第7回原子力委員会臨時会議議事録(案)

1.日時 2002年2月21日(木)10:30〜 12:00
2.場所 経済産業省別館10階1012号会議室
3.出席者
藤家委員長、遠藤委員長代理、竹内委員
金井参与、近藤参与
内閣府
 浦嶋審議官
 榊原参事官(原子力担当)

4.議題
(1)日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構の統合について
(2)その他

5.配布資料
資料1−1 日本原子力研究所・核燃料サイクル開発機構の統合について
資料1−2 新しい公的原子力研究開発組織の整備についての基本的考え方

6.審議事項
 (1)日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構の統合について
 標記の件について、金井参与より、資料1−1に基づき、また、近藤参与より、資料1−2に基づき、それぞれ意見が述べられた後、以下の質疑応答及び意見交換がなされた。  例えば、ある新しいプロジェクトを文部科学省だけが所管するのは不適切であると思えるときには、「他の省庁が共管を提案できるようなシステムを作るべき」と言うのは内閣府の仕事だろう。原子力委員会がそのような調整機能を発揮することもあるべしとしておくことも一つと思う。大事なことは、国民のためになる、原子力分野における重要な研究開発活動を一番効率的、効果的にやる方法、手段がきちんと検討され、実施される仕組みが統合組織に用意されること、そのことを求めることではないか。
(竹内委員)  近藤参与より、両法人の統合の前に、次の原子力長期計画策定の方向について、5年後を見通して議論しては如何、との意見があったが、それについてご意見をうかがいたい。
(近藤参与)  全面的に、と言っている訳ではなく、ある部分については、原子力長期計画に「適宜評価し見直すべし」となっているのだから、それをこの機会に合わせて行うのが適切と申し上げた。
(竹内委員)  金井参与から、原子力長期計画におけるプロジェクトの相互関係が明確ではない、とのご発言があったが、具体的にはどのようなことかうかがいたい。
(金井参与)  原子力長期計画について必ずしも十分に承知しているわけではないが、エネルギーの本質に対する長期計画みたいなものがあれば、もっとそれを具体化して反映できると思う。ITERに数千億をかけるのか、革新炉(夢のあるプロジェクト)にかけるのか、両方でも構わないが、それぞれが独立に存在している印象であり、相互の関係が見えにくい。高速炉についても、日本では、プルトニウムのリサイクルというものが一つの政策であるが、軽水炉での利用形態があり、「もんじゅ」があり、ではこれらの相互関係は、というと具体的な表現がない。
 また、これまでのプロジェクト実施上の問題であるが、一度プロジェクトが始まると、成果が出るまで例えば20年もかけて実施し、結果としてアウトプットのタイミングが合わなくなっていることがある。
(竹内委員)  金井参与のご意見の中での第三者評価委員会というのは、どのようなイメージか。
(金井参与)  原子力の専門家だけでなく、製造業、電力など幅広い産業界を含めた構成を想定している。プロジェクトとして成功したとしても、社会的に見て意義があったかどうかという観点からの評価が必要である。そういう点について参加するメンバーが発言でき、反映されるものであるべきである。
(遠藤委員長代理)  第三者評価は、最近の流行となっており、ワイドショー的でいわゆるポピュリスト的な第三者評価委員会もみられる。しかしながら、やはり専門家のみによる評価だけではだめであり、思いつきの議論ではない、まじめに物事を考えてくれる人が評価に参加しなければならない。
(金井参与)  第三者評価の際の専門家とは、必ずしも原子力の専門家という意味ではなく、例えば経営の専門家も専門家である。
(近藤参与)  第三者評価委員会の評価にコミットする気はないが、第三者の視点は重要だと申し上げたい。例えば、今回の統合を決めた紙には、「高速増殖炉、新エネルギー、核融合、こうしたものは、如何なる優先順位なのか。明らかにすべき。」という記述がある。原子力長期計画の中で高速増殖炉や核融合の相互関係を国民に分かり易く言っているかというと、それぞれ分かれて議論しそれを集約しているため、分かる人には何となく分かるが、国民の目からは極めて分かりづらかったかもしれない。それをこのようにスパッと言ってくれる。これが第三者評価委員会のよいところだと思っている。統合計画の立案にあたっては、この問いかけに的確に答えなければならないが、私見では、第一には、人類の生存に関わる重要なエネルギー問題の解決に貢献するためには、重点化という方針はリスキーであるから採るべきではなく、現在おかれている環境条件を考慮しつつ、可能性のある多様なエネルギー技術の開発を、そのポートフォリオを適切にマネージしながら、着実に進めるという方針が重要であること。第二に、資金的な制約の中で、どれにどれだけ資源配分するかというこのマネジメントは、潜在的可能性と達成度等をそれこそ第三者も入れて厳しく評価し、それを踏まえてしっかりやっていくということ。この二つが方針であることを、原子力委員会は表明しなくてはならないと考える。原子力長期計画でこうした決意表明をしていると読める、という立場かも知れないが、外からそのように言われるということは、それが伝わっていないということなのだから、この新たな組織を作るにあたって、このことを明確に言う必要があると考える。
