ITER計画懇談会報告書(案)

に関するご意見と回答

(案)

平成13年5月18日

 

原子力委員会

ITER計画懇談会


目次

1.報告書(案)に反映して修文すべきご意見・・・・・・・・・・・・2

 

2.論点について既に記述があり、報告書(案)の記述で良いと考えられるご意見・・・・・・・・・・・・・・・・・6

 

3.報告書の内容以外の事項に関するご意見・・・・・・・・・・・・31

 

(参考)

ITER計画懇談会報告書(案)に関するご意見の集約

人数: 300 人(男性 255人、女性 43人、その他 2人)

件数: 325 件

都道府県別集計

都道府県

応募人数

都道府県

応募人数

都道府県

応募人数

北海道

71

石川県

岡山県

青森県

福井県

10

広島県

岩手県

山梨県

山口県

宮城県

長野県

徳島県

秋田県

岐阜県

香川県

山形県

静岡県

愛媛県

福島県

愛知県

高知県

茨城県

53

三重県

福岡県

栃木県

滋賀県

佐賀県

群馬県

京都府

長崎県

埼玉県

11

大阪府

熊本県

千葉県

12

兵庫県

11

大分県

東京都

54

奈良県

宮崎県

神奈川県

30

和歌山県

鹿児島県

新潟県

鳥取県

沖縄県

富山県

島根県

その他


1.報告書(案)に反映して修文すべきご意見


2頁12行目
要旨中の④安全確保について、これまでの安全評価結果説明に関する加筆を提案する。(202)

ご意見は、23頁「安全面での配慮」を要約した部分に関するものですが、「④安全性については、」とした書き出しが不適切のため誤解を与えたものと考えますので、「④安全面での配慮」に修文致します。


2頁12行目

要旨に、安全性に関連して低放射化材料開発の重要性と計画の持つプラス面の追記すべき。(41)


ご指摘の趣旨を踏まえ、今後の課題として低放射化材料開発の重要性等が明確になるように、「今後の課題としては、放射化金属等の発生の低減化を図るために低放射化材料の開発が必要である。


12頁13行目

「核融合エネルギーに関しては、その燃料となる重水素が、」の部分は、誤解を避ける意味で、「核融合エネルギーの燃料となる重水素とリチウム(核融合炉内で核融合燃料のトリチウムに転換される)は、」とする。
(67、193、288)


核融合燃料であるトリチウムを生成するためのリチウムも、海水中に存在することから、ご指摘の趣旨を踏まえ、「その燃料となる重水素とトリチウムを生成するためのリチウム(リチウムは核融合炉内で核融合燃料のトリチウムに転換される)は・・・」に変更します。


ITERの安全 12頁25行目 参考資料

○ 環境の汚染、人体に悪影響を及ぼさないことが必要。(77,252)
○ 高信頼性と安全性を確保しなければならない。(78,190,212,232,285,294)


報告書(案)32頁1行目から6行目に記載のとおり、ITER計画の推進に当たっては、当然のことながら安全性の確保が大前提です。我が国に立地される場合には、ITERが、我が国として受け入れられるレベルの安全性を有しているかどうかを確認すべきであります。必要に応じ、我が国として受け入れられる安全性の考え方そのものをも検討し、その結果により安全規制法体系の整備が必要となるかもしれないと考えています。
具体的には、報告書(案)12頁25行目から記載のとおり、核融合の研究開発にあたっては、必要な要素技術開発とならんで、一般公衆や作業従事者の安全を確保するとともに環境に影響を及ぼさないことに配慮して設計することが最重要課題です。
現在、進められているITERの設計においては、反応が暴走しないという原理的な安全上の特長を踏まえつつ、機器は本質的には故障するものであるとの前提に立って、これまでの原子力施設で培われた深層防護の考え方を取り入れるとともに、施設の耐震性についてもその設計の妥当性を評価することが必要であり、鋭意検討が行われています。
特に放射性物質であるトリチウムを燃料として利用することから、適切な「閉じ込め」を実現できる設計となるよう考慮されています。また、放射性廃棄物については、高レベル放射性廃棄物は発生しませんが、低レベル放射性廃棄物は発生するため、その処理処分が必要であり、国民の理解を得つつ、安全規制法令に従って適切に行われることと考えています。
ITERの安全に関する資料を参考資料として追加します。


17頁28行目

「核融合エネルギー開発を推進するためにITER計画を推進することが必要」を「核融合エネルギー開発を推進するためにITER計画に参加することが必要」とする。(150)


ITER計画に主体的に参加することに意義があると考えていることから、趣旨を明確にするため、ご指摘のとおり、変更します。


24頁11行目

「コストに関わらず使わざるを得ない」を「コストが高くても使わざるを得ない」とする。(150)


例えコストが高くなったとしても社会的に必要であればコストに関わらず核融合エネルギーを使わざるを得ないことになると考えており、趣旨を明確にするため、ご指摘のとおり、変更します。


30頁32行

国際化が進む社会の中で、自らを他国と異なる特異な国であるという発想は改めるべき。そのため「文化、教育、言語等の面で他国と大きな違いがあることから、国際社会に適合した研究や生活環境を検討することが重要である。」を「他国から、多数の研究者、家族を受け入れることから、文化、教育、言語等の面で国際社会に適合した研究や生活環境を整備することが重要である。」とする。(10)


「他国と大きな違いがある」という記述については、我が国が特異な国であるような印象を与える可能性がありますので、ご指摘のとおり、変更します。

31頁12行目

「・・・忘れてはならない。我が国のみが過度の・・・」を「・・・忘れてはならない。参加国の撤退などにより、我が国のみが過度の・・・」とする。(150)


「我が国のみが過度の負担を負うような事態」の例を示すことにより、趣旨を明確にするため、ご指摘のとおり、変更します。


31頁26行目

「・・・住民に対し果たすべき努力、さらには・・・参加している国や・・・参加していない国を含む・・・」は「・・・住民に対し果たすべき努力を含み、さらには・・・参加している国の努力や・・・参加していない国を参加させる努力をも含む・・・」にする。(150)


国際協調で行われるITER計画に必要な「努力」を明確にするため、ご指摘のとおり、変更します。


32頁26行目

「3.核融合エネルギーの技術的見通し(2)核融合の安全性」に述べたとおり、材料開発、また、核融合研究開発に特有の問題ではないが、放射性廃棄物の処理処分の問題も残されている。」を、前半アンダーラインを削除するとともに、「材料開発の課題のほか、核融合研究開発に特有の問題ではないが、放射性廃棄物の処理処分の問題も残されている。」とする。(150)


課題となる事項を明確にするため、ご指摘のとおり、変更します。


32頁28行目

「先進方式、炉工学や基礎研究も含めた包括的な研究が必要である。」は意味不明。何か用語が抜けているのではないか。(150)


ご指摘の趣旨を踏まえ、研究の内容であることが明確になるように、「先進方式の研究、炉工学研究や基礎研究も含めた包括的な研究が必要である。」と変更します。


参考資料

環境図追加。「炭素燃料によるCO2排出量と大気中CO2濃度の経時変化」、「世界気温経時変化」、「各種電源の単位エネルギー量あたりCO2排出量」を追加する。(206)


