ウラン廃棄物処理処分の
基本的考え方について

 

 

 

平成12年12月14日
原子力委員会
原子力バックエンド対策専門部会


目 次

はじめに

第1章 ウラン廃棄物処分に関する安全確保の考え方

1.ウラン廃棄物の発生の現状と将来の見通し
(1)発生の現状
(2)将来の見通し
(3)廃棄物発生量試算について

2.対象廃棄物の特徴
(1)対象廃棄物の発生形態及び処理
(2)対象廃棄物の特徴
(3)ウラン核種の特徴
(4)他の放射性廃棄物との比較について

3.対象廃棄物の処分方策の検討に当たっての考え方(考慮すべき事項)
(1)放射性廃棄物処分の基本的考え方
(2)我が国でこれまでに検討されてきた処分方法
(3)国際放射線防護委員会(ICRP)における放射線防護の考え方
(4)海外での処分事例

4.対象廃棄物の特徴を考慮した処理処分の基本的考え方
(1)検討に当たって考慮すべき対象廃棄物の特徴
(2)対象廃棄物の特徴を考慮した処理の基本的考え方
(3)対象廃棄物の特徴を考慮した処分の基本的考え方
(4)安全確保の基本的考え方について

5.対象廃棄物の安全かつ合理的な処分の可能性について
(1)クリアランスレベル以下の処分の可能性について
(2)素掘り処分及びコンクリートピット処分の可能性について
(3)地下利用に余裕を持った深度への処分などの可能性について
(4)処分に当たって留意すべき事項

6.技術開発課題について
(1)処分前の技術開発課題
(2)処分時及び処分後の技術開発課題

7. まとめ

第2章 ウラン廃棄物に相当するRI・研究所等廃棄物について
1.発生の現状と将来の見通し
2.廃棄物の特徴
3.処分の基本的考え方

第3章 処分事業の責任分担の在り方、諸制度の整備などについて
1.責任分担の在り方と実施体制
2.処分費用の確保
3.安全確保に係わる関係法令などの整備
4.実施スケジュール
5.技術開発課題への取組
6.積極的な情報公開、情報提供

終わりに

参考資料

用語解説他


はじめに

 原子炉施設の運転に使用されるウラン燃料は、その原料となるウラン鉱石から、製錬、転換、濃縮、再転換、成型加工などの工程を経て製造される。これらの各工程を行う施設の運転・解体に伴い放射性廃棄物が発生する。これらの放射性廃棄物をウラン廃棄物という。
 ウラン廃棄物は、ウランが付着したものやウランを含む物質が付着したものなどであり、含まれる放射性核種が実質的にウランに限定されている。ウランは、半減期が長く時間の経過による放射性物質の低減が期待できないこと、ウラン核種が放射線を放出して別の核種(子孫核種)が生成し、累積することなど、これまで処分方策が検討されてきた放射性廃棄物に含まれる放射性核種と異なる特徴を有している。
 現在、我が国で、このようなウラン廃棄物は、民間のウラン燃料加工施設、日本原燃(株)のウラン濃縮施設、核燃料サイクル開発機構(以下「サイクル機構」という。)のウラン濃縮施設などの運転に伴い発生しており、それぞれの廃棄物貯蔵施設内に保管されている。将来的には、これらの施設の解体によってもウラン廃棄物が発生する。さらに、「RI・研究所等廃棄物」1)には、ウラン廃棄物に相当する放射性廃棄物が存在しており、これらについては、ウラン廃棄物の処分方策に準じて基準などの整備を順次実施する必要があるとされている。


1) )これらの廃棄物の処分方策は、「RI・研究所等廃棄物処理処分の基本的考え方」原子力委員会(平成10年5月28日)に示されている。

 これらの廃棄物については、これまで処分方策が確立されておらず、その処分制度は整備されていない。このため、上述のような廃棄物の発生状況に鑑み、廃棄物の安全かつ合理的な処分方策を確立するとともに諸制度の整備を図るための具体的な取組を早急かつ着実に進める必要がある。
 このような状況を踏まえ、原子力委員会原子力バックエンド対策専門部会は、「ウランの製錬、転換、濃縮、再転換、成型加工などの各施設の運転・解体に伴い発生する放射性廃棄物(ウラン廃棄物)」及び「RI・研究所等廃棄物のうちウラン廃棄物に相当する放射性廃棄物」を対象として、既に検討されている他の放射性廃棄物に対する処分方策も参考にしつつ、その特徴を踏まえた安全かつ合理的と考えられる処分の基本的考え方について検討を行い、処分の可能性を示した。
 第1章では、ウランの製錬、転換、濃縮、再転換、成型加工などの各施設から発生するウラン廃棄物について検討を行った。この結果を踏まえて、第2章では、RI・研究所等廃棄物のうちウラン廃棄物に相当する放射性廃棄物について検討を行った。第3章では、処分事業の責任分担及び諸制度の整備などについて検討を行った。
 なお、本報告書を読まれる方の便に供するため、巻末に参考資料及び関連する用語の解説を添付した。
 