(竹内委員)  研究予算の使われ方についてはどうか、米国でも研究予算について枠をはめて実施されるものか。
(近藤参与)  米国では、エネルギー省(DOE)傘下に20の研究所があり、そのうち10は、年間予算が100M$以上のマルチプログラム研究所である。これらは国家安全保障に係る研究を遂行してきたために、基礎研究部門が強いことと、行政が多様な観点を求めてきたこともあって、研究能力に重なりがある。90年代に入り、国防予算が大幅に減少したため、冷戦後のこれらの研究所のあり方が様々に議論されたが、原則は、当然のことながら、行政ニーズの則を越えずということと、もちはもちやということ、それから、各研究所の経営者がかなり競争的に特徴を鮮明にする努力を求められるようになったことと理解している。他方、行政のミクロマネジメントは慎めとの勧告がしばしば出されているから、枠ということかどうかわからないが、行政が予算の使い方に口をだしていることは確かである。
 わが国の場合、特殊法人と独立行政法人の違いについてはあまり詳らかにしないが、予算の付き方の原則に違いがあるのではないのか、と気にしている。独立行政法人には、所管行政庁の行政ニーズに発する研究を行うことを前提に補助金を出すということであろう。ここで、まずニーズにこたえる方策であること、そしてそれを、重点化、効率化の観点から、傘下の他の所管法人との役割分担を明確にして定義していくことが求められるのかなと思う。それは省庁をまたがるニーズに答えにくくするし、分担論は行政資源の効率的利用という点で大事なことであると考えるが、他方で、研究開発にはリスクがあるのだから、多様なアプローチを並行して追及することがトータルに効率的であるという面が忘れられる恐れがある。だから、重複を許すというか大事にするという原則をどうするか、その許容度は国家にとっての枢要度によるだろう。これは研究開発行政の基本的問題であるから、内閣府で議論されては如何か。
(浦嶋審議官)  競争的資金は政府全体で現在3000億円あり、むこう5年間で6000億円にすることを目標としている。その中で競争的資金を各省庁・各機関から受けとっていく、いわゆるマルチファンディングでいこう、というのがコンセンサスである。
(竹内委員)  米国の研究所の場合は、所管の省庁とのつながりはどの程度か。
(近藤参与)  DOE傘下の研究所の予算総表には、DOE以外の省庁のファンドで行う研究が「Work for Others」と題して計上されている。この割合をいかほどにするのが適切かという議論は時折再燃するが、最近は大体10%が適切とされているように記憶する。
(竹内委員)  基礎的・基盤的な色合いの強い部分、すなわち日本原子力研究所は文部科学省が主として所管しており、核燃料サイクル開発機構のように、実用化に近いプロジェクトを実施している場合は、経済産業省が共管だが、これらについて何か提案はあるか。
(近藤参与)  省庁再編時に、エネルギーとしての原子力の推進は経済産業省、原子力科学技術の推進は文部科学省が所管、と決められたと理解している。過去のプロジェクトは、既に何処が所管するかがセットされているわけであり、それを変えるという提案が意味のあるものであれば提案すればよいと思うが、原子力委員会としては、この統合に際して、過去の継続性をあまりに強調するのはどうか。むしろ、新しい原子力研究開発プロジェクトを提起する原理、それを行うのはこの新法人だとする原理、そしてそれに予算措置を講じる原則をどうするのか、を明らかにすることが大切ではないか。
(竹内委員)  同じ質問であるが、金井参与は如何か。この機会に、日頃思っていることでも構わないのでご発言願いたい。
(金井参与)  新しい組織を近藤参与が言われたような観点から位置付けると、自ら共管すべきものというのは、決まってくるように感じている。
(竹内委員)  新法人には被規制の部分もある訳だが、安全研究の中立性についてはどのようにお考えか。
(近藤参与)  私自身、大学では研究施設を管理しているセンター長をやっており、被規制者という立場もあるが、規制側の求めに応じて意見を具申している。規制活動は行政の責任で行われるのであるし、その活動の参考に供するために提供される技術的知見は、組織の名前で提供されるのではなく、研究者なり、学識経験者などの個人から学会などのクレジットで提供されるものである。そうした意見を提供された人の組織で色分けするのはおかしいことは誰でもわかること。勿論、その人が管理し、所属する施設に対する規制判断に対しては当事者であるから、デフェンスのために許された場合以外に意見を述べることを差し控えるべきは当然である。そのような場合を除き、第三者である案件に関して専門的意見を述べることは、その人の属する組織が規制対象になるべき設備を有していても、技術者の倫理にもとることはない。大切なことは、国民の側に誤解が生じないように、あらかじめ利害の衝突の生じる状況を規定し、その状況における意見の取扱いや関係者の身の処し方のルールを明確化しておき、それにしたがって意見開陳を求め、その処理を行うことであると考える。