当懇談会においては、地球環境問題、エネルギー問題の位置付けや長期的なエネルギー需給の見通しにおける環境制約の重要性を記述しています。しかしながら、これらの背景にある地球温暖化の傾向を科学的に分析することは当懇談会ではしておりませんので、「炭素燃料によるCO2排出量と大気中のCO2濃度の経時変化」及び「世界気温経時変化」について追加することは必要ないと考えます。「各種電源の単位エネルギー量あたりCO2排出量」については、報告書(案)12頁に核融合そのものの特質として、「核融合反応の過程で二酸化炭素の発生がなく」と記述しておりますので、参考資料として「各種電源別の二酸化炭素排出量」を追加します。
なお、参考資料では単に核融合反応の過程で二酸化炭素が発生するかどうかではなく、建設、運転、燃料消費、探鉱時のメタン漏れなどに伴うCO2排出量を考慮したCO2排出原単位で主要な電源を比較しています。


2.論点について既に記述があり、報告書(案)の記述で良いと考えられるご意見

要旨

1頁6行目

核融合エネルギーの4つの特徴を以下のように修文する。(196)
・核融合の燃料資源は、海水構成成分が供給源であるので、資源的には・・・
・核融合反応は、炉の特性上、電源喪失やプラズマ異常の発生に対し、受動的に停止し、また臨界事故が起こりえないので、核分裂炉と比べて・・・
・反応性生物は非放射性のヘリウム3であり、器物の放射化により発生する低レベル放射性廃棄物はその安定化と人間界からの隔離が容易であり、高レベル廃棄物が発生しないので処理処分の必要がない。
・核融合炉では、プルトニウムのような副生成物が発生しないので、国際的な・・・引き起こさず、近い将来におけるエネルギーの逼迫を防ぐ。


現状の報告書(案)の要旨に記載のとおり、核融合エネルギーは、

 等の特長があり、これらでご指摘の特長を表していると考えられます。なお、重水素とトリチウムによる核融合反応によって生じる生成物は、ヘリウム4および中性子です。


1頁12行目

要旨第1から2段落の間に、「我が国は化石燃料、ウラン等のエネルギー資源が枯渇した資源小国であり、世界的エネルギー資源枯渇時代の国際競争力は脆弱である。」を挿入する。(208)


報告書(案)25頁20行目から23行目に、日本はエネルギー資源の大半を外国に依存し、エネルギー開発は重要な意味合いを持っていることが記述されており、ご意見の趣旨を表していると考えます。なお、要旨については、内容を簡潔に記すため、御指摘の点は記述しておりません。

1頁13行目

1頁13行目から21行目を以下のように修文を行う。(197)
「核融合の実用化に向けて、我が国をはじめ世界各国において多様かつ多くの研究開発が進められてきている。その中で、今後取り組むべき重要課題として、核融合反応により燃焼するプラズマを制御する技術を確立することにあり、研究開発としては多額の経費を分担しつつ国際協力の下で最善の衆知を結集し、コンパクト国際熱核融合実験炉(ITER)の建設が計画されている。
当懇談会としては研究者の自発性の中で進む科学の進展と、科学技術による環境に優しいエネルギーを安定的に確保するという人類への主導的貢献との幸運な一致を保ちながら、核融合に関する研究開発を推進することは有意義であり、国際強調の下、我が国としてもコンパクトITER設計の実現に先導的な貢献をしてきた実績を踏まえ、コンパクトITER計画へ積極的に参加するとともに、そのノーハウを含めた研究・技術・開発過程と成果の伽藍となる我が国への誘致により、国内産業・経済に刺激と夢を与えることを期待する。
コンパクトITERの建設費5000億円は研究開発費としては、一見多額のように感じられるが、将来的環境に優しい国産エネルギーの確保のための研究費に値する。さらに、技術・産業界にとっては、新産業の育成と人材育成という計り知れない将来的利益がある。


1頁20行目

「我が国としてもITER計画に主体的に参加していくことを期待する。」とあるが、もっとはっきり、「我が国としてもITER計画に主体的に参加していくことを提言する。」にする。(110)

懇談会としての提言は、要旨の中でも「(我が国としてのITER計画の進め方)」の部分にまとめていますので、修正は必要ないと考えます。

1頁21行目、2頁3行目、20頁22行目

ITER計画に「主体的に参加」という表現と、ITERを「主導的に建設する、主導的役割を果たす」という表現があるが、「主要極として参加」、「日本に建設する、設置国の役割を果たす」とすれば明快である。(150)

「主体的」や「主導的」という言葉は、ある活動や思考などをなす時、その主体となって働きかけること、導くことであり、「主要極として参加」や「日本に建設する、設置国の役割を果たす」よりも能動的な表現としたもので、修正は必要ないと考えます。

1頁26行目

要旨中の①について、国際的役割と「将来型原子炉産業と人材の育成による国際貢献の拡大」の立場から加筆を提案する。(200)

「国際的役割」の部分に関する懇談会の検討は、18頁から19頁に記載しているとおり、「広い意味での国際貢献は我が国にとって固有の意義を持っている。その中で科学技術的貢献は単なる経済的醵金を超える大きな重要性を持ち、したがって、そのような考え方の延長線上において核融合エネルギー研究開発への参加が、日本にとって大きな意義を持つ可能性が十分にある、と言える。」というものです。ご意見のように、ITER計画そのものの「国際的役割」を検討するという方法も考えられますが、当懇談会としては、より広い視点からの、我が国の現状認識及び今後のあるべき姿の展望の中からITER計画を検討することが適切と考えております。従って、修正は必要ないと考えます。

1頁29行目

要旨中の②について、科学的潜在力として、実績、国際貢献の重要性、誘致のメリットについて加筆を提案する。(199)

「科学技術的潜在力」の部分に関する懇談会の検討は、19頁から21頁に記載しているとおりです。これまで行われてきたITER研究開発の「実績」を加筆すべきとのご意見に関しては、我が国の産業技術が高い水準にありこれが核融合エネルギーを実用化するための貴重な財産であることが、単にITER研究開発の実績以上に重要な点であると考えます。ご意見の「国際貢献の重要性」に関しては、前出①に記述しています。ご意見の「誘致のメリット」は、国際貢献に含まれる内容と考えます。従って、修正は必要ないものと考えます。


2頁6行目

要旨中の③について、国際社会における日本の立場についての倫理性として加筆を提案する。(201)

「日本社会の倫理性からの評価」の部分に関する懇談会の検討は、21頁から23頁に記載しているとおり、ご意見のような日本という国の倫理性と個人の倫理性に関して検討しております。従って、修正は必要ないものと考えます。


2頁15行目

要旨中の⑤について、エネルギー確保のための研究投資は重要であり、メリット有りとの観点から加筆を提案する。(203)

ご意見の点については、既に報告書(案)要旨中に記述しています。
研究開発に対する国の資源配分を考えた場合、国民全体という見地からの広義の安全保障、国家という規模で行われる国際的機能は、プライオリティの高いものと考えられ、ITER計画はこの範疇に入っているものとして、その投資は重要と考えます。
しかし、当該部分が「要旨」であるため、その文書の性質上、個々の具体例等については記述していません。それらについては、本文中に記述されています。


