• ＩＴＥＲを誘致する意義ないしメリットとしてはどのようなものがあるのか。
  （核融合開発室）誘致によるメリット、デメリットについては、ＩＴＥＲ計画懇談会において議論されている。日本にＩＴＥＲを誘致する意義として、今まで日本が主体的に行った国際プロジェクトが無いなか、ＩＴＥＲを誘致することができれば、まさに日本が責任をもって、人類の課題を解決するプロジェクトができることになり、それをもって人類に貢献できることが挙げられる。
  
• 今まで誘致に手を挙げている地域の方々は、そのような高まいなレベルの目的よりも、地元の地域振興のためになると考えているのだと思う。最近になって廃棄物に関連して誘致に反対する意見が出てきて、多少手の挙げ方が変わってきているように思う。そのようなことも踏まえ、今後の展開について懸念している。
  （核融合開発室）ご指摘のように最初の段階では、廃棄物の問題等が見えていなかったが、一昨年から丸２年かけて核融合会議の下にある戦略検討会において、ＩＴＥＲ計画を進めていくとどんな意義があるのか、あるいは廃棄物の総量はどうか等さまざまな検討を行い、今年の５月にとりまとめた。そこで廃棄物の総量は３万９千トンになることが明らかになった。地元の方々には、そういったことも前提として、正確な情報を提供してきている。正確な情報提供を受けて、どういった判断をするかについては、各自治体の判断によることになると考える。
  
• 反対の立場をとる人々も組織的になってきたとの印象を持っている。
  （核融合開発室）自治体の実施したアンケート結果を見ると、反対といっても大半はＩＴＥＲとはどのようなものか理解せずに反対と言っているようである。
  
• 何故、自治体はＩＴＥＲを誘致したいと考えているのか。
  
• 地元の農産業等がうまくいかず、ＩＴＥＲを誘致すればいろいろな面で便利になると考えられているのではないか。
  
• ＩＴＥＲが誘致されると、具体的にどんなメリットが地元にはあるのか。この点をまじめに考えておかないと、後で話が違ったということになりかねない。
  
• ＩＴＥＲが何かわからないが、とにかく誘致すればよいと考えられているのではあれば、問題である。
  
• 国際機関の場合、特権・免除の問題もあり、地元で何かトラブルがあった場合でも、簡単に出て行けというわけにもいかなくなる。全ての情報を提供した上でご支援を頂くことが重要。
  
  
• 専門家が技術的な波及効果などについて検討する分には何の問題もないが、社会的に受け入れられるプロジェクトにしていくためには、きちっとした対応が必要になる。ＩＴＥＲの建設費が４,７００億円と言っても、全てが地元に還元されるわけではなく、また、雇用についても期待通りになるかはわからない。ＩＴＥＲにおいて思った程のメリットがなかったと思われた場合に、原子力全体に悪い影響を及ぼす可能性もある。したがって、国民、地元へはメリット、デメリットについてきちんと説明しておくことが重要である。米国がＩＴＥＲプロジェクトから離れたのは、ＩＴＥＲのデメリット部分を評価したからではないかとも言える。日本のイニシアティブで国際プロジェクトを進めるという高まいな国際貢献理念というのであれば、国民にきちっとした説明が必要である。
  （審議官）４,７００億円というのは施設だけの費用であり、土地取得、土木工事などは別に地元に還元されることになると思う。ただし、雇用の効果については不透明。
  
• 用地買収こそ難しい問題であり、お金は地元に落ちるかもしれないが、そんなにスムーズにいく話しではないと思う。
  
• ＩＴＥＲ計画については、負担をできるだけ少なくして成果を得られればそれが一番良いことである。
  （審議官）費用と利益の分担の問題については、現在の非公式政府間協議でも日本とＥＵで考え方に違いがあり、本格的な交渉になれば相当もめると思う。
  
• 日本に誘致すると言うでのあれば、相当細かい詰めが必要である。
  
• 原子力委員会として何度もコメントしてきたことであるが、公式政府間協議ということになれば、現在の非公式政府間協議のメンバーだけでは、中身の議論をするには不十分である。
  
• 最終報告書と今回説明された概要との関係はどうなっているのか。原子力委員会は公開で行われており、報告書そのものが非公開とすると、その概要について位置付けを確認したい。
  （核融合開発室）最終報告書の基本的な考え方を要約したのが、概要である。最終報告書については、三極間で合意を得たがあくまでノン・コミッタルなものであり、その後の外交交渉により今後これとは異なる考え方が出されるかもしれない。つまり三極間の共通理解ではあるが、拘束するものではなく途中段階のものということで、三極間で話し合い、報告書を非公開とすることになった。ただし、どんな話し合いが行われたか全く国民に示せないのでは困るので、全体のエッセンス、基本的考え方については公開できるよう取り決め、概要としてまとめたものである。
  