 


第1章 ウラン廃棄物処分に関する安全確保の考え方

1.ウラン廃棄物の発生の現状と将来の見通
(1)発生の現状

 ウラン廃棄物は、民間のウラン燃料加工施設、日本原燃(株)のウラン濃縮施設、サイクル機構2)のウラン濃縮施設などの運転に伴って発生し、一部については焼却処理が行われているが、固型化などの処理は行われておらず、焼却処理の結果発生する焼却灰も含めて、未処理のまま廃棄物貯蔵施設内に保管されている。これらの廃棄物の平成10年度末(1999年3月末)時点までの累積発生量は、未処理の廃棄物として200㍑ドラム缶で約8万4千本(累積貯蔵量実績の調査による)となっている。
(参考資料-1)

2)サイクル機構においては、濃縮施設などから発生したウラン廃棄物の他に、研究開発活動に伴って発生したRI・研究所等廃棄物のうちウラン廃棄物に相当するものも保管されている。本検討では、これらを一括して発生量に含めることとした。

(2)将来の見通し
 将来的には、これらの施設の運転に伴って発生する廃棄物に加えて、これらの施設の解体やウラン濃縮施設の遠心分離機(濃縮のために使用される機器)の取り替えが行われることも考えられ、それらに伴うウラン廃棄物の発生が予想される。

(3)廃棄物発生量試算について
 ウラン廃棄物の今後の発生量として、2030年度末時点の主要発生施設(民間のウラン燃料加工施設、日本原燃(株)のウラン濃縮施設、サイクル機構のウラン濃縮施設など)から発生する廃棄物(以下「対象廃棄物」という。)の累積量を試算した。この試算においては、各施設の運転廃棄物の他に、ウラン燃料加工施設及びサイクル機構の関連施設などの解体やウラン濃縮施設の遠心分離機の取り替えについても想定し、これらに伴い発生する廃棄物も含めることとした。
 この結果、これらの累積発生量(可燃物については焼却処理を仮定)は、200㍑ドラム缶換算で約56万本になると推定される。このうち、約6割は、施設の解体及び遠心分離機の取り替えにより発生するものと予想される。 
(参考資料-2)

2.対象廃棄物の特徴
(1)対象廃棄物の発生形態及び処理
 対象廃棄物の主な発生形態は、気体廃棄物の処理によって発生する使用済排気フィルター、液体廃棄物の処理などから生ずるスラッジ(水分を含んだ粉粒状の物質)、作業着、手袋、木材などの可燃性雑固体廃棄物、ゴム靴、ビニールホースなどの難燃性雑固体廃棄物、金属、コンクリート、ガラスなどの不燃性雑固体廃棄物、使用済遠心分離機である。
 これらの廃棄物のうち、可燃性雑固体廃棄物の一部は焼却処理が行われ、焼却灰となっているが、それ以外の廃棄物については、処理が行われていない。なお、除染処理については、対象廃棄物への適用性などについて様々な研究が行われている。
(参考資料-2)

(2)対象廃棄物の特徴
 対象廃棄物は、ウランが付着したものやウランを含む物質が付着したものなど、含まれる核種が実質的にウランに限定されており、これまでに検討されてきた廃棄物に含まれているような放射化による放射性核種や核分裂による放射性核種が含まれていない3)という特徴を有する。具体的な形態は、金属、プラスチックなどの表面にウランが付着した廃棄物及び焼却灰、スラッジなどのウランが媒体中に分散して含まれる廃棄物に分類される。
 放射性核種としての半減期が長いウランは、放射線を発生する能力が小さいため、物品に付着するなどしたウランについては、拭き取る、溶液に浸すなどの物理的・化学的な方法を用いて取り除くこと(除染処理)によって、比較的効率よく、廃棄物に残存するウランからの放射線を小さくすることができると考えられる。具体的には、対象廃棄物のうち、ウランが表面に付着したものは高い除染効果が期待でき、平滑で単純な形状のものは、ほぼ完全にウランを除去することも可能と考えられる。
 対象廃棄物に含まれるウランの濃度は、除染前で1010ベクレル毎トン(Bq/t)オーダーから、自然界にも存在するレベルの10Bq/t以下まで幅広く分布している。

