第8回原子力委員会定例会議議事録(案)

1.日時 2002年2月26日(火)10:30〜11:30
2.場所 中央合同庁舎第4号館7階 共用743会議室
3.出席者
藤家委員長、遠藤委員長代理、竹内委員
鳥井参与
内閣府
 浦嶋審議官
 榊原参事官(原子力担当)
核燃料サイクル開発機構 東海事業所
 大島副所長

4.議題
(1)MOX利用国際セミナー開催結果について
(2)日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構の統合について
(3)その他

5.配布資料
資料1 MOX利用国際セミナー開催結果について
資料2 原子力委員会プレゼンテーション
資料3 第6回原子力委員会定例会議議事録(案)

6.審議事項
 (1)MOX利用国際セミナー開催結果について
 平成14年2月18日(月)〜19日(火)に開催されたMOX利用国際セミナーについて、大島副所長より資料1に基づき説明があり、以下のとおり質疑応答があった。
(竹内委員)  私は1日目に参加したが、意見交換も活発に行われ、大変良いセミナーであったと思う。
(藤家委員長)  核燃料サイクル開発機構の国際的なセミナーも根付いてきたように思う。参加者を集めるのにも大変努力されたのかと思う。このようなセミナーは、この先どうするのかが重要である。もう少し組織全体としての観点を出していく必要があるのではないか。
(大島副所長)  このようなセミナーは、開催の回数を重ねるごとに、インパクトに欠けてくる。核燃料サイクル開発機構では、1年に1度大きなシンポジウムを開催してきているが、今後も世の中にインパクトが与えられるよう努力を続けていきたい。今回のセミナーは、各国からご協力いただいており、大変嬉しく思っている。また、機会を捉えて、なるべく早い時期に地方でもたくさんの方にご理解いただけるように活動していきたい。
(藤家委員長)  核燃料サイクル開発機構には、事業所がいくつかあると思うが、事業所の壁を超えて、他の事業所にも良い影響を与え、自信につなげていくことも大切である。外向きばかりでなく、内向きについても考慮し、どのように全体に広げていくのかを考えてほしい。
 (2)日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構の統合について
 標記の件について、鳥井参与より資料2に基づき意見が述べられた後、以下の質疑応答及び意見交換がなされた。
(遠藤委員長代理)  今回の日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構の統合は、プラスの面もあると同時にマイナスの面もありうる。目的や性質の異なる法人が統合することになるので、マイナスの面が出る危険性もあるのではないかと思う。原子力政策は、国全体の課題であり、原子力委員会としても、両法人の統合に大きく関与していかなければならないが、両法人の統合にあたって考えられるマイナスの面には、どのようなものがあり、そういったマイナス面を逆にプラスに導くためには、どうすれば良いとお考えか。
 また、教育や人材育成といった観点から、新法人をどのように位置付けるかについてうかがいたい。教育や人材育成は基本的に国内を重視するが、国内にとどまる必要もないと思っている。将来的には、例えば、韓国の方が日本の原子力発電所で働く、といったことも想定されても良いのではないかと思う。
 さらに、核不拡散の観点から新法人が果たすべき役割についてのお考えをうかがいたい。
(鳥井参与)  両法人の統合によってマイナスになりうる面としては、例えば、組合の問題が、その一つとなりうると思う。組織にとって、組合がいくつもあったり、あるいは全くなかったりすることは、とても大変なことであり、これが引いては、新組織にマイナスの影響を与えかねない。
 また、日本原子力研究所の中には、かなり元気な方もいるものの、核燃料サイクル開発機構については、必ずしもそうではない。統合により、元気病が拡がるのは良いことであるが、無気力病が蔓延するようではマイナスである。これまで、日本原子力研究所で行ってきた基礎研究と核燃料サイクル開発機構の開発研究が、十分に結びついているわけではないと思っている。両法人が適切に統合し、運営されれば、プラスの面が出ると考える。