• この概要を出すことについては、三極間で話し合い了承を受けたものと理解してよいのか。
  （核融合開発室）その通りである。
  
  
• 地元への説明に関連して、いつかの時点でサイト選定の条件を説明することになると思うが、具体的な計画の中身の説明をするのは何時になるのか。サイトが決まらないと説明できない面がある一方で、サイトを決めるためには、説明が必要である。
  （核融合開発室）サイト選定については、二段階のプロセスがある。日本に誘致するか否かを決める段階と具体的な候補地を決める段階である。
  
• 具体的な候補地を決める段階では、計画の中身を説明し理解と支援を頂く必要があると思うがどうか。
  （核融合開発室）来年３月頃を目途に日本に誘致するか否かの決定を行い、誘致するという方針が出た場合には、誘致場所を確定しなければならない。そのための基準作りが４月以降行われることになる。その基準を自治体の方々に説明した上で、各自治体へ調査協力依頼をし、各自治体から回答書をもらって選定を進めることになると思う。
  
• ＩＴＥＲについては、地元でも専門家を呼んで説明するなどしているが、専門家はＩＴＥＲのいいところしか説明しないので、地元にはいい話だけが広がっていると思う。いい話も悪い話もきちんと網羅した国の見解を示すべき。

• ＩＴＥＲ関連事項についてのＥＵ関係者との会談では、仏国も含めＥＵ自身は誘致を決めているわけではなく、ＥＵの中には核融合について反対の国もあり、様子を見ながら検討している段階ということであった。
• 将来ＥＵが誘致を決めた時には、日本が誘致を決めた場合の強力なライバルになると思う。ＥＵ全体では将来さらに多くの国々が参加する見込みで、日本が誘致に成功することは大変難しいことであることを、常に覚悟しておかねばならない。
• ラムルーエネルギー総局長との会談では、ＥＵにおいてグリーンペーパーというものを作成しており、その中で原子力は長期的なエネルギー供給の安定性、環境負荷低減の観点からプラスの面もあるので検討すべきという、議論をする上でのたたき台をまとめたとのことであった。来年日本に来るので、原子力委員会とも意見交換をしたいとの要望があった。
• ＩＡＥＡでの会談では、日本は相当の費用負担をしているのに職員数は少なく、また、高級人事がほとんどない点を指摘した。また、日本にリクルートの調査団を送りたいとの提案に対しては、具体的な成果、実績の目途のあるものについてのみ歓迎すると発言した。

• 予算についても、六ヶ所再処理工場の査察に伴い費用増加が見込まれるとの発言があったが、結果として六ヶ所再処理工場が稼働すれば保障措置予算が増加するのはわかるが、それはあくまで結果論であって、費用増加を六ヶ所再処理工場のせいにするのは本末転倒の話である。また、保障措置とは世界のためにやっているのであり、日本だけのためにやっているわけではないこと等を発言した。また、費用低減の観点では、軽水炉での査察を減らすべきであり、この点を態度で示さない限り予算について前向きな検討はできないと発言した。
• ＩＡＥＡ等の国際機関については、日本は相当な費用負担をしているので、国益も含め日本の原子力のために最大限活用するという精神が必要である。
• 実体的な予算、人員等、ＩＡＥＡの在り方を見直す段階にきていると思う。
• ＩＡＥＡへ人員を出す場合には、日本のバックアップ体制を確立し、安心して活動できる環境の整備も重要。
• 来年からの新たな原子力委員会の体制において、国際機関への対応というものは、かなりのウェートを占める重要な問題だと思う。今までは問題を認識しつつもその対応について苦慮しているというのが実状であると思う。
• ＥＵがどのような方針をとるかについては、いろいろわからない点がある。例えば、核分裂に関する分野は、各国ともかなり自国内で意志決定できるようであるが、核融合については、ＥＵ全体でということになっている。その辺が難しいところ。
• ＩＴＥＲについては、各国バラバラに対応されたのではまとまらないので、その点については大丈夫か確認したところ、ＥＵ関係者からは、いろいろ根回しが必要であるがＥＵ委員会は締結のマンデートをもっているとの回答があった。
• ＩＡＥＡはウィーンに本部があるにもかかわらず、オーストリア自体は原子力に強烈に反対している。オーストリア国民から見たＩＡＥＡの存在はどのようなものか。
• 国際機関というのは、冷戦構造下における安全保障を確保する手段の一つという感覚があるのかもしれない。
• ＩＴＥＲについて、極の問題も考える必要がある。ＥＵ以外にも例えば加国が参加すれば米国は関係ないということはないと思う。日本も一国だけでやるのかという点も考えておく必要がある。韓国はもちろん中国も関心がないわけではない。こういった点を議論すべき時期にきているのかどうか。
• その点についは、もう少し先の話しではないか。
• いずれしろ、日本だけ単独でというのも、なかなか難しい面がある。
• 国内でのコンセンサスを得ることも重要。

（４）原子力委員会専門委員の変更について
　標記の件については、人事案件であることから非公開審議とした上で、事務局より資料４に基づき説明がなされ、一部修正の上了承された。

　なお、事務局より次週は１２月１９日（火）に本会議を１０：３０より開催する方向で調整したい旨、発言があった。