第21回原子力委員会定例会議議事録(案)

1.日 時2001年5月22日(火)10:30〜11:50
2.場 所委員会会議室
3.出席者
藤家委員長、遠藤委員、木元委員、竹内委員、森嶌委員
内閣府
 青山参事官(原子力担当)
経済産業省
 電力・ガス事業部
  電力市場整備課
  川本課長
 政策課 
  新川課長補佐
文部科学省
 研究開発局核融合開発室
  中村室長
 研究振興局量子放射線研究課
  木村課長補佐 

4.議 題
(1)カリフォルニア州におけるエネルギー事情に関する調査結果について
(2)原子力試験研究における研究評価の進め方について
(3)ITER計画について
(4)その他

5.配布資料
資料1−1 カリフォルニア州の電力危機について
資料1−2 海外諸国の電力改革の現状と制度的課題
資料2−1 原子力試験研究における研究評価の進め方について
資料2−2 評価基準について
資料3 第19回原子力委員会定例会議議事録(案)

1.審議事項
 (1)カリフォルニア州におけるエネルギー事情に関する調査結果ついて
 標記の件について、川本課長より資料1ー1に基づき説明があり、以下のとおり質疑応答があった。
(竹内委員)カリフォルニアでは投資がおこるしくみを作るということだが、以前からしくみはなかったのか。
(川本課長)しくみはあったが、他の州に比較して弱かったと考えている。
(竹内委員)SCEの送電網は州に買い取られたが、今後電力会社が自立するしくみになるのか。
(川本課長)事態が落ち着くまでは、州が関与していくことになる。
(遠藤委員)カリフォルニアは今後どのようにしていくのか。
(川本課長)当面はこの夏を乗り越えることを考えている。長期的にどのようなシステムにするかはまとまっていないようである。
(木元委員)規制緩和という切り口で、欧米が行っている自由化を日本でも導入するということで需給部会で議論してきた。島国である日本が、電力を安定的かつ安全に供給する場合にどうしたらよいかと考え、部分自由化ということになった。発電、送電、配電を分割しようという考えが根強くあるが、カリフォルニアの反省がアメリカでどのように受け止められているか。
(川本課長)他の州では投資がおこっている。アメリカ全体としては、自由化そのものが大きく間違っていたという議論があるわけではないと理解している。
(森嶌委員)資料4頁に教訓とあるが、我が国で乗り越える手だてはあるか。例えば、新エネは補助なしに投資が行われるか、原子力は電力会社以外が投資を行うか、環境規制の中で投資を抑えられるかなど、どこを自由化して、どこをしないかをしっかり事前にアセスメントして行わないといけない。
(川本課長)去年の3月に自由化がスタートし、3年後に検証する。カリフォルニアの教訓も含め、日本の実状を織り込んで行う。
(木元委員)環境問題、エネルギーセキュリティー、ユニバーサルサービスをどうするかについて、カリフォルニアの教訓を生かして日本型の自由化を考えてほしい。
(藤家委員長)これから革新炉の検討に入るが、自由化に原子力をどのようにフィットさせられるかを考えながら経済産業省とともに議論していく。

 (2)原子力試験研究における研究評価の進め方について
 標記の件について、青山参事官、木村課長補佐より資料2−1、2−2に基づき説明があり、以下のとおり質疑応答があった。
(遠藤委員)各分野毎に評価を行うことになっているが、分野間評価のアンバランス調整はどうするのか。
(木村課長補佐)調整は難しいということで、各分野毎の評価を尊重する。
(森嶌委員)評価基準は確立したものはあるか。また、新しい評価手法を検討しているか。
(木村課長補佐)昭和62年に基盤技術推進の考え方を出した翌年に評価の考え方をまとめた。他の研究制度に先駆けて評価を確立し、今まで評価技術の蓄積があったと考えている。
(森嶌委員)社会的な要請に応えるには評価手法の見直しが必要ではないか。
(藤家委員長)この評価については定着しつつある段階で、未だ不都合だから評価手法を変えようという段階にないと考えている。

