原子力委員会へのご質問・ご意見について(集計結果)

平成13年8月7日

以上


(別添)

番号1(H13.7.11受付)
(ご意見)「原子力への市民の理解を深めるために」
○職 業    : 無職
○年 齢    : 56歳~60歳
○性 別    : 男性
○ご意見の内容 :
2001/7/11
原子力委員会
藤家洋一 先生
拝啓。酷暑が続きますが先生におかれましてはますます御健勝のこととお喜び申し上げます。突然お手紙を差し上げる無礼をお許しください。
 先生のお書きになりました「リサイクル文明が求める原子力」を興味深く拝読しました。私もかねてからエネルギー問題に関心をもち、その重要な一翼を担う原子力にも、人並み以上の関心を持っております。昨年の何とも表現のしようのないJCOの事故、それが引き金を引いたと思われるプルサーマルへの住民の拒否反応など、素人ながら様様な思いを持っております。先生のご本に書かれていました「社会が原子力の選択に関して、積極的に参加することを望みたい」という言葉に甘えて、愚見を書かせて頂きます。
 最初にお断りしておきますが、私は大学で合成化学を学び、企業で高分子などを研究しておりました。外殻電子の振る舞いは多少理解していると自負しておりますが、正直申し上げて、昔から核反応には馴染めません。原子力に理解不足のところがあるかと思いますが、お許しください。
 私なりの原子力に関する基本的な考え方は、日本のような資源無き島国においては、エネルギー供給の多様化と確保にとって、非常に重要な要素と考えております。リスクとベネフィットを理性的な判断に基づく、国民多数の認知の下に着実な展開を図るべきかと考えております。いかに温室効果ガスを排出しないとはいえ、「専門家に任せて欲しい」ということで、国民の不安を押し切って、原子力のシェアをどんどん高める時代ではなくなったと思います。しかし一方、現実に稼動している原発を廃止すると言うのも、かえってリスクの多い行動であると思います。
 先生はご本の中で、「原子力をどのように捉えるかについての共通認識が必ずしも十分でない現在、三つの選択肢があるように思えます。第一は、原子力は人類と共存できないとして開発を止め、麓に戻ることです。第二は、原子力を認めるものの、現在の場所、すなわち軽水炉の実用化と医療利用の定着した状態に止まり、欧米の動向を待つとする姿勢です。第三は、科学技術創造立国を目指す日本が、国土の狭い、資源に恵まれないといった自らの宿命と課題を解決し、明治以来の脱亜入欧の姿勢を転じて、アジアに位置する技術先進国として、アジアを中心に求められる国際的責務を果たすため、意を決して登山を積極的に続けることです」、と書かれています。
 私は、第二の選択肢の亜種かもしれませんが、「現在の場所、すなわち軽水炉の実用化と医療利用の定着した状態にとどめ、廃棄物の処理などの技術の確立に努め、社会の信頼感の回復を待つ」のがいいのではないかと思っています。欧米の動向を待つのではなく、自力で技術開発を行い、社会に正しい情報を開示して、信頼を取り戻すのです。そのための努力が関係者に求められているのではないでしょうか。
 原子力についての世界の潮流は、残念ながら引き潮ではないかと感じております。私が学生時代にあったような先端技術としての熱気は失せ、技術の継承すら憂慮される状況ではないかと思っています.最近アメリカで見直す動きもありますが、原子力に対する社会の認識は、日に日に厳しくなっているように思います。
 原子力に対する一般大衆の不信は、安全性と廃棄物の問題に尽きるといっても良いでしょう。そしてその根源は、未完成の技術を完成したと言いつづけ、問題は無いから専門家に任せて欲しい、と言い続けた関係者の姿勢にあったと言わざるを得ないでしょう。関係者のみを責めるのは酷で、理解する努力を怠った社会にも勿論責任はありますが、第一義的な責任は、当事者の秘密主義にあったといえるでしょう。今からでも遅くありません。未完成のものは未完成とはっきりと言い、それでもリスクはこれだけに抑えられるということを説明するべきではないでしょうか。
