第1回原子力委員会定例会議議事録(案)

1.日時2002年1月8日(火)10:30〜 11:30
2.場所中央合同庁舎第4号館7階 共用743会議室
3.出席者
藤家委員長、遠藤委員長代理、竹内委員
内閣府
 浦嶋審議官
 嶋野企画官(原子力担当)
経済産業省資源エネルギー庁原子力政策課
 森本企画官
経済産業省原子力安全・保安院企画調整課
 柳生調整班長

4.議題
(1)平成14年度原子力関係政府原案について
(2)原子力委員会専門委員の変更について(案)
(3)その他

5.配布資料
資料1 平成14年度 経済産業省 原子力関係予算政府予算案の概要
資料2 原子力委員会専門委員の変更について(案)
資料3 第54回原子力委員会臨時会議議事録(案)

6.審議事項
 (1)平成14年度原子力関係政府原案について
 標記の件について、森本企画官及び柳生調整班長より資料1に基づき説明があり、以下のとおり質疑応答があった。
(竹内委員)  資料1の1頁「1(3)人文科学、社会科学も含めた広範な分野の調査研究を創設。提案公募による原子力安全基盤に関する調査研究」では、どのようなことを考えているのか。
(柳生調整班長)  例えば、電力自由化がどのような影響を及ぼすのか、原子力安全について、どのようにリスクコミュニケーションをしていかなければならないのか、などが提案されている。
(竹内委員)  提案公募方式で新しい切り口を求めることは、よい考えであると思う。
(柳生調整班長)  原子力の専門家ばかりでなく、違う専門の方々からも知恵をいただきたいと考えている。
(竹内委員)  資料1の2頁「1.原子力に対する国民理解の促進」では、具体的にどのようなことをするのか。原子力政策推進の観点から、効率的に機能しているか。
(森本企画官)  地方への交付金、広報活動への予算が多い。従来は、予算をより多く投入すれば、より効果が出ることを期待していたところがあった。しかし、メッセージを伝えるためには、国がまず前面に出て、いろいろな機会を通して直接対話をしていく、といったようにきめ細やかにしないと、意図するところがなかなか伝わらない。これらの点を十分踏まえて、仕組みを変えていくことが必要であり、これを重点的に実施していく。また、エネルギー教育も重要であり、文部科学省と協力しながら、十分に情報を伝えることができる教材等を作っていきたいと考えている。
(竹内委員)  去年の浜岡原子力発電所での事象のようなものに対しても、広報がうまく機能するためにどうすればよいのか、ということについて、我々も考えていかなければならないと思っている。
(遠藤委員長代理)  国際協力について、平成13年度の予算とどのような違いがあるのか。
(柳生調整班長)  国際原子力機関(IAEA)への拠出金に関連したものについては、来年度も継続になる。国際研修事業のうち、原子力発電所運転管理等の研修事業は、今年度で終了となる。平成14年度は、主に中国やインドネシアなどのアジア諸国を対象に、安全管理に関する研修事業を開始しようと考えている。
(遠藤委員長代理)  インドネシアなど多くのアジア諸国は、少なくともここ10年程度は、原子力発電所の建設を考えていない。この点について、どのように考えているか。
(柳生調整班長)  インドネシアやベトナムの原子力安全関係者から、我が国に対して、研修事業を実施してほしいという要望があった。また、原子力発電が実際に開始される前に、安全規制の組織や職員が必要になるが、この育成には長い期間が必要となるので、今から研修事業を始めたいと思っている。
(森本企画官)  資料1の9頁に、国際協力関連の予算を記載している。「IAEAのPA対策拠出金」は、来年度も継続になる。「国際核燃料サイクル評価事業拠出金」については、これまで地層処分に関する情報を収集してきたが、新しく「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」ができ、処分事業者が調査することになったので、今年度で終了することにした。
(藤家委員長)  資料1の1頁「1.科学的合理性のある安全規制に必要な知見」は、高く評価できることであり、強い関心を持っている。安全審査は、次第に厳しくなってきているが、その合理性をどう考えるのか、が非常に難しいところである。原子力委員会は、安全に関してあまり口を出さないことを旨としてきているが、このような合理性の検討は進めていってほしい。使用済燃料輸送容器のデータ問題のとき、原子力委員会では、40年の実績に鑑みて、規制緩和・合理化・自己責任の観点から、規制を見直す時期がきているのではないか、というメッセージを議事録に残した。これまで、いろいろな知見が集まってきており、今、科学的合理性という観点で安全規制を見直すことが重要だと思っている。
(柳生調整班長)  科学的合理性のある安全規制に必要な知見の充実については、これまで主に「設備」に対して行ってきた。現在、原子力に携わった第1世代の方が引退されて、次第にマニュアル世代が中心になってきているという指摘もあり、今後は「人」に対してどのように考えていくのか、いろいろと検討していきたいと考えている。
(藤家委員長)  これまでの原子力安全の考え方について言うと、50年代は設計ベースのデザイン・セーフティが中心であった。スリーマイルアイランド原子力発電所事故の後は、オペレーショナル・セーフティも重視されるようになり、チェルノブイリ発電所事故後は、さらに原子力防災も重視されるようになった結果、全体に広まった。このデザイン・セーフティからオペレーショナル・セーフティに移るところで、「人」の問題をよく考えなければならない、ということが取り上げられた。安全審査では、指針をベースとした見方が多い。この指針が合理的か、という議論はずっと続いているが、まとまった答はなかなか出て来ない。ここで、科学的合理性を重要視していくことが必要ではないか。
 全炉心MOX炉については、原子力委員会としても強い関心を持っている。既存の軽水炉でも、MOX燃料の割合が炉心の3分の1までは問題ないが、全炉心をMOX燃料とすることの重要性は、非常に大きい。この計画は、現在、どこまで進んでいるのか。
(森本企画官)  技術開発では、炉心設計と流量制御設計が中心であり、引き続き設計を進める必要はあるものの、ほとんど目途がついている状況である。一方、立地については、将来の見通しが明確でないところがあるが、建設主体の電源開発(株)が、去年の秋以降、非常に力を入れて、現地での交渉を含め建設に向け努力をしている、と聞いている。

