第51回原子力委員会定例会議議事録(案)

1.日 時2001年12月4日(火)10:30〜11:15
2.場 所中央合同庁舎第4号館7階 共用743会議室
3.出席者
藤家委員長、遠藤委員長代理、竹内委員、森嶌委員
内閣府
 青山参事官(原子力担当)

4.議 題
(1)第2回アジア原子力協力フォーラム(FNCA)大臣級会合の開催結果について
(2)遠藤委員長代理の海外出張について
(3)原子力委員会へのご質問・ご意見について
(4)原子力委員会専門委員について
(5)その他

5.配布資料
資料1 第2回アジア原子力協力フォーラム(FNCA)大臣級会合の開催結果について(報告)
資料2 遠藤委員長代理の海外出張について
資料3 原子力委員会へのご質問・ご意見について(集計結果)
資料4 原子力委員会専門委員について(案)
資料5 第50回原子力委員会定例会議議事録(案)

6.審議事項
 (1)第2回アジア原子力協力フォーラム(FNCA)大臣級会合の開催結果について
 11月29日(木)に開催された「第2回アジア原子力協力フォーラム(FNCA)大臣級会合」の開催結果について、青山参事官より資料1に基づき説明があり、以下のとおり質疑応答があった。

(藤家委員長)今回のFNCAは大変いい雰囲気の中で、実りある成果が挙げられたと思う。出席した全ての原子力委員に発言の機会があり、積極的にかつ上手くリードできたと思う。事務局もよくやってくれた。
(森嶌委員)私にとっては、原子力委員として初めての国際会合であった。アジアの原子力の状況は、原子力発電を行っている国以外では、あまり知られていない。原子力に対して別の観点から見ていく必要があるのではないか、と考えていたが、今回の会合で、いろいろな情報を得ることができた。また、我が国も、原子力についての国際的な動向に関して、もっと国内に情報を発信していく必要があるのではないかと思った。
(竹内委員)私は、第2議題「放射線利用分野における協力のあり方」を担当した。放射線利用については、原子力発電とは異なり、アジア各国の気候や農産物、背景などが違うので、それぞれの特徴が出ていたが、長い歴史を持つという点では共通しており、各国から、自国の自慢のようなものも含めいろいろと紹介していただいた。医療関連においては、放射線によるガン治療のことばかりでなく、病気の診断についても紹介があった。農業関連においては、食品照射や変異種を作るといった品種改良、害虫駆除など、幅広く紹介があった。また、工業関連においては、ゴムの放射線加硫について、環境関連においては、地下水のトレーサーとして使っていることについて紹介された。各国共通の意見としては、FNCAの下で、それぞれテーマごとに、セミナーやワークショップをもっと開催したらよいのではないかということであった。放射線の需要というのは、放射線の技術を開発するところと、放射線を利用するエンドユーザーが結びついてはじめて需要促進につながり、国民の受容性・容認性が高まる。放射線利用分野を産業として発展させるためには、エンドユーザーの理解と利用の増進が重要である、という意見があった。これからも、FNCAの活動を通じ、このような芽を大事にしていきたいと思う。
(遠藤委員長代理)事務局から報告のあった「議長サマリー」は、FNCAの会合では、口頭で発表し、その内容については一応各国の賛同を得ているが、暫定的な議長サマリーをFNCAの出席者に見ていただき、それに対し異論がなければ、とりまとめて文書に残したいと思っている。これから議長サマリーのあらすじを申し上げることとするが、一字一句まで了解されたものではない。
 まず、議長サマリーの第1項では、第2回FNCAを開催したこととアジア9カ国が参加したことについて、第2項では、カントリーステートメントの発表について記載する。第3項以降では、午後のセッションの円卓討議について記載する。
 この円卓討議の第1議題「持続可能な発展と原子力」では、議論が多岐に分かれ、それぞれの国の状況が現れていた。私としては、持続可能な発展とエネルギーとの関係、そしてエネルギーと原子力との関係に議論を導き、そこから、クリーン開発メカニズム(CDM)と原子力との関係に結びつけたい、と考えていた。結果としては、持続可能な発展とエネルギーの関係については、全ての参加国に異論がなく、その重要性を認めるとのことであった。なおかつ、そのエネルギーと原子力の関係については、原子力が重要なエネルギー源の1つであるということに対しても、各国とも異論がなかった。もちろん、この前提として、核不拡散や安全確保、パブリック・アクセプタンスという条件がある。しかし、CDMと原子力の関係になると、タイ、インドネシア、マレイシアは保留ということで消極的であり、残念ながら、CDMと原子力を結びつけることはできなかった。CDMと原子力の関係は、気候変動枠組条約(COP)の第1約束期間では切り離されている。しかし、2013年から始まると思われる第2約束期間では、その関係を結びつけたい、と私は強く希望している。そのために、先進国からばかりでなく、FNCAの参加国からもなるべく多くの賛同を得たいと考えているが、今回の会合では、今後の検討事項ということにとどまった。
