第46回原子力委員会定例会議議事録(案)

1.日 時2001年10月30日(火)10:30〜11:20
2.場 所中央合同庁舎第4号館1階 共用110会議室
3.出席者
藤家委員長、遠藤委員長代理、竹内委員、森嶌委員
内閣府
 青山参事官(原子力担当)

4.議 題
(1)平成14年度原子力関係経費見積りについて(案)
(2)第2回アジア原子力協力フォーラム(FNCA)大臣級会合の開催について(案)
(3)原子力委員会へのご質問・ご意見について
(4)その他

5.配布資料
資料1 平成14年度原子力関係経費見積りについて(案)
資料2 第2回アジア原子力協力フォーラム(FNCA)大臣級会合の開催について(案)
資料3 原子力委員会へのご質問・ご意見について(集計結果)
資料4−1 第43回原子力委員会定例会議議事録(案)
資料4−2 第44回原子力委員会定例会議議事録(案)

6.審議事項
 (1)平成14年度原子力関係経費見積りについて(案)
 平成14年度における原子力関係経費の見積りについて、青山参事官より資料1に基づき説明があり、以下のとおり質疑応答があった。
(遠藤委員長代理)予算の見積りについては、これまで何回も議論してきており、原子力長期計画の内容が、大体反映された要求となっている。さらに、関係者には、予算をもって、原子力長期計画の具体化にがんばってほしいということをお願いしたい。
(竹内委員)同じく予算の見積りについては、ここ3ヶ月間議論してきたことなので、特段のコメントはない。ただ、一般会計において、前年度に比べ10数%減と大きく減少したのは、今回が初めてではないか。
(青山参事官)要求額が大きく減少しているのは、特殊法人に係る要求が前年度より10%カットされていることが影響している。また、全般に重点化を実施した結果である。
(藤家委員長)近年、原子力予算が多いという批判がある。一方で、21世紀における原子力の研究開発のあり方については、実用化に向けた研究開発が必要であると同時に、20世紀中に果たせなかった核燃料サイクルの確立あるいは新しい放射線利用の創出などもあり、やらなければならない研究開発課題はたくさんある。科学技術としての原子力の位置付けを、これからも大事にしていかなければならない。したがって、現段階における対応のみならず、今後の長期的なトレンドの中での対応についても、原子力委員会として重大な関心を持たざるを得ないところであり、引き続き注目していかなければならないと思っている。
(竹内委員)今後、予算は次第に厳しくなっていくので、その枠の中でプロジェクトを精査し、重点化していかなければならない。プロジェクトを実施している各法人は、事業を推進していく中で努力していってほしいと思う。
(藤家委員長)重点化・効率化という観点からみると、文部科学省の中で競争的資金の導入という新しい試みがなされている。今日の説明では、その辺りが必ずしも十分明らかにされていないが、今後、もう少し分かりやすい表現で、何を重点化し、どのような効率化を行って、この要求をまとめたのかという話をしておきたいと思う。
(森嶌委員)財政窮乏の折り、全体として予算が縮小するのはやむを得ない。予算の中味を精査してみないとよく分からないが、少なくとも研究開発の予算、特に新しいタイプの炉の研究開発予算が減っていることは、問題だと思われる。大学等での研究や人材育成は、原子力長期計画において重要な地位を占めている。長期的には、原子力分野全体が、原子力長期計画で考えていた方向に向けて、具体的に進められていくように考えてほしい。
一方、国際機関への拠出金については、米国はどんどん少なくする方向にあるが、日本は逆に増えている。これは必要なことなのか。
(遠藤委員長代理)分担金は、国毎に、比率で決まっているものであり、義務的なものである。
(森嶌委員)全体として予算は減少しているのに対し、国際機関への拠出金は、日本だけ依然として変わっていない。アメリカは減らしているし、EUでもかなり厳しくしている。
(遠藤委員長代理)アメリカの場合、分担金の割合を25%から22%に減らしたいという話はあるが、決まってしまった分担金は負担するしかない。
(森嶌委員)我が国において、予算が軒並み減少している中、一部原子力安全関連拠出金は減っているものの、国連機関に対する要求のみ国際協調ということで全く検討せずに出しているのではないか、とかねてからおかしいと思っている。これについては、今日、明日ということではないが、国連だから何でも出す、というのは、原子力以外の分野も含め、もはや我が国は考え直すべきであると思う。また、分担金を出すとしても、運営などに注文を付けていくべきであると思う。
(遠藤委員長代理)森嶌委員の後者の意見に賛成である。支出する分担金の額は計算で出てくるが、それをどうやって使うのかということが問題である。
(藤家委員長)一つ大事なことは、分担金を出している割合に対して、国際原子力機関(IAEA)の日本人職員が少ないという問題があることである。この問題について、機会ある毎に口に出しているが、それほど改善がなされていないのではないのか。
(遠藤委員長代理)IAEAと日本の双方に理由があり、あまり改善されていない。
(藤家委員長)分担金、拠出金の今後の取扱いを考慮しながら対処しない限り、日本人職員の数は増えないのではないかと思う。
(森嶌委員)国際機関への協力に対しては、ストラテジーを考えて、せめて原子力関係だけでも、協力金を容易に出せるわけではない、ということをはっきりさせた方がいいのではないか。
(藤家委員長)幸いIAEAの原子力安全担当事務次長のポストが日本人となったので、これを機会に考えていきたいと思っている。
 全体として、この資料には、書きぶりが多少自虐的なところがある。何か問題があると、特に安全の話が強調されやすい。かつて使用済燃料のキャスクの問題が生じたとき、「規制緩和」、「合理化」、「自己責任」について原子力委員会で議論したが、このようなことは実際少しずつ形になってきている。例えば、定格熱出力一定運転については、これまで40年の実績があるから、あるいは安全確保に努めてきたから、展開が開けてきている。そのようなことが、この資料の書きぶりでは、なかなか見えてこない。それから、これまでの実績の中から新しいことが生み出せる状況になっていることや、これまでの40年にわたる原子力への開発投資がどのように活かされてきているのか、について少し見えるように来年度以降考えていきたい。この資料では、安全がまだ不十分だと書いてあるように見えるが、現実は運転実績等を見ると全てがそうというわけではない。今年は、むしろ原子力長期計画のフォローアップということに焦点があったので、このような書き方になっているが、いいものはいいと言う勇気を原子力委員会は持っていなければならないので、来年度以降はポジティブ志向でまとめていきたい。

