第43回原子力委員会臨時会議議事録(案)

1.日 時2001年10月19日(金)10:00〜10:55
2.場 所中央合同庁舎第4号館1階共用110会議室
3.出席者
藤家委員長、遠藤委員長代理、竹内委員
内閣府
 浦嶋審議官
 青山参事官(原子力担当)
文部科学省研究開発局原子力課
 中西課長
文部科学省研究開発局ITERプロジェクトチーム
 田口次長

4.議 題
(1)ITERサイト適地調査について
(2)その他

5.配布資料
資料1−1 ITERサイト適地調査の結果について
資料1−2 ITERサイト適地調査報告書

6.審議事項
 (1)ITERサイト適地調査について
 10月18日(木)に開催された「ITERサイト適地調査専門家会合」において取りまとめられたITERサイト適地調査報告書について、中西課長、田口次長より、資料1−1および資料1−2に基づき説明があり、以下のとおり質疑応答があった。

(竹内委員)非常に精査されたものに仕上がっていると思う。ただ、勘違いなのかもしれないが、評価結果Bだけで点数が決まるような印象を受ける。評価項目Aでの差はもっと大きいのではないか。評価をされた方々の中で、評価項目Aと評価項目Bをさらに合わせたような評点をつくるべき、というような議論はなかったのか。
(田口次長)そういった議論はあった。評価項目Aは全部クリアしなければならないものであるが、コストをかけさえすればクリアできる。最後のページにシンクタンクが作成したコスト見積もりを添付してある。評価項目Aをクリアするためにかかるコストは、評価項目Aの評価が反映されている。それをどのように考えるのかということについては、専門家というよりも、むしろ政府が判断しなければいけないと思う。従って、この専門家会合でも議論はあったが、両方を一つに合わせて評価しないこととした。また、コストについては、今の段階で正確に出せないという事情もある。専門家会合としては、地盤など技術的な課題を定性的に示したものと、点数付けした部分を並記して最終的に評価している。
(竹内委員)総合評価は、評価項目Aの文章を参考にして書いてあるように見える。他方、数字を書くと、数字だけが一人歩きをしてしまう。オリンピックの場合は、アーティスティックインプレッションや何かで総合得点を出していると思うが、そのような手法はなかったのか。最終的には、2地点について問題ないという報告だと理解してよいのか。
(中西課長)誘致するのに十分な適性を備えた地点が2箇所あるという結論になっている。
(竹内委員)あとは政治判断ということなのか。
(田口次長)あとは評価項目Aをクリアするのに必要なコストやその他の要件も含め、日本に誘致するといった結論が得られた後、総合的に判断されることとなるものと考えている。
(遠藤委員長代理)この報告は、原子力委員会からの質問の一つである「誘致に値する場所はあるのかどうか」について、「誘致に値する場所はある」と回答したものと理解している。次に問題となるのは誘致するために必要な経費が確保されるのかということだと思う。これについては資源配分を担当している総合科学技術会議の意見が大きく影響するものと思われる。仮に、日本への誘致は何とかなるといわれた場合、時間的制約がある中で、誘致場所の決定につき、今後どのように検討を進めていくつもりなのか。結局のところ、同時並行的に検討を進めざるを得ない。全てが終わってから結論を出す、というわけにはいかない。どのように絞り込んでいくのかということである。
(藤家委員長)遠藤委員長代理が以前から言われている言葉を借りるとすれば、予算についてはマネージャブルであると言ってきた。甲乙付けがたい候補地があり、これをどうするかについては、現段階で決められるものではなく、今後の問題であるという報告を受けたものと理解した。私の感想を言うと、我が国の原子力に関する課題は、全て立地問題だと思われている中で、トリチウムを使い、低レベル放射性廃棄物が出ることを前提した計画に対して、3つの地点が候補として上がったということは、本当に感動的なことである。日本の原子力研究がスタートした地点や核燃料サイクルのセンターとなるところなどが、候補として名乗りを上げてくれた。原子力というのは、色々と取組みを行っている間に理解が進んで、立地問題がクリアできるものであるということに大変感動している。ただ、この報告書に、茨城県那珂町と青森県六ヶ所村がポジティブに、北海道苫小牧市がややネガティブに書かれているのが、私としては少し残念である。ITERだけの問題として終わらせるのであれば、このような書き方もよいと思うが、全てが立地問題だと考えられている原子力分野としては、何かしらの形で次にお願いする機会に恵まれたいと考えている。
6月5日(火)の委員会決定において検討をお願いした点に関して、全て回答をもらったということであれば、明確な判断をしたいと考えている。少なくとも、今日の段階で明確に見解が出せるということにはなっていないと考えている。従って、今の段階においては、こういう認識であるということについてもう少し議論し、再度考えていきたいと考えている。このような評価をするにあたって、どれだけ透明性に、かつ客観的に行ったものであるかということに着目しながら、中西課長の話を聞いた。個人の特性にほとんど影響されない結果が出ていることは、非常に重要である。人の数が多いとか少ないという問題は別として、これだけ明確にその集団の意志が一つの結果として現れたという点で、原子力委員会としては、客観的な評価がなされたと見てよいのではないか。遠藤、竹内両委員の意見も聞きたい。評価については、AとBに分けることに意味があり、その分け方についても問題ないと理解している。従って、今日報告を受けた調査結果を肯定的に捉えてよいのではないかと思う。少し考えを整理したものを読み上げるので、これについて議論したいと思う。