 人材育成ついては、2点考えなければならない。1つは、革新的な原子力技術を作り出すことができる人材の育成である。今の大学では、最終的に「もの」が作れない。このような状況では、本当の意味での人材育成はできない。大学で行われる自由な発想に基づく科学的な基礎理論や研究が、いずれは大学共同利用機関のようなところで実現できる、というメカニズムを、新法人の中に作る必要がある。これにより、優秀な人材を育てるだけでなく、大学にも希望を与えることができるのではないか。
 もう一つは、運転・保守などを行う技術者の育成である。現状は、電力会社の社内などで訓練されているだけである。客観的に、その技能者のレベルがどの程度であるのか分からない。国全体として見えるような形の訓練機関や資格認定機関が必要であるように思う。これを新法人でやるべきかどうかについては議論が必要かと思うが。
 私の仲間が、福井市在住の方々に、原子力政策を地域で考える、という活動の一環で、大学のようなものを作ったらどうか、という話をしたところ、かなり乗り気であったとのことである。できるかどうかは分からないが、例えば、電源三法の交付金を、その大学に来る人のための奨学金など教育に使うことはできないだろうか。こういったことは地域振興などと絡めて考えた方が良いと思う。
 核不拡散については、できるだけコストをかけないよう実施するために、やはり技術が必要である。当然のことながら、核不拡散における監視のための技術などは、新法人が担わなければならないであろう。例えば、宇宙開発の機関とも協力し、人工衛星を利用することも考えられるのではないか。いずれにしても、国として総力を挙げて推進する必要がある。
(竹内委員)  教育については、より開かれた存在にならなければならないと考える。
 産官学の関係については、具体的には、どのように進めれば良いとお考えか。
(鳥井参与)  宇宙科学研究所を参考にしていただきたいと思う。あのようにうまくいった例は、これまでにあまりないように思う。大学の研究も非常に活性化している。
(藤家委員長)  宇宙科学研究所には、糸川さんという強いリーダーがおられた。民間とのタイアップも非常にうまくいっていたと聞いている。
(鳥井参与)  宇宙科学研究所の方から話を聴くことを薦めたい。
(竹内委員)  鳥井参与のご意見の中にあった革新的原子力技術については、原子力委員会としても、いろいろな角度で議論している。また、地球環境問題、資源の限界など限界型問題についてのお話もあったが、そういった問題を解決できるのが原子力であると理解している。
(鳥井参与)  技術にも、限界型の問題を内在している技術と、内在していない技術があり、そこで技術の優劣が決まると思っている。これからは、限界型の問題が内在していない技術を使っていくべきである。原子力には、ここ500年、1000年を考えても、限界型の問題は見当たらないと考える。
(藤家委員長)  全体的な考え方は、鳥井参与と同じである。この統合は、両法人だけの問題ではなく、文部省と科学技術庁が一体化した省庁改革に続くものであり、両法人の統合は、政策論と組織論の2つの観点から捉えることができる。原子力政策については、その基本となる原子力長期計画が策定されており、ここ1年や2年で変えるべきものではないと考えており、今回は組織論について検討すべきと考える。組織論を重視して検討すると、鳥井参与が資料の中でご指摘された問題が出てくる。これは、悪意をもってなされたものではなく、善意の中で、原子力の持っている特殊性や、エンジニアの持っている心の狭い面から、このような状況が生れてきたのだと思う。これを打破していくために何をしていけば良いのかを考えることが重要である。
 資料の5頁に「産学の国際展開の支援を」とあるが、これに関して、我が国は、遠藤委員長代理の発言の通り、核不拡散問題との関係で逡巡してきたところがある。しかしながら、我が国の産業で、国際的なマーケットを考えないことはありえず、今後検討していかなければならない。
 また、同じく5頁に「原子力の産業政策を」とあるが、原子力委員会でも、新産業の創生が必要であることを言い続けている。世界に目を向ければ、月に人を送るにあたって、ケネディ大統領は、「難しい(課題である)が故に挑戦するのだ」と言っている。どうすれば新法人が、難しい課題に挑戦する気概を作ることができるか。また、英国では、サッチャー首相が、イギリス病の中で、「コマーシャル・アウェアネス」という言葉で産業の活性化を図り、その中で英国原子燃料会社(BNFL)が生れた。
