第24回原子力委員会定例会議議事録(案)

1.日 時2001年6月5日(火)10:30〜12:00
2.場 所委員会会議室
3.出席者
藤家委員長、遠藤委員、木元委員、竹内委員
内閣府
 興政策統括官(科学技術政策担当)
 浦嶋審議官
 青山参事官(原子力担当)
文部科学省
 素川審議官
研究開発局核融合開発室
 中村室長
電気事業連合会
 海部事務局長
中部電力株式会社
営業部料金企画グループ
 大野課長

4.議 題
(1)カリフォルニア州の電力危機について
(2)ITER計画について
(3)今後の国民理解・市民参加に関する取組みについて
(4)その他

5.配布資料
資料1 カリフォルニア州電力危機現地調査報告書
資料2 核融合研究開発推進に当たっての原子力委員会の考え方
資料3 原子力政策に対する国民理解・市民参加に関する今後の取組みについて(検討用資料)
資料4−1 第22回原子力委員会臨時会議議事録(案)
資料4−2 第23回原子力委員会定例会議議事録(案)

6.審議事項
 (1)カリフォルニア州の電力危機について
 標記の件について、大野課長より資料1に基づき説明があり、以下のとおり質疑応答があった。
(木元委員)電力自由化に対する現地の声・評価を聞きたい。
(大野課長)全体を通して見ると、自由化が良くなかったから元に戻せばいいという意見はなかった。自由経済の国ということもあり、少々価格が変動するのは当たり前と日本に比べて受容度が高い。ただし、連邦と州の規制が重なり、責任の所在が明確ではないという声はある。また、カリフォルニアでは、自由化までにもう少し制度を考える時間が必要だったのではという声もある。
(木元委員)自由化すれば価格が安くなるということだったが、クレームは出なかったのか。
(大野課長)電気が止められることに対してはクレームが出ていたが、価格は、ほとんど固定化されていたこともあり、それほどクレームは出なかったようである。
(藤家委員長)停電が起こったことと自由化との関連性はあるのか
(海部局長)需要、供給のアンバランスの発生とカリフォルニアの制度問題との関連性は大いにあったと考える。
(藤家委員長)カリフォルニアは、原子力を含むエネルギーに対して独自の立場を取ってきた。
(海部局長)10年間にわたり、新規発電所建設がなかったことが大きな問題だと思う。電力会社は自由化の準備が始まるとストランディドコストの発生を恐れ、投資回収が長期に渡ることを回避しようとする。
(竹内委員)ガスタービンで今後は供給力を確保することとなるであろうが、電源の多様化は、政府がインセンティブを与えなければ進まないのではないか。
(海部局長)アメリカの新しいエネルギー政策の策定は、カリフォルニアの電力危機がきっかけになったのではないかと思う。カリフォルニアでは発電が切り離されたが、発送電一貫体制でないと、安定供給に対する責任の所在があいまいになるのでないかと思う。
(木元委員)今回、パーパ法はどのような動きをもたらしたのか。
(大野課長)自由化後もパーパ法で新エネルギーを高く買い取りされており、電力会社の財政負担となっていた。電力会社の経営が破綻し、資金供給が止まって風力発電など稼動できなくなったと聞いている。
(藤家委員長)ブッシュ政権の対応には非常に関心を持って見ている。
(海部局長)ブッシュ政権の原子力政策に対する変化には、我々も関心を持っている。昨年3月21日に新たな自由化が始まり、3年後に検証することになっているが、その時には、原子力のバックエンドも含め、原子力と自由化の議論が当然なされるものと思っている。

