第53回原子力委員会定例会議議事録(案)

1.日 時2001年12月18日(火)10:30〜 12:00
2.場 所中央合同庁舎第4号館7階 共用743会議室
3.出席者
藤家委員長、遠藤委員長代理、竹内委員、森嶌委員
内閣府
 浦嶋審議官
 青山参事官(原子力担当)
日本原燃株式会社
 根岸副社長
 鈴木副部長
 高木主任
 重光グループリーダー
経済産業省資源エネルギー庁核燃料サイクル産業課
 生駒課長補佐
経済産業省原子力安全・保安院核燃料サイクル規制課
 青木統括安全審査官
日本原子力研究所
 早田理事
 馬場所長代理
文部科学省研究振興局量子放射線研究課
 奥野課長補佐

4.議 題
(1)六ヶ所再処理工場の建設・試運転への取り組み状況について
(2)日本原燃株式会社再処理事業所における再処理の事業の変更許可について(諮問)
(3)高温工学試験研究炉(HTTR)の最大熱出力30MW達成について
(4)遠藤原子力委員長代理の海外出張報告について
(5)その他

5.配布資料
資料1 六ヶ所再処理工場の建設・試運転への取り組み状況について
資料2−1 日本原燃株式会社再処理事業所における再処理の事業の変更許可について(諮問)
資料2−2 日本原燃株式会社再処理事業所再処理施設の再処理事業変更許可申請書の概要について(第1ガラス固化体貯蔵建屋西棟の変更等について)
資料3 高温工学試験研究炉(HTTR)の最大熱出力30MW達成について
資料4 遠藤原子力委員長代理の海外出張報告について
資料5 第52回原子力委員会定例会議議事録(案)

6.審議事項
 (1)六ヶ所再処理工場の建設・試運転への取り組み状況について
 標記の件について、根岸副社長より資料1に基づき説明があり、以下のとおり質疑応答があった。

(竹内委員)再処理工場は、原子力発電所と異なり、再処理前のせん断や化学的処理の扱いが非常に難しい。運転には高い技能が必要であり、運転員が自信をもって運転できるような意識・モラルを醸成しなければならない。この施設は、核燃料サイクルの中核的なものなので、慎重に推進してほしい。このモデルキャンペーンのように、体系的に訓練を実施していることを、心強く思っている。まだ始まったばかりであり、これから長丁場になると思うが、しっかり推進してほしい。
(遠藤委員長代理)六ヶ所村の再処理工場が、試運転、そして操業開始となると、核兵器非保有国では最大の再処理工場となり、大量のプルトニウムを保有することになる。保障措置については、国や(財)核物質管理センターと協力の上、米国やIAEAとの調整を進めてほしい。
(根岸副社長)保障措置については、関係機関との折衝を進めるとともに、保障措置に必要な施設の建設を並行して進めている。今後とも、引き続き関係機関と十分調整し、必要に応じて人と技術の支援を受けながら確実に体制を整備していきたい。
(藤家委員長)我が国の核燃料サイクル政策における六ヶ所村の再処理工場の重要さを改めて認識したところであり、なんとしても、うまく運転まで運んでいただきたい。フランスのUP3再処理工場のように実物に近いもので訓練することができ、恵まれた状況であると思う。しかし、再処理工場は、我が国がこれまで原子力発電の中で蓄積してきた技術とかなり性格的に異なっているところがある。したがって、社会的な受け止め方も異なることを、当然想定しておかなければならない。原子力発電は非常に大きなエネルギーを持っているが、5重の壁のように放射性物質を「閉じ込める」という原則がある。一方、再処理工場は、一種の化学工場に近い施設ではあるが、放射性物質を大量に含んでいる。始めに燃料棒を切断するように、閉じ込めているものを一度オープンにするといった違いがある。したがって、原子力発電が設計安全を中心に議論するのに対し、再処理ではオペレーショナルな点がより問題となるのではないか。原子力事象の評価尺度は、レベル0からレベル7まであり、チェルノブイリ発電所の事故がレベル7、スリ−マイルアイランド発電所の事故がレベル5、それ以外はほとんどがレベル1かレベル0の事象であるが、このレベル1やレベル0の事象に対する我が国の社会の受け止め方は、その評価尺度の意味するところと必ずしもうまく整合していない。これは、原子力が新しい科学技術であるからだと思う。オペレーショナルなところから出てくる問題に対しては、技術的にも運転の上でも十分に配慮するのだが、これを地元の方々や一般社会にどのように説明すればよいのかが重要である。これまでのいろいろな事象を振り返ると、起こったことに対する対応の仕方によって、必ずしも順調とは言えない状況が生じている。それについて事業者もよく考えていると思うが、この問題は事業者だけに押し付ける問題ではない。行政庁や原子力委員会、原子力安全委員会とうまく連絡を取りながら、どのような形がありうるのか考えてほしい。
(生駒課長補佐)核燃料サイクルが本格稼動に向かって動いているので、国として核燃料サイクルの必要性について、まず広く国民の皆さんに知っていただくための活動を行っているところである。また、この事業を円滑に進めて行く上で安全性は大変重要であるので、地元の方々や国民全体が安心感を持っていただけるように関係各所の協力を得つつ進めていきたいと考えている。
(竹内委員)核燃料サイクルにおいて、先行機に相当するものが、既に核燃料サイクル開発機構(JNC)にあり、そこで培った技術や人材を我が国が持っていることは非常に心強いことだと思う。委員長の意見の通り、原子力発電と再処理では文化が違うので、事業者や行政庁は、文化の違いを踏まえて、日本の中で育てていかなければならない。
(根岸副社長)当事者が内容を最もよく知っていることが前提であり、多くの関係者の協力をいただきながら、いかに再処理事業を円滑に進めていくかを考えなければならない。具体例としては、再処理工場では、設備の性能だけではなく、作業者のスキルによって工場の安定操業を確保していくことが重要であり、これを皆さんに理解いただけるよう努力しなければならないと考えている。

