第41回原子力委員会定例会議議事録(案)

1.日 時2001年10月9日(火)10:30~11:40
2.場 所中央合同庁舎第4号館7階743会議室
3.出席者
藤家委員長、遠藤委員、竹内委員、森嶌委員
内閣府
 青山参事官(原子力担当)
外務省総合外交政策局科学原子力課
 加藤課長
環境省地球環境局総務課研究調査室
 木村室長

4.議 題
(1)第45回IAEA総会について
(2)IPCC統合報告書の概要について
(3)その他

5.配布資料
資料1 第45回IAEA総会主要決議の概要
資料2 IPCC統合報告書の概要

6.審議事項
 (1)第45回IAEA総会について
 9月17日(月)~21日(金)に開催された第45回IAEA総会の結果について、加藤課長より資料1に基づき説明があり、以下のとおり質疑応答があった。
(遠藤委員)核不拡散のための現実的に有効な措置は追加議定書と核物質防護の2つである。追加議定書はなるべく多くの国が締結することである。又、核物質防護については、今の核物質防護条約体系では不十分であり、今の条約を拡大発展させる方向に進み始めている。追加議定書に対する日本の取組みが賞賛されたことは非常によいことであった。結果を出すことが重要であるが、なかなか難しいことなので我が国はできるかぎりのことを行うしかないと思う。例えば、11月下旬に原子力委員会主催で行われるアジア原子力協力フォーラムで、追加議定書に関して参加各国に訴えていくなど粘り強い努力が必要である。核物質防護については、核物質防止条約の枠を広げること、今の条約では核物質防護だけ、それも国際輸送だけが対象であるが、施設まで対象を広げ、破壊妨害行為まで適用できるように私は言い続けてきて、ようやく動き始めた。今年12月から始まる条約改正に向かって進むべきである。また、IAEAのガイドラインの最新のものを日本は実施していないので、これについても引き続き検討すべきである。最後に、核物質輸送については、日本は今後10~15年は行っていく必要がある。ますます風当たりが強くなってきている。原子力に全く関係ない、漁業と観光などが主産業である沿岸国に対して、日本は何ができるのか、ということになる。この問題は政治的なものになりつつあるが、それを技術的なものとして対応できるようにする必要がある。このためには、事業者も問題の重要性を認識し、国と一緒に取り組んでいくことが重要である。
(藤家委員長)核物質輸送の安全性が問題になる国としては、日本以外にどこがあるのか。核物質輸送の安全性という問題は、日本独自のものという側面が強い。核物質防護については、IAEAの最新のガイドラインにすぐに対応すべきであるという認識でよいのか。
(遠藤委員)まず関係する行政庁から、現状がどうなっているかを聞きたい。
(加藤課長)核物質防護への対応については、我が国はかなり行っているが、東欧の一部には遅れているところがある。遅れている国にまず行わせることが先決である。
(藤家委員長)事業者がどう捉えるかということもある。
(竹内委員)核物質輸送については、事業者も外務省と協力して、沿岸国の対応にあたっている。昔と比べて声が強くなっているのか。
(加藤課長)そうである。ウィーンにおいてかなり調整に時間をかけた。感情的な問題となり、沿岸国からの懸念が多数意見として出てくれば、それを踏まえた文書にどうしてもなってしまう。だからこそ、専門家を派遣して感情的な議論にならないようにしなければならないということを痛感した。
(竹内委員)これからも海上輸送は続くので、毎回対応していくのではなく、恒常的な対応をしなくては安心できない。日本としての考え方を提示していく必要があると思う。
(藤家委員長)日本としての考え方には、従来と性格の異なるものまで含むのか。
(竹内委員)方法やルートも含めてである。
(藤家委員長)テロの問題は、今まで原子力委員会が目指してきた公開性という観点から見ると、難しい問題である。核物質防護も公開性にはなじまない。その中でどのように考えていくのがよいのか。
(森嶌委員)非公開であれば、内部的にチェックできるしくみを考えなければいけないと思う。当事者以外はわからないようでは問題である。核物質防護は非公開である、ということはほとんどの人が理解できる。しかし、中で何を行っているかわからないというのではいけない。防護に関するしくみを強化するに当たっては、内部チェックの体制を整えきっちり把握しているということが、外部の人の理解につながっていくと思う。
(遠藤委員)何がどう動いているかについて、専門家を入れた勉強会を開きたい。
(藤家委員長)核物質防護については、原子力委員会自らの対応が求められている。原子力委員会としては、関係省庁と連絡を取りながら、情報の収集と必要な対応を行っていく必要があると考えている。
(森嶌委員)核物質防護条約改正の検討グループは、既に設置されたのか。
(加藤課長)これまで非公式グループにより検討を続けてきたが、12月以降、条約改正のための改正案を起草する専門家会合がされる予定である。
(森嶌委員)グループには日本から法律家や専門家が参加するのか。
(加藤課長)今後どうするかが当面の課題であり、原子力委員会へも相談する。
(森嶌委員)事前に人を入れておいて、イニシアティブを取っていくことが必要である。早い段階で日本の意見が入るように対応願いたい。
(竹内委員)INPROは新しい原子炉開発の取組みであるが、現状を教えてほしい。
(加藤課長)これはロシアの提案により開始されたものであって、各国からの拠出金により、現在、IAEAとして各国の検討を踏まえ実施内容などを検討グループで議論している状況である。
(竹内委員)世界的に見て、今後、ジェネレーションⅣも含めて同じような議論がされていくと思う。そうした中で、国際協力の下、各国が個性をもって新たな原子炉開発の議論を行っていく必要がある。日本もその中で1つの柱となって議論していけるよう、国内でも議論を整理していきたい。
(遠藤委員)INPROとジェネレーションⅣとの関係をどのように調整していくのか。また、費用をどうするのか。日本の原子炉開発はどうするのか。以上3点を検討しなくてはいけない。特に、日本の革新型原子炉開発をどうするのかについての検討が先にあって、前者2点に対応することになると思う。
(竹内委員)早めに議論しなければいけないと思っている。単なるつきあいでINPROに参加するのではなく、意味合いをよく議論することが必要である。我が国がイニシアティブを取っていく必要がある。
(藤家委員長)ジェネレーションⅣでは、最初アメリカの提案はのめないということで、今まで議論を重ねて、ここに至っている。今、炉型を冷却材で4種類に分けて、液体金属技術については、日本がイニシアティブを取って行っている。その中で、何を目的としてどうしていくのかということは、長期計画の中で位置付けており、今後はその具体化を図っていく。具体化にあたっては、今日スタートする専門部会で議論していくこととなる。INPROはロシアから提案があったが、必ずしもIAEAの中でみんなの共感を得られなかった。そこに入っているのはロシアの他、中国、韓国であり、西側があまり入っていない。そこに、日本が役割を果たすべき状況が存在していると思う。逆に、IAEAがジェネレーションⅣの会合に参加する方向に動いている。この動きに対しても、日本の役割が重要である。これらの動きはルネッサンスとも呼ばれているが、日本としての考え方を明確にしながらコミットしていくことが大事である。