2頁22行目

要旨中の「⑤投資の観点から」の段落の最後に、「エネルギー資源の大半を外国に依存する我が国にとって、この保険料は、他国と異なり、経済安全保障の観点からも重要な意味合いを持つと考える。」を付け加える。(10)

ご意見の「経済安全保障の観点」の趣旨については、報告書(案)要旨中に「広義の安全保障」という表現で、既に記述されているものと考えます。


2頁24行目、4頁26行目、4頁28行目、29頁9行目

「ITER(実験炉建設段階)への参加」と「ITER設置国となること」の区別を明確に表現することが必要です。「設置国にならなければ参加の意義がない」との極論に対抗するためにも、表現のアイマイさは好ましくありません。
2頁24行目
○ 「我が国がITER計画に主体的に参加するだけでなく、設置国になることの意義が大きいと結論した。」を「我が国がITER計画に主体的に参加することに意義があり、さらに進んで設置国になることの意義が大きいと結論した。」とする。(150)
4頁26行目
○ 「我が国がITERの設置国となることの意義の大きいことを理解した。」を「我が国がITERに参加することに意義があり、さらに設置国となることの意義の大きいことを理解した。」とする。(150)
4頁28行目
○ 「我が国がITERの建設への移行も含め、設置国になることに」を「我が国がITERの建設に参加し、さらに設置国になることに」とする。(150)
29頁9行目
○ 「我が国がITER計画に主体的に参加するだけでなく、設置国となることの意義が大きいと結論した。」を「我が国がITER計画に主体的に参加することに意義があり、さらに設置国となることの意義が大きいと結論した。」(150)


 報告書(案)の表現は、ITER計画に主体的に参加することの意義が大きいことと設置国になることの意義が大きいことを表現しており、ご意見の趣旨を表していると考えます。懇談会は、設置国にならなければ計画参加の意義がないとは考えませんので、ご懸念の点もないと考えます。


はじめに

6頁6行目

要旨において、本文の構成と流れについて記述し、結論を示唆するような流れを形作るため、以下のように修文する。(204)
当懇談会は、原子力委員会の諮問に答えるため、1章で、地球環境とエネルギー問題の位置付け、2章で、長期エネルギーの需給見通しと、核融合エネルギー、3章で核融合エネルギーの技術的見通し、特に4章では我が国としてのITER計画の進め方として、①国際的役割・・・・・


各章の説明については、目次がありますのでご理解いただけると考えます。


1.地球環境問題、エネルギー問題の位置付けと科学技術

エネルギー開発に早期に取り組むべき

○ 増え続ける人口に対して、地球上にある資源は限られている。大切な地球の資源ときれいな地球を未来に残す為、資源が偏在しない、安全でクリーンなエネルギー開発に取り組むべきだと考えます。(5,9,14,25,32,36,42,46,56,62,64,76,78,79,80,85,89,100,105,107,111,112,113,114, 121,126,128,130,131,133,134,138,143,147,148,161,164,167,170,174,181,182,183, 185,191,195,205,209,210,211,212,213,220,221,226,249,245,254,259,267,273,277, 289,300,305,307,320)
○ エネルギー危機がより深刻になっており、21世紀の決定的なエネルギー源は未だ解決されていない。可能性のあるものについて、開発スピードを上げる必要がある。核融合も一つの候補として、早く実用化の目処をつけねばならない。(53,54,59,77,86,109,127,135,162,175,238,244,258,319,321)


報告書(案)9頁7行目から12行目に記載のとおり、エネルギー問題は、人類の生存や持続的安定的発展という意味において根本的な重要性があると考えています。たとえまだ問題が現実的に表出していないとしても、エネルギー問題が持つ後戻りできないという性質からいって、その努力の開始は早ければ早い程よいと考えています。
また、報告書(案)11頁第2、第3段落にありますように、核融合エネルギーは、その実用化が各種代替エネルギーと比較しても遠い将来であること、現時点ではその技術的実現性が実証されていないことから、将来のエネルギー需要や地球環境対策といった観点からその意義を確認しつつ、様々な可能性を幅広く模索しつつ弾力的に開発を進めていくことが重要と考えます。

2.長期的なエネルギーの需給の見通しと核融合エネルギーの役割


9頁27行目

「ここ100年以内に石炭を除く化石燃料資源の大部分が、世界的に枯渇する状況が予想されている。他方、数千万年以上の時間で形成された化石炭素を、化学的な有効利用のための貴重な資源としてではなく、100年間程度でそのほとんどを燃焼し尽くしてしまうということは、後世世代に対する罪は重いと考えるべきである。」を加筆する。(191)

「エネルギー需給及び代替エネルギーのフィージビリティーに関する報告書(平成12年6月、座長:茅陽一慶応大学教授)」によると、主要シナリオにおいては、化石燃料が有限であるという認識は共通であるものの、石炭、非在来型の石油、天然ガスまで含めれば、ここ100年程度の範囲では、全体として化石燃料の枯渇は予想されていないとされています。また、御指摘の趣旨である、化石燃料を使用し続けることに対する危機感は、現状の報告書(案)で読み取ることができると考えます。


10頁8行目

革新的な代替エネルギーのうち、核融合エネルギーは最先端を進んでいることを示したい。(194)

核融合エネルギーは、その実用化が各種代替エネルギーと比較しても遠い将来であること、現時点ではその技術的実現性が実証されていないことから、他の代替エネルギーと同列に論じることは必ずしも適当ではないと考えます。従いまして「最先端」という趣旨を書き加えることは本報告書(案)の趣旨に沿ったものではないと考えます。


3.核融合エネルギーの技術的見通し

原子力エネルギーと自然エネルギー

○ 日本は、自然エネルギーの研究・開発を推進し、世界に貢献すべきであり、核融合を含む原子力エネルギー開発は中止すべきである。核融合を「ベストミックス」に含めるには無理がある。(12,13,20,22,30,37,61,75,92,94,95,103,108,125,141,155,156,198,218,223,227,266, 276, 285,292)
○ 一点で集中して莫大なエネルギーを生み出す大規模集中型ではなく、太陽光発電、風力発電、燃料電池等の分散型電源にして地球環境を良好に保持し、高度な生活ができる技術を開発し、世界へ広めていくことが大切。(18,26,49,295)
○ 環境に対応できるエネルギーとして、太陽・風力などの自然エネルギー利用が検討されているが、現状の豊かな生活レベルを維持できるだけの発電量は得られない。現状の豊かさを享受し、かつ環境負荷の少ない、しかも豊かな燃料資源に恵まれているという条件を満足する代替エネルギーは核融合エネルギー以外あり得ない。(34,53,65,105,130,171,189,190,289,291)
○ 太陽光や風力など再生可能エネルギーは、分散エネルギーとしての有効性は認めるものの、安定供給が困難ということに加え、コスト面やエネルギー密度の極端な低さから基幹電源にはなり得ないことを強調されたい。(69,143,213,232,238,246,300,316)
○ 将来の電力事情を考えるとき、太陽光、風力等と並んで、核融合は大きな柱となるべき。(11,49,81,87,114,160,225,241,311)