 (2)第2回アジア原子力協力フォーラム(FNCA)大臣級会合の開催について(案)
 平成13年11月29日(木)に原子力委員会が主催する第2回アジア原子力協力フォーラム(FNCA)大臣級会合について、青山参事官より資料2に基づき説明があり、以下のとおり質疑応答があった。
(遠藤委員長代理)今日の内容はロジについてということであり、本資料に付け加えることはない。実のある会議にしたいので、ぜひ各委員のご協力をお願いしたい。国情が相違しているので、共通項を見いだすのが非常に難しい。これは簡単な話ではないが、なんとか、本会合を将来のアジア協力関係構築への一歩、二歩としたいと考えている。
(青山参事官)本会合では、一般の方の傍聴も可能としたいと考えている。傍聴については事前登録ということで、本日から募集を開始する。会場の都合があるため、傍聴を希望する方が多数の場合、抽選をさせていただく。この内容については、報道機関を通じてお知らせするとともに、原子力委員会のホームページでもお知らせする。
(藤家委員長)原子力委員会のいろいろな会合は、公開を原則としている。本会合についても公開としたい。ただ、各国の閣僚が来られることもあり、最近の情勢に鑑みて、傍聴される方々に少しご不自由をおかけすることになるかもしれないが、この旨をご了承の上ご協力いただければありがたい。

