平成14年度文部科学省原子力関係概算要求(案)について
平成13年8月28日
文 部 科 学 省
(1)新たな原子力長期計画の実現に向けて
1.基本的な考え方
- 新たな原子力長期計画に従って、科学技術の振興の観点からの原子力行政に責任を持つ文部科学省としては、高速増殖炉サイクルのための研究開発、核融合研究開発、加速器等原子力科学技術の推進等を行う。
- (2)大学、教育等との連携
- 省庁再編を契機として、日本原子力研究所、核燃料サイクル開発機構、放射線医学総合研究所、理化学研究所等の研究機関と大学及び大学共同利用機関等との連携を図るとともに、原子力に関する教育への取組を行う。
- (3)新たな国際的な動向への対応
- 国際的には、米国のエネルギー政策の見直しへの動きや、国際的な革新的原子炉研究への取組などの動きがあり、文部科学省としても次世代の革新的原子力技術開発への取組を行う。
- (4)原子力研究開発システムの変革
- 政府全体の予算が厳しい状況にある中で、原子力についても、政策ニーズに照らした事業の再評価や、事業の一層の効率化、重点化を図るとともに、優れた成果の創出・活用のため、競争的研究開発や産学官の連携を促進するための研究開発システムの変革を行う。
○核燃料サイクル技術開発
2.平成14年度概算要求のポイント
- 将来のエネルギー問題を解決する技術的選択肢を確保する観点から、高速増殖炉サイクルの実用化を目指した技術開発を重視し、実用化に向け戦略的な開発を行っていく。そのために、以下の2つのプロジェクトを中心に効率的な技術開発を行う。
また、新型転換炉研究開発等については成果をとりまとめ、順次整理を実施していく。
- ・高速増殖原型炉「もんじゅ」 120億円(106億円)
- 「もんじゅ」については、平成12年の原子力長期計画を踏まえ、高速増殖炉サイクル技術の研究開発の場の中核として位置付け、発電プラントとしての信頼性の実証とナトリウム取扱技術の確立という所期の目的を達成するべく、その準備を進める。本年6月に地元の了解を得て、現在、ナトリウム漏えい対策等に係る改造工事を行うための原子炉設置変更許可申請を経済産業省原子力安全・保安院に提出したところ。
平成14年度予算においては、改造工事を行うための所要の経費を要求。
- ・産学官連携による高速増殖炉サイクル技術開発等 55億円( 39億円)
- 高速増殖炉サイクルを実現するためは、「もんじゅ」等、高速増殖炉の開発のみではなく、炉・再処理・燃料製造の整合性のとれた開発を行うことが重要である。
そのため、開発を効率的かつ戦略的に一層強力に推進すべく、サイクル機構において実用化戦略調査を実施(35億円)するとともに、従来の革新的リサイクル技術開発事業を抜本的に見直し、原子力長計を踏まえ、産学官のポテンシャルを結集するため公募型事業(20億円)に着手。両事業の連携を図りつつ、先進的な核燃料サイクル技術、とりわけ高速増殖炉サイクルの実用化に向けた研究開発を重点的に実施。
- ○原子力科学技術の推進
(核融合研究開発)
・ITER計画への対応 8億円( 30億円)
- ITER共同実施の準備を行うため、建設サイトに応じた適合設計等を行う調整技術活動(CTA)に参加する。調整技術活動は平成14年末までに成果を取りまとめる予定。
- ・JT−60による研究開 31億円( 62億円)
- 実験炉に対して先進的かつ補完的な研究開発を進めるため、平成14年度は2サイクルの実験運転を実施し、プラズマの維持に関する研究等を行う。
- (加速器研究開発)
・大強度陽子加速器、RIビームファクトリーの建設
145億円( 97億円)
- 世界最高レベルのビーム強度を持った陽子加速器を建設し、原子核・素粒子物理学、生命科学、物質・材料科学、エネルギー工学など広範な研究分野の新展開を目指す大強度陽子加速器(103億円)及び全元素の同位元素(RI)を世界最大の強度でビームとして創製・利用し、幅広い研究を推進するRIビームファクトリー(42億円)の建設を着実に推進するための予算を要求。