報告書(案)11頁26行目から12頁10行目に記載のとおり、代替エネルギーを探る努力を払うことが不可欠であると考えております。しかし、代替エネルギーのあるものは実現可能性は確実であっても供給量が十分ではないと推定され、またあるものは潜在的供給量は大きいと推定されるものの実現可能性が未知であるなど、決定的に将来のエネルギー源を定めることはできないと考えます。従って、広範なオプションについて可能性を最大限に生かせるように開発を進め、時代に応じて最適なエネルギー供給構成を「ベストミックス」として選んでいくというのが現在許される将来の見通しと考えております。
このような状況から言えば、基本的にひとつのエネルギーに人類が頼らなければならないという論理的帰結は本質的に導出し得ないのであって、核融合エネルギーについてもその例外ではなく、将来のエネルギー源の一つの選択肢(オプション)と考えております。


原子力や核融合はやめるべき

○ 原子力が使用されているのは、国の強力な推進、メーカーの利潤追求や経済発展の考え方に合致するからで、高度経済成長を終え電力自由化を迎えた現在では見直しが必要。「危険で放射性廃棄物の捨て場所はないが仕方なく使う」という人も多いはず。原子力の一部である核融合研究を推進することは反対。(30,149)
○ 「長期的には核融合は必要」とあるが、長期的には時代や人間も変わり、人口・労働者人口も減少する経過をたどる。「将来世代に影響を与えない持続可能な社会」が第一という社会を迎えれば、核融合は全く必要性が見出されない。むしろ核融合を必要としない社会を目指すべき。(30,171,188,207)


報告書(案)10頁8行目から17行目に記載のとおり、「21世紀末には省エネルギーが進展する一方、エネルギー供給の主要な部分は、今後開発を進める再生可能エネルギーや原子力などの革新的な代替エネルギーで占められ、化石燃料から脱却が図られることとなる。各種の代替エネルギー源の開発を広範に進め、それらの中から、環境への配慮と経済性、ライフスタイルや社会的価値観により、それぞれ最適なエネルギー供給構成を「ベストミックス」として選んでいくことになる。核融合エネルギーは実現すればこの革新的な代替エネルギーのカテゴリーに含められる」と考えており、原子力や核融合の研究開発は必要です。
なお、平成12年11月に策定されました、「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画」の中では、核融合について、「未来のエネルギー選択肢の幅を広げ、その実現可能性を高める観点から、核融合の研究開発を推進する。」とされています。



3-(2)核融合の安全性


核融合は技術的に未熟であるので危険

○ 燃料であるトリチウムの危険性、その管理・制御の困難性、その技術の複雑性などからディスラプション等の各種のトラブルも予想されるようであり、技術が未確立であることからどのようなトラブルが発生するか未知数の点も多いようで、安全とは到底言えない。(1,4,7,13,22,23,26,31,37,39,50,71,74,95,106,117,123,125,141,145,154,155,156,158,218,227,231, 239,265,266,274,280,287,292)
○ 核融合の致命的欠陥である炉壁の材料が開発されていないなどの課題がある。(19,36,39,75,96,115,117,186,229,287,292,304)


報告書(案)12頁31行目から13頁16行目に記載のとおり、核融合の研究開発にあたっては、一般公衆や作業従事者の安全を確保するとともに環境に影響を及ぼさないことに配慮して設計することが最重要課題と考えております。一般に核分裂の場合は、「止める」、「冷やす」、「閉じ込める」が安全の原則と言われていますが、核融合の場合には、このうち、「止める」、「冷やす」については、核融合炉に備わっている原理的な安全上の特長により容易に達成可能であると考えております。「閉じ込める」については、燃料のトリチウムを外部に出さぬようにすることで達成できると考えております。
報告書(案)13頁10行目から14行目に記載のとおり、ITERにおいては、反応が暴走しないという原理的な安全上の特長を踏まえつつ、機器は本質的に故障するものであるという前提に立って、これまでの原子力施設で培われた深層防護の考え方を取り入れるとともに、施設の耐震性についてもその設計の妥当性を評価することが必要であり鋭意検討が行われております。
具体的には、機器の健全性確保のために多くの工学R&Dが行われており、安全解析を実施するために必要なデータの蓄積、コードの開発・検証が行われております。
また、報告書(案)32頁27行目から29行目に記載のとおり、核融合エネルギーの実用化においては、ITERによる実証のみならず、材料開発が必要であり、また核融合研究開発に特有の問題ではないが、放射性廃棄物の処理処分の課題も残されており、先進方式、炉工学や基礎研究も含めた包括的な研究が必要と考えております。
なお、本報告書におきまして、ITERの安全に関する資料を参考資料として追加します。



放射性廃棄物が危険

○ 核融合は本当にクリーンエネルギーなのか。放射性廃棄物が大量に排出され、地元の地下に埋められることや、原発なみの安全基準で管理しなければならないものが、安全であるとは言えない。
(1,13,23,31,37,75,96,106,117,123,125,141,145,155,218,231,239,274,265,287,292)
○ 「高レベル放射性廃棄物がない」とは分類上の話に過ぎず、他の放射性廃棄物は発生する。(30)
○ 処理処分方法が明らかでない。(18,94,106,154,227,276)


廃棄物については、高レベル放射性廃棄物は発生しませんが、低レベル放射性廃棄物は発生するため、その処理処分が必要であり、国民の理解を得つつ、安全規制法令に従って適切に行われることとなります。
なお、本報告書におきまして、ITERの安全に関する資料を参考資料として追加します。

3-(3)ITERの技術と状況・今後の計画

核融合・ITERは技術的に困難

○ 合理的に考えたら、コンパクトにするべきで、巨大でなければ、閉じ込め・高温高密度が達成できないというのも、矛盾している。しかも、今まで全く経験したこともない大きな実験炉を作って、研究の内容を検証することがたくさんありすぎる。(4)
○ 巨額資金を投じてプラズマを燃焼させても物理、技術的にはたいして意味は無く、その結果として核融合研究は、社会からの信頼を失うことになる。地道な努力によってまず物理及び技術的諸問題を解決することこそが何より重要であり、炉への近道である。(43,140)
○ わずか千秒の核燃焼では発電はおろか壁の中性子負荷やトリチウム増殖などの重要な工学試験ができない。また、プラズマ維持のため大きな外部加熱入力が必要となり、主目的のプラズマへの核燃焼の効果すら明確にできない。(43,132)
○ 実用核融合炉は実現するのか。(25,93,123,292,293,317)
○ 人類未経験の分野であるため完成時点が不明確であるが、国際協力のもと研究は進んできている。(36)