(3)ウラン核種の特徴
 ウランは、土中などにも有意に存在する天然起源の放射性核種であること、半減期が長く(例えばウラン238(238U)の半減期は約45億年)時間の経過による放射性物質の低減が期待できないこと、放射線を発生する能力が小さく比較的容易に除染できると考えられること、酸化的な環境では溶解度が高いことなどの特徴を有している。また、ウランの性状によっては資源価値を持つこと、精製されたウラン4)については子孫核種の生成及び累積によって数十万年間にわたって合計放射性核種濃度が増大すること、存在する量によっては放射線以外の因子(例えば重金属としての性質)による影響が問題となる可能性があることなどの特徴も有している。

3)対象廃棄物には、ごく少量ではあるがウラン核種が放射線を放出して別の放射性核種になったもの(子孫核種)が含まれる。また、使用済燃料の再処理によって回収されたウランは人工放射性核種を伴うため、回収ウランの使用に伴い発生する一部の対象廃棄物には、ごく少量の人工放射性核種も含まれる。処分方策の検討に当たっては、これらの核種がウランと異なる特徴を有することにも留意する必要がある。(第1章4.(1)を参照のこと)
4)天然に存在する状態では、ウランは子孫核種とともに存在し、その放射性核種濃度はウラン核種と子孫核種の放射性核種濃度を合計したものとなる。ウラン燃料として使用される場合には、ウランが抽出された段階で子孫核種が分離されるため、放射性核種濃度は天然に存在する状態よりも低くなる。

 ウラン核種の一つである238Uの土中の平均的な濃度は、40Bq/kg(原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)1993年報告:放射平衡を前提とすると、全ウラン濃度は約80Bq/kg=8×104Bq/t)とされている。また、ウランなどの自然放射性核種による外部被ばく線量は、日本の約0.32ミリシーベルト毎年(mSv/年)を含む13カ国の平均で約0.45mSv/年(このうちウランの寄与は約1/3)になるとされている。土中に含まれるウランなどの自然放射性核種の濃度には地域差があり、それらによる大地放射線の被ばくへの寄与は、上記UNSCEARの報告をもとに試算する(吸収線量から被ばく線量への換算係数0.7シーベルト毎グレイ(Sv/Gy)を用いた)と、国別の平均値で約0.15mSv/年~0.98mSv/年となる。また、宇宙及び大地からの放射線と食物摂取によって受ける放射線を合計した放射線量の国内県別の地域差は、最大0.38mSv/年程度とされている。
(参考資料-3)
 精製されたウラン及びその子孫核種の合計放射性核種濃度の経時変化を見ると、初期はほとんど変化せず、数千年後から緩やかに増加し、数十万年後にピークあるいは平衡に達する。このような放射性核種濃度の増大が生じるのは、ウラン核種が放射線を放出して別の核種(子孫核種)になってもその子孫核種も放射性であり、これらが形成する崩壊系列が数十万年かけて放射平衡に達するためである。ウランの主要な崩壊系列には、238Uでは13核種の、235Uでは10核種の放射性子孫核種がある。これらの子孫核種のうち、比較的短期間で存在比が平衡に達するもの(238Uでは3核種、235Uでは1核種)は、当初から対象廃棄物中に含まれているが、これ以外の子孫核種(238Uでは10核種、235Uでは9核種)は、長期間かけて生成及び累積していく。また、放射性子孫核種の中には、気体状のラドン(Rn)も存在する。
(参考資料-4)

(4)他の放射性廃棄物との比較について
 以上に述べてきたとおり、対象廃棄物は他の放射性廃棄物と比較して異なる性質を有している。対象廃棄物の処分方策の検討に当たって重要と考えられるものを以下に挙げる。
     
  •  対象廃棄物の放射性核種濃度は比較的低く、特にベータガンマ(βγ)核種濃度は低い。

  •  
  •  他の放射性廃棄物が時間とともに放射性核種濃度が減少していくのに対して、対象廃棄物の放射性核種濃度は減少せず、千年程度経過すると、ウランの子孫核種が生成及び累積することから徐々に増加し、数十万年でピークとなる。

