平成14年度文部科学省原子力関係概算要求について
平成13年7月27日
文 部 科 学 省
1.基本的な考え方
(1)新たな原子力長期計画策定後、初の概算要求
(2)文部科学省としての初の概算要求
(3)新たな国際的な動向への対応
2.平成14年度概算要求を巡る状況
一方、以下のような政府全体の予算及び原子力関係予算に関する厳しい状況があり、1.に示した取組に支障が生じるだけでなく、場合によっては、重要な研究開発の中断、技術や人材の散逸等の問題が生じるおそれがある。
・国債発行を30兆円以下に抑制することを目標(6月26日閣議決定)
・特殊法人改革(事業の見直し、特殊法人全体で5年間で1兆円削減)
・総合科学技術会議(重点四分野への資源配分)
文部科学省としても、政策ニーズに照らした事業の再評価や、事業の一層の効率化、重点化を図ることとしているが、このような状況を打開するためには、この原子力関係経費の見積もり等の原子力委員会の取組が、政府部内に原子力の研究開発の重要性について訴える力となるよう取組をお願いしたい。
○高速増殖炉サイクル技術開発
将来のエネルギー問題を解決する技術的選択肢を確保する観点から、高速増殖炉サイクルの実用化を目指した技術開発を重視し、実用化に向け戦略的な開発を行っていく。そのために、以下の2つのプロジェクトを中心に効率的な技術開発を行う。
・高速増殖原型炉「もんじゅ」
平成14年度概算要求額調整中(平成13年度予算額106億円)
「もんじゅ」については、平成12年の原子力長期計画を踏まえ、高速増殖炉サイクル技術の研究開発の場の中核として位置付け、発電プラントとしての信頼性の実証とナトリウム取扱技術の確立という所期の目的を達成するべく、その準備を進める。本年6月に地元の了解を得て、現在、ナトリウム漏えい対策等に係る改造工事を行うための、原子炉設置変更許可申請を経済産業省原子力安全・保安院に提出したところ。平成14年度予算については、改造工事を行うための所要の予算を確保するよう調整中。
・高速増殖炉サイクルの実用化に向けた研究開発(実用化戦略調査研究等)
平成14年度概算要求額調整中(平成13年度予算額 38億円)
高速増殖炉サイクルの実用化に当たっては、「もんじゅ」等、高速増殖炉の開発のみではなく、炉・再処理・燃料製造の整合性のとれた開発を行うことが重要である。そのため、サイクル機構が行ってきた実用化戦略調査研究を中心に、効率的かつ戦略的に一層強力に推進していくために、高速増殖炉サイクルの実用化に向けた枠組み、体制の整備を検討中。
○核融合研究開発
・ITER計画への対応
平成14年度概算要求額調整中(平成13年度予算額 30億円)
ITER共同実施の準備を行うために実施される調整技術活動(CTA)に参加し、提案された特定のサイト条件に基づいたサイト依存設計等を行う。CTAは平成14年末までに成果を取りまとめる予定。
○加速器研究開発
・大強度陽子加速器、RIビームファクトリーの建設
平成14年度概算要求額調整中(平成13年度予算額 97億円)
世界最高のレベルのビーム強度により、原子核・素粒子物理学、生命科学、物質・材料科学、エネルギー工学など広範な研究分野を推進する大強度陽子加速器及び全元素の不安定原子核(RI)を創製し、世界最高のエネルギー、最大の強度でビームを利用し、幅広い研究を推進するRIビームファクトリーの建設を着実に推進するよう調整中。
○次世代の革新的原子力技術
・国際的取組を視野に入れた次世代の革新的原子力技術開発
平成14年度概算要求額調整中(平成13年度予算額 4億円)
原子力長計及び科学技術基本計画において、高い安全性、経済性等を有する革新的原子炉等の原子力技術が期待されている。また米国においても第4世代原子力システム開発に係る取組が加速しており、これらを視野に入れた革新的原子力技術開発を行うことを検討。
○大学における基礎研究
平成14年度概算要求額調整中(平成13年度予算額 30億円)
大学における原子力研究は、個々の研究者の自由な発想を生かしながら、学問的体系化を図りつつ進められている。これらの研究は学生の教育にも反映され、優れた研究者や技術者の養成に役立っており、引き続き推進すべく調整中。
○原子力安全・防災対策
・緊急被ばく医療体制の整備
平成14年度概算要求額調整中(平成13年度予算額 4億円)
専門的入院診療を行う三次被ばく医療体制については、これまで唯一の三次被ばく医療機関であった放射線医学総合研究所が中心となっていたが、原子力安全委員会の報告書に基づき、三次被ばく医療機関の拡充を図るとともに、人材の育成、関連データベースの作成等、三次被ばく医療機関の体制の整備を図り、緊急被ばく医療体制の整備を進めるよう調整中。
○保障措置
・六ヶ所再処理施設をはじめとする保障措置体制の整備等
平成14年度概算要求額調整中(平成13年度予算額 20億円)
六ヶ所再処理施設の平成15年度のウラン試験の開始に向けて、六ヶ所保障措置分析所および六ヶ所保障措置センター等における査察・分析機器の整備や所要の人員の確保が極めて重要となっている。
また、追加議定書に基づく「補完アクセス」等増大する保障措置業務に適切に対応するため、査察代行の拡大等が必要である。
○原子力教育
平成14年度概算要求額調整中(平成13年度予算額 5億円)
国民の原子力に関する理解を深めるためには、学校教育の場において、適切な形で学習を進めることが重要である。このため、教育現場においてエネルギーや放射線に関する正確な知識を提供し、生徒自らが考えていく力をつけることができるような環境の整備を推進することを検討中。
○放射性廃棄物対策
・所管研究機関の放射性廃棄物対策技術開発
所管研究機関から生じる放射性廃棄物及び所管施設の廃止に伴い発生する放射性廃棄物について、その廃止計画及び処理、それに係る技術開発等を進めていくことを検討中。
さらに、RI・研究所等廃棄物の処分システムの検討を継続し、処分に向けたデータベースの整備を進める。