第20回原子力委員会臨時会議議事録(案)

1.日 時2001年5月18日(金)10:00〜10:45
2.場 所委員会会議室
3.出席者
藤家委員長、遠藤委員、木元委員、竹内委員、森嶌委員
内閣府
 浦嶋内閣官房審議官
 青山参事官(原子力担当)
日本学術会議会長・ITER計画懇談会座長
 吉川座長
文部科学省研究開発局核融合開発室
 中村室長

4.議 題
(1)ITER計画懇談会報告書案について(報告)
(2)その他

5.配布資料
資料1−1 ITER計画懇談会報告書(案)
資料1−2 ITER計画懇談会報告書(案)に関するご意見と回答(案)
資料1−3 「ITER計画懇談会報告書(案)」に対する意見

1.審議事項
 (1)ITER計画懇談会報告書案について(報告)
 標記の件について、吉川座長及び中村室長より資料1に基づき説明があり、以下の通り、委員の意見及び質疑応答があった。
(森嶌委員)全体としてどのようなコメントが寄せられたのか。
(青山参事官)資料1−2の11頁から32頁に寄せられた意見がまとめられている。例えば、11頁の1.地球環境問題、エネルギー問題の位置付けと科学技術については、「エネルギー開発に早期に取り組むべき」、13頁の3.核融合エネルギーの技術的見通しでは、「原子力エネルギーと自然エネルギー」の位置付けなどに関すること、「原子力や核融合はやめるべき」といった様々なご意見が寄せられた。なお、概数であるが「ITER計画を進めるべきではない」が50件、「進めるべき」が200件、その他については意志が明確に記載されていないものである。
(木元委員)サイトとして立候補している3地域からの応募が多いと思っていたが、北海道、茨城は多いが、青森からは意外に少なかった。サイトとして立候補した地域からのITER計画懇談会へのアクセスはなかったのか。
(吉川座長)私のところには全くなかった。サイトのことについては、この懇談会では議論できないことを申し上げてきたためかもしれない。
(青山参事官)核融合会議、ITER計画懇談会など関係の会議には、3地域からの関係者が多数傍聴されていた。
(木元委員)私の所への地域からの反応は、苫小牧東部地区(苫東)からのものが一番多く、とりわけ、放射性廃棄物に関しての情報が少ないといった不満が高かった。ITER計画懇談会では、放射性廃棄物についてどのような検討がなされたのか。
(青山参事官)参−26などに記載している。
(藤家委員長)この件については、昨日、ITER計画懇談会の席上で興統括官から、報告書をまとめるに当たっては、内容をブラッシュアップしたいと発言していたと思う。
(吉川座長)ITER計画懇談会の下に委員会を3つ設置した。そのうちの1つは、エネルギーの見通しについてであり、この中で安全性についても定量的に議論されてきた。トカマクが実現した場合の放射性廃棄物に関して、専門家の見知から定量的に評価を行っている。報告書の段階では、軽水炉と比較した場合など、分かり易い形でまとめることとした。
(木元委員)一般の人から見れば、どのようなレベルの廃棄物が、どのくらい出てくるのか、また、どのような処分方法があるのかなどを分かり易くピックアップして欲しいといった要望がある。
(青山参事官)この点については、「ITERの廃棄物の特徴」として参−26に参考資料として記載されている。また、報告書(案)を作成するに当たり、「ITERの廃棄物」として参−22に、前の頁には、トリチウムの性状等に関することを「トリチウムとは?」という形で記載している。
(中村室長)廃棄物の問題に関しては、特に北海道からは私共の方にも要望があがってきている。来週は苫小牧でフォーラムが開催され、講師として出席することにしている。そこで質問されることも多分この問題が中心となるものと理解している。これまで北海道からの質問については、大きく分けて二つあり、一つは、どんな廃棄物が出てくるのかということであった。パブリックコメントでも同様な質問があり、パブリックコメントの結果を受けて、参考資料の8と9が追加になったと聞いている。追加になった参考資料の9には、廃棄物の性状として量と濃度の問題が記載されている。もう一つは、処分の方法を含め、処分場がどうなるのかということである。これについても、参−22に書いてあるように、地元には説明している。ITERの廃棄物としては、原子力発電所に比べて半減期は短いものの発生量は多いといった性状のものであり、特別のものではないということ、その取り扱いについては、国の方針が定まっており、この方針に従って実施されていくものである。具体的には、参−22頁にある通り低レベル放射性廃棄物といっても大きく分けて三つあり、高βγ、低レベル、極低レベルであり、それぞれの性状にあわせて処分方法が原子力委員会から示されている。ITERからの廃棄物についてもこの方針に基づいて具体的な処分方法がこれから決められていくものと理解している。地元にとっては、ITERを誘致した場合に、廃棄物が自分達のところに残るのかということが関心事である。苫東のサイトがITERの立地点として適当か否かについては、これから文部科学省として意見を聞き調査をしようと考えているが、廃棄物の処分場として苫小牧が適切であるか否かについては、今まで検討したことがない。誘致が決定したからと言って、集中的に廃棄物を受け入れるということなのか、また、廃棄物の処分場として適切であるかについて改めて検討し、その上で判断をしていくということになる。