  •  
  •  対象廃棄物は、時間の経過に伴う放射性核種濃度の変化が小さく、他の放射性廃棄物が千分の一から十万分の一以下に減衰する間に、十倍程度増加する。

  •  
  •  気体状の子孫核種であるラドンが生成し、条件によっては有意な被ばく線量を与える可能性がある。

  •  
  •  濃度及び存在する量によってはウランの放射線以外の因子(例えば重金属としての性質)による影響が問題となる可能性について考慮する必要がある。

 これらの性質から、対象廃棄物については、放射線の影響は小さいと考えられるが、放射線の影響が最も大きくなる時期が数十万年後になる可能性があること、放射線以外の観点から処分可能濃度が制限される可能性があることを、処分方策の検討に当たって念頭におく必要がある。
(参考資料-5)

3.対象廃棄物の処分方策の検討に当たっての考え方(考慮すべき事項)
(1)放射性廃棄物処分の基本的考え方
 放射性廃棄物対策は、一般の廃棄物と同様に、発生量の抑制が大前提であり、廃棄物の発生量の低減や有効利用に努めることが重要である。
 放射性廃棄物の処分は、廃棄物に含まれる放射性核種が生活環境に対して影響を及ぼすことを防止することが必要であり、このためには、処分方法に適した形態に処理した後、放射性物質から放出される放射線の影響が安全上支障のないレベルになるように処分することが基本となる。したがって、処分の方法は、廃棄物の特徴、特にこれに含まれる放射性核種の種類及び濃度を考慮して設定する必要がある。

(2)我が国でこれまでに検討されてきた処分方法
 放射性廃棄物の処分については、これまで原子炉施設から発生する低レベル放射性廃棄物を中心に、上記の基本的考え方に沿って検討が進められ、方針が示されてきた。
 現在までに示されている処分方法には、原子炉施設の運転に伴い発生し放射性核種濃度が現行の政令濃度上限値5)以下の低レベル放射性廃棄物について、「放射性廃棄物の規制に基づいたコンクリートピットなどの人工構築物を設けない簡易な方法(素掘り)による浅地中処分」6)(以下「素掘り処分」という。)及び「浅地中のコンクリートピットへの処分」7)(以下「コンクリートピット処分」という。)がある。また、βγ核種濃度が現行の政令濃度上限値を超える低レベル放射性廃棄物についての処分方法として、「一般的であると考えられる地下利用に対して十分余裕を持った深度(例えば50~100m程度)への処分」(以下「地下利用に余裕を持った深度への処分」という。)が予定されている。
(参考資料-6)

5)原子炉施設から発生し処分容器に固型化された放射性廃棄物を、コンクリートピットなどの人工構築物を用いた処分施設を設置して浅地中処分する場合などの濃度上限値。コンクリートピット処分ではα核種の合計値とβγ核種の6核種(うち1核種は放射化されたコンクリート廃棄物のみに適用)について、素掘り処分ではα核種の合計値とβγ核種の8核種(うち2核種は放射化されたコンクリート廃棄物のみに適用)について、濃度上限値が定められている。
6)日本原子力研究所の動力試験炉(JPDR)の解体に伴って発生した廃棄物のうち、放射性核種濃度が極めて低いコンクリート廃棄物(素掘り処分について定められた政令濃度上限値以下のもの)について、埋設実地試験を実施中。
7)日本原燃(株)六ヶ所低レベル放射性廃棄物埋設センターにおいて実施中。

 高レベル放射性廃棄物の処分方法は、ガラス固化体を地下数百mより深い地層中あるいは岩体中に隔離する「地層処分」としている。現在、地層処分に関しては、サイクル機構を中心として地下深部の岩石や地下水についての調査・研究、地下深部で処分を行うための技術開発及び処分の安全性を評価するための研究が進められている。
 対象廃棄物は、前述のとおり放射性核種の濃度が幅広い範囲に分布していることから、放射性廃棄物処分の基本的考え方を踏まえ、放射性核種の濃度などにより適切に区分し、その区分に応じた合理的な処分を検討する必要がある。

(3)国際放射線防護委員会(ICRP)における放射線防護の考え方
 放射性廃棄物の処理処分に当たっては、放射線の影響の防止(放射線防護)を図ることが基本となる。放射線防護の基本的考え方はICRPなどによって勧告されており、「行為の正当化」、「放射線防護の最適化」、「線量あるいはリスク限度の遵守」という3原則に要約される。このICRPの勧告は、IAEAなどの国際機関、日本を含む世界各国の放射線防護方策の検討において尊重されており、対象廃棄物処理処分の具体的方策の検討に当たっても、このような国際的なコンセンサスを基礎とした枠組みとの整合性を考慮する必要がある。
 ICRPなどでは、長寿命固体放射性廃棄物の処分に対する放射線防護の考え方についても検討されており、ICRPが最近出版した勧告(Publ.81:Radiation Protection Recommendations as Applied to the Disposal of Long-Lived Solid Radioactive Waste, 2000 「長寿命放射性固体廃棄物の処分に対して適用されるものとしての放射線防護勧告」、仮訳)では、次のような考え方が示されている。
     