(2)ITER計画について
標記の件について、青山参事官より資料2に基づき説明があり、以下のとおり委員からの意見があった後、国際熱核融合実験炉(ITER)計画の推進について決定が行われた。
(木元委員)私が核融合を教えてもらったのは茅誠司先生だった。その時、あと30年くらいでできると言われていたがなかなかできない。ITERは一部の人だけが分かっていても、一般の方は、核融合は、もう出来ていたのではという意見がある。時間がかかりすぎていることに対しても懸念がある。しかもお金をかなりかけている。原子力委員会として常に、なぜ核融合エネルギー開発が必要なのか言い続け、語り続け、説明し続けていかなければいけない。これから、スタートである。
(竹内委員)エネルギーセキュリティの問題として21世紀後半を担うもので、日本として先が読めるかと考えた場合に、大きな保険的な技術開発となる。世代間にまたがる大きな技術開発で、人類が共有する、若い人にとって光り輝く夢のテーマと考える。国内誘致した場合には、この盛り上がりも違ってくるし、製造ノウハウ取得や日本版の基準ができることで、将来日本が飛躍する舞台ができる。国内誘致する場合は応分の費用負担があるが、日本の将来のことを考えると国内誘致すると言う方向でよいと考える。
(遠藤委員)国際協力のプロジェクトが成立する条件は、大きなプロジェクトで大きな資金が必要であること、軍事色がうすいこと、実用化にかなり時間がかかることである。ITERは国際協力プロジェクトの3つの条件に合致していて、国際協力で進めていくことに適している。参加の形態としては、他の一員と同じように参加するか、日本に誘致して、より積極的な主導権を握った参加ということがある。技術の継承などもそのとおりだと思う。今、日本が経済的に困っていると言っても、日本は巨大な経済力を持っている。日本がこのようなプロジェクトのリーダーシップを取ったことは一度もない。1、2の特殊な例を除いては、国際機関の一つも日本がホストカントリーになり得ていない。他の巨大プロジェクトを見渡しても、宇宙は宇宙基地建設などアメリカが圧倒しているし、加速器はヨーロッパがリーダーシップを取っている。日本の技術力の高さ、優れている研究陣の厚さからも、核融合について主導権を取るべきである。したがって日本に誘致をすべしという意見である。ITER計画の推進によって、他の研究に影響を与えるのは困る。ITERの金額相当から推察すると、ゼロサムゲームでなくプラスサムゲームで、マネージャブルな範囲で対応可能ではないかと考える。また、誘致は極めて難しいということを認識して、外交機構を挙げたオールジャパンで取り組まなければいけない。原子力委員会も協力していく。
(藤家委員長)なぜ核融合開発が必要なのかについては、木元委員が茅誠司先生から聞いた時に印象を受けたのは、地上に太陽をという言葉だったと思う。核融合が、エネルギー開発に対して非常なパッションを与えたのが1960年代であった。しかし、その後、これが技術に及ぼす波及効果についても随分議論されてきた。同時に自然の探求ということから、プラズマで宇宙を説明する時代が来るだろうと考える人もいる。次に、核融合のエネルギーの特徴が書いてあり、安全性の特徴も言われている。明らかに核分裂と違った、核融合システムとしての安全性を持っているし、そのポテンシャルも高い。しかし、装置にする場合にどこに配慮すればよいか、核分裂と違った配慮が必要である。今、革新炉は基本的なポテンシャルを狙った安全なものを作ろうとしているので、これと話が噛み合っている。一方、原子力は巨大技術を扱うという宿命を持っている。今回の長計でも全体像と長期展望をキャッチフレーズでまとめたように、原子力の持っている幅の広がりと開発にかなり長期間を要する。したがって、ある特定のプロジェクトに対して専心するだけでは問題が終わらない。基礎基盤の充実とそのシステムインテグレーションがうまくバランスして成り立っていかなければならない。これはなにをイメージしているかと言うと、基礎基盤を担う大学研究機関とITERを行うところが上手く連携しながらやっていかなければいけない。どちらかをおろそかにしたのでは話が進まない。先程、遠藤委員が資源配分、予算の面から言われたが、これは核融合会議の最後の段階で議論になったことも含めて、そのような認識を原子力委員会が持っているということを社会の人、核融合コミュニティの人に理解していただきたい。時間がかかったが、段階を踏んでやってきた。到達した結論は、ITERは実験炉として十分意味を持っているということである。設置国になる意義は、遠藤委員からあったので言わないが、日本が科学技術創造立国を目指しているということを原子力委員会も十分に認識しており、ITERはその先端を走るものとして認識しておく必要がある。更に、日本はこれからも原子力先進国と生きていくことも事実である。世界がこれから対応していく、あるいは手にする巨大技術の中で、日本が引き受けるものも出てくる。その中でエネルギー関連の研究開発というのは国民の合意も得やすいという観点からも、ITERの設置国となる意味があるのではないか。財源確保の意見は何度かあったが、基礎基盤を担っているのは、人材を供給できる大学がかなりのウエートを占めている。この長い研究を行うには、常に優秀な人材が提供されることが不可欠であると考える。そのようなことから、核融合研究開発全体としてのバランスある発展を望んでいるのが原子力委員会の基本的な姿勢である。最後に、これから行われる研究開発には、当然のことながらきっちりと評価を行っていくことが必要である。
(木元委員)3年前に言ったが、ITERを誘致したいと手を挙げている地域で放射性廃棄物に関しての説明が不十分であったということを大変大きく取り上げられた。今回このような見解で、廃棄物の処理処分を具体的にどうするかを踏まえ、誘致先の結果を出すというのが重要だと思う。
(藤家委員長)最後に付言しておきたいが、遠藤委員が先程、マネージャブルという言葉を使った。日本の財政事情は逼迫しており、楽観できる状態ではない。そのようなことからもITER懇談会は3年延ばしてここまできた。したがって、日本の財政事情も十分踏まえながらも、このITER計画の持っている意味合い、核融合開発の持っている意味合いを考えて、マネージャブルという一つの判断に達した。何回かの議論を踏んで、原子力委員の見解が十分に表現されたので、これをまとめた決定をしたい。一番関係の深いのは文部科学省であるが意見はないか。
(素川審議官)原子力委員会の決定を受けて、必要な作業を進めていく。