 私個人的には、軽水炉原発そのもののリスクは他の技術と比較するまでもなく、ベネフィットが遥かに上回っていると考えています。これまでの実績が何よりも雄弁に物語っています。問題があるとすれば、JCOの事故で明らかになった核燃料処理、あるいは原子炉の補修・廃棄処分などの周辺にあるのではないでしょうか。JCOの事故を教訓に、これらの周辺技術の問題点を総点検されたのではないかと信じますが、寡聞にして報告書が発表されたとは聞きません。
 先日、刈羽原発のプルサーマル導入をめぐって住民投票が行われ、導入に反対という住民の意向が明確になりました。素人考えですが、本来原発の燃料を濃縮ウラン燃料から、再処理して分離したプルトニウムを混合したMOX燃料に切り替えることによって、原発そのものの危険性が大幅に上昇するとは考えにくいと思います。原発そのものの危険性というよりは、MOX燃料の取扱い、貯蔵・保管などに伴う万が一の事故・事件に対する対応が、関係者に抜かりはないでしょうが、これまで以上に必要となるのでしょう。その意味では、原発が現在存在し安全に稼動している以上、プルサーマルに反対するのは、根拠薄弱という理屈も成り立つでしょう。従って、住民の拒絶反応は、原発そのものに対する反発と解するべきでしょう。原発そのものはかなりの実績を積み、プルサーマルに切り替えた時の危険性に大きな違いが無いとすれば、エネルギーの消費者としては、エネルギーの確保という大局的見地に立って、住民の方々に理解を求めたい気もしないではありません。
 安全性の問題よりは、核廃棄物の問題の方が深刻だと思います。核燃料サイクルという言葉がよく使われますが、私は正しい使い方ではないと思います。先生もかかれていますように、「核分裂も核融合も、物質の完全なリサイクルは本来存在せず、物質の循環がもともと閉じていない」のだと思うからです。燃焼生成物からプルトニウムなどの燃焼可能物を取り出すということで、形の上ではリサイクルと言えなくはないかもしれませんが、核燃料の高度利用とか、核燃料の徹底燃焼と呼ぶのが正しいと思います。リサイクルが見直される社会の潮流に悪乗りしている気がします。
 言葉の問題はさておき、プルサーマルに対する住民の拒否反応は、これまでの「核燃料サイクル」政策に対する不信任と考えざるを得ないでしょう。しかしながら、もんじゅが少なくとも近い将来頓挫した以上、プルサーマル抜きには日本の「核燃料サイクル」は成り立たないから、認めてくれと言う国・電力会社の言い分は、勝手ではないかと反論されれば、返す言葉はないでしょう。先生のお言葉を借りれば「トイレ無きマンション」を建て続けてきた怠慢・無策を、特定の限られた地域住民に押し付ける訳にはいかないでしょう。国・電力会社という、強者の居直り、開き直りは許されないでしょう。
 資源、環境などから原子力の意義は認めつつも、社会からの不信に悩む今の深刻なジレンマを、いかに克服すべきでしょうか。私見を申し上げれば、もう一度初心に返り、国民と目線を合わせて情報を公開し、理解を求めることから始めるべきではないでしょうか。
 先生が原子炉は天然にも存在したのだと書かれているのは、その一つの試みかと思います。しかし残念ながら、この議論には賛成できません。化学の世界でも、ダイオキシンをはじめとする塩素化合物、あるいはいわゆる環境ホルモンなども天然に存在するものであり、今さら騒ぐことは無いという議論をされる専門家もおられます。間違いとはいえないまでも、これでは市民の理解を得ることは出来ない議論だと思います。
 それでも化学物質については、いわゆる環境ホルモンの一つに挙げられる物質が大豆などにも含まれますが、人類は数千年にわたってそれと共存し、その環境に適応してきた歴史があるわけです。それに引き換え、放射線は宇宙から降り注ぐ微弱なものを除いて、人類が関係を持つようになったのは、たかだか60年位前からでしょう。それを改めて教えてくれたのがJCOの事故でした。
 80リットルのタンクが臨界に達し、沸騰と温度低下を繰り返す程度の、たかのしれた、熱エネルギーで言えばやけど程度のエネルギー放出でありながら、二人の方が犠牲になられたのです。大内さんの治療記録をNHKテレビでみましたが、染色体が見る陰も無く変形して、素人目にもこれではとても助からないと思えました。勿論治療に当たられた医師の方々が気がつかれないわけも無く、それにもかかわらず献身的な治療をされたのには、敬意を惜しみませんが、放射線に対する細胞の耐性の無さを改めて感じました。