  •  被ばくを評価する方法として、線量と事象の発生可能性を別個に分けて評価する方法が考えられる。この方法では、その放射線学的影響を評価する際、代表的なシナリオに対しては線量拘束値と比較され、発生する可能性の小さいシナリオに対しては、結果として生じる線量とそれらの発生可能性を別々に考察して評価することになる。この方法は、そのシナリオが起こる確率の正確な定量化を要求せず、それらの可能性のおおよその大きさと、それらの放射線学的影響の評価が要求される。

  •  
  •  自然のプロセスに伴う被ばくと、人間侵入による被ばくは区別して考えるべきである。人間侵入は、偶然の侵入のみが考慮されるべきであり、埋設場へ故意に侵入したことに伴う放射線学的結果は、侵入者の責任である。自然のプロセスから生じると評価された線量又はリスクは、0.3mSv/年という線量拘束値8)、あるいはそれと等価のリスクである約10-5/年と比較されるべきである。
     
  •  人間侵入が、サイト周辺に居住する人々に対して、介入(現在ある被ばくの原因に影響を与えて被ばくを低減する活動)がほとんど常に正当化されるような線量を生じるような状況では、処分場の開発段階において人間侵入の可能性を低減させる、あるいはその影響を制限するための合理的努力が行われるべきである。

 なお、線量拘束値は、「ICRP1990年勧告(Publ.60,1991)」の中で示された概念であり、放射線防護の最適化を判断する際には、線量拘束値を超えない範囲で最適化が行われなければならないとされている。その後、ICRPは「放射性廃棄物の処分に対する放射線防護の方策(Publ.77,1998)」の中で、廃棄物処分からの公衆被ばくの管理に関する拘束値は、1mSv/年以下とすべきであり、約0.3mSv/年を超えない値が適切であろうと勧告している。
(参考資料-7)

8)放射性廃棄物の処分行為に対する線量拘束値は0.3mSv/年を超えるべきではないとICRPは勧告している(Publ.77,1998 及び Publ.81,2000)。

(4)海外での処分事例
 対象廃棄物は、海外においては、独立した放射性廃棄物の区分として扱われておらず、処分方策・安全規制なども原子炉施設から発生する放射性廃棄物をはじめとする低レベル放射性廃棄物の一種として扱われている例が多い。
 ウランを含む放射性廃棄物の処分が実際に行われている浅地中処分場の例としては、低レベル放射性廃棄物の浅地中処分場又は一般及び産業廃棄物処分場が挙げられる。前者の処分は、米国(素掘り処分相当)、英国(かつては素掘り処分相当であったが、現在はコンクリートピット処分相当)、仏国(コンクリートピット処分相当)で行われており、後者は、米国、英国、スウェーデン(いずれも素掘り処分相当)で行われている。
 各国の状況を見ると、低レベル放射性廃棄物の浅地中処分場の規制における線量基準は国により差があるが、0.25~0.3mSv/年の範囲である。受入濃度上限値は、必ずしもウランを含む放射性廃棄物を特定していないが、α核種又は核分裂性物質として規定されている。これらの受入濃度上限値の一部は、核燃料物質の臨界管理の観点から決定されていると考えられる(受入濃度上限値を基にある一定の条件で換算し、ウラン核種の処分濃度限度を試算すると10~10Bq/tオーダーとなる)。処分場の管理については、英国において現在進められている処分場閉鎖後の安全解析評価の中で、処分終了後100年間操業期間後の管理を行って処分場を閉鎖し、さらにその後100年間の制度的(受動的)管理を行うことが検討されており、管理終了後は管理期間中と異なる基準が定められている。また、仏国では、基本安全規則で300年の管理期間が定められている。
 一方、一般及び産業廃棄物処分場の一部の受入限度は、重量濃度と総量で規定されている(ウラン核種の処分濃度限度は、換算の結果10Bq/tオーダーとなる)。

(参考資料-8)

