原子力平和利用・核不拡散研究会主催 第2回国際シンポジウム
「原子力平和利用と核不拡散との調和をどう図るか−アジアから原子力開発を考える−」
結果概要の報告
(1) | 本国際シンポジウムは、国内外の専門家の参加を得て、原子力平和利用と核不拡散の問題に関して、国際的な取組・活動の現状と課題、基本的な理念、今後の取組等について議論を行うとともに、これらの議論を通じて、21世紀の原子力平和利用の推進のあり方について、我が国国民の理解と関心の向上を図るものである。 なお、本国際シンポジウムは、文部科学省の委託事業として(社)日本原子力産業会議に設置された、原子力平和利用・核不拡散政策研究会の主催により実施されるものである。 |
(2) | 第2回国際シンポジウムにおいては、「原子力平和利用と核不拡散との調和をどう図るか−アジアから原子力開発の将来を考える−」と題し、核不拡散の3つの柱である「保障措置」、「核物質防護」及び「輸出規制」について、原子力平和利用の推進の観点から議論するとともに、これらの議論を通じて、中・長期的に原子力利用の普及が見込まれるアジア地域の原子力開発の将来の方向性について考察することを目的としている。 |
3. | 場所: | 麹町会館(ル・ポール麹町)2階「ロイヤルクリスタル」 千代田区平河町2-4-3 |
4. | 主催: | 原子力平和利用・核不拡散政策研究会 (座長:黒澤 満 大阪大学大学院国際公共政策研究科教授) |
後援: | 原子力委員会、文部科学省、外務省、経済産業省 | |
5. | 形式: | 国内外からの専門家によるキーノートスピーチ及びパネル討論(日英同時通訳) |
(2)講演及びパネル討論の概要
別紙参照
平成13年3月13日
(社)日本原子力産業会議
主催: | 原子力平和利用・核不拡散政策研究会 |
後援: | 原子力委員会、文部科学省、外務省、経済産業省 |
日時: | 平成13年3月7日(水)、8日(木) |
会場: | 麹町会館:東京都千代田区平河町2−4−3 |
形式: | 英語によるパネル討論(日英同時通訳) |
参加者: | 202名(パネリスト等20, 大学関係者17、プレス関係者5,大使館,海外関連35, 政府関係者15を含む) |
開会セッション
黒澤 満原子力平和利用・核不拡散政策研究会座長、今村 努文部科学省研究開発局長の開会挨拶のあと下山俊次 日本原子力発電(株)最高顧問から「日本の原子力長期計画と核不拡散」と題して開会スピーチが行われた。これは氏が共同座長を勤められた長期計画策定会議第六分科会の報告を核不拡散に重点をおいて説明されたものである。
次に「核不拡散体制の強化−原子力平和利用推進の動機」としてIAEA理事会フランス理事(原子力供給グループ議長)のP.ティボーにより特別講演が行われた。この講演は原子力平和利用の促進に係わる核不拡散の重要性を強調、過去10年のこの分野での成果をレビューし、これから10年の挑戦とし、輸出管理の手直しと拡大、追加議定書の批准の拡大と影響、次世代の原子炉の開発、NPT体制外の国との問題を挙げた。
第1パネル: 核不拡散レジームと今後の展開
キーノートスピーチ:
1. | 「不拡散体制における米国政策」 R. ゴットメラー 米国カーネギー財団上級研究員 |
2. | 「核不拡散体制と2000年NPT再検討会議」 黒澤 満 大阪大学大学院国際公共政策研究科教授 |
3. | 「原子力の必要性と拡散についての誤解」 R.チダンバラン 前インド原子力委員会委員長 |
4. | 「CTBTの未発効状態打開の道を探る」 浅田正彦 京都大学大学院法学研究科教授 |
1) | 米国でのブッシュ政権でのNPT体制の今後、特にCTBT批准の可能性:Shaliashvili reportの意義。来年批准と言うような話では無い。しかしNMDとの関連などで取引上批准される可能性はある。ジュネーブでのCD会議の活性化の方法:ウイーンかニューヨークへ移す? |
2) | NMDの進み方と核軍縮との関連:現在はNMD技術そのものも確立しておらず、4年掛かると次の政権を見越した話になる。また通常兵器の改良へ向かう可能性もある。 |
3) | ロシア:ABM条約は礎石との立場は変わらない。 |
4) | インドのCTBTの批准は最後になるか? |
キーノートスピーチ:
1. | 「IAEA保障措置の発展」 P.デ・クラーク 国際原子力機関 渉外・政策調整室長 |
2. | 「国際保障措置の見通し−その課題とは何か−」 G.シュタイン ドイツユーリッヒ研究所 システム解析・技術評価部副部長 |
3. | 「保障措置経験と将来展望、そして方向性」 岩永雅之 核燃料サイクル開発機構 国際・核物質管理部長 |
1) | Trilateral Initiativeの現状についての説明:技術面、法律面での問題は片付いた。現在は解体プルトニウムについての全体像が明らかになるのを待っている状態、2002年にMayakで実施を開始する計画。 |
2) | NPT加盟国の中での核拡散の脅威に対しては追加議定書が最も良い対策、しかし批准国はいまだに8カ国。これをいかに増やすか?その方策は?EU15カ国は鋭意準備中。今の時点で余り気にすることはないのではとの意見もあり。INFCRC/153の時も同様な傾向であった。米国はイランを特に気にしている。日本はセミナー開催を特別拠出金でサポートする。 |