(森嶌委員)CDMに関しては、私は、気候変動枠組条約第7回締約国会議(COP7)で、強い反対意見を聞いてきた。今回の会議でマレイシアなどは保留ということであったが、これは、反対というよりも、CDMについていろいろなことが分からないし、CDMより先にもう少し他にいろいろなことをやるべきではないか、という意味での消極的な回答であったと思う。マレイシアのロウ大臣がそのような発言をされて、他の国もそうだということであった。CDMの内容についてはまだ十分議論されておらず、例えば、森の植林などについても決まっていないし、これから詳細について詰めていくところである。急がなくても、CDMは次第に具体化されていくので、それをフォローしながら、2国間の会議のようなインフォーマルな形で議論して進めていくことがいいのではないか。まだよく分からない時に、原子力を持ち込む必要はないのではないか、というのが今の状況であると思う。
(藤家委員長)私も、そのようなところではないかと感じており、今回の会合では、アジアの特徴がよく現れていたと思う。今回、原子力とCDMの議論をしたが、原子力発電に対する実感がほとんどない中での議論となった。せいぜいその認識があるとしても、電気出力が100万kWを超えるような巨大技術としての原子力であり、なかなか手をつけられない分野という認識があるのではないかと思う。あとで記者会見のときに、我々は決してせっかちでも傲慢でもなく、この問題については時間をかけなければならない、と発言した。
 FNCAは、毎年いろいろな場所で開催することになっているが、第5回のFNCAを開催したいとした国が3カ国もあったことが、非常に印象的だった。会合の前日は、もっとたくさんの国がそのように言っていた。これは、各国自身が原子力は大事だ、という認識を持っているからであり、その意味で非常にいいことだと思う。FNCAの未来は非常に明るいと感じた。
 また、アジアでの原子力CDMを考える際、日本としてどうするのかということも大事なことである。原子力分野における国際協力は、少なくともソフトウェアの面ではかなり前向きに動いてきたが、ハードウェアが絡むところでは、果たして日本は積極的に動いてきたのか、21世紀を見込んで何をすべきなのか、ということについて議論を進めなければならない。答のある話を持ち出さない限り、なかなかアジア各国には受け止めてもらえないと思っている。
(遠藤委員長代理)2国間の会談は、中国、韓国、インドネシアの3カ国と実施した。
 中国との会談では、今後、日本の原子力委員会と中国の原子能機構との間で、非公式な会議を1年に1回程度行い、お互いが抱えている問題等を議論していくことで合意した。1回目は、我々が来年の適当な時期に中国を訪問することになる。また、中国は、核融合に対して熱心であり、ITERに強い関心を持っていた。原子力の損害賠償問題については、原子力発電の実施国である日本や中国、韓国、できれば北朝鮮を含めた4カ国は、自分の国でまず実施することが第1段階であるが、併せて国際的なスキームにも参加してほしいと要望した。この要望に対して、中国側は、中国も開放経済に向かいつつあり、WTOにも加盟することとなった。将来的には、国際法と国内法、国際体制と国内体制についての調整を行う必要がある。しかし、現状はまだそこまで至っていないので、もう少し時間がほしいとのことであった。少なくとも、方向としては前向きであった。CDMについても中国は支持するとのことであった。また、先方は、我が国の省庁再編に対しても関心を示していた。
 次に、韓国との会談では、来年度韓国で開催するFNCAについて、韓国側は、開催時期は来年の11月頃を希望していた。テーマは「次世代のための原子力」であり、人材育成の問題や放射線の協力を議題に考えている。また、韓国との間でも、原子力委員会有志の間で、セミフォーマルな議論や意見交換を年1回程度行うことで同意していただいた。この会議も、初めはこちらから伺うことを考えている。それから、朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)に関わる問題や、COPでのCDMについても議論した。韓国はCDMと原子力を結びつけることに賛成である、と明言していた。また、韓国側からは、放射性廃棄物の問題などが提起された。
 最後に、インドネシアとの会談では、主に放射線利用について議論した。インドネシアでは、いずれは原子力発電も実施したいと考えているが、現在はそのような状況にはないので、当分の間は化石燃料に頼っていかざるを得ない。しかし、中期的には、原子力発電の導入を検討していくとのことであった。インドネシアでは、当分の間、放射線利用が中心となるが、資金の都合により、加速器等の導入について非常に苦慮しているとのことであった。
(藤家委員長)これらの3カ国は、我が国とかなり長い交流の歴史がある。それをベースに、セミフォーマルという形で話が上手くまとまり、いい感触であった。今回のFNCAや2国間会合で成果をあげることができたのは、原子力委員が座長を引き受けるなど、原子力委員会が、従来に比べ、相当積極的であったからであると思う。そういう意味では、準備にあたった事務局も大変であったと思う。
(青山参事官)内閣府に移って初めての大きな国際会議であり、関係の方々にも大変ご苦労いただいた。また、来年の韓国での開催について、遺漏がないように対応させていただきたい。