4.対象廃棄物の特徴を考慮した処理処分の基本的考え方
(1)検討に当たって考慮すべき対象廃棄物の特徴
 既に述べたとおり、ウラン核種は、これまでに処分方策の検討が行われてきた放射性廃棄物に含まれる核種とは異なる特徴がある。特に、天然にも存在すること、半減期が長く時間の経過による放射性物質の低減が期待できないこと、放射性子孫核種が生成及び累積することなどはウラン核種の顕著な特徴である。これらの特徴は、対象廃棄物の処分方策を検討する上で重要である。
 また、放射線防護以外の観点、例えばウランの重金属としての性質などによる制約から処分ウラン濃度が制限される可能性もあり、これらについても考慮する必要がある。
 なお、対象廃棄物には、使用済燃料を再処理することによって回収された回収ウランの使用に伴って発生するものも存在する。これは、天然に存在するウラン核種以外に人工放射性核種を伴っていることから核種組成が異なるが、基本的に処理処分方策を決定づける核種がウラン核種であれば、回収ウラン以外の使用に伴って発生する対象廃棄物と同様に扱うことが可能である9)。また、対象廃棄物に含まれるウランには、濃縮ウラン、天然ウラン、劣化ウランなど、それぞれ同位体組成が異なるものが含まれているが、それぞれの線量評価試算を行った結果によると、これらにおける同位体組成の違いは、線量評価に大きな影響を与えるものではない。したがって、同位体組成の違いについては、処理処分方策の基本的考え方の検討に当たって特別の配慮が必要となるものではないと考えられる。
(参考資料-9)

9)ウラン核種以外の人工放射性核種の影響が、ウラン核種の影響よりも大きくなると考えられる場合は、「超ウラン核種を含む放射性廃棄物処理処分の基本的考え方」原子力委員会(平成12年3月23日)に基づき検討される。

(2)対象廃棄物の特徴を考慮した処理の基本的考え方
 廃棄物処理の基本的考え方は、取扱い作業の安全性や容易性、処分の安全性への寄与などを考慮して、合理的な廃棄体の形態及び処理の方式を選択するということである。例えば、原子力発電所から発生する低レベル放射性廃棄物における廃棄体としては、濃縮廃液を200㍑の金属製ドラム缶にセメントなどの固型化材によって安定に固型化したものがある。
 対象廃棄物の場合、放射性廃棄物そのものの発生量を低減するため、放射線管理区域に持ち込む物品の制限などに努めた上で、具体的な処理の方法としては、廃棄物の性状及び濃度に応じた分別、ウランの除染、廃棄物の減容化・安定化などが考えられる。
 除染に関しては、ウラン核種が金属などの表面に付着している場合には、除染が比較的容易と考えられ、高い除染効果が期待できる。焼却灰やスラッジのように、ウラン核種が物理的・化学的に媒体に取り込まれている場合には除染が困難であるが、これらについても除染係数100程度までの除染が可能であるとの試験結果が得られている例もある。
 一般的に、除染処理に期待する効果は、廃棄物の放射性核種濃度を低減することにより、濃度に応じた処分方法の選択肢が広がること、クリアランスレベル(放射性物質として扱う必要がないものを区分するレベル)まで除染することにより、放射性廃棄物量の低減が可能となることである。また、ウランは、資源としての性格も有しており、特に濃縮ウランは資源的価値が高い。これらの観点から、合理的に可能な範囲で対象廃棄物からウランを除染回収することを検討する必要がある。
 ただし、除染処理は、クリアランスレベルの達成に伴う放射性廃棄物量の低減、処分方法の選択肢の拡大が期待される一方で、除染に伴う作業者の被ばく、除染に要する費用の増加及び二次廃棄物の発生などを考慮する必要があり、これらを総合的に判断した上で、適切な除染処理システムが検討されるべきである。
(参考資料-10)