 (2)日本原燃株式会社再処理事業所における再処理の事業の変更許可について(諮問)
 標記の件について、青木統括安全審査官より資料2に基づき説明があり、以下のとおり質疑応答があった。

(青山参事官)本変更申請においては、日本原燃株式会社が再処理事業を遂行するための工事に要する資金計画、その調達計画及び事業の収支見積りに、年度毎の工事資金、資金調達額が記載されいる。これらを公にすることは、日本原燃株式会社の権利、競争上の地位、その他正当な利益を害するおそれがあると判断されるため、当該部分を非公開とさせていただきたい、と経済産業省原子力安全・保安院から申入れがあった。事務局としても、本件を非公開とすることはやむを得ないと考えるが、いかがか。
(藤家委員長)原子力委員会が内閣府に移行した後、非公開で審議した案件は、人事案件でいくつかあったが、このような経理的なことについての審議は、今回が初めてである。安全審査において、当該組織が所有する特許に関することや特殊な技術については、非公開の席で審議された。ただし、審査側はそのデータにアクセスすることができる。
(竹内委員)審査者はそのデータを見る必要があるが、本件を非公開とすることは、一般的にやむを得ないのではないかと思う。
(森嶌委員)今の段階において、この事案の中身についてよく分からないところもあるが、原則としては、情報公開といえども限界はある。経済産業省の申入れも、経済産業省がチェックした上でのものであり、また、原子力委員会としても、その部分が審議からはずれてしまうわけではないので、非公開で問題はないと思う。
(藤家委員長)当該データにまずアクセスしてみて、非公開でよいかどうかを判断することも可能であると思う。
(遠藤委員長代理)私も同感である。
(藤家委員長)森嶌委員の意見が、各委員の共通意見であると思う。この事案がそれに適合しているか再確認することとする。
  資料2の1頁(3)の小型試験設備の設置の取止めについてだが、万が一、ホット試験が必要となるような事象が発生した場合は、JNCと協力することで問題がないということか。
(青木統括安全審査官)JNCとの間に、そのような約束事があると聞いている。
(竹内委員)この小型試験設備は、仮想的なトラブルが起きた場合の対策を考慮して設置を計画したものであり、JNCや日本原子力研究所でバックアップできるので、本当に必要なのかという議論が以前にあった。
(藤家委員長)せっかく我が国にも研究開発の組織があるので、うまく連携を取ればよいと思う。必ずしも商業施設にまで必要な設備ではない。

 (3)高温工学試験研究炉(HTTR)の最大熱出力30MW達成について
 標記の件について、早田理事と馬場所長代理より資料3に基づき説明があり、以下のとおり質疑応答があった。