 (2)原子力委員会専門委員の変更について(案)
 標記の件について、嶋野企画官より資料2に基づき説明があり、案通り了承された。

 (3)その他
  • 年頭の所感について
    (藤家委員長)  昨年は、内閣府の中で新しく原子力委員会がスタートしたこともあり、年頭の所感をメッセージとして出した。平成12年に作成した原子力長期計画を具体化し推進していくことが、原子力委員会の使命であり、これを社会に向けて積極的に発信していかなければならない。そこで、キャッチフレーズとして、「いつでも、どこでも、だれとでも」を掲げている。これを踏まえた上で、核燃料サイクルの確立や、日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構の統合などについて、原子力委員会の意見をメッセージとして社会に発信してきた。これらについて、新しい年を迎えてこれからどうしていくのかなどについて、年頭の所感を述べたいと思う。
    (竹内委員)  第1点はプルサーマル計画についてであるが、小資源国である我が国にとって、プルトニウムを利用することは、最も手堅い方法である。新しいガス田やメタンハイドレートなどもあるが、自国産エネルギーとして使えるプルトニウムは、我が国のエネルギーセキュリティを満たしうるものであり、我が国の原子力長期計画の1つの基軸である。現在、プルサーマル計画は停滞気味であるが、今年の前半にも、この隘路をなんとか切り開いていきたい。エネルギーセキュリティや地球温暖化等の問題とプルサーマルの関係などについて、国民の皆さんと話す機会をさらに作っていく必要がある。
     第2点は、日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構の廃止・統合についてである。これに関し、文部科学省は検討委員会を設置したところであるが、当事者ばかりでなく、利用者側や国民側からの検討を、慎重かつ早期に行う方がよいと思う。まずは制度設計であるが、制度設計の原点で狂ってしまったものは、いいものにならない。両法人は、それぞれ重要なミッションを持つ大集団であり、長年の実績や組織のカラーを持っている。これも含めて、十分な議論をしていかなければならない。
     第3点は、「もんじゅ」についてである。「もんじゅ」が2次系ナトリウムの漏えいで長年とまったままになっていることは、国家的な損失だと思う。運転再開に向けて、できる限り努力していきたいと思っている。
    (遠藤委員長代理)  原子力委員会の今年の大きな課題は、1つは核燃料サイクルであり、もう1つは日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構の統合である。
     最初に、日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構の統合についてであるが、私は、第54回原子力委員会臨時会議で、「委員会ぐらい設けて検討した方がいいと思っているが、本日の段階では、必ずしもそこまで踏み込む必要はない」と発言した。両法人の統合については、所管官庁である文部科学省だけの課題ではなく、原子力委員会としても、大枠について、こうすべきだということを発信していくべきだと思う。大枠という観点から考えると、段階はあると思うが、第1段階はなるべく早く発信する必要がある。また、原子力委員会としては、タスクフォースあるいは検討委員会などを早急に立ち上げるべきだと思う。
     次に、核燃料サイクルであるが、これは原子力政策の中で最も重要なことである。現在、突破口がはっきりしない状況にあるが、原子力委員会としては、原子力委員会の特性を踏まえつつ、早急に取り組まなければならない。
     その他に、できるだけ今年中に、少なくとも、アジアでは中国や韓国のような主要な国と、原子力の枠組み作りを実施したいと思っている。特に中国と韓国は、日本にとって最も重要な国であるので、重点化して実施すべきであると思う。