(3)対象廃棄物の特徴を考慮した処分の基本的考え方
 これまでに、有意な期間内に十分な放射性核種濃度の低減が期待できる従来の低レベル放射性廃棄物の浅地中処分施設については、処分された廃棄物の放射性核種濃度の減衰に応じて管理を軽減し、10μSv/年(0.01mSv/年)の規制除外線量(昭和62年12月、放射線審議会、基本部会報告)を判断規準として、これを下回れば放射線障害防止の観点からの管理を終了できるという段階的管理の考え方が適用されている。
 ウランは半減期が長く(例えば238Uの半減期は約45億年)、子孫核種の生成及び累積があることから、廃棄物に含まれる放射性核種濃度の減衰が期待できない。したがって、従来の低レベル放射性廃棄物の処分について適用されていた段階的管理の考え方、すなわち、放射性核種濃度の減衰に応じて段階的に管理を行い一定の管理期間後に管理を終了するという考え方が適用できない。
 このことから、対象廃棄物については、除染処理による初期濃度の低減化を行い、合理的に可能な限りクリアランスレベル以下のものとすることが重要であるとともに、それ以外の処分の際には長期にわたって管理を継続することなど、管理の在り方についても検討する必要がある。
 また、処分に関する線量目標値については、ICRPなどにおける放射線防護の考え方や海外での処分事例を勘案し、公衆の線量限度の1mSv/年を守ることを基本として、適切な値を設定することが必要である。さらに、社会的、経済的事項を考慮しつつ、放射線防護の最適化の観点から、被ばくの可能性を合理的に達成できる限り、低く保つべきである。
 なお、ウランは天然にも普遍的に存在する放射性核種であり、大地からの平均的な自然放射線量約0.45mSv/年(外部被ばく線量)の約1/3は、ウランとその子孫核種からの寄与であるとされている。したがって、規制除外線量(10μSv/年)は、この大地からの平均的な自然放射線量と比較して小さく、対象廃棄物についての適切な線量目標値の設定に当たっては、この点についても考慮するべきである。
 対象廃棄物は、処分後の線量評価においてピークが現れる時期が数十万年後になるとの試算例があることから、評価に当たっては、時間の経過とともに考慮すべきシナリオ、モデルやパラメータに関する不確実性が大きくなることを考慮する必要がある。その際、ウランの子孫核種の一つである気体状のラドン及びその子孫核種による被ばく線量については、モデルやパラメータに関する不確実性の影響を特に大きく受けることも留意すべき事項である。

(4)安全確保の基本的考え方について
 低レベル放射性廃棄物の処分についての線量評価は、埋設された廃棄物に含まれる放射性核種が地下に浸透した雨水や地下水の中に浸出し、その後、地下を移動して河川などに流出したとした際に、その水を飲用などに利用すること(自然プロセスによって生じるシナリオ)に伴って生じ得る被ばく線量と、処分場跡地に人間が居住することや居住に先立って行われる建設活動など(人為的事象によって生じるシナリオ)に伴って生じ得る被ばく線量の評価という形で行われる。
 対象廃棄物の素掘り処分を想定して現行の政令濃度上限値の評価に準じた試算を行った結果、居住シナリオ、建設シナリオ、地下水移行シナリオの順に被ばく線量の試算値が低くなり(最大値で比較すると地下水移行シナリオは、居住シナリオの1万分の1のオーダーとなる)、対象廃棄物の処分の安全確保を図る上では、居住シナリオが重要になると考えられる。なお、処分の線量評価は、自然プロセスによって生じるシナリオと人為的事象によって生じるシナリオについて、区別して行うべきであるが、基本的考え方の段階である上記検討ではそのような区別を行わず、評価の長期性に伴う不確実性についても考慮せずに評価を行った
(参考資料-9)
 対象廃棄物の場合、ウランの子孫核種が生成及び累積し、数十万年かけて放射平衡に達するため、他の放射性廃棄物の場合と異なり、居住シナリオなどの人為的事象によって生じるシナリオの線量評価において、緩慢にではあるが、線量評価値が時間の経過に伴って増加する潜在的な可能性があることが重要な特徴である。対象廃棄物に対するような長期にわたる評価に当たっては、起こるかもしれない事象とその影響について総合的に判断する必要があるとともに、発生する可能性の小さい事象に対しては、通常考えられるシナリオと分けて考察し線量を評価した上、その評価結果と事象の発生の可能性との関連から、処分の安全性について総合的に評価することも考えられる。
 居住シナリオなどにおいて想定される人為的事象は、跡地の適正な利用形態の明確化などの制度的管理を行うこと又は適切な離隔距離を確保することにより、それが発生する可能性を低減させる、あるいはその影響を制限することができると考えられる。制度的管理が有効に機能している限り、跡地居住などの人為的事象が発生する可能性は極めて低いと考えられるが、対象廃棄物の場合、その潜在的影響が長期間経過後に大きくなることから、制度的管理の維持に関する努力が払われることが望ましく、処分に係る記録の保存などの受動的制度的管理のシステムが、長期の有効性を期待できるような方法について検討されることが重要であると考えられる。
 対象廃棄物のように、減衰による放射性核種濃度の低減が期待できない場合には、除染処理などによる初期濃度の低減化も安全確保方策の選択肢となり得ると考えられる。また、対象廃棄物の処分場における定置密度についても、安全確保を検討する上で重要な項目となり得ると考えられる。