日本の核融合研究開発の指針を示した、第三段階核融合研究開発基本計画(平成4年、原子力委員会決定)では、研究開発の目標として、「第三段階の研究開発は、自己点火条件の達成及び長時間燃焼の実現並びに原型炉の開発に必要な炉工学技術の基礎の形成を主要な目標として実施する。これを実施するための研究開発の中核を担う装置として、トカマク型の実験炉を開発する。」とされています。さらに、原子力委員会核融合会議では平成8年に、ITERを基本計画上の実験炉として位置付け、開発することが適当であると結論付けています。
ITERについては、報告書(案)14頁6行目から15行目に記載のとおり、核融合の研究開発においては、世界的な共同作業によりプラズマ物理の知識基盤、データベースも充実し、ITERにより目標が達成できることを見通せる状況にあると考えています。また、これらの研究と並行して、国内外の大型トカマク装置や大型ヘリカル装置の製作等で培われた技術蓄積や、国際共同で進められた工学設計活動によって、大型超伝導コイル技術、遠隔保守技術、高熱負荷プラズマ対向機器・材料、ブランケット技術、大量トリチウム取り扱い技術、加熱・電流駆動技術等が大きく進展し、ITER建設の技術的な基盤が確立したと考えております。ITERの建設は、これらの技術成果の統合化を図ろうとするものでもあると考えております。


ITER(トカマク炉)を進めるべきではない/進めるべき

○ ITER(トカマク炉)には本質的な技術的問題をかかえており、それ故米国はITERから撤退した。米国が撤退したITER(トカマク炉)を進めるべきではない。(43,132,140,215,229,239)
○ トカマク炉は、構成する部品の形が単純であり、製作が容易で価格も安く、性能は非常に優れているという物理的且つ工学的に抜きんでた方式。その利点が広く認められ世界中で精力的に研究されている。ITERをはじめとするトカマクに研究投資を集中するのが最も妥当。(130,146,299)


日本の核融合研究開発の指針を示した、第三段階核融合研究開発基本計画(平成4年、原子力委員会決定)では、研究開発の目標として、「第三段階の研究開発は、自己点火条件の達成及び長時間燃焼の実現並びに原型炉の開発に必要な炉工学技術の基礎の形成を主要な目標として実施する。これを実施するための研究開発の中核を担う装置として、トカマク型の実験炉を開発する。」とされております。さらに、原子力委員会核融合会議では平成8年に、ITERを基本計画上の実験炉として位置付け、開発することが適当であると結論付けております。
米国エネルギー省は、ITER工学設計活動への参加継続を意図していましたが、当時のITERの設計では本体建設費が約1兆円と大きく、また建設サイトが未定であった等ITERの実現に危惧があったことなどから、議会の支持が得られず、参加継続ができなかったものです。
ITERについては、報告書(案)14頁6行目から15行目に記載のとおり、核融合の研究開発においては、世界的な共同作業によりプラズマ物理の知識基盤、データベースも充実し、ITERにより目標が達成できることを見通せる状況にあると考えております。また、これらの研究と並行して、国内外の大型トカマク装置や大型ヘリカル装置の製作等で培われた技術蓄積や、国際共同で進められた工学設計活動によって、大型超伝導コイル技術、遠隔保守技術、高熱負荷プラズマ対向機器・材料、ブランケット技術、大量トリチウム取り扱い技術、加熱・電流駆動技術等が大きく進展し、ITER建設の技術的な基盤が確立したと考えております。ITERの建設は、これらの技術成果の統合化を図ろうとするものでもあると考えております。

3-(4)核融合炉開発研究と計画の拡がり、今後必要となる投入努力・予算と技術

ITER誘致は人材育成にも役立つ

○ITERの日本建設は、産業界においても、グローバルな時代に対応する経験を与える場として、重要と考える。ITER計画への参加がこれからの日本を支えていく若手技術者の育成にも役立つ。(21,33,110,118,126,128,212,263,323)
○日本に集合する多くの世界的な研究者達との交流により、大学・研究機関のレベルの向上、ひいては大学教育の活性化、若手研究者の育成にも貢献する効果がある。(27,72,110,166,258,286)
○ITERが大学で学ぶ多くの若い学生に夢を与えていることを知るべき。今は、夢をかなえようという人材を多く確保し、彼らの活躍の場を提供することが核融合研究で最も重要なことである。(52,112,323)
○ITERが国内に建設されなければ、技術が伝承されない。特に実際に設計・製作するメーカーの研究者・技術者がいなくなってしまう。(44,143,306,311,323)


報告書(案)17頁5行目から12行目に記載のとおり、核融合を支えることとなる幅広い学問をみても、その研究水準は高く、人材の育成を継続的に重視すべきであり、それは基礎・基盤・開発・システム・技術等、若人の教育から熟練した技能の伝達まで行う必要があります。また、ITERを日本に誘致した場合には、報告書(案)20頁20行目から28行目に記載のとおり、主導的役割を果たすことで、科学技術力及び産業技術がより一層進展し、将来に継承されていくと考えます。


4.我が国としてのITER計画の進め方

4-(1)国際的役割

国際協力上、日本が主体的にITER計画を進めるべき

○日本が主体的に将来のエネルギー開発を進めることによる国際社会への貢献は歴史的な意義があり、世界の頭脳流入をもたらすことも期待できる。(10,14,33,62,83,89,97,113,121,144,164,195,213,220,225,235,236,240,267,277,298, 302)
○ITER計画に積極的に参画し、特に日本が設置国となることは、人類将来に対する責務並びに科学技術分野における日本のリーダーシップ発揮の観点から意義深い。(5,6,8,29,45,64,67,72,76,82,99,122,131,136,137,139,142,160,161,165,169,175,176, 177,187,243,246,254,258,260,262,268,278,296,299,301,320,322,325)
○核融合発電を実現するため世界各国と協力し、我が国も応分の経費等を分担することは、国際貢献の見地からふさわしいと考える。(53,114,233,307,321)
○日本がITER計画に主体的に参加するためにはまず設置国になる必要がある。世界で唯一のITERを主導的に建設することで、国際プロジェクトの取りまとめに重要な責任を果たすという貴重な経験の機会を得ることができる。国際社会に大きく貢献できる絶好の機会である。(15,57,72,73,88,98,100,101,104,105,110,120,124,127,129,130,134,148,152,168,182, 184,212,225,230,234,235,241,249,250,261,282,283,284,298,304,305,311,314,319)


報告書(案)18頁から19頁に記載のとおり、「世界が国際的に抱える問題を自ら発掘し、日本固有の潜在力と方策とをもって寄与するという能動的指向の道を見出すことは、国際社会に対する我が国の責務」と考えるとともに、「我が国が今日目指すべき国際的役割とは、単なる経済的な貢献というものではあってはならず、知識・知見の創造、国際的な問題解決のための積極的な技術の提供といった、新しい姿に脱皮していくことが求められている」と考えております。そのため、「世界の研究者が研究に献身できるような環境を我が国に持ち、研究においてもリーダーシップを発揮することにより、人類の知的資産の蓄積に寄与し、国際社会に大きく貢献すべき」と考えます。


