平成14年1月22日
第1回放射線医学総合研究所重粒子医科学センターシンポジウム
「粒子線治療の基盤展開−その普及化に向けてー」
開 催 報 告

独立行政法人 放射線医学総合研究所

はじめに
 2001年12月13・14日、放医研重粒子治療推進棟大会議室において、上記のシンポジウムが開催された。同年4月より国立研究所から特定独立法人になり、内部の組織編成も変わった上で、重粒子医科学センターとしての最初のシンポジウムで、本年はセンター内での、加速器物理工学、医学物理を中心とした実行委員会が生物研究者、病院関係者の協力も得て企画したものである。

 シンポジウムの趣旨は、放医研のHIMACにおける重粒子治療、その他日本の各地で展開しつつある陽子線治療、炭素線治療施設の現状を俯瞰し、特にその物理工学的側面を、検討することを目的としている。放医研最大のプロジェクトである重粒子線治療臨床試験は過去7年間継続しており、治療患者数が1000人を突破した。

シンポジウムプログラム
 プログラムは、7つのセッションに分かれ、
12月13日は、

  1. 加速器の展開
  2. 粒子線照射技術
  3. 臨床への基礎研究1(物理、化学と生物)
  4. 臨床への基礎研究2(治療生物)
同14日は、
  1. 治療システムの構築
  2. 二次ビームの利用
  3. 各地の粒子線治療施設、
と構成され、計32人のスピーカーによって講演が行われた。

講演内容
 各々のセッションではそれぞれ固有の現状および問題点が発表、議論された。
例えばセッション1.では、今後治療施設を社会に普及させていく為に必須の、加速器の小型化の技術開発、セッション2.では照射方法の高度化、セッション3.では粒子線治療に向けての物理学・化学・生物学に関する原理的追求の研究、セッション4.では現在治療に使われている現象論的腫瘍反応の問題点、また個別の人間の放射線感受性の相違点をゲノム解析手法を用いて明らかにしていこうというプロ ジェクトの計画などが、それぞれ真剣に議論された。
 セッション5.では現在、放医研で改良中の治療計画プログラムおよび位置決め技術に加えて、光子線治療における最近の著しい進歩であるIMRTや動態追跡治療の現状も発表された。セッション6.では放医研HIMACで建設が本格化してきた世界初の二次ビーム利用の現状、そして最後セッション7.では、粒子線治療施設として稼働または建設中の柏、筑波、若狭、兵庫、静岡の計5カ所の進捗状況の報告が行われた。
 発表を聞いて見ると、世界のトップを走っている我が国の粒子線治療の力強さを感ずると共に、個別には非常に多くの問題、特に地方各施設は、制度的にぎりぎりの綱渡りを強いられていることがよく解り、放医研としても、これから出来るだけの協力、努力を関係各位に働きかける必要があることが痛感された。

おわりに
 この期間中登録された参加者は、所内から73名、放医研外から130名、合わせて203名を数え、会場からややあふれる程に盛況であった。特に民間企業に属されている方々の参加者が60名を越えていて、現在各地に展開しつつある粒子線治療施設、また今後に期待される新規施設建設計画への強い期待が感じられた。


第1回 重粒子医科学センターシンポジウム 「粒子線治療の基盤展開」-その普及化に向けて- 第1日目

第1回 重粒子医科学センターシンポジウム 「粒子線治療の基盤展開」-その普及化に向けて- 第2日目

Patient positioning system and chair

粒子線治療装置イメージパース

日本の粒子線治療施設

世界の粒子線治療施設(稼働中、建設中)