 人類が長い間かけて共存してきたものでない以上、放射線は天然にも存在したと言っても、説得力は殆ど無いと思いますがいかがでしょうか。
 初心に返って考えると言う意味で最近疑問に思うのは、「プルトニウムは本当に危ないか」ということです。これまで私も、プルトニウムは半減期も気が遠くなるほど永く、最も毒性の高い化合物(元素)と思ってきました。どういうメカニズムで毒性が高いのかと疑問に思って調べたところ、どうも強い放射線による発癌作用が毒性の根拠のようです。青酸カリが呼吸作用を阻害し、サリンが中枢神経を麻痺させるというような、生命維持を損なう急性毒性とは違うようです。
 最近、1940年代後半にアメリカでプルトニウムを人体に注射する実験が行われたということを、アルバカーキ・トリビューン紙が暴露した書物を読みました。信じられない中味とは別に、18人の被験者のうち、3人が注射されてから30年も生き延びたという事実にも驚かされました。発癌作用ということであれば、細胞の修復作用も結構大きく、個体差が非常に大きいと言うことかと理解しました。プルトニウムの危険性を過小評価するものではありませんが、「1グラムあれば100万人殺せる」などという言い方は、計算上の可能性でであって、現実にそんなことは起こらない、と言っても過言ではないのではないでしょうか。さらに言えば、プルトニウムから出る放射線はα-線で、透過力は極めて小さいと言うことですので、防御するのも難しいとは思えません。
 プルトニウムの危険性を冷静に判断すれば、徒に忌避するのは賢明ではなく、封じ込めると言う対応策も現実的なものと考えても良いかと思います。プルトニウムの分離・再利用というのも、安全性の観点よりは、資源の徹底的利用という観点から、その是非を判断すべきものでしょう。核兵器への悪用を考えて、再処理をあえて放棄したカーター大統領の決断を見直す気にもなりました。
 原子力に関する技術開発について、先生は総合的な開発の必要性を説いておられます。冷静に考えるとその通りなのですが、敢えて異論を唱えることをお許しいただければ、社会の原子力に対する風当たりが厳しいときに、全面戦争をする余裕は無く、当面の課題に勢力を集中することとの得失をご検討いただきたいと思います。
 私はかつて、「もんじゅ」がナトリウム漏れの事故を起こして騒がれた頃、当時科学技術庁の科学技術振興局長であった幼馴染に、原因がはっきりし騒ぎが納まったら、名誉ある撤退を考えるのが賢明ではないか、と書き送ったことがあります。彼からは、エネルギー資源の確保という観点からも、安易に撤退は出来ないと答えてきました。私の思いは、様様な未解決の課題を抱える中で、実現の可能性の低い高速増殖炉に勢力をかけるのは、得策ではないという思いでした。
 「もんじゅ」も再開を目指して安全審査が始まるようですが、一つ素人の提案があります。ゴミ焼却炉も最近は発電までするものが増えてきましたが、本来のつとめは言うまでも無くゴミの処理です。「もんじゅ」もその点に立ち返ることは出来ないのでしょうか。エネルギーを回収できればめっけものぐらいに考えて、核廃棄物の処理を最優先にするのです。当然設計思想も変わってくるでしょう。ナトリウムの漏れくらいにたじろいではいけないのです。ゴミの焼却炉でも、発生する塩酸による腐食と常に戦っています。ナトリウムは漏れることを覚悟して、漏れても大事に至らない(そもそも5年前の漏れは致命傷だったのでしょうか)、対応を考えるというように割り切るのです。経済性のファクターを一度外して考えれば、設計も当然変わってくるのではないでしょうか。
 素人考えは別として、申し上げたいことは、優先度の高い目標に的を絞って、優先度の低い目標は、思い切って後回しにするのです。勿論国民の理解が得られれば、総合的に適切な、効率的な技術開発を進めるのに越したことは無いのですが、国民の理解の得にくい現状を考えるとき、敢えて必要最小限に的を絞った技術開発を提案する次第です。
 先生は次のように書いておられます。

