第8回原子力委員会定例会議議事録(案)
1.日 時
2001年2月27日(火)10:30〜11:30
2.場 所
委員会会議室
3.出席者
藤家委員長、遠藤委員、木元委員、竹内委員
内閣府
興政策統括官
浦嶋官房審議官
青山参事官(原子力担当)
環境省地球環境局
総務課研究調査室 木村室長
4.議 題
(1)
IPCC第3次評価報告書について
(2)
その他
5.配布資料
資料1
IPCC第3次評価報告書について
6.審議事項
(1)IPCC第3次評価報告書について
標記の件について、環境省地球環境局総務課研究調査室 木村室長より資料1に基づき説明があり、以下のとおり質疑応答があった。
1ページ目に「積雪面積、海氷面積の減少」とあるが、昨年、ネパールに行った際、ヒマラヤの雪が解けて村が冠水した等の情報をかなり聞いた。特異的にそのような現象が発生しているという報告はされているか。
(木村室長)気候変動等は地域によって変わってくるということは報告書の中でまとめている。しかし、ネパール等までの狭い地域までは記載されていない。将来予測という観点からは、狭い地域までの精度を確保できないということがある。
特に危険な国があるということは入っていないのか。
(木村室長)IPCCの報告書は、各専門分野の研究者からの集大成であり、地域的なことも記載されているが、ネパールのことは記載されているかどうかわからない。
南太平洋諸国についてはどうか。
(木村室長)非常に影響を受けやすいところということで、1つの地域として影響予測している。沿岸地域の浸食の拡大や高潮の被害が高まる等の影響が大きくなるだろうと言われている。国によっては、わずかな水面上昇で海面下になってしまう。したがって、島国は危機感をもっている。
海面上昇で0.09〜0.88mと差があるのは、CO2 排出シナリオからか、緯度の違いが関係しているか。
(木村室長)緯度の違いもあるが、これほどの差があるのは排出シナリオの違いからで気温上昇の1.4〜5.8℃にリンクしてくる。
エアロゾルの影響はどうか。
(木村室長)太陽光が地表に届くことを防ぐことから温室効果を減少させる。ただし、黒煙は逆に温室効果を増加させる。
二酸化硫黄の影響は地域的だと思うが、地域的に扱うのか、地球全体で扱うのか。
(木村室長)地球を地域ごとに分けて計算できるようになっている。ただし、特定都市上空のエアロゾル効果を計算することはない。
フロンはオゾン層を破壊すると聞いているが、オゾン層の話はどうか。
(木村室長)オゾン層を破壊する物質の中でも、温暖化効果の高いものがあるのでそれらは評価している。オゾン層破壊は評価していない。
排出シナリオの中で原子力の位置付けどうか。
(木村室長)シナリオには、化石燃料をこのまま使っていくというものと化石燃料以外のエネルギーを中心にしていくもの、それらをMIXして使っていくものがある。化石燃料以外のエネルギーの中に原子力が含まれる。
2050年くらいでは、シナリオの考え方が重要になってくる。シナリオはどこで議論されているのか。
(木村室長)2年くらい前からIPCCでいろいろな排出シナリオの詳細検討が行われた。
中東では水資源が貴重であり、海水を淡水化して供給している。第2作業部会で、水ストレスの人口が17億人から50億人とあるが、この場合、供給シナリオを含めているのか。
(木村室長)適応対策を十分講じた場合ではなく、対策が講じられることなく、このまま温暖化が進めばこうなるということである。
原子力委員会が原子力政策を企画・立案する上で、環境問題は大事な問題であり、更に関心を持っていきたい。
(3)その他
プルサーマル計画について、福島・新潟でいろいろなことが起こっているが、委員の意見を聞きたい。
委員会では、原子力政策を作る上で、エネルギーの安定供給と環境負荷低減を大事にしてきた。原子力をこれからも基軸エネルギーとして考えていくと同時に核燃料サイクルの確立は21世紀に持ち越した大変重要な課題であり、これに鋭意努力していくと言ってきた。一方で、核燃料サイクルは核不拡散との関係が非常に深く、国際的にも重要なことであることを意識し対応してきた。
