第26回原子力委員会定例会議議事録(案)

1.日 時2001年6月19日(火)10:30〜12:10
2.場 所委員会会議室
3.出席者
藤家委員長、遠藤委員、木元委員、竹内委員、森嶌委員
内閣府
興政策統括官(科学技術政策担当)
 青山参事官(原子力担当)
 渡邉参事官(重点分野担当)
 西村参事官(総合戦略担当)
 倉持参事官(資源配分担当)
文部科学省
 素川審議官(研究開発担当)
研究開発局 核融合開発室
 中村室長
外務省 総合外交政策局 科学原子力課
 松林課長補佐
 中村課長補佐

4.議 題
(1)総合科学技術会議重点分野推進戦略エネルギープロジェクトの検討状況について
(2)総合科学技術会議重点分野推進戦略専門調査会の検討状況について
(3)ITER政府間協議に関する四極会合の概要について
(4)ドイツの原子力コンセンサス合意書への署名について
(5)アジア・太平洋地域における核不拡散強化のための国際会議について
(6)その他

5.配布資料
資料1−1 エネルギー分野推進戦略(案)の概要
資料2−1 総合科学技術会議の組織図
資料2−2 重点分野推進戦略専門調査会名簿
資料2−3 重点分野推進戦略専門調査会プロジェクト担当者名簿
資料2−4 分野別推進戦略の調査・検討状況
資料2−5 平成14年度における科学技術政策の重点化の考え方構成(案)
資料3 ITER政府間協議に関する四極会合の概要
資料4 ドイツの原子力コンセンサス合意書への署名について
資料5 アジア・太平洋地域における核不拡散強化のための国際会議
資料6 谷口富裕原子力発電技術機構専務理事の国際原子力機関(IAEA)事務次長内定
資料7 第25回原子力委員会定例会議議事録(案)