4-(2)科学技術的潜在力

ITERは波及効果が大きい

○ITER誘致による効果としては、国民の研究意識の向上、青少年の好奇心・探求心等を育む、雇用増加、部品調達による産業の活性化、施設の見学利用などが考えられる。(36,112,160,182,299,322)
○人類の将来のエネルギー問題が解決できることを考えると、技術的なハードルが高くても、これを完成させることは大きな意義がある。高い技術は応用や波及効果が大きく、単にエネルギー開発にとどまらず、得られる効果は大きいものがある。(3,35,36,55,58,62,73,81,85,88,99,127,129,138,174,210,220,230,242,243,247,248,249,257,264,290,299,301,307,308,310,312,315,325)
○ITER本体建設費は約5000億円と推計しているが、インフラ整備を含めると、その何倍にもなると推測され、経済への波及効果は大きい。その効果をもっとも有効に受けるのは設置国。技術の蓄積量が多いのも設置国。そのためにも日本に建設する必要がある。(46,68,76,100,212,224,256,291,297)


報告書(案)20頁16行目から28行目に記載のとおり、世界で唯一のITERを主導的に建設することにより、国際プロジェクトの取りまとめに主導的役割を果たすという貴重な経験の機会が得られるとともに、システム統合技術の習得や、最先端技術の成立過程の観察、重要な技術情報の蓄積等を通じて、この分野で世界をリードするまでに至った我が国の科学技術力及び産業技術がより一層進展し、更に、そこで得られた有形、無形の成果、ノウハウが標準的な事例として将来に継承されていくことから、我が国のポテンシャルの高さを長期間維持できる可能性があることの意義が大きいと考えられます。
具体的には、報告書(案)参考資料21に示したように、核融合技術は、既に精密計測や大電力、材料等の分野に産業分野に応用されています。


日本には核融合で世界をリードする力がある

○日本の核融合研究は世界のトップレベルにあるから、ITERの日本誘致は、十分な正当性がある。設置経費は莫大であるが、日本が率先してこの歴史的役割を担いたい。(36,57,59,68,80,102,107,110,135,160,173,209,225,226,230,232,238,248,257,291)
○世界をリードしてきた研究開発の成果や核分裂炉で培われた経験を発展・継承させるため、日本が設置国となることに賛成。(11,45,72)
○日本における各技術分野の専門家たちの能力を最大限有効に活用するには、ITERの日本設置が鍵と考え、ITERを日本に設置することに賛成。(46,242)

報告書(案)16頁から17頁及び19頁から20頁に記載のとおり、大学、研究機関等において研究水準は高く、それに応じた教育も行われ、ここで培われた研究者、技術者の存在、あるいは裾野の広さは、システム統合としてのITER計画を実現たらしめる原動力であり、我が国は、十分なポテンシャルを有しています。故に日本がリーダーシップを発揮することにより、人類の知的資産の蓄積に寄与し、国際社会に大きく寄与すべきと考えております。
報告書(案)では、我が国がITER計画に主体的に参加するだけでなく、設置国となることの意義が大きいと結論したとしています。


ITERは発電プラントにつなげる開発ステップ

○ 核融合発電の開発は、わが国初の国家プロジェクトとして位置付け、21世紀中に商用炉を建設するスケジュールを明確にしていく必要がある。当然、開発予算を優先的に配分する必要がある。(28)
○ ITERは将来の発電プラントにつながる重要なステップであることが理解できた。実用化には時間がかかるものの、段階的に開発を進めることは、開発に伴うリスクを少なくするためには、正しい判断である。(28,45,46,49,64,85,109,115,128,148,172,260,268,291)
○ ITERは発電プラントに向けた点火実験ができる技術レベルに達しており、ITERを実施しないという選択の方が不合理。(44,67,127,138)

原子力委員会が定めた核融合研究開発計画は、第一段階(中間ベータ・トーラス・プラズマを安定に閉じ込めること)、第二段階(臨界プラズマ条件の達成)、第三段階(自己点火条件の達成と長時間燃焼)のように、段階的に推進しております。これは、報告書(案)21頁2行目から9行目に記載のとおり、各段階において明確な目標を定めつつ進むものであり、設定する目標の妥当性や目標達成に必要な科学技術的見通しを十分に評価してから次の段階に進もうとする方策であり、これにより、長期にわたる大規模システムの開発を、リスクを最小化しつつ着実に進めることが可能となります。発電を行う実証炉開発までは同様の方法で研究開発を行い、次の核融合発電の実証を目標とする原型炉段階で初めて本格的な核融合発電が行われると、核融合会議は判断しております。
報告書(案)15頁27行目から16頁1行目に記載のとおり、ITERは核融合炉実現へ向けた重要なステップではあるものの、ITER以降において、核融合炉の発電プラントとしての工学的実証を目的とする原型炉の開発へと段階的に進むことに留意する必要はあります。


4-(4)安全面での配慮


ITERは苫小牧地域の自然破壊につながる

○苫小牧東部地区はラムサール条約登録湿地であるウトナイ湖、オジロワシ、オオワシが越冬し、ガン達の中継地で優れた自然の弁天沼が近い。トリチウム、中性子線、放射性廃棄物処理等の危険は、住民、野生動物にも及ぶ。(1,17,23,37,95,218)
○イーターの苫東誘致は、北海道全体の安全性、良好な環境保全性を考えても到底許すことのできない危険性を有する装置であると判断せざるをえない。ゆえにイーターの苫東誘致には反対を表明する。(31,155,279)


報告書(案)12頁31行目に記載のとおり、核融合の研究開発にあたっては、一般公衆や作業従事者の安全を確保するとともに、環境に影響を及ぼさないことに配慮して設計することが最重要課題です。
また、報告書(案)23頁13行目に記載のとおり、安全性の問題は、国民の理解を得つつ、適切に対処していくことが求められています。
なお、本報告書におきまして、ITERの安全に関する資料を参考資料として追加します。


4-(5)投資面からの評価


投資額が大きすぎる/そんなことない。

○ 提唱したアメリカが巨費のかかる核融合炉の国際研究から降りてしまい、日・欧・ロで、ロシアが大金を支払えるはずもなく、日本自体が莫大な借金に苦しんでいる今、5000億円もの巨額の投資を行う、公共事業まがいのITER誘致は絶対反対。(13,16,18,26,75,95,276)
○ 5000億円の建設費は大きすぎる。あまりおおきな金額は他の選択肢を阻むことになり、独善的なプロジェクト運営につながる。予算規模を縮小した上で積極的に推進してほしい。(40,227)
○ 巨額の費用の支出は、保険料の範疇を超える。(96,123,239)
○ 資本投下に見合った成果が期待できない。(108,145,215,231,293)
○ 税金の無駄使い。(39,63,275,287,279,295)
○ 不良債権の処理や目先の景気対策での税金の無駄遣いを考えると決して多い金額ではない。有意義な投資。(29,33,49,57,69,73,101,119,124,165,186,254,255,296,297,306,316,318)


ITER工学設計活動により取りまとめられている最終設計報告書(案)を基にITERの本体建設費を見積もると約5000億円と推計されております。日本へ誘致した場合、ITERの本体建設費のうち今後公式政府間協議において決められる割合の負担、及びサイト整備等への支出が必要となります。
報告書(案)26頁26行目から30行目に記載のとおり、ITERの本体建設費が約5,000億円であるとして、それが適当であるかどうかを現時点で厳密に判断することはできないというしかありません。しかし未来の人類のための保険料という意味で、本懇談会としては、価値がありかつ意義のある投資であると受け止めております。
ただし、計画の費用を最小化することとともに、その結果に依存しない意義と利益とを投入費用に対して最大化することの努力が重要と考えます。