(金井参与)  その意見については私も賛成である。核燃料サイクルとか高速炉とかについての安全研究を行っているところで、高速炉や核燃料サイクルの技術開発を実際行っているわけである。規制は別のところがしていくわけで、やはり、新しい法人を除いては、この分野の安全研究をするところはないような気がする。
(竹内委員)  お二人の共通事項として、人材養成と教育という点があろうかと思うが、この点については如何か。
(遠藤委員長代理)  両先生とも、研修的機能について、将来を見越して進めるべきと発言されたかと思うが、特に外国人の研修についても触れられている。新法人として、海外からの研修生の受入れなどについて、どのようにイメージされているのか。
(金井参与)  私自身もかつて、アルゴンヌの原子力研修所に行ったことがあるが、これから開発を始めようという段階の国は、色々と設備の整ったところで研修、勉強をしなければ、開発するための技術を修得するチャンスはないであろう。
 将来のアジアにおいて、日本が原子力の分野でどのようなポジションを占めるかということを考えれば、そういう人達との人のつながりを作っていくことも大事ではないか。もしそのような考え方に立つのであれば、いろいろな意味で、日本のアジアの中での役割を果たすことが可能ではないか。
(近藤参与)  私どもの大学では、外国人の学生を受け入れるコースを持っていて、毎年5人の大学院レベルの学生を採ることができる。この5人に対して、50〜100名の応募がある。全ての人が原子力だけを希望しているというわけでもないが、多くは原子力を希望している。マサチューセッツ工科大学(MIT)の原子力工学科も、海外からの留学生が多いと聞いている。以上から、海外には高度な原子力教育の需要があるとしてよいと考えている。
 その意味で、IAEAに、新しい教育訓練プロジェクトが韓国の支援で生まれたと思うが、本来こういうことは日本が行うべきであったのでは、と感じているところである。米国がアルゴンヌの原子力研修所をやり、フランスも同じようなことをしていることからわかることは、先進的な分野について、先進国が教育システムを用意するのは、技術の普及を追求するための基本作法ではないかということ。相手側も、先進国の大学や研究機関はそういうことをやってくれるもの、として理解している節もある。したがって、新組織は、引き続き、日本がこの分野でなすべきことを行っていくべきと考えている。
(竹内委員)  大学院的な機能を新法人に持たせることについて、意見をうかがいたい。
(金井参与)  原子力というのは、いろいろな分野の人が関与し、その上に成り立っている技術である。原子力工学をやった人のみが原子力プラントの中で一番役に立つか、というと必ずしもそうでもない。そのような性格から見て、新法人に、人材育成の観点から、大学院的な性格を持たせることは妥当ではないかと思う。教育の専門家ではないので、よくわからない。現場からの感覚である。
(近藤参与)  大学院的な機能については、既に様々な研究機関が連携して大学院レベルの学位授与ができる仕組みができあがっており、その応用問題ということであろう。日本原子力研究所、核燃料サイクル開発機構が今日までどのようにやってきたのかはよく分からないが、基本的には、近隣の大学と連携して、教育プログラム、つまり、アカデミックプランを設計して、それの実施を分担していくということであろう。そういう役割を担うことが研究者のモチベーションを上げることにつながる可能性がある場合もある。肝心なのは、教育ニーズの市場調査、そしてそれに基づく設計だと思う。
(金井参与)  個別の大学が施設を維持し、研究や教育、訓練を行っていくことには、既に無理があるのではないか。
(藤家委員長)  原子力委員会にとってこれからどうするかについて大事なことであるが、国際展開について、特にアジアへの展開について、金井参与におうかがいしたい。
(金井参与)  産業界の話になってしまうが、原子力のようなものを海外に展開する時に、国がバックアップしないでやることは不可能である。フランスはシラク大統領が、ドイツはコール首相だ、カナダは誰だ、というような人たちでビジネスが成り立っており、このような中に民間企業が単身で出ていっても、相手にもならないわけである。残念ながら、そういうことについて、従来、国に対してあまり期待できなかったのが実情だと思う。しかしながら、ごく最近、国もサポートをしようという傾向にあることも事実である。
 国際展開に関しては、これからはアジアかと思う。国際的な展開を考える時、まず最初は国が、やはり国際展開を推進するという、少なくとも立場だけでも採ってもらわないと、民間だけでは不可能と考える。