6.審議事項
 (1)総合科学技術会議重点分野推進戦略エネルギープロジェクトの検討状況について
 (2)総合科学技術会議重点分野推進戦略専門調査会の検討状況について
 標記の件について、渡邉参事官より資料1に基づき、倉持参事官より資料2−1〜2−5に基づき説明があり、以下のとおり質疑応答があった。
(竹内委員)自分は、教育問題に関心を持っている。今、学生から見ると、原子力の魅力が減りつつあるのではないか。大学からいきなり原子力に触れさせるのではなく、普段から触れられるようにすることが必要である。
(渡邉参事官)そういうことも重要と考える。
(遠藤委員)12月を目処に更に肉付けをしていくと説明されたが、12月以降はどのような予定になるのか。
(渡邉参事官)12月までにエネルギー分野の推進戦略を作成し、状況に応じて、その戦略をアップ・トゥー・デートしていく。更に、5年ごとの科学技術基本計画の見直しに併せて、見直されることとなる。
(遠藤委員)この推進戦略がガイドラインとなり、各行政庁が予算化するという理解でよいか。
(渡邉参事官)そうである。
(木元委員)重点分野は、ライフサイエンス、情報通信、環境、ナノテクノロジー・材料となっているが、この4分野が重点分野とされた理由はなにか。
(倉持参事官)今年の3月に閣議決定された科学技術基本計画で、この4分野が重点分野として打ち出された。これは、これからの5年間において、各国の技術水準や今後の経済の活性化を睨んで、何を重点とすべきかという議論を経て打ち出されたものである。それ以降、科学技術基本計画で示されたエネルギーなどそれぞれの分野毎に、推進戦略を作っている。もちろん科学技術分野は広いので、4分野を重点化しつつも、それ以外でも国家的に必要なものは領域的に押さえていくというのが科学技術基本計画の考え方である。
(森嶌委員)エネルギー分野推進戦略(案)で、当面重点とすべき項目という記述があるが、ここを説明してほしい。
(渡邉参事官)従来から進めているものについては、厳正な評価を踏まえながら重点化していく。その中から、力点を置いて取り組まなければならない4項目を抜き出した。
(森嶌委員)原子力エネルギー技術のうち、重点を置いて推進するべきとされている項目は、「原子力安全」のための研究となっているが、新しいタイプの原子炉や核融合はどこに属するのか。
(渡邉参事官)新しいタイプの原子炉などは従来から進めているものに属し、厳正な評価を行いながら進める。従来から進めているものと、特に重点を置いて推進する4項目とで、どちらが重要ということはない。
(森嶌委員)「当面重点とすべき項目」の中で、「特に以下の4項目に重点を置いて推進」と書いてあると、その4項目を当面行うという意味に受けとってしまう。
(渡邉参事官)4項目だけを行うということではない。
(藤家委員長)先端科学技術としての原子力の位置付けをどうするのか、エネルギー安定供給の重要性を認識した上で、原子力をどう見るのかということが、ポイントとなっていると思う。日本の特殊性を踏まえると、エネルギー安定供給は、重点化以前の非常に大切な問題である。それが、「当面重点とすべき項目」に見えない。今説明されたことを明確に書かないと、いつまでも疑問として残ってしまう。
(渡邉参事官)「特に重点をおいて推進」は、今まであまりやられていない項目について、今後重点を置くよう、注意喚起するという趣旨である。
(木元委員)国民生活を維持していく上で重要なものを重点的に行ってほしい、というのが一般的な考え方である。しかし、この資料に書かれている科学技術は、夢のようなことばかりと受け取られる。例えば、水素社会構築が、あたかもすぐに実現するかのように書かれているが、現実との乖離を感じてしまう。総合科学技術会議で議論されているのは、夢のようなことであって、現実に国民が望むことと差があるのではないか、と感じる。その乖離をどのように埋めていくのかが課題ではないか。
(渡邉参事官)もちろん、現に必要とされていることに対する積極的な対応は重要である。他方で、科学技術においては、大きな時間軸で将来を見据えながら、何が必要なのかという発想も重要である。
(木元委員)それは十分理解した上で申し上げている。水素社会構築や燃料電池システムなどが、唐突に出てくることが理解できない。
(渡邉参事官)なぜ個別に挙げたのかは、説明の時間が限られているので、全て説明できないが、交通システムにおいて実現された場合に、環境負荷が著しく低減できるという可能性がある。
(木元委員)そういう説明が最初に書かれていれば理解できるが、そうではないと、一般的には理解できないので留意してほしい。
(遠藤委員)「当面重点とすべき項目」は、整理されていないという印象である。
(森嶌委員)この書き方では、今まで説明された意味に取れない。4項目がプライオリティであるという意味に取れる。外から見て分かるようにしなくてはならない。
(興統括官)今までの議論も踏まえて、整理したいと思う。従来から進めているものは、厳正な評価を踏まえて重点化を図る。「特に重点を置いて推進」は、今まで投資計画が十分でなかったが、技術開発的には核になるものということである。
(藤家委員長)従来から進めているものの存在を認めた上で、その評価を行い、着実かつ効率的に進めていくということは必要である。自らも評価を行うが、外部からの評価を受けることも大事だと思う。資料を見て、この表現が一人歩きする可能性があると感じたので、わかりやすい資料に整理して欲しい。
(木元先生)エネルギー分野が、国の存立にとって基盤的であり、国として取り組むことが不可欠な領域であれば、重点4分野の上に存在すべきと考えられる。そうでないと、エネルギー分野にプライオリティがないように見えてしまう。
(興統括官)これから議論していくことが大切であるが、エネルギー分野やフロンティア分野の科学技術に対する投資金額は大きい。今の大きな流れはメリハリをつけるということであり、エネルギーを含むその他の4分野については国として取り組むことが不可欠であるが、これから将来を考えると、新しい分野に取り組んでいくことが大切であるというのが一つの基調だと考えている。
(木元委員)まずエネルギーを含む4分野が重要で、新たな流れや国民のニーズから、今後5年間重点を置くのはライフサイエンス分野などである、という説明であれば、理解できる。
(竹内委員)エネルギー分野は、ナショナルセキュリティに関わるものである。ナショナルセキュリティは一番大事ではないか。この資料を見て、国民は勘違いするのではないか。
(藤家委員長)推進戦略の重要性は、原子力も同じ道を経てきたので、よくわかっている。誰が見ても誤解の生じない表現を考えてほしい。
(興統括官)総合科学技術会議と原子力委員会の相互理解が図れるよう、引き続き努めていきたい。
(森嶌委員)例えば、重点4分野は戦略的4分野、その他4分野は基盤的4分野という表現などもあるのではないか。
(倉持参事官)科学技術は大事であるが、メリハリを付けるように、と総理が言われている。戦略性を踏まえて、どこに焦点を当てるかを考えないと、今までどおり薄く広くということになってしまう。そうしたことを考えながら、作業を進めているところである。
(木元委員)国民が納得できるものにしてほしい。
(森嶌委員)これから科学技術を推進していくのにあたっては、国民の理解、アカウンタビリティが必要である。
(竹内委員)重点4分野と、基盤的でオン・ゴーイングなもののメリハリを付けるというのは、戦略的にはわかるが、エネルギーセキュリティと比較してメリハリを付けるというのはいかがなものか。
(倉持参事官)エネルギー分野を含め大きな投資がなされている。将来の経済の活性化などの観点から見ると大事な分野で立ち後れているものがある。今まで行われてきたものを止めるということではなく、今後どのような戦略性を持って力を入れていくのかを考えていかなければならない。
(藤家委員長)日本の資源小国、国土狭隘などの特殊性の観点は、基本的な考え方に入っているか。
(倉持参事官)国の持続的発展や、国際的にふさわしい国の姿を実現するため、と入っている。
(藤家委員長)いろいろな発言があったが、守旧派が何かを守ろうとしているのでは決してないことを理解してほしい。

