平成14年度における科学技術政策の重点化の考え方 構成(案)


1.基本的考え方

 21世紀の我が国の立国理念として、世界最高水準の科学技術創造立国の実現を目指し、社会、経済を巡る課題を解決するとともに、国の持続的発展や国際的にふさわしい国の姿を実現するため、科学技術政策の重点化を行い、科学技術基本計画の着実な実行を図る。

 一方、我が国の財政状況に鑑み、科学技術の効果的な推進が不可欠であり、重点化とあいまって、効率化を図り、必要な整理、合理化、削減を行う。


2.重点化すべき事項の考え方

(1)科学技術の戦略的重点化

 重点分野は、今後、国家的・社会的ニーズが高い、ライフサイエンス、情報通信、環境、ナノテクノロジー・材料の4分野とする。重点4分野とその他の分野とのメリハリとともに、各分野内で重点的に推進すべき事項を明確化する。

 その際、未来を切り拓く質の高い基礎研究への十分な配慮と、萌芽的な分野融合領域への先見的な投資について重視する。

 重点的に推進すべき事項の絞込みに当たっては、以下の取り組みが必要である。

  • 政策の明確な実現目標の設定
  • 研究成果の社会・産業への迅速な還元
  • 府省にまたがる事項が増えていることに鑑み、明確な戦略の下に効果的・効率的な推進を図れるように統合された府省横断的な取組
  • 知的財産権・国際標準の取得方策の明確化
  • 計測、解析、評価技術、データベース等の研究基盤の整備

【各分野毎に重点的に推進すべき事項を具体的に記述する】

(2)科学技術システムの改革等

 優れた研究成果を生み出し活用できる、世界最高水準の研究開発環境を構築するため、研究現場での競争原理の発揮、公正かつ透明性の高い評価の徹底、人材の流動性向上等、科学技術システムの改革を行う。

①競争的資金の拡充
 13年度からの5年間で倍増することを目指して、重点的に拡充する。
 その際、厳正な評価に基づく配分、若手研究者への配分を重視するとともに、制度の改革を徹底する。

②大学等の施設の整備
 研究開発の中核たる大学等の施設は、先進諸国に比べて著しく見劣りする状況であるが、21世紀にふさわしい社会資本であり、優先度の高い施設に重点を置き、施設費の予算分類を変えて、公共事業関係費に位置づけることを検討する。

③産学官連携の推進
 産学官連携の新事業創出を通じた経済活性化への貢献の重要性に鑑み、規制緩和、制度改革等を行い、産学官連携を強力に推進する。
 産学官連携のこれまでの施策を評価し、産業界と大学等との密接な連携の形成、大学等における知的財産の管理のあり方、TLOの機能活性化について基本的な方針を打ち出す。

ア)産学官連携を推進するため、産学官共同研究を促し、研究者が柔軟かつ自由度高く活躍できるようにする。そのため、国立大学等の独立行政法人化に際しては、民間との交流、兼業、能力に見合った処遇等が自由にできるよう、非公務員型も視野に入れつつ、改革の方向を打ち出す。

イ)私立大学での研究開発の促進のため、国の助成の強化を検討するとともに、私立大学への民間資金の導入を促進する観点から、民間からの委託研究費に対する減税措置等について検討する。

ウ)技術シーズに根ざして付加価値の高い、大学や国公立研究機関、特殊法人等から発するベンチャーの育成が緊要であり、規制緩和、制度改革等を協力に進める。

④地域科学技術の振興
 地域での中小企業・ベンチャー企業の育成や産学官連携を推進し、技術革新が連続的に起こる付加価値の高い製品を生みだしていく21世紀型の新産業の創成を促進する。


3.整理、合理化、削減を図る事項に係る考え方

 効果的・効率的で質の高い科学技術行政を実現するとともに、国民的視点に立った成果重視の行政へ転換を図ることが求められている情勢を考慮すると、科学技術に関する予算の拡充に当たっては、必要な施策に重点化し、整理、合理化、削減に努める。
 したがって、従来からの政策・施策にあっては、社会経済情勢の変化により改善や見直しが必要とされるものは積極的に見直して、重点4分野に含まれる事項や新規の施策であっても、厳にその必要性等を見極める。

(検討の視点)
必要性:国にとって必要であり、国が関与しなければ実施ができないものか。
妥当性:目的を実現するための計画や手段・体制が適切か。
有効性:期待される成果を、期間中に得られる見込みがあるのか。
効率性:期待される成果は、投資に見合うものか。
優先性:上記観点からの評価を踏まえ、他の政策よりも優先的に実施すべきか。


4.重点化及び整理、合理化、削減の進め方

 以上の述べた重点化及び整理、合理化、削減について、具体的には各府省の概算要求作業及び予算編成の中で検討する。
 また、その考え方を踏まえた予算編成が行われるよう、必要に応じて予算編成過程で財政当局との連携を図る。


5.国民への説明

 重点化によって実現される国民生活の姿等については、以下の視点から国民に分かりやすい説明を行う。
○産業競争力の強化と経済の活性化
○健康で質の高い生活
○地球環境の保全と循環型社会の実現   等