(藤家委員長)  原子力委員会のアジア協力は、既に10年以上やってきており、FNCAという形で少し発展してきている。金井参与がおっしゃる、国が出るということは、機器を入れる方ではなく、機器を出す方の話と考えてよいか。
(遠藤委員長代理)  原子力委員会はこれまでやらなかった、ということではないが、やったことについては、じくじたるものがある。もう少し、アクションオリエンテッドというかポリシーオリエンテッドという点から、本件には取り組むべきであると思っており、これから積極的に勉強していきたい。
(藤家委員長)  原子力委員会は、中国、韓国と原子力の政策対話を始めた段階であり、そういった活動に対しても協力を期待したい。
(近藤参与)  私は少し違った感じを持っている。ビジネスを行っておられる方がそのように考えるのは理解できるが、中国の地に我が身を置いてみれば、中国にとっては国産化が重要な課題であって、韓国もそうであるが、さらに将来は国際社会の中で原子力で商売をしようと考えているところである。したがって、そこにマーケットを生み出すという目標設定は適切なのかどうか、しっかりと議論しなければいけない。
(金井参与)  我々にとってビジネスというのは、ものを売り込むだけではない。中国でも火力発電所などを随分やってきており、中国でできる範囲のものは中国で作り、その技術提供や性能保証をし、できない部分については日本側でやり、徐々に移行していくという形のものが主である。何でもそうであるが、我々が海外から輸入した時も、最初は買ってきたかも知れないが、後は自らやっていく、それに対する技術提供は、ライセンス等の問題はあるにせよ、先進国あるいはそういう技術を持っている国が、やっていかなければならないことと理解している。必ずしも物を売りに行くというような、そういう感覚はそれほど持っているわけではない。
(近藤参与)  そうなると、話を戻してしまうが、重要なのはむしろ人材養成に対する協力ではないか。初めて中国に行った時に、対応してくれた人はフランス語を話した。フランスが強い、そういうカルチャーの根があることを実感した。そこで出会った学生も、やはりフランスで学んでおり、我々もそれ以来、先に述べた制度で及ばずながら努力はしたが、そういう地道さに差異があることも感じた。金井参与が言われることも理解できるが、国として、そういう長期的かつ包括的な交流体制を作らないと難しいのではないか。日本のカルチャーを分かる人がそこに大勢いることが大事と思う。
(藤家委員長)  そういった全体像が必要であることは理解し、そういう対応をしていきたいと思っているが、一方で、金井参与のご発言も重要な課題であると認識している。
(金井参与)  かなりやっていただいていることは感謝しているが、原子力については、国がどれだけこういうものに関与していくか、という性格のものである。
(藤家委員長)  今回の統合問題を政策論と組織論と両面から見る、ということはよく理解している。近藤参与が言われた独立行政法人ができる頃、ちょうど原子力長期計画が改定される時期ではないかということについては、私も同じ考えであるが、今すぐ原子力長期計画を改定する必要はない。この独立行政法人は、中・長期計画を作ること義務づけられているわけであり、その段階では政策論そのものの議論展開をやっていき、次の5年くらいの計画をまとめていきたいと考えている。
 金井参与が言われた、政策の相互関係がよく見えないということに関しては、今回の原子力長期計画は、そういう意味では、少し漠然とした書き方をしているという特徴がある。タイムスケジュール優先型から出たということである。但し、高速炉については、高速増殖炉懇談会を立ち上げ、また皆さんの意見をうかがい、「もんじゅはやるべし」という回答をいただいた。さらに、今度の原子力長期計画でも早く再起する必要があること、これからどう運転するかということを述べた。同時に高速実証炉を民間で実施するという部分が消えたが、明らかにそれは国が受け止めるべきことという理解の下、核燃料サイクル開発機構に人材を集めている。これは、展開を見ながら続けていきたいと思っている。ITERと高速増殖炉と核燃料サイクルについて、どれが大事かということについては、プルサーマルを中心とした核燃料サイクルが、実現時期との関係においては、ITERより重要であることは自明である。
 安全研究については近藤参与のご発言の通りであって、新たな組織が推進と安全確保両面の話をしなければいけない。但し、規制側でも安全研究年次計画というものを続けており、こういうものをどうやってこの新組織の中にフィットさせていけばよいか、という点がこれからの議論となるところと理解している。
 (2)その他
  • 事務局より、平成13年12月14日に経済産業大臣から原子力委員会委員長あてに諮問があった日本原燃株式会社再処理事業所における再処理の事業の変更許可について、平成14年2月20日付けで一部補正があり、この諮問については、後日、審議途中の当初諮問と合わせて審議をお願いしたい旨、発言があった。
  • 事務局より、2月26日(火)の次回定例会議の議題は、日本原子力研究所及び核燃料サイクル開発機構の統合について、原子力委員会参与からのヒアリング等を中心に調整中である旨、発言があった。