第54回原子力委員会臨時会議議事録(案)



1.日 時2001年12月19日(水)15:30〜 16:10
2.場 所中央合同庁舎第4号館7階 共用742会議室
3.出席者
藤家委員長、遠藤委員長代理、竹内委員、森嶌委員
内閣府
 大熊政策統括官
 浦嶋審議官
 青山参事官(原子力担当)
文部科学省大臣官房
 林審議官
経済産業省資源エネルギー庁原子力政策課
 原山課長

4.議 題
(1)特殊法人改革について

5.配布資料
資料1 原子力関係特殊法人の改革に関する政府決定

6.審議事項
 (1)特殊法人改革について
 標記の件について、林審議官より資料1に基づき説明があり、以下のとおり質疑応答があった。
(藤家委員長)  今日の閣議で、日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構の整理・統合に関する方針が示された。これは、原子力政策を企画・立案し、バランスよく遂行していくという役割を担う原子力委員会としては、まさに本質的な問題として、自ら直接関与すべき性質のものである。今日、原子力委員会の考えを全てにわたり披露することはできないが、少なくとも今日の段階で、原子力委員会が何を考え、どのようにしようとしているのか、という基本的な姿勢を示したいと思う。原子力委員会で考えるべきことや行政庁で考えるべきこと、実施主体で考えるべきことなど、いろいろあると思うが、原子力委員会では、この問題を、単に日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構の2つの機関だけの問題としては捉えていない。原子力委員会は、これまで政策をいかにうまく作り上げていくかを考え、その中で放射線医学総合研究所や理化学研究所などの法人や民間の計画についても、いろいろと聞いてきており、この問題も全体像の中で捉えることから始めたい。このような観点から、できれば今日の段階で、原子力委員会からメッセージを発したいと思っている。
(遠藤委員長代理)  今回の統合を契機として、原子力の研究開発機能をより一層発展させることが大切であり、そのためには、切るべきものは切り、伸ばすべきものは伸ばすことが必要であると思う。この2法人はかなり性格が異なっているので、実際どのように対処すべきかという問題は難しいと思うが、まだ十分な検討時間があるので、よりよいものにする努力をしていきたい。
(藤家委員長)  原子力委員会は、原子力が持っている一体性・総合性の重要さをこれまで強く主張してきた。その延長線上にこの統合という答えが出たと考えると、これをポジティブに受け止めることに賛成である。
(竹内委員)  日本原子力研究所や核燃料サイクル開発機構は、原子力分野における存在感が極めて大きい。組織自体もそのミッションも重大なので、この2法人の統合は大きな課題であると思う。原子力は、基盤技術も含めて非常に広い裾野を持っており、それをこの2法人は担ってきた。選り分けはあるが、両法人とも非常に大きな責任を持っている。政府の今回の決定には、機能性などの問題があるものの、異論はない。この統合により、今より効率がよくなり、国民の皆さんにもよりわかり易く、地元からもより愛されるような組織とするために、原子力委員会としてこの議論に参画していきたいと考えている。
(藤家委員長)  技術移転をしていくことが重要であり、民間との関係をスムーズにする努力が、一方で必要である。
(竹内委員)  核燃料サイクル開発機構がなかったら、我が国の核燃料サイクル技術は、ここまでに至っていなかったと思う。この点で、非常に大きな意義がある。日本原子力研究所については、JCOの事故でその存在意義がよく分かった。日本原子力研究所は、ITERや加速器、放射線関係などいろいろな研究を実施しているが、総合化された研究を行う機関としての存在意義があったのだろうと思っている。ただ、このように巨大な特殊法人が統合され、色分けされたそれぞれのミッションで成果を出すことは、相当な努力が必要であると思う。この点について、行政庁や当事者とともに幅広く議論したい。具体的には委員会のようなものを立ち上げ、これらの法人と関係のある受益者も含めた、幅広い議論の場を作ることがよいと思う。
(森嶌委員)  政府が、原子力に限らず特殊法人について整理・統合し、合理化を図ること自体はやむを得ないことである。これから新しい行政を進めていくために当然あるべきことと考えている。これが前提になる。この2法人は、日本の原子力政策あるいは原子力科学の基礎を支えてきたこともあり、他の特殊法人とは違った使命を持っている。その意味では、今後この両法人がどのようになっていくのかは、両法人だけの問題ではなく、原子力委員会や行政庁も含め、すべての原子力関係者の最大の関心事である。統合まで少し時間があるので、委員会などを立ち上げて、行政と研究の目線、今後のフィージビリティなどを踏まえて、対応していくべきだと思う。例えば、合理化をどう進めていくのか、重複は必要なのか、など今回の問題も含めて検討していくべきである。また、地元の行政機関から、特に日本原子力研究所の存在感が大きく、それが変わるということに不安を持っていると聞いている。現在、原子力行政の最大の問題は、パブリックアクセプタンスである。単に大きな法人がなくなったときの地元への影響という問題ではなく、この両法人に限らず原子力関係の全ての機関は、パブリックアクセプタンスという観点から何をなすべきか、という幅広い観点から、両法人が統合された後でも適切に機能を維持できるよう、新しくできる機関に期待をしたい。原子力委員会の現在の最大の役割は、この2法人の統合によって、パブリックアクセプタンスに対してマイナスの影響を与えないようにすることであると思う。
(遠藤委員長代理)  これに関しては、内外に対して、ポジティブな意味で情報を発信していかなければならない。特に地元との関係は大切である。
(藤家委員長)  この臨時会議を開催した最大の目的は、このようなポジティブなメッセージを今日の段階で出すことにある。各委員の意見にほぼ尽きると考えるが、あと2点について発言したい。
 これは、中央省庁の改革に続いての特殊法人の改革であり、非常に大切なことは、行政改革によって、文部科学省が誕生していることを、今回の問題と関連してどのように考えるのか、ということである。新しい科学技術分野を育て支える1つの大きな力は、大学を中心としたアカデミアの存在である。しかし、最近のアカデミアにおける原子力の研究開発は、1つのフェーズが終わりつつある段階に来ている。これに対し、アカデミアの自由度を残しつつも、今度の行政改革の中でどれだけ再活性化できるかが重要である。
 また、これからの原子力においては、国際社会における我が国の立場をどのように実効あらしめるものにしていくのかが重要である。11月に「第2回アジア原子力協力フォーラム大臣級会合」を開催し、そこでもかなりの議論があった。欧米に対してどのような係わり合いを持っていくのか、をこの改革の中に含ませておかなければならないと思っている。いろいろな意見があったが、この議論は今後も続けていくことなので、今日はまとまるところで原子力委員会からメッセージを出したいと思う。事務局でたたき台を作っているので、読み上げてほしい。