 (2)IPCC統合報告書の概要について
 9月24日(月)~29日(土)にロンドンで開催された、第18回「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」総会においてとりまとめられたIPCC統合報告書について、木村室長より資料2に基づき説明があり、以下のとおり質疑応答があった。
(竹内委員)今回まとめられた報告が、次回COP会合で議論をしていく上でのベースとなるのか。
(木村室長)今月末から11月にかけてCOP7が開催されるが、これは、京都議定書の運用ルールについて最終的な合意に達することを目的としている。具体的には、第1約束期間である2008~2012年の問題を扱うということであり、これが解決すれば、2013年以降の削減目標の議論へ移っていくこととなる。そういった意味では、気候変動枠組条約第2条にある「気候システムへの危険な人為的干渉を防止するための安定化への寄与」というのが、究極の目標である。それに向かって次の一歩をどのように進めるか、という議論ができればいいのであるが、実際には上手く議論は組み立てられていない。長期的な視点を持ちながら、次のステップ、次のステップと進めていく。最終的には、今のレベルに比べてかなり小さなレベルまで削減しないと、大気中濃度は安定化できない。そういったことを考えて、今の段階から技術開発も進めていく必要がある。次のCOP7にこの報告書が直接役に立つという訳ではないが、長期的に議論していく上では役に立つ。
(竹内委員)1990年の排出レベルより、もっと小さくしなければ安定化できないということか。
(木村室長)そうである。
(竹内委員)CO2の吸収源は、海洋が一番大きいと聞いている。
(木村室長)海洋が一番大きいと思うが、具体的にどれくらいなのかを数値で表せるほどには研究が進んでいない。
(遠藤委員)この報告書はどのように採択されたのか。反対論はなかったのか。
(木村室長)作成の手順を説明すると、リードオーサーという人たちがドラフトを書き、それを専門家と政府で2回レビューする中で妥当な意見を採用し、最終的にIPCC総会で政府が意見を出して議論し、科学的な信頼性を失わないようにとりまとめた。全ての国が納得する形でとりまとめられた。
(遠藤委員)CO2の排出・吸収のバランスが取れていたのはいつ頃か。
(木村室長)CO2濃度は産業革命以降上昇しており、それ以前は横這いであったので、バランスが取れていたと考えられる。
(藤家委員長)原子力がCO2削減対策として認められないのは合理性を欠くのではないか。
(森嶌委員)原子力は放射能を持つ反面、重要なエネルギー源でありCO2を出さない。その議論をしないで原子力に反対という立場の人もいるが、我々としては、原子力に反対の意見を取り入れながら、どのように原子力問題を考えていかなければいけないのか、を議論しなければならない。私は、そのためにここにいるのだと思う。いいとか悪いではなく、結果的に原子力をこう位置付けなければいけないという議論を、私も含めて原子力委員会がしなければいけない。特に原子力委員会が取り組むべきなのは政策問題なので、単に科学技術的な問題だけではなく、コストベネフィットやパブリックアクセプタンスなどを考えていく必要がある。

(3)その他