第22回原子力委員会臨時会議議事録(案)

1.日 時2001年5月25日(金)10:00〜11:20
2.場 所委員会会議室
3.出席者
藤家委員長、遠藤委員、木元委員、竹内委員、森嶌委員
内閣府
 興政策統括官(科学技術政策担当)
 青山参事官(原子力担当)
外務省総合外交政策局科学原子力課
 加藤課長
米国エネルギー省(DOE)
 ジュリア・ビスコンティ東京代表

4.議 題
(1)ブッシュ政権のエネルギー政策について
(2)その他

5.配布資料
資料1−1 米国の国家エネルギー政策について
資料1−2 HIGHLIGHTS OF THE BUSH ENERGY PLAN AND A NEW FOCUS ON NUCLEAR POWER
資料1−3 Members of the National Energy Policy Development Group
資料1−4 National Energy Policy - Summary of Recommendations

6.審議事項
 (1)ブッシュ政権のエネルギー政策について
(藤家委員長)5月17日のブッシュ政権のエネルギー政策発表は、日本を始め世界に衝撃を与えたばかりだが、私も大変関心を持っている。最近のアメリカ、IEA、フランス、フィンランドなどから伝えられてくる原子力の動向は、新しい原子力利用の到来を告げているように感じられる。原子力委員会は、これまでも我が国の原子力政策を考えるにあたって、国際的動向、国際的約束、国際協力の重要性について考慮してきた。これまでアメリカとの協力関係を大事にしてきた。最近のジェネレーション4やTOPSにも多くのメンバーを参加させてきた。その中で、本日、米国エネルギー省ジュリア・ビスコンティ東京代表をお迎えし、ブッシュ政権のエネルギー政策の中身を聞けることは、大変喜ばしいことである。