 (2)遠藤委員長代理の海外出張について
 標記の件について、青山参事官より資料2に基づき説明があり、以下のとおり質疑応答があった。

(藤家委員長)今回は何回目のイベントなのか。
(青山参事官)今回で29回目になる。フィリピンは、1958年から原子力利用を始めており、長い歴史を持っている。研究炉をかなり早い時期にアメリカから導入した。また、原子力発電所を過去に一度建設しているが、運転するまでには至らなかった。原子力については、今回のFNCAでも報告があったが、放射線照射されたマンゴのアメリカへの輸出が認められたことや、早く成長する植林用の木の品種改良、地下水のトレースなど、医療や工業分野も含め、いろいろな活動を行っている。

 (3)原子力委員会へのご質問・ご意見について
 標記の件について、青山参事官より資料3に基づき説明があり、以下のとおり質疑応答があった。

(森嶌委員)私は新任の原子力委員なので、原子力白書が平成10年以降発行されていないことを、資料3のご質問・番号14「原子力白書の発行について」を読んで初めて知ったが、なぜ発行していないのか。
(藤家委員長)確かに、原子力白書の発行が遅れている。従来のスタッフから見ると、これは大変な作業である。しかし、いつまでも発行を遅らせるわけにはいかないので、早急に対応しなければならない。
(森嶌委員)我々は、いろいろな形で国民の皆さんに原子力について知ってもらおうと主張している。原子力白書は、他の白書と同様、専門的な言葉でではなく、国民の皆さんに、原子力についての情報を伝えることができる絶好な媒体であると思う。白書は、国がどのように対応してきたのか、について、オフィシャルにレポートするものなので、確かに原子力委員会が内閣府に移り大変であることは分かるが、早急に対応すべきである。環境省で作成している環境白書は、従来は全て省内で作成していたが、地球環境問題等に関する記述が追加され、白書のボリュームが増えてきたので、アウトソーシングで作成し、省内でチェックするという体制で作成している。アウトソーシングで作成すると、いかにも読みやすくなっていい点もあるが、環境行政も原子力行政とは別の形で苦闘しており、それが白書の中に現れてこないと感じている。基礎的な部分はともかく、記述の部分は行政にあたっている人が書くべきであると思う。原子力白書は、最終的には内閣府や原子力委員会で内容を確認するということで、アウトソーシングしてでも早急に対応すべきである。
(藤家委員長)来週の定例会は無理としても、2週間後の定例会には、今後の対応について、予定も含め具体的に示すように努力する。
(森嶌委員)白書の中身はともかくとして、どのような予定で、どのような体制で白書を作成するのかという点について報告してほしい。

 (4)原子力委員会専門委員について
 標記の件について、青山参事官より資料4に基づき説明があり、以下のとおり質疑応答があり、案通り了承された。

(遠藤委員長代理)この人事はいつからなのか。
(青山参事官)今日から手続きを開始するので、まだ日付は確定していない。できる限り早急に手続きを行いたいと思っている。
(藤家委員長)この人事について、もう少し説明があったほうがよい。この「核燃料サイクル及び核融合に関する事項」がいかに重要で、どのようなことをお願いするのか、というような説明を次回からしたほうがよい。
(森嶌委員)この方は、専門部会に所属するのではないのか。
(青山参事官)専門部会に所属していただくのではなく、核燃料サイクル及び核融合に関する全般的な事項の検討をお願いすることになる。

(5)その他