    (藤家委員長)  まず、日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構の統合についてであるが、この特殊法人改革に伴って、現行の原子力長期計画を改定すべきだとは思っていない。これについて、強くメッセージを出したいと思っている。原子力長期計画は、原子力の全体像と長期展望を示しているものであり、その具体化は各機関にある程度委ねられている。これを考えれば、今回の統合は、今の状況をいかによりよくするか、という観点から捉えることが大事である。ただし、原子力委員会が関心を有する機関は、この2機関だけではなく、理化学研究所や放射線医学総合研究所、その他の官庁関係の研究開発機関など幅広く存在するので、原子力委員会としては、全体を見ていかなければならない。遠藤委員長代理のご意見の通り、関係省庁だけで検討してすむものではない。この認識を強く持っておく必要がある。原子力委員会としては、細かいところまで関与することは厳に慎まなければならない、と思っているが、基本的な考え方を提示することは重要であり、関係省庁もそれを望んでいると思う。この基本的な考え方の提示は、1年も待ってもらえるものではなく、早めに対応すべきである。これを検討するために、何らかの議論の場を設けた方がいいだろう。従来は、外部の先生にまとめ役をお願いすることが多かったが、今回は原子力委員がまとめ役になって、機動的かつ機能的に動けるようにした方がいいのではないか。これについては、また議論したいと思う。
     もう1つの大きな課題は、核燃料サイクルの確立である。竹内委員のご意見の通り、これまで、何か起こるとそこに焦点が移ってしまい、原子力はそこだけで議論されているかのようなところがあった。このように、ここ数年の原子力の議論を見ると、大局観に欠けるところがあった。原子力の全体を見て、大局観を持った話ができる場を作ることを、社会は原子力委員会に望んでいると思う。昨年の年頭所感でも述べたように、原子力委員会に対して、他の省庁からも距離を置き、原子力を大きく捉えてほしいということや、社会に向けて言うべきことは言う、というような場を設けてほしい、という要望があった。その際、原子力については、これまでどのようなことが行われてきて、どのような実績をあげてきているのかを考えるべきである。例えば、原子力は、昭和30年代にスタートしてから40年足らずの間に、電力供給の3分の1を占めるようになっており、原子力は現実的な選択肢として、非常に重要なものになっている。原子力委員会は、このことを国民の皆さんに対して伝えているのか、という問題がある。
     また、安全性の問題については、非常にナーバスな疑問に対して、どのように応えていくのか、という問題があるが、軽水炉を中心としてきた原子力発電のこれまでの安全実績を、我々は科学技術として評価できるものと考えているのかどうか、というのも重要な問題である。これは、安全最優先という言葉のもう1歩先の問題である。今までの安全の実績を我々は評価すべきであると考えるのかどうか、また、これについて、適切に伝えきれていないのではないか、という気がしている。
     核燃料サイクルを確立するということは、どのような意味を持つのか、また、そのスタートとしてのプルサーマルは、どのような意味があるのか。これは、文明論の観点抜きでは成立しない。化石エネルギーは、産業革命以降の文明を支えてきたが、炭酸ガスの問題が生じ、現在の社会を支えきる能力はない。今、原子力は、それに代わるものとなりうるのか、が問われている。今この時、原子力が満たすべき条件を、どう考えるのか。その条件こそ核燃料サイクルであり、その出発点がプルサーマルである。これを正確に伝えていかなければならない。少なくとも、これまで安全の実績については、プラントの安全と同時に、廃棄物の安全についてもキチンと行われてきたのではないか、そういう意味での大局観のある話をしていかなければならない、と思っている。
     国際協力においては、冷戦構造の崩壊後の10年、我が国は、世界の中で、主要な役割を果たすべくいろいろ努力してきた。それが、世紀の変わり目から、いろいろな形で実を結び始めたことは、大変すばらしいことだと思っている。ただ、まだ主体的な発言を明確にできない、という辛さを感じている。原子力委員会は、国際的な場での発言に対して、強い関心を持つとともに責任を感じている。他方、現在、いろいろな課題について、事態が進み始めている。アジア協力でも、政策対話ができるところまで進んできている。
