平成13年10月2日
核燃料サイクル開発機構

ウラン濃縮技術開発の終了について


 核燃料サイクル開発機構(以下、「サイクル機構」といいます。)は、核燃料サイクル開発機構法施行令に基づき平成13年9月30日をもってウラン濃縮技術開発(以下「本技術開発」といいます。)を終了することとなりました。

サイクル機構は、本技術開発を、昭和39年に開始して以来、40年近くにわたり本技術開発を進めてきました。この間、昭和47年には原子力委員会によりナショナルプロジェクトに指定されました。また、昭和63年には原型プラントを建設し、同プラントでは約350トンの濃縮ウランを生産して、平成13年3月に運転を終了しました。
その成果技術は、日本原燃ウラン濃縮工場に技術移転され、同工場は平成4年に操業を開始しています。また、並行して開発を進めてきた将来に向けた超高性能の遠心機の開発においても、昨年11月にその成果技術を日本原燃へ技術移転し、今後は日本原燃に設置したウラン濃縮技術開発センターで行なわれる新型遠心機の開発に活かされていくことになっています。

本技術開発を終了するに当たり、「高速炉・燃料サイクル課題評価委員会」を開き、事後評価を実施しました。
その結果、国際競争力の課題を残しつつも、核燃料サイクルの自主性の確立という当初からの開発の目的、意義に照らせば、十分な成果をあげたと言え、ナショナルプロジェクトとして成功であった、との評価を頂きました。(別紙1)

なお、日本原燃での開発に必要な支援を行っていくとともに、今後はウラン濃縮施設の解体処理を行うために必要となるプラント内に残った滞留ウランを除去・回収する技術並びに運転を終了した遠心機を処理する技術等の開発を行ってまいります。また、保管中の劣化ウランの安定化等を図り将来の有効利用に備えた措置を検討し実施していきます。(別紙2)

以 上


平成13年10月2日
核燃料サイクル開発機構

研究開発課題評価(事後評価)の実施結果について
評価課題「ウラン濃縮技術開発」


 核燃料サイクル開発機構(以下、「サイクル機構」といいます。)は、研究開発活動の一層の効率化・活性化を図り、より優れた成果を挙げていくことを目的として、「国の研究開発全般に共通する評価の実施方法の在り方についての大綱的指針」(平成9年8月7日内閣総理大臣決定)、サイクル機構の「研究開発外部評価規程」(平成10年10月1日制定)等に基づき、「ウラン濃縮技術開発」(以下、「本技術開発」といいます。)の外部評価(事後評価)を実施しました。

 この評価は、サイクル機構・理事長の諮問により「高速炉・燃料サイクル課題評価委員会」(委員長:岡 芳明・東大教授、委員14名)で行われ、平成13年9月4日同評価委員会委員長から評価結果が答申されました。同評価委員会は、平成11年1月に設置され、関連分野の専門家を中心として、社会科学の専門家、ジャーナリスト、ユーザー等、幅広い分野の委員から構成されています。

 答申では、①本技術開発は、外国からの技術導入ができない中で、プロジェクトの中核となって事業化が可能なウラン濃縮技術を自主開発し、その技術成果を事業主体に技術移転したことは高く評価できる②国際競争力の課題を残しつつも、核燃料サイクルの自主性の確立という当初からの開発の目的、意義に照らせば、十分な成果をあげたと言え、ナショナルプロジェクトとして成功であったと評価できる。
 なお、今後のサイクル機構が果たすべき役割として、③六ヶ所プラントの停止遠心分離機について、原型プラント機の分解点検も含め原燃が実施中の原因究明調査に協力すること④従来までの技術成果を体系化し取りまとめること等の評価結果が示されました。これらの評価結果のご指摘に対する措置を別添1Aに示します。

 なお、評価結果については、上記の措置や研究内容説明資料などサイクル機構の関係資料とともに、インターネットのサイクル機構ホームページに掲載する他、サイクル機構の各事業所のインフォメーションルームにおいてご覧になれます。


☆ サイクル機構ホームページ
 http://www.jnc.go.jp (研究成果・公開資料/研究開発評価)


【高速炉・燃料サイクル課題評価委員会構成員】


(委員長)
岡 芳明     東京大学大学院工学系研究科附属原子力工学研究施設教授
(委 員)
井上   正    電力中央研究所原燃サイクル部長
小鍜治市造    関西電力(株)原燃サイクルグループチーフマネージャー原子燃料部長
近藤三津枝    ジャーナリスト
清水 雅彦    慶應義塾大学 常任理事
鈴木   潤    未来工学研究所R&D戦略研究グループリーダー
戸田 三朗    東北大学大学院工学研究科量子エネルギー工学専攻教授
中川 正幸    日本原子力研究所特別研究員(現在、日本原子力発電㈱顧問)
大杉 俊隆    日本原子力研究所エネルギーシステム研究部次長(平成13年7月1日より)
中村 雅美    日本経済新聞社編集委員
モリス・ブレン  駐日欧州委員会一等参事官(科学技術担当)
班目 春樹    東京大学大学院工学系研究科附属原子力工学研究施設教授
松井 恒雄    名古屋大学大学院工学研究科量子工学専攻教授
松本 史朗    埼玉大学工学部応用化学科教授
山田 明彦    東京電力(株)原子力研究所所長 