 (3)原子力委員会へのご質問・ご意見について(集計結果)
 平成13年9月4日から10月29日までの間にいただいた原子力委員会へのご質問5件について、青山参事官より資料3に基づき説明があり、以下のとおり質疑応答があった。
(森嶌委員)回答の期限はどう設定しているのか。
(青山参事官)なるべく早く回答することにしており、ご質問・ご意見を寄せられてから、原則1ヶ月以内にホームページ上で回答することとしている。
(森嶌委員)せっかくご質問をくださった方々に対して、なるべく早く回答するのがいい。回答に時間がかかる質問に対しても、その旨を連絡し、不完全でもいいから、1ヶ月以内に何かしらの回答をすべきである。

 (4)その他
(藤家委員長)インド及びパキスタンの核実験に対する我が国の措置の停止に関して、10月26日に福田官房長官の談話が出た。インド及びパキスタンが核実験を実施した際には、原子力委員会としても認められないという声明を、1998年5月に出している。経済制裁をどうするのかというのは、原子力委員会のマターではないので、これに先立って原子力委員会の声明を出すということはしなかったが、各委員の意見を伺うため、ここでの議論に取り上げたいと思う。
(遠藤委員長代理)本件に関し、原子力委員会で議論し、その内容を議事録に残すことは賛成である。官房長官の談話においては、2つの側面がある。1つは、世界的なテロ対策の外交的対応の一環として、近隣国であるインド・パキスタンに対して、経済援助・協力というてこ入れをするという側面と、もう一つは、インド・パキスタンの核不拡散に対するチャレンジに如何に対応するかという側面である。これを考え合わせたのが、我が国の今回の措置であり、個人的に官房長官の談話には賛成である。ただ、原子力委員会としては、テロ対策は別に議論することとして、核不拡散ということはしっかりと守っていかなければならない。したがって、今回の措置は、その方向と軌を一にしたものでなければならない。日本が経済制裁措置を行って以降、事態が好転したというわけではなかったが、その後核実験を実施していない、それから、当分実施しないということは、考慮すべき点である。基本的には、核不拡散条約(NPT)、あるいは包括的核実験禁止条約(CTBT)に加入し、核不拡散措置を採ってもらう、という要求は決しておろすべきではないし、むしろ、これまで以上に強く訴えていかなければならない。今回の措置は、このような要求を取りやめたのではなく、経済制裁の「停止」である。我々としては、核不拡散の理念を今後ともインド・パキスタンに迫っていきたい。今回の官房長官の談話は、両者をあわせた措置なので、今の状況では、現実的な唯一の選択肢ではなかったかと考えている。
(森嶌委員)日本政府の立場としては、インド・パキスタンに対しての核不拡散の要求は取り下げたのではなく、テロ対策に関してインド・パキスタン国内の安定が必要であるということで、現時点では政治的な判断から経済制裁を停止するという、いわば原則的なポリシーに対応した措置を採っている。本件について、原子力委員会で議論したということは大切であり、また、官房長官の談話に対して全く問題はないと考えている。
(竹内委員)遠藤委員長代理、森嶌委員と全く同意見であり、インド・パキスタンに対する核不拡散に関する活動は、我が国として、今後も続けていかなければならないと考えている。
(藤家委員長)官房長官の談話の第2項と第5項では、
「2.我が国は、インド及びパキスタン両国に対し、核軍縮・不拡散に関する我が国の立場を繰り返し表明してきた。その結果、両国ともこれまで3年にわたり核実験モラトリアムを継続し、今後ともこれを継続する旨表明している。さらに、両国は核・ミサイル関連物質・技術の輸出管理についても、その厳格な実施を表明してきている。以上のとおり、我が国の措置は相応の成果をあげたと考えられる。」
「5.我が国は、今後ともインド及びパキスタン両国に対して、CTBT署名を含む核不拡散上の進展を引き続きねばり強く求めていく。また、核不拡散分野における両国の状況が悪化すれば、本措置の復活を含め然るべき対応を検討することとする。」
と述べている。この2つの項目に原子力委員会の望んでいることが表現されていると考えており、この状況が今後も続いていくことを強く期待する、ということで、この問題に関する原子力委員会の議論としたい。