昨年の原子力長計策定会議でもプルサーマル計画は、国の方針として強く推進するということを国民に強く訴え、関係方面への推進協力を行ってきた。今回のことは、いろいろな事情はあるものの、真に残念である。プルサーマルは、国際的に使用目的のないプルトニウムは持たないと約束している中で、我が国で手堅くプルトニウムを使う方法である。これが、長く止まることはあってはならない。原子力委員会は、いつでも、どこでも、だれとでもという姿勢でこの問題が解決する方法があれば参加する。
核不拡散体制を巡る動きは、プルトニウム中心であり、ロシアや米国のプルトニウムをどうやって処理しようかということが世界的な大問題である。日本は核燃料サイクルを志向する数少ない国の内の一つであり、プルトニウムについては非常にセンシティブでなければならないが、プルサーマル計画が進まないと結果的に使用目的のないプルトニウムが蓄積されていくとの疑念が出て来かねない。これは、日本の原子力活動を揺さぶりかねないので、現在の動きは非常に残念である。
昨日の福島知事答弁の中で、県議会がプルサーマルを認めたのはかなり以前であり、その後、JCOの事故やMOXのデータ改ざん問題等が発生して原子力に対する不安や不信が高まったために理解が進んでいないとある。
東京電力の建設凍結発表が直接の引き金になったと思うが、心配なのは原子力の重要性を理解されている方々でも、原子力行政や事業者に対する不安感、不信感を強調されている。その根は深い。知事の真意はどこにあるかは十分に見えない。プルサーマルをやることに一応の理解はしても、やはり根っこには不信感があるということである。それに対して委員会は、いつでもどこでもだれとでもをどういう形で行っていくか。
JCO事故やMOXデータ改ざんで信頼が低下した時に、多くの人に原子力について説明し、自らが考えていただくことでわかってもらえた。
多くのサイレントマジョリティーは自分のこととして考えていない。そこに対してアピールすることが必要でないか。
理解はあるけれど、なにか起こった時に潜在する不信感や不安感が増大しやめようという話になるので、その不信感、不安感をどの払拭するかである。
従来であれば、このような課題は事業者や担当行政庁の活動を見ながら、必要に応じて個別に話を聞き対応をするというのが原子力委員会の姿勢であった。しかし、委員会では、1月にその対応を越えたメッセージを出していると認識しており、今回のことを受けて、原子力委員会としてなにかメッセージを出すべきかどうか原子力委員会の機能として必要かどうかを聞きたい。
プルトニウムの利用目的を国際的な場で説明する必要がある。国内向けの説明を原子力委員会としてどうするか。
海外が日本は本当に平和利用としているのかと疑うことに対して、国内では平和利用と納得している。しかし、プルサーマルでプルトニウムを使うことを理解はしているもののやはり不安感や不信感が根底にある。それをどうやって払拭し、プルサーマルをやろうよという方向に向けられるかである。そこに原子力委員会がコミットしていく必要はあるが、声明を出すということではない。
国の姿勢や事業者の姿勢が問われている。過去から引きずっている体質を変えていく必要を感じている。その部分と平易にわかりやすい言葉でなぜ原子力なんだろう、長計はこういう考えだという説明が必要である。
原子力委員会の最近5、6年の動きを見ると、ATR実証炉の中止から原子力政策が破綻したという世論が出てきた。その後、平成7年12月にもんじゅの事故が発生し、翌年1月に3県知事から提言があった。それに対して原子力委員会は対応してきた。核燃料サイクルについては、国民合意を図る努力が必要で、原子力委員会は円卓会議に始まっていろいろな議論を行ってきた。今は次を考えている段階である。また、原子力政策に対して国民意見を反映させるということで原子力委員会が成り立っているということをもとに行政改革が進められた。さらに、原子力開発については、今までの延長ではないという観点で長計をまとめた。これらは、関係行政庁や事業者ではなく原子力委員会が自ら行ったことであり、3県知事をはじめ一般の人に対しても説明するのが原子力委員会らしい対応と考える。いつでも、どこでも、だれとでもという考えで個別の対応を行っていけばと考える。原子力委員会の対応は、広い視野でということが強調される。国内・国外等、今の委員会の能力にも限界があろうが、その時は関係行政庁や事業者とも連携を取りながら行っていく。
以 上