2002年2月28日
東京電力株式会社
南 直哉

日本原子力研究所、核燃料サイクル開発機構の統合にあたっての意見

 新法人は独立行政法人であって、これまでの特殊法人とは国の関与のあり方が異なる法人になるものと考えられる。この点を踏まえ、電気事業として特に留意すべきと考えられる点は以下の通り。

1.政府機関の担っている研究開発の役割を変えないこと
  • 政府機関が行う基礎基盤技術開発、実用化に向けた開発は、電気事業者が行う再処理、MOX燃料加工、放射性廃棄物処分などのサイクル事業を支えるものである。独立行政法人化した新法人にあっても、これまで長計などの議論の過程で整理されてきた基本的な役割分担に従った着実な活動を行っていただき、効率的かつ統合の相乗効果が十分に発揮される組織としていただきたい。
  • 具体的には、プルトニウム利用に係わる高速増殖炉・同サイクル技術開発は、将来の我が国のエネルギーセキュリティ確保の観点から必要な技術開発であり、さらにプルトニウムを取り扱うという側面も踏まえ、今後も国を中心とした一元的な研究開発体制が図られるよう配慮されたい。
  • また、再処理、MOX燃料加工等、産業化の途上にある技術分野では、当初の計画通り円滑に技術や人の移転が進められるよう配慮されたい。特に、サイクル機構の有する技術のうち、サイクル関連事業と関連が深い基盤技術については、サイクル産業を下支えする技術基盤として維持されるよう配慮されたい(サイクル産業のトラブル時の支援等)。
  • 世界の原子力安全を支える一翼を担って来た軽水炉の安全研究、わが国の安全規制を高く維持する専門家の育成・供給など、原子力発電を側面から支える機能を維持されたい。

2.債務を適切に処理して新法人を設立すること

  • 旧法人のもつ債務は適切に処理する必要があり、欠損金は精算されると共に、特にこれまでに発生した廃棄物、現有設備の将来の廃止措置とそれにともない発生する廃棄物について、問題を先送りせずに扱うことが重要である。新法人は、独立行政法人化が図られることから、将来に向かって積極的な原子力研究開発を円滑に進めるために、これまでの廃棄物を単に新法人に引き渡すのではなく、これまでに発生した廃棄物及び今後発生する廃棄物の処分費用、責任について政府が担保をすることが重要である。
  • 具体的には、将来、債務となることが予想される廃棄物処分費用を、独立行政法人の研究開発予算とは別枠で将来確保することを担保するといった措置が必要ではないか。
  • 英国では、BNFL(英国原子燃料会社)、UKAEA(英国原子力庁)の廃棄物などを引き受けるLMA(原子力債務管理機関)を設立すると聞くが、このような方向も一つの考え方である。

3.統合に伴うバランスと相乗効果を発揮出来る体制を指向すること

  • 新法人は基礎・基盤研究開発と実用化開発の2つの役割を担うことから、両者のバランスをとり、また統合のシナジーが効くような組織体制となるようにする必要がある。とりわけ、独立行政法人という特徴を活かして、旧組織、省庁の壁を越えた組織とされたい。
  • 特に基礎研究から実用化までの広い範囲の研究をカバーすることになることから、組織として筋の通った、一貫性のある体制が求められる。
  • また、新法人の果たすべき役割の広がりを踏まえ、所管官庁としては、文部科学省のみならず、特にエネルギー行政に携わる経済産業省の関与を期待したい。
  • 予算配分にあたっては、基礎・基盤研究から、事業化に近い研究まで、各段階に応じて適切に配分し、円滑に研究開発が進められるようにする必要がある。プロジェクト的研究開発は基礎・基盤研究開発よりも金額がかさむが、チェック&レビューを経た有望なものについては、適切に予算配分を行うよう配慮することが必要である。
  • 予算(一般会計、電源特会)は長期的視点にたって適正に確保、配分されるべきで、特に電源特会予算については、主旨に則った使途にあてるべきである。

4.効率的で透明性を有する組織運営とすること

  • わが国で唯一の原子力に関する包括的、かつ5000人弱の要員を抱える巨大な研究開発組織となることから、その役割と責任は重く、国民の信頼を得つつ所期の成果をあげることが不可欠である。
  • このため、動燃改革時の理念と対策が独立行政法人である新法人の組織全体の中にも確実に継承され、社会一般に通用する説明責任と外部に開かれた透明性を有する組織体制、運営とされたい。
  • また、広範な組織間の連携ならびに権限と責任の配分に十分配慮し、一元的で組織横断的な意志決定、マネージメントが行えるような組織運営とされたい。
  • とりわけ、研究開発成果のユーザである電気事業者との関係については、密接な連携の下、よくその考えを聴取し、反映に努めるようお願いしたい。

5.政府が前面に出る必要がある業務に対する期待

  • もんじゅの運転、ふげんの廃炉、地下研究施設の整備などは、地元の十分なご理解が大前提
  • 立地地域との円滑な関係が築かれるよう、独立行政法人に任せるだけでなく、新法人が効果的、主体的な活動を進められるよう、新法人と連携しつつ、国(所管官庁)が前面に出て条件整備を行うことも必要ではないか。

以 上