 事務局より、「日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構の廃止、統合等について(案)」の紹介があった。

(森嶌委員) 最後から4行目まではよいと思うが、ここで文章が切れると、両法人を統合することに反対だという結論が出てくるかのように読める。この2法人の統合について、原子力委員会は反対ではない。この部分は、もっと積極的に捉えた上で、「当委員会としては、長期計画の推進を通じて」の前に、「両法人が担ってきた役割は重要であり、地域に対する理解と協力を得てきた。両方人が統合された後でも、より効率的に原子力研究開発利用に貢献し、地域からより信頼を得られるような形で機能することが必要である。そのことについて、原子力委員会としては、最大の関心を払い、関係行政機関と調整しながら積極的に貢献をしていく」というような内容がよいのではないか。
(竹内委員) 「随時、当委員会の考え方を明らかにするとともに、積極的に取り組んでまいります」だけでは、弱いと思う。委員会など関係者との議論の場を設ける、という内容にした方が、原子力委員会としての行動がはっきりしていいと思う。
(遠藤委員長代理) 私も、委員会ぐらい設けた方がいいと思っているが、本日の段階では、必ずしもそこまで踏み込むことはないと思う。
(林審議官) 法人組織としてのあり方については、かなり実務的な面があるので、我々は我々で検討を進めたいと思う。特に原子力委員会と関係があるのは、原子力長期計画であり、これに関し議論が出てきた段階で、当然相談にうかがいたいと思っている。
(原山課長) 経済産業省は、核燃料サイクル開発機構を文部科学省と共管している立場であるが、当然、行政庁としての検討にも一緒に協力して貢献したいと考えている。原子力に関わっている方々は大変な関心を持って、この行く末を見ていると思う。その関係では、原子力委員からご指摘のあった地元の問題もある。原子力については、透明性などについて指摘されているときでもあるので、原子力委員会では、関係者の意見を聞きつつ、透明性を持って検討を進めることをお願いしたい。
(藤家委員長) 今日の段階での考え方は整理できたと思う。この議論を踏まえ、原子力委員会からのメッセージを修正し、今日の早い段階で公表したいと思う。