藤家原子力委員長の欧州出張について(報告)

平成13年4月24日

1.英 国

主要日程:4月4日(水) 貿易産業省(DTI) アナ・ウォーカー総局長との意見交換
5日(木) 英国原子力公社(UKAEA)カラム研究所訪問

(1) 英国貿易産業省アナ・ウォーカー局長との意見交換

 1) 日 時:平成13年4月4日17:00~18:00 (於;貿易産業省)

 2)出席者:(先方)
 貿易産業省 アナ・ウォーカー総局長(エネルギー担当)
ローズBNFL官民連携局長、ヘイズBNFL官民連携局次長、ヘイズ原子力産業第2部長
(当方)
 藤家原子力委員長、渡辺(政策統括官付参事官(原子力担当)補佐)、栗原(日本原子力研究所)、増子(外務省在英大使館一等書記官)

 3) 結果概要:

 挨拶の後、当方より、昨年11月に策定された原子力開発利用長期計画の概要について説明し、この中で、①核燃料サイクル路線を引き続き堅持していくこと、②加速器研究、核融合研究など、原子力科学技術についても推進していくこと等を述べた。また、プルサーマル計画について地元自治体の状況とともに説明した。
 これに対し、先方より、日本のプルサーマル計画の進展を期待する旨発言があり、さらに、SMP(セラフィールドMOXプラント)の進捗状況について説明がなされた。
 また、当方より、核融合研究開発の実施状況について、ITER計画懇談会の検討状況とともに説明したところ、先方は、ITER計画については、英国として、JETとの関係を整理し半年以内に検討結果を出す予定であること、ITERに関するEUとしてのコストベネフィットや実現性の検討に加え、波及効果についても検討が必要であること、英国としても、核融合は21世紀のエネルギー源としての研究を進めていくことが必要であり、広く科学界と連携をとりつつ進めていきたいこと等の説明がなされた。

(2) UKAEAカラム研究所訪問

 1) 日 時:平成13年4月5日 11:00~15:00

 2)出席者:(先方)
 カラム研究所 ロビンソン所長、オブライアン核融合計画部長
 欧州核融合開発協力機構(EFDA) ワトキンス JET次長
 貿易産業省 ガン原子力産業局次長 他
(当方)
 藤家委員長、渡辺、栗原、増子

 3) 結果概要:

 先方より、挨拶の後、カラム研究所及びJETの現況について説明がなされた。当方より、JET及びその他の核融合方式について、研究開発の進捗をどのように評価しているか質したところ、JETを始めとするトカマク型が、核融合のエネルギー開発に向けての主流であることはもちろんであるが、ステラレータ型もシステム統合の側面からは有益である旨説明がなされた。また、ITERはその設計から見ても、JETの経験が良く反映されており、JETとの整合性の面からも評価される旨説明がなされた。
 当方より、ITERでは、共同作業チーム(JCT)報告では10とされている、Q値(投入したエネルギーと獲得されるエネルギーの比)の達成見込みについて問うたところ、10~20が達成できると評価しており、20以上も可能であると考えていることなどが説明された。
 併せて、JETの改造計画、START計画(1991-1998)の後継として新たに開始されたMAST計画(Mega Amp Spherical Tokamak)の概要、及び本年2月に設立された核融合の技術移転センター(Fusion with industry programmeとして実施)等の説明がなされた。

2.仏 国
主要日程: 4月 6日(金) 仏原子力庁(CEA)グラヴィエール次官との意見交換
  8日(日)、9日(月) 第9回原子力工学国際会議(ICONE-9)出席
  10日(火) 仏原子力庁カダラッシュ研究所訪問

(1) CEAグラヴィエール次官との意見交換

 1) 日 時:平成13年4月6日 16:30~17:30(於;CEA本部)

 2) 出席者: (先方)
 CEA グラヴィエール次官、リンネ国際関係担当官 他
(当方)
 藤家委員長、渡辺、栗原
 板倉(外務省在仏日本大使館一等書記官)

 3) 結果概要:

 挨拶の後、当方より、昨年11月に策定された原子力開発利用長期計画の概要について説明し、併せてITER計画懇談会の進捗を交えつつ、核融合研究開発の現状について説明を行った。先方より、日本の長期計画にも指摘されているように、仏においても国民の理解が大変重要であると考えており、電力庁(EDF)とも協力し、立地施設周辺の住民への理解を深める活動をしていることなどが紹介された。

(2) ICONE-9(The 9th International Conference On Nuclear Engineering)

 1) 日 時:平成13年4月8日(日)~12日(木)(於;ニース、アクロポリス)
       (藤家委員長の出席は、8及び9日のみ)

 2) 出席者:日本機械学会(JSME)、米国機械学会(ASME)、仏国原子力学会(SFEN)を主体とする34カ国約300名

 3) 結果概要:

 オープニングセッションにおいて議長(仏コジェマ社 ゴベール氏)及び共同議長(㈱東芝 宮本氏)からの挨拶の後、藤家委員長、仏電力庁ロッシェ氏、米国Entergy社カンスラー氏、スウェーデン ヴァッテンフォール原子力発電所ライシング氏、によるプレゼンテーションが行われた。次セッションとの関係で、十分な質疑の時間が取られなかったが、オープニングセッション会場は、ほぼ満席であり、約200名程度の出席があった模様。
 オープニングセッションの後、カナダ原子力公社チョーク・リバー原子力研究所科学顧問及び独原子炉安全協会委員等との意見交換を行った。
 なお、次回(第10回)ICONEは、米国のオーガナイズにより、2002年4月1日~5日米国ネバダ州にて開催される予定。