「当委員会は、6月5日(火)の委員会決定において、『ITER計画については、ITER計画懇談会の報告書を尊重して推進していくことが適当と結論し、同時に、懇談会が、「我が国がITER計画に主体的に参加するだけでなく、設置国になることの意義が大きいと結論した。」としていることを踏まえつつ、ITERの我が国への誘致を念頭において、当面、
(1)「サイト選定調査」を行い、我が国にサイトとなり得るところがあるかどうかを見極めること、
(2)他極の状況の把握に努めるとともに、ITER計画が我が国の利益を最大化するものとなるよう他極と協議を行うこと、
が必要と考えます。これらの経過及び結果を注意深く見守り、財源や人材の確保など懇談会報告に示された今後検討すべき事項についての関係者の検討結果や検討状況も勘案して、その上で、必要な判断を行うこととします。』としました。
 その後、サイト適地調査については、7月10日(火)に開催された第29回原子力委員会定例会議において、ITERサイト適地調査専門家会合とその進め方について文部科学省より聴取しましたが、本日、昨日とりまとめられた調査結果の報告を受けました。
 調査結果は、可能な限り客観的な手法により、北海道、青森県、茨城県の3カ所からの提案について評価されています。
 その結果、茨城県那珂町と青森県六ヶ所村については、ITERを我が国に誘致する場合の候補地点として、十分な適性を有していると考えられる、とされました。
 他極との協議については、6月19日(火)に開催された第26回原子力委員会定例会議において、6月7、8日にモスクワで行われた協議の結果として、カナダがサイト提案を行ったこと、フランス国内においてカダラッシュへのITER誘致の動きが強いこと、米国については各極とも出来るだけ早期に再参加を望んでいることについて報告を受けました。
 また、7月24日(火)に開催された第31回原子力委員会定例会議において、7月18、19日にウィーンで開催されたITER理事会等の結果として、9年間にわたるEDA(工学設計活動)が成功裏に終了したこと、今秋に政府間協議を開始することを目指すこと、EU側から、年内にEU閣僚理事会の了承を得てITER誘致のサイト提案を行うとの示唆があったことについて、報告を受けました。
 今後は、11月上旬から開始される政府間協議の場を通じて、ITERの枠組みづくりが行われる予定ですが、その際には、先の決定で示したように、我が国の利益の最大化を図るとともに、各極の動向の把握に努めることが必要であり、引き続きの努力を求めます。
 当委員会としては、これらの進捗状況が、我が国のITER計画を巡る議論に適切に反映されることを期待します。
 さらに、財源や人材の確保等の点についても今後報告を聴取した上で、必要な判断を行いますので、引き続き検討願います。」
(遠藤委員長代理)最後のところで、「・・・我が国の利益の最大化を図るとともに、各極の動向の把握に努める・・・」については、逆ではないかと考える。「・・・各局の動向を把握しながら、我が国の利益の最大化を図る・・・」としてはどうか。目的は、我が国の利益の最大化ということであり、このようにしたほうがよいのではないかと思う。
(竹内委員)我が国でも、やっと、国益という言葉がこのような席で議論の対象となったことに喜びを感じている。
(遠藤委員長代理)これまで多くの人々が一生懸命にやってきており、おそらく誘致に踏み切るのではないかと期待しているところである。ここまできたからには、日本への誘致を実現しなければならないと考えている。しかし、その実現は、今までの経験からみて容易ではないことを認めざるを得ない。日本が今まで取り組んできた国際的なプロジェクトに関しては、成功したものがほとんどない。我が国として最大限の努力が必要である。メッセージとして受け止めていただきたい。
(藤家委員長)遠藤委員長代理には、いつもこのような指摘をしていただいてありがたく感じている。我々は、国際協議の場で、このような大きなプロジェクトを誘致することの難しさを数々経験している。我が国は、このような国際的かつ大規模なプロジェクトを主体的に成功させたことはない。従って、前からいっているように、この話は、グローバルスタンダードでものを決めるという観点から、大変重要なことと考えている。エネルギー関連の研究開発というのは国民の合意も得やすいということもある。委員会決定を行った時の議事録に書いてあることだが、あえて言わせてもらった。
(竹内委員)適地の答えも出たので、誘致に向けて最大限の努力をお願いしたい。以前の会議でも言ったが、やはり、我が国にグローバルスタンダードが入ってくることにより、将来、何年先になるかわからないが、ITERにとどまらず、超電導技術などの発展にもつながっていくはずである。
(藤家委員長)これから先も科学技術総合立国を目指す日本が、こういった大型技術にどう対応していくのかといった問題は、今後も出てくることと思われる。たまたま今回は核融合であったが、我が国の核融合分野におけるレベルは、国際的にみても十分な水準に達しているとの判断から、今の段階で誘致をうたっていると理解している。いずれにしても、今回は社会が注目していることもあり、今後も原子力委員会は必要なときに必要な判断をする、という姿勢で望んでいくこととする。

 (2)その他