 BNFLや仏国原子燃料会社(COGEMA)のような国の資本100%の国策会社に対し、我が国の民間主体の会社は、かなりのハンディを背負っている。新法人では、こういった点に対し、どのように対応していけば良いのかも重要な課題である。
 大学については、初期の頃は、原子力工学科の定員は300人位であったが、我が国の原子力産業の広がりや原子力産業の持つ高い付加価値を考慮して、毎年これだけの人材が必要であったのか、という反省をしなければならない。原子力産業の持つ付加価値は、原子力の専門家をどこまで要求したか。今、人材育成が求められているが、その中身はそういったことに端を発しているのではではないかと思う。2月19日の第6回原子力委員会定例会議では、玉野参与と永宮参与よりご意見をいただいたが、放射線を発見したラザフォードは、2〜3人で研究を実施しており、これが研究の原点である、という話を申し上げた。大学の研究と民間との関係を考える際は、産業革命の頃を参考にすれば良い。
(鳥井参与)  いろいろな分野の方々を集め、我が国の理想的な原子力の研究開発体制を議論するのはどうか。例えば、1週間ぐらい泊り込みで議論する、といったこともあっても良いのではないか。
(藤家委員長)  理想的な原子力体制については、日本原子力学会や核融合工学部会のメンバーでも検討していると聴いている。
(鳥井参与)  独立行政法人への移行を契機に、日本原子力研究所や核燃料サイクル開発機構が既に有しているビジネスになるような技術を、ベンチャーとして立ち上げることができるようなメカニズムを検討することも良いのではないか。
(藤家委員長)  日本原子力研究所の高崎研究所では、既に一部でベンチャーが始まっているが、これまであまりうまくいっていないとされる民間への技術移転を、今後どのように進めていくか。どのように相互乗り入れをしていくかを考慮しなければならない。
(鳥井参与)  私も、技術移転はうまくいっていないと思う。人そのものが技術を持つので、人の流動性がなければならないのではないか。
(竹内委員)  鳥井参与のご指摘に対して、それを政策にする努力をこれから考えていかなければならない。
(鳥井参与)  原子力産業には、市場がないと考えている人が多いが、実際はそうではない。自動車産業でも、かつて米国には日本が参入できる市場はないと考えられていた。しかし、日本の自動車産業は、米国に市場を開拓した。
(藤家委員長)  少なくとも新しい市場を開拓するときは、日本の技術で拓いてほしい。
(鳥井参与)  それから、地方の意見も聴いてほしいと思っている。地方には、原子力産業の実態を知らない方が多い。先日、県の課長クラスの方と話をする機会があった。残念なことだが、その方は、原子力施設の安全対策については考えているが、地域で原子力政策を考えて、担っていくことについては、全く考えたことがない、ということをお話しされていた。
(藤家委員長)  若狭湾エネルギーセンターも、そういった哲学で、地方の活性化を考慮していたが、「もの」ができると人は守りに入ってしまう。活性化を維持するために何をすれば良いかを考えることが重要。
(遠藤委員長代理)  アジアの原子力大学の設立構想を韓国が持っているが、これに対し、個人的には、我が国は韓国と競争するのではなく、一緒にやっていけば良いと考えている。なお、中国との協力もありうるのかとも思う。これらの点については、如何か。
(鳥井参与)  韓国と一緒に行うことは、とてもいいことであると思う。日本のプレゼンスを嫌がる人も中にはいるが、一緒にやることで良好な関係を築くことができるのではないか。中国と一緒にやるのは、少し難しいかもしれない。
 (3)その他
  • 事務局作成の資料3の第6回原子力委員会定例会議議事録(案)が了承された。
  • 事務局より、2月28日(木)に臨時会議を開催し、日本原子力研究所及び核燃料サイクル開発機構の統合について、原子力委員会参与からヒアリングを実施する旨、発言があった。
  • 事務局より、定例会議終了後にプレス説明を行う旨、発言があった。