(3) CEAカダラッシュ研究所訪問
 1) 日 時:平成13年4月10日 9:00~17:00

 2) 出席者: (先方)
 仏政府特命原子力最高顧問室科学顧問 ワトー氏、
 CEA原子力局 ベルナール局長、ジャキノ ユーラトム・CEA連携部長
 カダラッシュ研究所 ベルナール所長、
 安全防護研究所(IPSN)レヴィ部長 他
(当方)
 藤家委員長、渡辺、栗原、板倉

 3) 結果概要:

 午前中、先方からのEU及びカダラッシュ研究所の核融合研究開発への取組み状況についての説明及びこれに関する意見交換を行った後、核融合実験装置であるトール・スープラの視察及びMOX関連施設(EOLE)の視察を行った。午後には、カダラッシュ研究所の現況説明がなされた後、PWR安全研究関連施設(FEBUS)の見学を行った。また、藤家委員長より、昨年11月に取りまとめられた我が国の原子力長期計画の概要、及び核融合研究開発への取組みについて、ITER計画懇談会の検討状況を交えつつ説明を行った。
 当方より、トール・スープラの成果のうち、長時間(120秒間)のプラズマ閉じ込めの再現性について質したところ、プラズマの電流駆動方法(RF入射)の最適化により120秒間運転を実現し、さらに、加熱の際の反射を入射アンテナとプラズマとの距離の調節等により再現性を高めていること等が説明された。
 ITER誘致に関し、先方ジャキノ氏より、カダラッシュ研においては、トール・スープラの裏手に40haの候補地が予定されており、欧州サイト検討グループ(European site group)は、2000年から開始した第一次検討の結果を今夏にも取りまとめる予定であり、第二次検討(ライセンシング及びサイトデザイン)に関しては、2002年から2003年までに実施される予定である旨の説明等がなされた。当方より、カダラッシュ研の候補予定地は内陸であり、部材の輸送に困難が予想されるのではないか、また、輸送に際しては、仏電力庁(EDF)の運河を利用することへの言及があったが、広さ、深さ、並びに障害物の観点から、輸送に関して問題が生じるのではないかと質したところ、EDFの許可を取り付ける必要はあるが、運河の広さ、深さはともに十分であると考えられ、また、運河に架けられている橋に関しては、撤去を要するであろう場合も想定されるが、全てのルートにおいて運河を使用するものではなく、大型重量物の輸送に支障はないのではないかと考えている旨の説明がなされた。
 先方ワトー氏より、核融合はエネルギーとしての実用化を目指すプロジェクトであり、これまでの50年間の蓄積を生かしつつ国際協力により次のステップへ進めていくことが重要である旨が述べられた。

3.独 国
主要日程: 4月12日(木)マックスプランク研究所 ブラッドショウ所長との意見交換
  13日(金)EU超ウラン研究所訪問


(1) マックスプランク研究所(ITER共同中央チームを含む)訪問

 1) 日 時:平成13年4月12日9:30~12:30 

 2) 出席者: (先方)
 ブラッドショウ所長、第一実験部 カウフマン部長、
 ITER EUホームチームリーダー ラックナー氏
(当方)
 藤家原子力委員長、栗原(日本原子力研究所)

 3) 結果概要:

 挨拶の後、藤家委員長より、①原子力開発利用長期計画の概要、及び②我が国におけるITER計画への取組み状況について説明した。先方からは、行政改革に伴う我が国の原子力推進体制についての関心が寄せられた。また、ITER計画に関する欧州の取組み状況及びITER計画による欧州の核融合計画への影響について説明がなされた。特に、第6次欧州フレームワーク計画においてITER関連経費が措置されているものの、EUから欧州各国に配分される核融合関係経費が、ITER計画により圧迫される可能性が指摘された。マックスプランク研究所プラズマ物理研究所(IPP)は、3分の1を当該核融合関係経費に頼っており、影響が大きいのではないかと懸念している旨が述べられた。
 ブラッドショウ所長との意見交換の後、IPPの核融合実験装置であるASDEX-Uの視察を行った。

(2) EU超ウラン元素研究所(ITU)訪問

 1) 日 時:平成13年4月13日 9:30~15:30

 2) 出席者: (先方)
 シュンケル所長 他
(当方)
 藤家原子力委員長、栗原(日本原子力研究所)

 3) 結果概要:

 先方より、研究所の概要について説明がなされ、ITUの1999年からの3年間の主要研究は、①核燃料サイクル関連研究(使用済燃料直接処分、長半減期核種の分離変換、湿式分離/乾式分離等の研究)、②保障措置関連の研究(出所不明核物質の分析等)、③アクチニドに関する基礎研究と外部機関との共同、及び、④委託研究であること、年間予算のうち、EUからの出資は80%程度であり、残りの約20%は委託研究等他からの収入であること等が説明された。また、我が国の電力中央研究所との間の研究協力プロジェクトとして、①超ウラン元素の乾式分離に関する研究、②マイナーアクチニド含有金属燃料の照射試験、③使用済燃料中間貯蔵時の燃料健全性試験及び高燃焼度燃料の挙動の把握に関する研究の内容が紹介された。超ウラン元素の乾式処理分離に関する研究においては、電力中央研究所の実験装置をITU内に設置し、実際の燃料や、高レベル廃液を用いて行う試験を行っている旨の説明がなされた。その後、超ウラン元素の乾式再処理/分離式試験施設、環境モニタリング分析手法研究開発、核物質の盗難・密輸犯罪に関する科学的分析方法の開発等の施設を視察するとともに、建設中のTRU研究ホットセル施設を視察した。

以上