平成13年9月20日
核燃料サイクル開発機構

研究開発課題評価委員会
「ウラン濃縮技術開発」の評価結果(事後評価)に対する措置

 平成13年度の研究開発課題評価委員会(高速炉・燃料サイクル課題評価委員会)に諮りました「ウラン濃縮技術開発」について、「外国からの技術導入ができない中でサイクル機構がプロジェクトの中核となって自主開発して実用化を達成し、ナショナルプロジェクトとしては成功であった」との評価を頂きました。

 本件は事後評価であり、これで技術開発を終了することになりますが、ご指摘があった事項については以下の措置を講じることとします。
 
1.「六ヶ所ウラン濃縮工場の停止遠心分離機について、原型プラント機の分解点検も含め日本原燃㈱が実施中の原因究明調査に協力すること」とのご指摘に対し、

 停止遠心分離機の原因究明調査については、サイクル機構としても以下の事項について積極的に対応していきます。
(1) 日本原燃㈱に協力して、六ヶ所ウラン濃縮工場遠心分離機部品の分析作業を実施しており、今後も継続して協力します。
(2) 日本原燃㈱が設置した、RE-1A分解調査特別委員会にサイクル機構の専門家が参画し、原因究明調査に協力します。
(3) 原型プラントの遠心分離機を分解調査し、その結果をRE-1A分解調査特別委員会に提供していきます。

2.「従来までの技術成果を体系化し取りまとめること」とのご指摘に対し、

(1) 金属胴遠心機及び新素材胴遠心機の開発成果並びにパイロットプラントの運転成果については、既に技術成果を取りまとめました。なお、現在進めている原型プラント遠心分離機の分解調査は早急に報告書を完成する予定です。
(2) 今年3月に運転を終了した原型プラントの運転成果については、技術成果を9月末までに体系化するとともに,有効に活用できるようにデジタル化していきます。

3.「日本原燃㈱ 技術開発センターでの新型遠心機の開発を支援すること」とのご指摘に対し、

(1) 日本原燃㈱とサイクル機構は、2000年11月1日に「ウラン濃縮施設の建設、運転及び技術開発に関する技術協力協定」を締結し、新型遠心機の開発業務を今後とも技術支援できるようにしました。
(2) ウラン濃縮技術開発センターの設置に合わせ、先導機の技術成果を移転するとともに、高度化機及び先導機開発に携わった技術者のほとんどを同センターに出向させ日本原燃に開発体制を一元化し、日本原燃が実施している新型遠心機の技術開発に協力しており、今後もこの協力を継続していきます。

4.「機微情報に関する課題を評価する場合の情報開示方法について検討すること」とのご指摘に対し、

 今回の評価対象であるウラン濃縮技術は、国際的にも機微技術として厳しく管理されていることから、技術的内容の詳細については十分に開示できないところがありました。しかし、技術開発で必要であった事項については機微技術に触れずに、原理的説明とする等の工夫によりご理解を頂けたものと考えております。この経験を社内で共有化し、今後の機微技術情報を含む課題について評価を受ける場合に適切な対応をしてまいりたいと考えております。

以 上


平成13年 9月28日
核燃料サイクル開発機構

ウラン濃縮施設の処理技術開発について

  1. はじめに
     サイクル機構のウラン濃縮は核燃料サイクル開発法施行令の一部改正に基づき平成13年9月30日をもってウラン濃縮技術開発を終了し、その後は施行令でも認められている、ウラン濃縮施設の廃止のため必要な技術開発を行い、技術開発を待って廃止措置をおこなっていくこととなった。主な開発として、プラント内に残された滞留ウランの除去回収技術、機微情報が含まれていてその情報を残さず処分する必要がある遠心機の処理技術、及び濃縮ウランの製造の結果残された劣化ウランの適切な処置技術が必要である。

  2. 滞留ウランの除去・回収技術
    人形峠環境技術センターの原型プラントは13年に及ぶ役務運転を平成13年に終了した。濃縮プラントにはその間に遠心分離機の内部や配管にUF6と金属が反応し、固体のウラン化合物として残されている。このウラン化合物を再度フッ化しUF6のガスとして除去・回収するための技術を開発している。本技術開発は遠心機処理やプラントの解体で発生するウラン廃棄物を極力小さくし、ウラン濃縮プラントの廃止措置を合理的に行えるようにすることが目的である。

  3. 遠心機処理技術開発
     ウラン濃縮技術は核開発に直結した技術であるため、技術保有国は機微技術として厳しく管理することが求められている。また遠心分離機は回転胴が破壊した場合にも、破片が遠心機の外部に出さないため、堅固な構造とする必要があり、そのまま廃棄物とした場合は多量の放射性廃棄物となってしまう。
     このため、機微情報の消滅と放射性廃棄物を大幅に減量する技術を開発することが目的である。

  4. 劣化ウランの処置
     劣化ウランは長期的には高速増殖炉の燃料として有効に活用されることが期待される。現在劣化ウランは貯蔵用シリンダーにUF6の形態(固体)で保管しており、シリンダーの寿命(付設のバルブ)を考えても50年程度はUF6が漏洩する危険性はない。この期間を利用して将来の活用の方向を十分に検討し、安定化を図っていく。

以 上