第45回IAEA総会主要決議の概要

平成13年10月
外務省科学原子力課

 9月17日~21日、ウィーンのIAEA本部に於いて開催された第45回総会では、18件の決議が採択された。
 特に今次総会では、米国における同時多発テロを踏まえ、従来の核物質の不法移転決議から独立して核物質防護決議が採択されたほか、保障措置に関する決議では、追加議定書に対する我が国の取り組みが「日本の努力を賞賛する」との表現で評価された。
 また、エルバラダイ事務局長の再任(任期は本年12月より4年)、2002年度の予算(我が国の基本分担率は2001年の20.3%から18.6%に低減、米は25%を維持)が承認された。
 主要な決議の概要は次の通り。

1. 保障措置の強化と効率化
  •  IAEA保障措置の普遍的な適用の達成が重要であることに留意し、包括的保障措置条約を締結していない全ての国に可及的速やかな締結を勧奨。
  •  追加議定書普遍化のための「行動計画」の実施につき、加盟国、特に日本、及びIAEAの努力を賞賛、引き続き行動計画の継続的実施の検討を勧告。
(尚、本決議前文で、我が国とIAEAが共催した「アジア・太平洋地域における保障措置の一層の強化のための国際シンポジウム」の東京開催を歓迎し、類似の会合が他の地域でも開催されることを希望する旨言及。)

2. 核物質及び放射性物質の防護
  •  各国が、理事会で推奨された「核物質防護の目的と基本理念」を原子力の平和利用活動に適用することを奨励。
  •  法的及び技術的専門家からなる、核物質防護条約改正条文の検討グループ設置を歓迎。
  •  事務局長が、核物質等に対するテロ防止のための活動を強化する作業を見直し、速やかに理事会に報告することを要請、加盟国に対し、事務局長に協力することを勧奨。
(尚、本決議案前文で、各国における核物質防護は各国の責任に帰すこと等に言及。)

3. 原子力に係わる科学、技術及びその適用に関するIAEAの活動の強化
  •  事務局長に、これまでの議論を一歩進めて革新的原子炉開発プロジェクト(INPRO)の具体的推進を勧奨。
  •  INPROの推進に際し、IAEAとして利用者の要求の開拓、革新炉とその核燃料サイクルの保障措置、安全及び環境に係わる問題につき発信してゆくとの役割を強調。
(尚、本決議前文で、第Ⅳ世代等のイニシアチヴの進展に留意する旨言及。)

4. 輸送の安全
  •  沿岸国より、核物質輸送の潜在的危険性を指摘。
(他方、本決議前文で、過去20年に亘り放射性物質の海上輸送が放射能漏れを伴うような深刻な事故なしに行われてきたこと、IAEAによる5年間に亘る調査研究の結果万一の事故の場合にも放射能漏れのリスクは極めて少ないとの結論が言及され、また、航海の自由等国際法上の権利を改めて確認した。) 

(了)