     以上述べたように、日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構の統合の件と核燃料サイクルの確立の件、国際協力の件について、今年も重点的に対応していきたい。
     日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構の統合に対し、原子力委員会としてどう進めるか。タスクフォースなどを作った方がよいかどうか。
    (竹内委員)  国民からどのようなものが求められており、受益者はどう感じているのか。今回の2法人の廃止・統合は、そのようなものを全て評価し、制度設計をするよいチャンスである。このような議論は、当事者ばかりでなく、国民の評価も必要なので、原子力委員会がアレンジする必要があると思う。
    (藤家委員長)  原子力委員会が内閣府に移ったということは、まさにそのような責任を持っている、ということだと思う。名前はともかく、このような検討の場を作ることとしたい。そして、原子力委員がそのまとめ役を果たすべきだと思う。
    (竹内委員)  いろいろと相談してやりたい。
    (遠藤委員長代理)  私も賛成である。関係者からも知恵を拝借するという形にしたい。
    (藤家委員長)  遠藤委員長代理のご意見のように、関係省庁からも話を聞いていくことにしたい。原子力委員会の見解は、第54回原子力委員会臨時会議で述べた通りである。また、原子力長期計画を改訂する必要はない。これは、地元にかなり影響することなので、原子力長期計画は変えずに進めていく、ということを明確にしておきたい。原子力委員会は、原子力長期計画に従い、両法人の統合を非常にポジティブに受けとめて対応していきたい。
     統合された法人には、いろいろなことが求められると思う。特に、困難への挑戦は、国民の期待するところであろう。個別の課題は、原子力長期計画の通りである。原子力の研究開発で重要なことは、先進性と一体性と総合性である。この3つのキャッチフレーズに当てはまる中心的な課題は、原子力安全である。これは、ある分野だけ十分ならばよい、という問題ではない。議題(1)で柳生調整班長が説明された通り、人文科学や社会科学も入れなければならないところまできており、いろいろな分野への広がりのある中でこの原子力安全をどうするのか、ということが重要である。もう1つは、核分裂の研究開発である。これは、日本原子力研究所や核燃料サイクル開発機構だけの課題ではなく、大学や民間まで含まれる。これら全体を整理し、見直す時期がきている。
     軽水炉技術は20世紀に確立することができたが、残念ながら、核燃料サイクル技術は21世紀に持ち越すことになった。このことの重大さを考えていかなければならない。この点において、核燃料サイクルに大きくウエイトを置いてきた核燃料サイクル開発機構と、核分裂の研究に実績のある日本原子力研究所との統合は、意味があることだと思う。
     もう1つ重要なことは、放射線利用の広がりであり、1つは放射線の産業利用、もう1つは医学利用がある。原子力委員会は、これを新産業創生と呼んでいる。これは、日本原子力研究所や放射線医学総合研究所が中心的な役割を果たしている分野である。この分野そのものに、原子力長期計画の世界からはみ出るところはない。その中でいかによくしていくのかということになると思う。
     日本原子力研究所や核燃料サイクル開発機構の抱えている問題に対して、どのように対応していけばよいのか。放射性廃棄物等の問題も含めて、いろいろな問題があるのは事実である。原子力委員会は、より良い将来に向けてスタートできるようなことを、メッセージとして示していきたいと思う。
     「いつでも、どこでも、だれとでも」というキャッチフレーズは、今年も続けていきたい。

  • 事務局作成の資料3の第54回原子力委員会臨時会議議事録(案)が了承された。

  • 事務局より、市民参加懇談会を、1月15日(火)、新潟県刈羽村において開催する方向で地元関係者と調整中であり、概要が固まり次第、あらためて報告する予定である旨、発言があった。

  • 事務局より、定例会議終了後にプレス説明を行う旨、発言があった。