思う。
(南参与)  今ご指摘の点については、既に現時点でも、核燃料サイクル開発機構に民間から人材を派遣しており、まさに官民が一緒になって進めている。再処理技術については、プルトニウムを増殖炉で作らなければならなくなるまでに時間的にまだ余裕がある現時点で、基本的に見直していこうとしているところである。純粋なプルトニウムを抽出して、それにコストをかけて核拡散抵抗性を付加しているということだが、もっと不純物の混ざったものでも燃やすことができ、エネルギーになれば、核拡散抵抗性ばかりでなく経済性にも優れたシステムを開発することができるのではないかと思う。
(竹内委員)  実用化に近い技術については、既に民間との間で人材の相互乗り入れをしていることは事実かと思うが、人の動きをもっと自由にできると良いと思う。
(秋元参与)  私はむしろ、単なる出向関係ではなく、新しいコンソーシアムを作り上げていくような方法が良いのではないかと考えている。今までは、国の法人ということで、国がプロジェクトを予算や人の面から管理していた。民間は下請けとして参入できるが、主体としては動けなかったところがある。新たな法人では、いろいろな形態のコンソーシアムが活躍できるプラットホームとして、電源特会の最も効率的な使い道を考えていく、というところまでやれれば良いのではないか。
(竹内委員)  両参与のご意見のとおり、国や新法人も、人材の相互乗り入れによって、よりフレキシブルな関係を作リ上げることが必要であり、そういったことが国全体のためになると思う。
(南参与)  そのためには、やはりマスコミを含め、国全体が、本当の目的を理解し、一緒に目指していくことが必要である。ささいなミスも起きているが、それをもう少し寛容に見てくれると良いと思う。非常に小さなことまで気にし始めると、硬直してしまい積極的に動けなくなる。
(藤家委員長)  初めて傍聴されている方もいらっしゃるので、繰り返しご説明するが、今回の統合について、原子力委員会としては、政策論よりむしろ、どのような組織にするのか、どのような運営をするのか、という点に焦点を置いて議論してきている。そういった点で、両参与のご意見は私の考えと共通点が多いと感じた。この中で最も難しい課題は、負の遺産をどのように処理していくのかということである。これについては、適切に処理しないと、マイナスを引きずりながら新法人が始動することになり、原子力の将来のために決してプラスにはならないと思う。
 また、両参与からご指摘があったが、技術移転というのは何なのかという点である。これについては、前々からいろいろな議論があって、報告書をバトンタッチすれば技術移転になるのか、という議論から始まり、そして、人材の相互乗り入れについての議論も出てきている。しかしながら、民間にはほとんど何もない状態から始めなければならないような新しい技術を、どのようにバトンタッチしていくのか。この点については、まだまだ議論が足りないと感じている。
 核燃料サイクルについては、これからは、ピューレックス法による再処理ではなく、不純物の多い方法で再処理を行うサイクルをどのように確立していくのかということを考える必要がある。これは、既にいくつか概念が出ており、非常に有望なものもあるので、これらを民間のグループに提供し、研究していくことも良いと思う。
 国際貢献については、商売抜きの話ばかりでもないと思うが、いろいろな形の協力がある中で、米国のアルゴンヌ国立研究所が、世界各国の人材を教育したという実績や、秋元参与のご意見にあったように、平和利用技術で貢献することも、原子力委員会としてもいろいろと議論しているところである。国際協力は、特にアジアを中心に進めていかなければならないと思っている。
 また、研究開発をプロジェクトにつなげていくことについては、我が国では、原子力船や高温ガス炉の研究開発のように、長く時間をかけすぎていたところもあったかと思う。こういった研究開発に、どのように民間的なタイムスパンの短い発想を入れていくのか、それが新法人で可能なのかということを考えることも大事なことだと思う。
 いずれにしても、これまでうかがったご意見をさらに検討し、原子力委員会としての考えをなるべく早くまとめたいと思っている。
 (2)その他
  • 事務局作成の資料2の第7回原子力委員会定例会議議事録(案)が了承された。
  • 事務局より、3月5日(火)の次回定例会議の議題は、昨年12月18日に経済産業大臣から諮問のあった「日本原燃株式会社再処理事業所における再処理の事業の変更許可について」等を中心に調整中である旨、発言があった。
  • 藤家委員長より、日本原子力研究所及び核燃料サイクル開発機構の統合について、放射線利用分野についても原子力委員会参与から意見をうかがうことを考えており、久保寺参与にご出席いただくべく調整する旨、発言があった。