(竹内委員)今回、850℃を達成したわけだが、原子炉出口温度の最終目標950℃は、水素製造や熱の多目的利用において必要な目標なのか。
(馬場所長代理)これまで高温ガス炉は欧米でいくつか作られているが、それらは全て蒸気発生器を使って蒸気タービンを回しており、熱効率39%くらいを狙ったものが多い。その場合の原子炉出口温度は、750℃〜850℃ぐらいである。HTTRの今回の原子炉出口温度は850℃であり、この温度であれば、ガスタービンで直接発電すると、熱効率は50%近くまで向上する。しかし、化学反応用の熱源として使う場合は、原子炉出口温度850℃では可能な化学反応が限られてくる。原子炉出口温度が950℃であれば、水素製造に十分に使える。
(藤家委員長)水素製造にはいくつかの方法があるが、メタンの改質のように炭酸ガスを排出せざるを得ないものと、ISプロセスとでは本質的に異なっている。軽水炉とは違った温度条件が必要であることを強調してほしい。
(馬場所長代理)水素製造方法の1つであるISプロセスは、高温の熱と水から化学反応を組み合わせて水素を製造する方法であるが、このプロセスでは900℃ぐらいの熱源が必要である。このプロセスでは、非常に腐食性の高い媒体を使うので、金属材料の開発を進める必要があるが、可能性は非常に大きいと思う。
(早田理事)ISプロセスは、このように材料の問題があるが、炭酸ガスを発生しないなどサイクルはクローズしているので、とても革新的なものであると思う。
(藤家委員長)ついにHTTRで最大熱出力を達成したかとの感慨を持つのと同時に、ここまで至るのに30年かかっており、とても長かったという印象も強い。このように長い期間をかけて研究開発をすることの意味合いを考える必要がある。産業界のニーズがあって研究開発を始めても、30年もかかると産業界はついてこない。
  今後の展開としては、2つの方向があると考えている。1つは、高温ガス実験炉のドラゴン炉やユーリッヒ高温ガス実験炉(AVR)、発電用原型炉のフォート・セント・ブレイン(FSV)炉は既に運転を終了しており、他の高温ガス炉も、中国の炉を除くとまだ計画段階であるため、日本でこれから得られるデータは大変貴重なものであり、高い価値を持っているはずである。これからマーケットがひらけてきそうであり、研究機関といえども営利意識を持って、このようなソフトウェアをどのように大事に使っていくのかが重要である。
  もう1つは、HTTRの出力が30MWであり、原子力発電と比べると出力は小さいが、水素製造や化学プラントでの利用の観点から見ると、ほぼ実用炉と変わらない。このように実用炉として、このHTTRを見られるかが重要である。今までは、実験炉、原型炉、実証炉というようなステップを踏んでいたが、これをどこまでプロトタイプに近いものとして考えられるかが重要である。計画設計段階で、その用途を研究用にシフトした部分があるが、この点を考えていただきたい。
(早田理事)出力30MWは大きいものであり、いろいろなデモンストレーションができるはずである。現在はいろいろな制約があり、実施できないものがあるが、将来に向けて、いろいろな使い方ができるのではないかと考えている。

 (4)遠藤原子力委員長代理の海外出張報告について
 標記の件について、青山参事官より資料4に基づき説明があり、以下のとおり質疑応答があった。

(遠藤委員長代理)フィリピンは、国家経済が非常に悪い状況にあり、国民一人あたりの国内総生産は、韓国の11分の1、タイの半分である。この理由として、政情が不安定であることや、行政機構が整備されていないこと、貧困の差がさらに広がっていること、などが挙げられる。このような状況にあるため、科学技術に投入される資金も非常に少なくなっており、原子力研究開発にも影響が出ている。フィリピンの研究炉は、残念ながら、16年間シャットダウンしたままとなっている。原子力分野における唯一の希望は、貧困層を救済するという政策の中での推進であり、農業での放射線利用である。その1つは、食品照射であり、最近成功したものに、放射線照射したマンゴの対米輸出がある。他には、放射線利用による品種改良や病害虫の不妊化がある。フィリピンでは、高度な研究ができないかわりに、このような農業面での放射線利用が、原子力の突破口となりうるものだと思う。原子力分野における東南アジア各国との協力のあり方は、その国々の事情によって相違するので、その点を考慮しなければならない。

(5)その他