日本のエネルギー安全保障上ITERは必要

○ 日本は大半のエネルギーを海外からの輸入に頼っているという世界的に見ても特殊な状況である。エネルギーの安全保障では日本は極めて危うい状態にあることを強調すべき。
(5,45,53,68,69,84,129,136,144,147,159,168,171,180,192,298,313,321)
○ 大量生産・大量消費の結果として環境問題が地球規模で深刻化している。エネルギー問題も、年々需給バランスが崩れつつあるが、多くの人は無頓着である。我が国にとってエネルギー問題はアキレス腱で、長期的視野で対策を講じておくことが、国家の安全保障となる。ITERを我が国に誘致することは、国際的な安全保障にもつながり、日本が世界に貢献できる最善の方法であると思う。(56,70,113,153)
○ 地球環境等の制約から地球規模でのエネルギーの使用条件は、近未来には難しくなる。主たるエネルギー資源の無い日本においては、もっと厳しい悲劇的な状況が予想される。次世代の人のために早い時期に選択肢を増やす努力をすべき。(28,33,38,41,42,51,87,90,101,102,111,114,146,181,182,189,212,220,229,255,300)


報告書(案)25頁20行目から23行目に記載のとおり、エネルギー資源の大半を外国に、しかも、石油についてはほとんどを中東地域に依存している我が国にとって、この保険料は、他国とは異なり、経済安全保障という観点においても重要な意味合いをもつと考えられます。また、エネルギー問題は地球環境問題と同等の水準の人類の協調課題でもあり、もはやエネルギー問題は、日本だけの問題にとどまらず、全世界的に協調して解決していかなければならない問題であると認識しています。


他の研究と比較しなぜ核融合が国際協力にふさわしいのか

○国際協力上核融合は必要とあるが、なぜ他の研究と比較してなお、核融合が一番ふさわしいのかが示されていない。(30)


報告書(案)19頁27行目から31行目に記載のとおり、大学、研究機関等において研究水準は高く、それに応じた教育も行われています。ここで培われた研究者、技術者の存在、あるいは裾野の広さは、システム統合としてのITER計画を実現たらしめる原動力であり、我が国は、十分なポテンシャルを有しています。その上で、報告書(案)26頁7行目から24行目に記載のとおり、国民全体という見地からの広義の安全保障、国家という規模で行われる国際的機能は、プライオリティの高いものと考えられ、ITER計画はこのような範疇に入っていると認識しています。
また、我が国が今日目指すべき国際的役割とは、単なる経済的な貢献というものであってはならず、知識・知見の創造、国際的な問題解決のための積極的な技術の提供といった、新しい姿に脱皮していくことが求められています。我が国が十分なポテンシャルを有する核融合エネルギー研究開発をこの観点から見るとき、資源小国の我が国がその中で主要な役割を果たすことの意義は十分に大きい、と理解されると考えます。


20頁5行目

「第一は、核融合エネルギーは・・・貴重な財産であると言うことが出来る。我が国が経済成長を・・・そのこと自体が第二の意義となる。」という記述がよく理解出来ません。「第一は、我が国の高い技術を生かすことに意義があり、第二は、我が国の製造業における絶えざるイノベーションによる高水準の産業経営の実績が、核融合エネルギーを実用化するための貴重な財産」にする。(150)

  
第一の意義は、ITER計画の実施によって我が国の製造業が核融合エネルギーの実用化のための貴重な実績を得ることであり、第二の意義は、我が国の技術を活かし国際的に役割を果たすことと考えております。したがいまして、原文で、趣旨が尽くされていると考えます。

5.計画具体化にあたっての考察

失敗した場合を想定すべきではない、責任を持ってやるべき

○報告書でも「予想が困難」との言葉が多く使われており、この先進めても、失敗する可能性もあることがストーリーとして書かれている。多くの費用(我々の税金)が研究者の自己満足で終わってしまうのでは。確実に目標を達成するストーリーを、責任もって実行すべき。(25,222)
○巨額の税金による国家プロジェクトである以上、成功の指標と、失敗の責任体制の明確化が必須である。波及効果があったから良しではダメ。本当に成功させたいという熱意と責任感のある本物の研究者のみが活躍できるシステムを構築すべきである。無責任な学者の研究費確保の草刈場にならないように。(52,129)
○一般論として、100%大丈夫ということはあり得ない。100%の成功を確信して努力している現場の科学者、技術者の士気を削ぐ。(29,119,211)


ご指摘のとおり、計画を実施する立場の者が、初めから失敗を前提とすべきではないと考えます。しかし、ここで述べられていることは、計画を管理する者あるいは計画を評価する者などに対する提言です。この場合、報告書(案)27頁から29頁に記載のとおり、ITERが核融合炉の実用化に直結しなかったとしても、保険料として決して高価でないと認識することのできる内容を計画は持つべきと考えています。そのためには、その開発過程において行われる基礎研究や要素技術開発が、より広く基礎科学一般の深化と広範な産業分野の技術進展に寄与する等、プラスの評価を最大化する可能性を計画に内在することは不可欠と考えています。



6.結言

ITER計画や安全性等を一般住民に説明する努力が必要

○ 広く情報を公開し、国民に対し、核融合、ITER計画、誘致に関する説明や正しい知識の普及に努める必要がある。(25,38,39,55,58,66,80,84,104,109,111,114,116,119,135,136,141,157,161,164,167,172,179,204,219,232,247,256,264,281,284,296,298,304,311,314,316,317,318)
○ ITERの安全にかかわるトリチウム、放射化した廃棄物の処分など安全性について、一般住民にわかりやすい情報を伝え、理解を得る努力が重要。
(1,3,23,66,108,109,134,140,151,154,155,157,158,163,178,185,216,224,244,247, 251,252,253,271,279,292,294,295,318)
○ 一般住民は、放射線に関する知識を持ち合わせていないことからくる漠とした不安がある。これは、学校教育で放射線に関する一般教育をしてこなかった文部科学省の責任でもある。(3)
○ 不安の要素を住民に知らせないで、安全ばかり強調することは怠慢で、義務違反だと思う。(4)


報告書(案)31頁22行目から24行目に記載のとおり、今後とも国民の十分な理解を得られなければプロジェクトの推進は困難であり、安全性を含めた正確な情報の提供を十分行うなど、不断の努力が必要であると考えています。


日本が設置国とならなくても最大限の貢献をすべき

○誘致に名乗りをあげるのはもちろんだが、仮に結果としてITERが日本以外に建設されることになったとしても、ITERが極めて重要な計画であることに変わりなく、日本として最大限の寄与を行うべきである。(67)
○他国に建設されても、日本としては応分の協力・負担をするのは当然。そして日本の技術力や経済的貢献は評価されるべき。(90,149)
○設置国とならなかった場合の評価も必要。(149,256)