 これまでの議論を踏まえますと、原子力の究極の形として浮かび上がって来るのは、次の4つの機能が発揮できるシステムではないでしょうか。
①核分裂反応によって、21世紀の社会に使いやすい良質のエネルギーである電力や水素エネルギーが効率よく供給できる。
②プルトニウムなど超ウラン元素の生産で新しいエネルギー資源を確保する。これらの核燃料物質は、リサイクルさせることで、完全燃焼を追究する。
③システム内部で放射性物質の消滅をはかる。
④放射性物質を閉じ込めることで安全を確保する。

 敢えて私見を申し上げれば、④は究極の形ではなく、大前提です。①が当面の課題であり、②と③が究極の目標ではないでしょうか。国民の期待に合わせた、優先順位を明確にした技術開発を期待したいと思います。
 原発を直ちに廃止せよというのは論外として、少なくとも現状を維持するために、ある意味で最も安易な対策は核廃棄物の地下保管管理でしょう。アメリカなどと違って日本の国土では適地が無いと考えるなら、プルトニウムなどを消滅させる必要があるでしょう。さらに資源の有効利用も考慮するなら、プルトニウムなど燃焼可能物を再利用することであり、それには「もんじゅ」とプルサーマルがあるのでしょう。これらの選択肢を総合的に示し、それらのリスクならびに得失を、国民に包み隠さず、分かりやすく説明されることが、現在の行き詰まり状態を打破する鍵であると信じております。
敬具

 


番号2(H13.7.12受付)
(ご質問)「資料をお送り下さい.」
○職 業    : 会社員
○年 齢    : 56歳~60歳
○性 別    : 男性
○ご質問の内容 :
 阪神大震災を受け,1995年9月 現行の耐震設計指針の妥当性の検討がなされ,そのレポートが公表されたと聞きます.
 そのレポートがあれば,お送り下さい.
 当方で複写し,お返しします.
 着払いでお送り下されば,結構です.
 お手数ですが宜しくお願いします.

 

番号3(H13.7.14受付)
(ご質問)「「原子力白書」についての問い合わせ」
○職 業    : 会社員
○年 齢    : 21歳~25歳
○性 別    : 女性
○ご質問の内容 :
拝啓 ますますご清栄のことと御喜び申し上げます。
さて、当校におきまして、「原子力白書」の購入を検討させていただいて
おります。こちらのHPを御見受け致しましたところ、「平成10年版」
が最新版となっておりましたが、次の版の出版年月を予定されておりまし
たら、おしらせいただけますでしょうか?
お手数ですが、よろしくおねがい申し上げます。
                               敬 具

 

番号4(H13.7.18受付)
(ご質問)「米国原子力政策に関する調査の結果」
○職 業    : 会社員
○年 齢    : 41歳~45歳
○性 別    : 男性
○ご質問の内容 :
貴委員会の題記の報告書7頁に「高レベル廃棄物処分問題の解決が発電所建設の前提となると、廃棄物管理コストの面で発注できなくなる企業もある。」との記載がありますが、
①なぜ廃棄物処分問題の解決が発電所建設の前提となるのか、
②廃棄物処分問題の解決が発電所建設の前提となる可能性、
③廃棄物処分問題の解決が発電所建設の前提になることと、企業の廃棄物管理コストとの関係について、教えて下さい。

 

番号5(H13.8.1受付)
(ご質問)「ロシア原子力省について」
○職 業    : 自営業
○年 齢    : 26歳~30歳
○性 別    : 男性
○ご質問の内容 :
2000,12月20,21日の朝日、産経新聞の中でロシア原子力省が外国から使用済核燃料輸入するとの記事を拝見しました。そこで今年の7月にロシア原子力省とライセンス契約を結ぶ事が出来たのですが、是非この契約を活かしロシアに使用済み核燃料を日本の法律に基に私共と日本の電力会社と契約を結びロシアに輸出したいのですが。しかし平成17年7月から日本の国内において再処理を行うと聞きましたが、現在の日本の方針ではフランス、イギリスのみ輸出入を行っていると聞いているのですが、なんとか使用済核燃料に限らず、再処理に伴い排出する廃棄物でもロシアに輸出する事は出来ないのでしょうか、1パーセントでも可能性があるのであれば是非委員会の方で検討していただきたいのですが、是非一度私共の提案を聞いていただきたいのですが、宜しくお願い致します。