 (3)ITER政府間協議に関する四極会合の概要について
標記の件について、素川審議官より資料3に基づき説明があり、以下のとおり質疑応答があった。
(遠藤委員)EUのサイト提案は、どのようなスケジュールになる見込みか。フランスのジョスパン首相がフランスへの誘致を決めた後、EUに話を持っていくことになると思うが、6月末のEUの研究大臣会合に間に合わないことは明らかである。次の会合は秋であり、EUのサイト提案は、それまで出ないということか。
(素川審議官)フランスへのサイト誘致は、フランスが追加の財源を負担して、EU内の他国の負担増にはつながらないようにすれば、各国からの反対はないと考えられる。通常、6月の次は11月にEU研究大臣会合が行われるが、その間に会合が開かれるかどうかまでは聞き出すことができなかった。
(遠藤委員)政府間協議は、EUの態度が明確になるまで始まらないのか。
(素川審議官)政府間協議については、EUは明確に2つに分けている。法的な枠組みを作るものと資金面での議論が伴うものである。前者については、EUは昨年の暮れからマンデートを得ており、いつでも開始できる状況になっているが、後者の資金面での議論が伴うものは未だ開始できない、としている。

 (4)ドイツの原子力コンセンサス合意書への署名について
 標記の件について、松林課長補佐より資料4に基づき説明があり、以下のとおり質疑応答があった。
(遠藤委員)政権を取れば合意は撤回する、とキリスト教民主同盟は言っている。また、この合意に関して、電力会社は無言の行を行っていると聞いている。電力会社が合意書に署名した事実をどう見ればよいのか。
(松林補佐)署名式の中で、「エネルギー資源の有限性などを考慮した場合、合意文書に署名はするが、賛成はしない。」と電力会社社長から発言があったことが電力会社の底意を端的に物語っていると考えるが、国内世論の動向もあるので、今後の動きを予断するのは難しい。しかし、撤回となれば、電力会社は何らかの動きを行うこともあり得よう。また、原子力法が改正されるか否かで、撤回の柔軟性も影響を受ける。
(木元委員)ドイツでは電気料金が上がるなど、市民レベルでいろいろなことが起こっている。その結果、やはり原子力が必要なのではないか、という動きが出てきているのも事実である。興味を持って今後の動きを見ていきたい。

 (5)アジア・太平洋地域における核不拡散強化のための国際会議について
 標記の件について、中村課長補佐より資料5に基づき説明があった。

 (6)その他