 (3)ITER計画について
 標記の件について、前回に引き続き議論することとなった。
(木元委員)廃棄物について理解した段階で、ITERの全景が見えてくると考えている。
(竹内委員)日本に誘致が決まった後、反対運動が起これば国際的にも問題である。不安を解消することが大切で、核融合に関する知識や廃棄物など開示できるものはする。将来、聞いてなかったということにならないようにする。
(藤家委員長)聞いてなかったという発言をなくすにはどうすればよいか。
(木元委員)何を地元の人が求めているのか、何が理解しにくいのかをリサーチしてから広報することが大切である。
(森嶌委員)コスト面は一種の保険料となっているが、保険料に見合ったベネフィットが得られるか、他の科学技術との関係もあるので、成功、失敗にかかわらず何が得られるかの説明が必要である。
(藤家委員長)昭和30年代中頃、軽水炉への投資で波及効果の議論があったが実用化したことで、議論はなくなった。ITERの場合、原子力学会で議論した資料があると思う。
(森嶌委員)エネルギー供給で失敗しても、科学技術の広がりを持っているとういことを示さないと理解は得られないし、原子力委員会は理解を得るための努力をしなければいけない。
(竹内委員)ITERが実用化されるのは50年以上先で、ITやナノ技術とは時定数が異なる。比較の対象もないので、そのような作業は難しいのではないか。
(森嶌委員)原子力委員会として、難しい作業ではあるが努力することは必要だと考える。
(遠藤委員)未踏分野はリスクも多く、目に見える結果はなかなか出ない。夢というのがあってもよいのではないか。
(森嶌委員)国民が夢と考えない場合を想定し、このような考え方を示すことができないかと考えている。
(木元委員)スペインではガウディの意志を継ぎ、今でも教会の建築が続いている。それと同じように、百年先になるかもわからないが将来の人類のために有効な科学技術であるという合意があれば、国民も納得できると思う。それを原子力委員会として説明できるかできないかということだと考える。
(藤家委員長)研究者、科学者は核融合マシーンを作ることに全精力を注ぎ込み、その過程の技術をオープンにして、そこへ民間が入って波及効果が出てくる。SPring−8のようなものと考えている。また、推進する他国は全て極を作っている。日本もアジアでの科学技術振興のジョイントとして芽が育ってこないか。日本の地勢学的な宿命から、エネルギー関連の国際協力については国民の合意は得やすいと考えている。保険と倫理という考え方をどのように定着させていくかが原子力委員会の仕事と考える。
(中村室長)今までの議論に関連する部分として、報告書(案)の28頁に計画が失敗したときに起こるであろう影響について、ここで言及しておく必要があると記載されている。また、科学の側面については、参考の58頁にプラズマ研究の学問的意義の記載がある。必要であれば、地元に対しても今後専門家から説明していきたい。29頁には、「世代間を通じる協力は、人類社会にかけがえのない信頼感を生むことになろう」との記載があり、このような価値観を国民の中に作っていこうというメッセージではないかと理解している。
(森嶌委員)28頁から29頁の記載を具体的にわかりやすく説明することが必要である。
(竹内委員)21世紀初頭は軽水炉で大丈夫だが、それ以降に備えて、核融合の可能性を見極めておくべきである。
(木元委員)物事を近視眼的に見ないで、長期的に展望する視野を共有できる環境作りが重要だと思う。28頁にあるように失敗を共有しながらそれを糧にすることが必要である。29頁の「更に世代間・・」は強調するために行変えしてはどうか。
(竹内委員)継続されない技術は必ず衰退する。世代間を通じた科学立国を目指すのであればテーマが必要で、ITERが最適である。
(森嶌委員)そのようなことを国民に語りかけることを行わなければいけない。
(藤家委員長)どうやって分かりやすく伝えることができるか考えていこう。この報告書はリスクヘッジをよく考えているので、やさしく伝えていきたい。今日の議論も踏まえて収束に向かいたい。事務局には、議論の中で出てきたデータを整えておいてほしい。

 (4)その他