報告書(案)1頁19行目から20行目及び30頁13行目から14行目に記載のとおり、核融合に関する研究開発を推進することは有意義であり、国際協調の下、我が国としてもITER計画を主体的に参加していくことを期待しております。そして、当懇談会では、主体的に参加するだけでなく、設置国になることの意義は大きいと考えています。


産業界との関わり

○核融合炉の建設にあたっては、産業界の貢献が必要であるが、科学的な研究に偏ることなく、技術、そして人の維持という観点での継続的な建設・運転の確保をお願いしたい。(46,64,126,139,143,240,297,306,325)
○産業の維持の観点からは適切な予算を確保してほしい。今後の国際協業の中では民間企業は将来の不透明さもあり、大きなリスクを背負っての投資は困難。確固たる方針とスケジュールを、各フェーズ毎に適切に提示して欲しい。(64,309)

報告書(案)30頁14行目から18行目に記載のとおり、ITER計画の推進にあたっては、我が国の科学技術計画全体を考えた際にどのような位置付けを与えるのかの検討は別途必要であり、また、我が国の厳しい財政状況下での巨額な財政負担について、国民の理解を得つつ、国として財政措置を講ずるべきかどうか判断する必要があると考えています。
また、報告書(案)20頁2行目及び32頁32行目に記載のとおり、我が国では産業技術が高い水準にあり、核融合研究開発は多くの学問・技術の分野にまたがることから、他分野の研究者、技術者も含め、広く産官学の協力体制が構築されることに配慮すべきと考えています。

33頁8行目

「ITERに多くの資金を投入する一方で、トカマク以外の方式を含む大学等における幅広い核融合研究への資金投入が減少し、その結果、核融合研究の基盤を損なうようなことになってはならないとの意見があるが、核融合研究の推進にあたっては、戦略的に重点化を図りながら推進体制を構築することが重要である。核融合研究の発展に必要な効率的効果的な資源配分が不可欠であり、資源の確保が図られるかが課題である。」
この文面は、ITERに全ての核融合予算をつぎ込むべきであるということを主張しており、レーザー、ヘリカル、ミラー等の研究を停止、もしくは中断させてもよいとの意見ととれます。もしそうだとすると、大学の研究者の考え方を無視した報告書となってしまいます。(100,132,140,302,303)

報告書(案)17頁から18頁に記載のとおり、核融合研究開発にとっては、ITER計画の推進とともに、核融合炉の先進方式、関連する炉工学やプラズマ物理学を併行して体系的に研究することが必要です。また、ITER計画を含む核融合研究開発の全体的な構想については、これまでも原子力委員会及び学術審議会において審議が行われ、その結果、大学や核融合科学研究所、日本原子力研究所等において、科学・技術・開発にわたり、様々な成果を上げ現在に至っています。今後更に、こうした研究開発について戦略的に重点化を図りながら推進していくことが求められています。従いまして上記記述は、ITERに全ての核融合予算をつぎ込むべきと主張しているわけではありません。

参考資料など


参考資料

我が国の石油、天然ガス、ウラン等の資源は既に枯渇し、その大部分を輸入に頼らざるを得ないことと、2050年の世界資源の推定可採年数を示す図を添付する。(205)


「エネルギー需給及び代替エネルギーのフィージビリティーに関する報告書(平成12年6月、座長:茅陽一慶応大学教授)」によると、長期的なエネルギー需給の見通しについては、技術、政策、社会構造、ライフスタイル等の選択に依存して変化の幅が大きくなることから、単純に資源量と消費量の比をとって推定可採年数を比較するのではなく、幅広い政策的、社会的オプションに対応したものとしてシナリオを検討しております。シナリオを検討しますと、いずれにしろ、化石燃料が有限であるという認識は共通であるものの、石炭、非在来型の石油、天然ガスまで含めれば、ここ100年程度の範囲では、全体として化石燃料の枯渇は予想されていないとされています。



3.報告書の内容以外の事項に関するご意見

専門家による議論が必要

○ 社会的な有識者と産業界の代表が多くを占める懇談会においては、報告の結論が計画を進めるべしとなることは無理もない。(19,108,207)
○ ITER国内誘致に関して、賛成派と反対派の両方の専門家または科学者を招いての説明会を全国各地で開催してほしい。(1,23,24,35,151,157,162)

本懇談会のメンバーは、核融合の専門家以外にも経済、国際政治等の様々な分野の専門家から構成されており、広範な検討が公開で行われたものと考えております。この結果は、その都度インターネット等を通じて公開されており、情報提供してきたと認識しております。
また、ITER計画に対する我が国の取り組みについては、原子力委員会、核融合会議においても、適時検討が行われてきたものと考えております。
なお、ITER計画に関しては、シンポジウムや勉強会などが各地で開催されてきていると承知しております。しかしながら、国民の十分な理解を得られなければITER計画の推進は困難であると考えます。


投資のプライオリティ付けをすべき

○大学施設の老朽化対策等と比較し、ITERは投資のプライオリティが高いのか。(18)
○最近の日本誘致の議論は、誘致により研究予算の大部分がITER建設費に回され、このため大学や研究所などでは、これまで確保してきた研究予算が削減される、言い換えれば既得権益が侵される、という立場に立ち、いかに自分たちの研究費を確保し続けるかという観点で行われているように思える。
(52,140,306)

報告書(案)26頁7行目から9行目に記載のとおり、国民全体という見地からの広義の安全保障、国家という規模で行われる国際的機能は、プライオリティの高いものと考えられ、ITER計画はこのような範疇に入っていると認識しています。しかしながら、報告書(案)2頁26行目から30行目に記載のとおり、大規模な科学技術計画の進め方について判断をするためには、①科学者による科学技術的な助言、②有識者による幅広い観点からの提言、③科学技術におけるプライオリティの判断、④我が国の活動というより広い視野による判断という、各段階毎のそれぞれの責任による判断が行われるべきであります。その上で、当懇談会においては、②の有識者により幅広い観点から検討を行っており、科学技術におけるプライオリティの判断は別途なされるべきと考えています。


国内サイト候補地の選定について

○ 六ヶ所村に設置されることを望まない。(198,226,295)
○ 那珂町に設置されることを期待(34,91,253,282)。
○ 苫小牧東部に設置されることを期待/望まない。(7,17,31,65,95,106,145,166,168,171,174,181,182,185,189,195,213,218,245,259,266,280,295)
○ 国際プロジェクトとして、アクセスが容易な設置場所を日本としては提供すべきで、国内プロジェクトに見られるような政治的選択をできるだけ排除すべき。(42,140)
○ 建設費については、最も安価で、かつ、研究環境の優れた地域を選定すべき。(126,237)
○ サイト絞り込みにおいては、地震時の安全性の担保は必須条件。(120)
○ 産業の活性化・利便性という観点から最も有望な地点を選定すべき。(146)


国内サイト候補地の選定については、本懇談会の範囲外と考えています。しかしながら、報告書(案)30頁17行目から23行目に記載のとおり、国内候補地の選定に際しては地元の理解が特に重要であり、このため格段の努力が必要となります。候補地選定の作業を始めるときは、地元の理解については十分調査確認をした上で作業を行うべきと考えています。