 引き続き、加藤課長及び米国エネルギー省ジュリア・ビスコンティ東京代表より資料1に基づき説明があり、以下の通り、委員の意見表明及び質疑応答があった。
(遠藤委員)ブッシュ政権のエネルギー政策については、賛成、同感できる。しかし、2002年のDOE予算を分析すると、軍事部門は増えているが、非軍事部門は減っている。政策の方向と少し食い違いがあるように思える。この辺についてはどうか。
もう一つは、再処理について、1978年のNNPAで再処理を行わないといっているが、今回再処理について検討を始めるに当たって現在の法律の中で対応できるのか。また、どのように考えているのか。もう一つは、1978年のNNPAの再処理についての対外方針についてどのように考えているのか。なお、プライスアンダーソン法の延長は希望する。また、同時に条約の加盟も希望したい。
(ビスコンティ)まず予算についてのご指摘はその通りであり、(原子力研究分野での)DOE予算の削減が見込まれている。しかしそれは原子力研究分野だけが対象ではなく、環境保全・再生可能エネルギー分野を始めとする他の分野についても削減が見込まれている。
次に、本政策案には規制の合理化のように、DOEの予算に影響を与えないものも含まれている。三点目として、本政策案が提出されDOEは政策案の検討・優先項目の再構築ができるようになった。2002年度予算請求では、第四世代炉開発計画のように最も重要な原子力研究を引き続き遂行することができるし、2003年度の予算において調整することも可能である。本政策案が提出されたことで、優先課題を検討しながら実行してゆく段階にある。2002年度予算は需要な案件を進めていくことができるものと考えております。
再処理問題について、本政策案の翻訳を試みようとは思いませんが、政策案で使われている“検討する「consider」”及び“再検討する「re-examine」”という文言がキーワードであると思う。また、本政策案によって導き出される結果について話すことは少々時期尚早と思う。まず問題点についての検討がなされる。本政策案で注目していることは長期の研究開発であり、検討が進めば不拡散・保障措置が検討されることになると思われる。われわれの不拡散政策へのコミットメントはゆるぎないものであるが、米国がこれまで見てこなかった新しい物事に目を向け始めたことは明らかである。繰り返しになるが、本件についてお話をするには少し早すぎる段階にあり、議論はまだ先にある他のステップを検討する前の第一ステップである。
賠償法規に関しては遠藤委員と今後様々な議論をしてゆきたい。
(木元委員)ブッシュ政権は、京都会議の約束をあまり守らないとうことで悪い印象を与えている。アメリカの国民もある程度それに対して反発している。CO2削減について非難の声があがっていることに対して、原子力を認めれば、そうした声に対処できるのではないか。だから、アメリカは推進するのだという見方がある。この政策が、京都会議のCO2削減に貢献できると考えているのではないか。
(ビスコンティ)大統領は環境問題を大変真剣に受け止めており、環境・消費者・経済を守るべく問題解決に取り組みたいと考えている。発展途上国の適用除外など様々な問題が注目されているが、これらの諸問題に関する閣僚レベルでの検討が始まっております。従って、(米国としての対応は)閣僚による検討とそのレポートに委ねるべきであると思う。本政策案における原子力発電の役割はより大きなものとなっている。原子力発電による(二酸化炭素)排出削減効果とその他の環境にやさしい対応は今後も進められていく。京都議定書問題については、現在作業中であり近い将来に公表されるであろう閣僚の検討結果に委ねたい。
(竹内委員)プルトニウムを分離すべきではないという強い意志から、2〜3ヶ月でこれほど大きく変わったのには、大変驚いている。この政策の変更にかかる期間はどのくらいと考えるか。
(ビスコンティ)本政策案が意図しているものについてお話するのは少々時期尚早と思われる。従って、今まさに進行中である議論に委ねたい。一点述べさせていただくならば、政策はビジョンであり法規の執行とは違うということである。本政策案は勧告を纏めたものであり、次のステップがどのようなものになるのかを解釈するにあたっては慎重にあたらねばならない。
(森嶌委員)先程、サンフランシスコ新聞が、このエネルギー政策を支持したと説明されたが、東海岸のメディアはどういう反応を示しているのか。また、一般国民には、この政策がどのように受け止められているのか。
(ビスコンティ)現在地域ごとの世論調査の数字を持っていないが、地域住民の世論調査の結果は、どの地域においても原子力発電への支持が高いものであった。米国内では大変多くの原子力関連の新聞記事が見受けられる。例として、ワシントンポスト誌は全面を使っての再処理に関する賛否両論の記事を載せている。現在エネルギーは米国で最も関心のある事項となっており、原子力発電は全米で大変関心を集めている。チェイニー副大統領の(原子力発電に関する)発言は説得力があり、力強く注目を集めている。原子力発電への関心はトレンドになっており、米国のエネルギー構成にどのように貢献できるか検討されるようになってきている。付け加えると、近年米国の原子力産業は将来を大変楽観視するようになってきている。彼らは“ビジョン2020”と呼ばれる計画案を作成し、5万MWの新たな原子力による発電量の増加を提言している。これは一基千MWの原子力発電所を仮定すると50基分に相当する。
DOEのエネルギー情報局(EIA)は年率1.8%の電気需要増加率を仮定した場合、40万MWの供給量の増加が必要であると予測している。さらに高い需要増加率を想定した場合、例えば2.5%の場合、新たに56万MWの供給量が必要になる。
このように、新たな需給関係には大変関心が高まってきている。
(藤家委員長)TMI事故から非常に時間が経ったと感じている。この数年、日米間でいろんな形で原子力の再活性化をめざす動きが活発になってきたことは事実である。それは、日本では、長期計画策定での議論であり、今回のブッシュ政策の中で国際協力の重要性、しかも日米の協力関係の重要性が指摘されたことは、好ましい状況の到来と考える。確かにまだ政策に至っていないにしても、再処理、高速炉あるいはガス炉の話は、ジェネレーション4の中で議論されている。日米二国間の協力の中にも、そういったものに近づくような努力もされていることも事実である。これからも原子力委員会は、日米協力を大事にしていきたいと思っている。

(2)その他