(木元委員)地元の振興策としてのITER誘致が先行したが、廃棄物の問題を徐々に自覚するようになってきた。現在は、このような問題が明確にならないとITER計画そのものについてもすんなり受け入れられないといった状況になってきている。先程、委員長が言われたように、廃棄物について分かり易いものが報告書に添付できれば良いと考える。
(藤家委員長)この委員会の席では参考として、サイト選定のための条件を議論したことがある。今の問題も大事かと思うのであわせて検討していきたいと考える。
(遠藤委員)この報告書(案)では、ITERの国内誘致に関して「誘致すべき」ではなく、「誘致に意義あり」と意図的に述べていると理解しているが、この理解で正しいのか。
(吉川座長)「すべし」とは何かというと、合意が必要であること。日本として国家予算を使って5千億円というお金を払べきという議論は、懇談会では検討されていないので、「すべし」とはいえないと考えている。
(藤家委員長)懇談会のレベルでは、十分な議論をしていただき明確な判断をしてもらえたと考えている。
(遠藤委員)以下は、私の意見であるが、「すべし」と考えている。世界的に見ても優位な立場にあると思われるにもかかわらず、日本には、マルチな国際機関が少ない。やりたくてもやれなかったという意味合いが強く、国際的に支持を得られなかったというのが現状である。日本のように科学技術の分野に強い国としては、こういったものが存在しても良いのではないか。しかし、誘致については決して簡単な問題ではなく、日本としての誘致が決まった時点で一致団結し、オールジャパンとしての支援がない限り、到底不可能と考える。
(藤家委員長)この問題に関しては、本日の懇談会の報告を受けて、原子力委員会がどの程度踏み込んで結論を出していくかにかかっている。
(竹内委員)国内誘致に関しては、青森県でも、最初の頃は地域振興という目玉があって、それが地域の想いとして存在していた。しかし、現在では、負の問題が明らかになってきている状況である。なお、国内のどの地点に誘致するのかは、これからだと考えている。むしろ技術屋として、21世紀後半の日本の将来を考えるに当たって、少資源国である日本が、国際的なITERというものを誘致できれば良いと考えている。日本に誘致した場合、基準等について、日本が優先的に国際基準を決定できるものと考える。これは、日本にとって大きな財産となり得る。プラスαの1〜2000億円に比べたらこれは大きなメリットとなり得る。今回のITERは、連続の臨界条件を作るためのデモであるため、ITER自身の廃棄物の議論については、実用炉ができるまで続くのではと考える。
(藤家委員長)世界的に見てもこのようなコンセンサス会議では、統一見解を出せないものも多数ある中で、結論を出していただいたことに大変感謝している。また、ITER計画懇談会を通じて、二つの大きな視点が入ってきたと理解している。一つは保険という概念が入ってきたこと、もう一つは倫理性ということ。従前、原子力においては、必要不可欠な選択という定義で、しかも資源小国の日本としてはやらなければいけないという論法で進められてきた傾向があった。高速増殖炉懇談会の頃から、必然的な選択から選択肢といった方向に移り、保険という概念が出てきた。また、倫理性という言葉が最初に出てきたのは、高レベル放射性廃棄物処分懇談会で、おそらく英語の「ethics」から出てきた言葉であろうと思われる。この報告書(案)の中では、国益や公共性という言葉で置き換えることもできるし、日本がこれからどのように世界に役割を果たしていくかということにもつながると理解している。なお、懇談会については、高速増殖炉、高レベル、ITERと続けてきて、懇談会のあり方については、かなり考えさせられるものがあった。専門部会とは別に懇談会を作って、もっと広い視野から議論していただくために懇談会に検討を依頼している。ともすれば、専門家の発言が多く存在しており、委員会との関連をどうすれば良いか、考えていかなければならない。前々回の委員会で、「原子力委員は、ほとんどの会議に出席し、議論の展開については、全て理解しているので、報告書の延長上で結論を出すことができるのでは」と発言した。しかし、ITER計画懇談会の内容については、委員会で1〜2回の議論で結論を出すには、少し問題が大きく、重要な問題も含んでいることから、本日報告いただいた報告書(案)を踏まえ、数回の議論を経て、委員会としての立場を明確にしたい。
(森嶌委員)ITER計画懇談会としては、ITERが選択肢として十分意味のあるものと提言した。我々としては、これを受け止め、選択肢としては成り立つものの、一方で、「安全性」に対する不安があることも事実であるため、社会としてそれに伴うリスクがあると理解した上で、選択肢を受け入れることができるか否かが一つの課題である。もう一つは、金銭的問題はさておき、科学的な問題として、ITERにプライオリティを付けるとすれば、日本の科学技術の振興や研究について考慮した場合、どのような位置付けにすべきなのかということである。むしろ、この問題については、原子力委員会で議論することではなく、総合科学技術会議で議論することであると理解している。第三に、「投資」すること、誘致するか否かで、金銭、技術面の、メリット、デメリットに関し、もう少しここで考えなければならない。少なくとも懇談会では、ITERを選択肢として位置付けた訳で、その選択肢を選ぶのかを検討する必要がある。但し、すべて原子力委員会で結論を出せるのではなく、原子力委員会で検討すべき問題である安全面と投資の面について検討を行うべきである。これらについて検討が行われなければ、国民の理解は得られない。

(2)その他