(3)今後の国民理解・市民参加に関する取組みについて
 標記の件について、青山参事官より資料3−1に基づき説明があり、以下のとおり質疑応答があった。
(藤家委員長)各委員から今の状況について説明いただきたい。
(遠藤委員)原子力損害賠償制度については、日本が条約に入るかどうかの態度を早く決めなくてはいけないので、検討会を立ち上げている。この結 果は国際関係専門部会を経て、原子力委員会へ報告する。
(竹内委員)教育関係専門部会は、市民参加懇談会の教育関係者の意見を入れながら進めていく。原子力発電・サイクル専門部会は、人選整い次第、 キックオフミーティングを行う。
(木元委員)市民参加懇談会は、原子力を理解していくためのタウンミーティングと言ってきたが、幅広く恒常的に設立していくためにはどうすればよいかということでこのような形にした。基本的な機能は、今までの懇談会や円卓会議では、どうしても知識を持っている専門家が相手を説得し理解してもらうというワンウェイ的な要素が強かった。そうではなく、先日の刈羽村の状況を見てもなぜあのような結果が起きたのか、どう考えていたのか、あなたは何に対して不安と思っているのかということを同じテーブルの上で話し合って、こちらが勉強させていただくということが土台だと思う。そのような反省や分析を行いながら、原子力反対の立場を理解して、どのようなことをすれば認めていただけるのか。そのようなことをフラットに原点から立ち上げていく姿勢がないといけないと感じている。この市民参加懇談会は円卓会議でも話が出ているが、恒常的に設置し、常に開かれた懇談会として窓口を設け、いつでも疑問があれば対応できれば、話を深く掘り下げられる。懇談会のメンバーは、中立的立場とあるが、相手がなぜ反対するのか賛成するのかを自分なりに冷静に把握できる人、現実を踏まえた上で常識的な判断をする人と考えてほしい。原子力に関する情報発信・受信、教育のあり方は、刈羽村の例をあげると、情報の発信の仕方が悪かったのかなど、なぜこのような結果になったのかを、いろいろと検討していく必要があるので、マスメディアの人とも対話していきたい。教育のあり方等では、教育関係専門部会の協力を得て、教育に関し幅広く対話していくので、市民対話懇談会の中に入れて立ち上げたい。市民参加懇談会ということで、反対派の方からどのような懇談会なのかというアクセスもあり、既にスタートしている感じだ。
(藤家委員長)私の関連した専門部会はほとんど人選が終了している。試験研究検討会は既に会合を始めている。アメリカのブッシュ政権のエネルギー政策、あるいはそれ以前から第4世代原子炉がDOE、NEAで進んでいるなど、革新炉の研究開発に対する世界的な盛り上がりがある中で、日本がどうやってこれに対応するのか、議論するための会合も早く進めていく。これらの結果は市民参加懇談会へ報告していきたい。
(興統括官)第一回プルサーマル連絡協議会で、市民参加懇談会について、報告した。副長官からは、全体の流れの中で、原子力施設を持つ地域住民の方だけではなく、国民に向かって説明していくことが必要であり、関係省庁も同様の問題について意志疎通を図って、協力していくようにとあった。

(4)その他