平成13年10月12日
内閣官房副長官補付
(安全保障・危機管理担当)

国内テロ対策等における重点推進事項
  1. 平成13年10月8日、総合的かつ効果的なテロ対策を強力に推進するため、内閣に、内閣総理大臣を本部長とする緊急テロ対策本部が設置された。

  2. 同日夜開催された第一回緊急テロ対策本部会議において、別紙1のとおり7項目の緊急対応措置が決定され、現在、政府を挙げて強力に推進されている。

  3. 本日開催した国内テロ対策等に関する関係省庁会議においては、上記7項目のうち、特に国内テロ対策等における重点的な推進事項で法令整備若しくは予算措置を伴うものについて別紙2のようにとりまとめがなされるとともに、必要により項目ごとに関係の深い省庁間の連絡を密にして、強力に推進していくことが申し合わせられた。


参加省庁等
内閣官房
内閣府
警察庁
防衛庁
金融庁
総務省
消防庁
法務省
公安調査庁
外務省
財務省
文部科学省
厚生労働省
農林水産省
経済産業省
国土交通省
海上保安庁


(別紙1)

緊急対応措置

 米国等による攻撃を踏まえ、我が国として可能な限りの協力を行うとともに、国民の安全を守るため、次のような緊急措置を講ずる。

  1. 国民の安全を確保するため、次のとおり国内における警戒体制を強化する。
    •  出入国管理の強化及び密航監視の徹底
    •  テロ関連情報の収集・国際協力の強化
    •  ハイジャック等の防止のため、空港の保安体制・警備の強化等を徹底
    •  NBCテロ等への対処の強化
    •  国内重要施設及び米国等関係施設の警戒警備強化
    •  小型航空機等の飛行計画受理時のチェック及び米軍施設上空の飛行自粛等の徹底
    •  海運事業者による自主警備、不審物への警戒等の徹底
    •  通関検査体制の強化の徹底

  2. 在留邦人の安全及び必要な退避を確保する。
     特に、パキスタン及びその周辺諸国については次のような措置を講ずる。
    •  在留邦人との連絡体制を維持する。
    •  当面の間、現地情勢の急変に備えて、所要の準備を進めるとともに、退避計画を直ちに発動できる状況を維持。現地の状況が悪化した場合には、速やかな退避を実施。
    •  在留邦人の円滑な帰国手続の実施。

     全在外公館において、在留邦人に対し、引き続き、情勢の推移を踏まえ、迅速かつ的確に注意喚起(米国等による空爆作戦開始を受けての海外相談センター情報については発出済み)
    •  各国において危機管理・邦人援護体制の再確認を引き続き行う。
    •  危険度の高い地域への旅行の取り止め。

  3. 「テロ対策特別措置法」等の早期の成立を目指す。

  4. 難民支援及び関係諸国に対する人道的、経済的その他の必要な支援を行う準備を整え、必要に応じて機敏にこれを実施する。

  5. テロリストの資金源対策として、テロ資金資産凍結等に係る国連安保理決議に対応する措置の実施やマネーロンダリングの監視体制の活用により、テロ資金の監視体制を強化する。

  6. 世界及び日本の経済システムに混乱が生じないよう、各国と協調し、次の措置を講ずる。
    •  金融市場の動向、原油、食料その他の物資の市場動向や供給状態を監視する。
    •  外国為替市場の安定、国内の流動性の確保を図る。
    •  原油については、関係諸国等と連携しつつ、必要に応じて安定供給のための適切な措置を実施する。

  7. 国民に対し、必要な情報を迅速かつ的確に提供する。


別紙2
国内テロ対策等における重点推進事項
(法令整備・予算措置関連)


1.出入国管理、国際的な情報交換等の強化
(1)出入国管理の強化
  • 不法入国防止対策の強化
    最新鋭偽変造旅券等鑑識機器の整備等によりテロ組織関係者の不法入国防止対策を強化するとともに、関係機関が連携して不法入国事案に迅速かつ的確に対応する。

  • 査証審査機能の強化
    査証WANシステムの整備等と関係機関間の協力により、査証審査の段階でのテロ組織関係者の割り出しと来日阻止を図るため、査証審査機能を強化する。

  • 不法滞在者取締りの強化
    入管収容施設等の拡充等を行うとともに、在留管理のための態勢の強化、関係機関間の連携の強化を進め、テロ組織関係者とつながりのある疑いのある不法滞在者等の取締りを強化する。

(2)情報の一元的集約と迅速な分析対応

  • 内閣官房を中心とした情報集約・分析機能の強化
    テロ情報イントラネットの構築等により、内閣官房を中心とした政府内の情報集約・分析機能を強化し、テロ情報の一元的集約と迅速な分析対応により国内対策と国際協力を推進する。

2.テロ資金・動向把握の強化

(1)テロ資金監視の強化
  • マネー・ローンダリングの監視等の強化
    FIU(金融情報部門)システムの強化、証券市場取引監視システムの強化、テロ資金供与防止条約に係る国内法整備の検討、テロリストの資産凍結等に係る国連安保理決議に対応する措置の実施やマネー・ローンダリングの監視体制の活用により、テロ資金の監視・措置体制を強化する。

(2) テロ動向把握の強化
  • 関係機関による国内テロ動向監視の強化
    テロ組織関係者等の国内におけるテロ動向について関係機関が把握する態勢の整備等を行う。

3.重要施設の警備の強化

(1) 関係各機関における警備能力、即応態勢の強化
  • 警察・海上保安庁・自衛隊の警備能力・即応態勢の強化
    重要施設に対するテロ攻撃に対処するため、警戒警備に当たる警察、海上保安庁及び自衛隊の警備能力、即応態勢を強化する。

(2) 重要施設の保安態勢等の強化

  • 原子力発電所等における防護措置の強化
    警察、海上保安庁等との連携を図りつつ原子力発電所等における保安態勢等の強化等により、防護措置を強化する。

4.NBC(核・生物・化学)テロ対策等の強化
(1) NBCテロ対策の強化
  • NBCテロへの対処能力の強化
    警察、消防、自衛隊、海上保安庁等の関係機関において、対処部隊の増強、検知器材・事件対応防護機材の増強等を行い、NBCテロへの対処能力を強化する。

  • テロの発生に備えた医薬品等の準備等の強化
    NBCテロの発生に備え、必要な医薬品等の準備等を強化する。

  • 国際的な取り組みへの対応
    NBCテロ対策のための国際的な取り組みに対応し、爆弾テロ防止条約に係る国内法整備を推進する。

(2) サイバーテロ対策の強化

  • サイバーテロへの対処能力の強化
    対処部隊の増強、情報収集、検知・分析・検証機材の増強及び高度化、重要インフラ防護の強化等により、サイバーテロへの対処能力を強化する。

5.ハイジャック等防止対策の強化

ICAOにおける国際的な連携・協調を図りつつ推進

  • 保安検査等の充実強化
    検査機器の充実強化等により、空港等における保安検査その他の保安措置等を更に強化する。

  • 航空機内の保安対策強化
    ハイジャック犯のコックピットへの接近・侵入の防止策等、航空機内の保安対策強化措置を推進する。

6.海外邦人への情報提供等の強化

  • アフガニスタン周辺国におけるNGOその他の邦人との連絡体制の強化
    GPS等の導入により、アフガニスタン周辺諸国の危険地域において活動するNGOその他の邦人の位置確認・連絡体制を整備する。

  • NHK国際放送によるテロ関連情報提供の拡充