- (次世代の革新的原子力技術)
・国際的取組を視野に入れた次世代の革新的原子炉技術開発
37億円( − 億円)
- 原子力長計及び科学技術基本計画において、高い安全性、経済性等を有する革新的原子炉等の原子力技術が期待されている。また米国においても第4世代原子力システム開発に係る取組が加速しており、これらを視野に入れ、産学官のポテンシャルを結集して革新的原子炉技術の研究開発に取り組むことが必要。
このため、平成14年度予算においては、革新的原子炉技術の研究開発に関する公募型事業の実施のための予算を要求。
- (原子力試験研究費)
・原子力試験研究費 22億円( 24億円)
- 各省の試験研究機関の原子力試験研究に係る経費を文部科学省に一括計上。
平成14年度は、原子力から発展して科学技術全般への波及効果を通じ、社会・経済の発展に寄与する先端的・先導的な研究を重点的に実施。そのため、原子力委員会による採択テーマの事前評価・中間評価を徹底。
また、このうち、複数の研究機関におけるポテンシャルの結集が不可欠な研究課題を総合的研究として位置付け、相乗効果による効率的、効果的な研究の推進を図る。
- ○原子力安全・防災対策
・緊急被ばく医療体制の整備 5億円( 4億円)
- 緊急被ばく医療体制の整備に必要な予算を要求。特に、平成14年度については原子力安全委員会の報告書に基づき、専門的入院診療を行う三次被ばく医療体制の整備に着手する。
- ○保障措置
・六ヶ所再処理施設をはじめとする保障措置体制の整備等
26億円( 20億円)
- 六ヶ所再処理施設の平成15年度のウラン試験の開始に向けて、六ヶ所保障措置分析所および六ヶ所保障措置センター等における査察・分析機器の整備や所要の人員の確保が極めて重要となっている。
また、追加議定書に基づく「補完的アクセス」への対応等増大する保障措置業務に適切に対応するため、民間機関への査察代行の拡大等が必要である。
- ○原子力教育 10億円( 5億円)
- 国民の原子力に関する理解を深めるためには、学校教育の場において、適切な形で学習を進めることが重要である。このため、教育現場においてエネルギーや放射線に関する正確な知識を提供し、生徒自らが考えていく力をつけることができるような環境の整備が重要であり、地域における原子力教育の取組みを支援する体制の整備を図るなど原子力教育の充実・強化を図る。
このため、平成14年度予算においては、原子力教育支援事業交付金制度(5億円)の創設等に必要な予算を要求。
- ○放射性廃棄物対策
・所管研究機関の放射性廃棄物対策技術開発 167億円(222億円)
- 所管研究機関から生じる放射性廃棄物及び所管施設の廃止に伴い発生する放射性廃棄物について、その廃止計画及び処理、それに係る技術開発等を進めていくことを検討中。
さらに、RI・研究所等廃棄物の処分システムの検討を継続し、処分に向けたデータベースの整備を進める。
- ○放射線利用
医療、工業、農業等の幅広い分野での研究開発を進めつつ放射線利用の推進を図る。
・放医研における重粒子線がん治療研究 51億円(55億円)
- 腫ようへの線量集中性に優れ、かつX線や陽子線よりも生物効果の高い重粒子線の有用性をヒトのがんで実証しつつあり、この実証に基づいてさらに臨床試験を押し進めることにより、がんの新しい治療法の確立を目指す。
- (参考)大学等における取組
・大学等における基礎研究 324億円(335億円)
- 大学における原子力研究(加速器、核融合分野を含む。)は、個々の研究者の自由な発想を生かしながら、学問的体系化を図りつつ進められている。これらの研究は学生の教育にも反映され、優れた研究者や技術者の養成に役立っており、引き続き推進するための予算を要求。