3) | IAEAの保障措置費用を将来とも増加させないのが命題。統合保障措置システムをIAEAでは定量的な手法と定性的な手法のbest combinationを狙う。米国政府内でも色々と議論があり方向つけに時間が掛かる。 |
4) | 岩永ペーパーのOption 2 (定量から定性的なアプローチへ), Option 3(核物質の検認から施設の運転の監視)の具体的な方法。IAEAがもっと検討すべきである。日本は日本の中の保障措置に費用が掛かることに関する理解が低い。IAEAから見れば費用負担は日本の利益のためと言える。 |
5) | 1993年にIAEAが93+3を考えたときの二つの要件のうち、保障措置システムの強化は追加議定書で手当てが出来たが、効率化、効果向上の要求は置き去りになっている。 |
6) | 保障措置システムに係わる技術開発は重要。欧州ではESARDAが役に立っている。またJNCの長年の実地の経験と技術開発を統合保障措置システムに活かすべき。 |
キーノートスピーチ:
1. | 「不法核密輸への取り組み」 V. オルロフ ロシアPIRセンター所長 |
2. | 「核物質防護−世界的な核不拡散の重要性の増加」 栗原弘善 核物質管理センター専務理事 |
3. | 「核物質防護−韓国の現状と国際基準強化に対する国際的努力」 金 和燮 韓国原子力研究所原子力政策部長 |
1) | 透明性と核物質防護との関連:盗取の弱点は貯蔵でなく輸送。ロシアでは輸送情報は秘密。日本は海上輸送のルートの国との関連なので公開にせざるを得ない。 |
2) | 米国はロシアの核施設のMCP&Aに今まで$170millionと多額の費用を掛けている。ロシア内での不正取引は1990年代の半ばから今では急激に減っているが、今後もロシアの独自の努力のみでは不十分でDOEの援助(これから10年で$3 billion、さらには欧州、日本の協力)を期待したい。 |
3) | 韓国はいまでも戦時体制下で国家保安法で決められて強力なシステムを持っているがこれは当然KEDOのサイトには適用出来ない。 |
4) | 軍縮、核不拡散について教育と訓練が必要。ロシアでは核不拡散の本を作り学部での教科書に使っている。また役人、研究者、メデイアなどへの短期強化コースもある。 |
5) | 密告の重要さを指摘する議論 |
6) | IAEAのPPに関する体制は貧弱すぎる。強化が必要。 |
7) | 核物質防護条約を強化する件は、国の主権との議論が避けられない。 |
キーノートスピーチ:
1. | 「再出発−不拡散体制のゼロからの構築」 R.ストラットフォード 米国国務省原子力局長 |
2. | 「多国間輸出管理体制における構造的・機能的脆弱性−日本の一つの見方」 山本武彦 早稲田大学政治経済学部教授 |
3. | 「原子力開発において我々が直面している問題」 陳 百松 中国核工業集団公司 科学技術・国際協力部上級技師 |
1) | 米国がNSG体制の崩壊に繋がると問題視しているインドのタラプール炉への58トンの燃料供給はロシアから見れば小さな問題?。NSGとしては今回安全条項を理由にしているのが問題。 |
2) | インドの意見ではNSGのガイドラインは行き過ぎ、NSGはgenuine な核拡散の危険を防止すべしとの意見。タラプールの電力に300万人の人が依存している。インドは実質核兵器国で拡散の対象にならない。核拡散の危険のある国は世界に僅かしか存在しない。ストラットフォードのKeynoteのタイトルには大賛成だが中味は違う。 |
3) | ロシアの追加のVVER-1000のインドへの供給もNSG違反との米国の主張。ロシアでは原子力大臣が輸出を希望しても国家安全保障委員会は核不拡散の点から同意しないこともあるとの国内問題。 |
4) | フルスコープ保障措置の適用が前提とのNSGの決まりを米国が強調しているがKEDOのケースはこれに反している。これに対する米国の主張はもっと危険な情勢を避けたものと言う。 |
5) | NSGの穴を埋めるのにはこれを紳士協定から拘束力のある協定に格上げする? |
6) | インドは"classic non-proliferator"と言われる位、機微な機器を輸出した例は無いし、PPもしっかりしている。 |
7) | 核不拡散体制をパッチワークで直していくより、本当に何が真の核拡散を考えて新しく立て直すべき。 |
1) | すべてのパネリストが鈴木提案に賛成。欧州でのESARDAの成功を分析すると地域的な民間の仕組みで情報と教育に重きをおいたことである。教育は重要な項目。 |
2) | 国際センターとなっているがPIRセンターの経験から言って日本が核になり隣国を招待するより方がやり易い。 |
3) | 民間の機関となれば台湾、DPRKなどを含めるなど、政府の研究所では無理なことが可能になる。WANOが良いお手本である。 |
4) | アジアでの原子力は今後20年で大きく伸びる。この原発は核拡散を起こす原因とはなり難い。欧州と違いアジアでは各国にそれぞれ文化、経済、生い立ちが違い独自性を持っている。EURATOMのような保障措置システムの構築は難しいであろう。アジアに存在していない民間のセンターの設立は歓迎。しかし始から余り完璧なものを狙わないほうが良い。 |
5) | その他、DOEのGeneration 4, IAEAのINPROの簡単な紹介。 |