5.対象廃棄物の安全かつ合理的な処分の可能性について
(1)クリアランスレベル以下の処分の可能性について
 既に述べたとおり、ウランは質量当たりの放射性核種量が少なく除染が比較的容易であること、また、資源として利用できる可能性があることから、処分の前に合理的な範囲で可能な限り除染処理を行うことが重要である。除染処理によって十分ウラン核種が除去されたことが確認できれば、放射性廃棄物として扱う必要のないもの(クリアランスレベル以下のもの)として処分又は再利用することも可能と考えられ、今後、対象廃棄物のクリアランスレベルが検討・設定されることが必要であると考えられる。
 なお、主な原子炉施設から発生するコンクリートや金属に関するクリアランスレベルについては、自然界の放射線レベルと比較して十分小さく、また、人の健康に対するリスクが無視できることを満たす線量の目安値として10μSv/年を設定し、クリアランスレベルが算出されている10)

10)「主な原子炉施設におけるクリアランスレベルについて」 原子力安全委員会(平成11年3月17日)

(2)素掘り処分及びコンクリートピット処分の可能性について
 上述した対象廃棄物の特徴を考慮した処分の基本的考え方を踏まえると、以下のような処分方策が考えられる。

  1. 線量目標値:対象廃棄物の素掘り処分及びコンクリートピット処分に対して、その安全性を評価する上で適切なシナリオを検討し、それに応じた線量目標値を設定する必要がある。例えば、ICRPなどにおける放射線防護の考え方や海外での処分事例を勘案し、また、ウランは天然にも普遍的に存在することも考慮した上で、地下水移行のような自然のプロセスによって生じるような被ばくに対してICRPが勧告している0.3mSv/年を線量目標値に設定するなど、対象廃棄物処分の評価シナリオに対して適切な線量目標値を設定することが考えられる。
     具体的な線量目標値の設定に当たっては、廃棄物処分による被ばく線量、リスクなどの評価において、地下水の移行に伴う放射性核種の移動などの自然プロセスによって生じる被ばくと、跡地における居住などの人為的事象によって生じる被ばくは区別して検討されるべきであり、それぞれの評価について、評価の長期性に伴う不確実性を考慮した適切なシナリオ、評価期間に応じたモデルやパラメータなどの不確実性を考慮した上で十分な検討が必要である。この際、発生する可能性の小さいシナリオに対しては、通常考えられるシナリオと分けて考察し線量を評価した上、その評価結果と事象の発生の可能性との関連から、処分の安全性について総合的に評価することも考えられる。

  2. 濃度基準:素掘り処分又はコンクリートピット処分の対象となる廃棄物については、ウラン核種の半減期、子孫核種の生成及び累積などを踏まえて、放射線防護上の観点から、上記の検討によって設定される適切な線量目標値に基づいて、廃棄物中のウラン濃度を制限する。
     具体的な濃度の値については、評価の長期性に伴う不確実性を考慮した適切なシナリオ、評価期間に応じた評価目標値や評価指標を検討し、また、評価期間に応じたモデルやパラメータなどの不確実性を考慮して、放射性廃棄物処分の全体的な安全規制の枠組みの中で検討・設定されるべきものである。
     
     対象廃棄物処分に対して、適切なシナリオを検討しそれに応じた線量目標値を設定する必要があるが、ここでは仮に、素掘り処分を想定し、評価の長期性に伴う不確実性は考慮せずに現行の政令濃度上限値の評価に準じた試算(地下水移行、跡地における建設、跡地における居住の各シナリオについて評価)を、0.3mSv/年を線量目標値として行った。この場合、ウランの子孫核種が生成及び累積し放射性核種濃度が最も高くなった状態を考慮しても、2030年までの将来に発生すると推定した対象廃棄物量の約9割(除染後の運転廃棄物についての割合。なお、解体廃棄物についてはさらに大きな割合になる。)が、素掘り処分できる可能性があると試算された。

  3. 処分場の管理:処分の安全性については、基本的に上記の線量目標値とこれに基づく濃度基準の遵守によって確保されるものであるが、対象廃棄物の特徴を考慮し、偶然に人間侵入が起こる可能性を低減させるため、長期間にわたって土地利用の形態が処分に影響を及ぼさないようにする制度的方策など、処分場の管理について努力が払われることが望ましい。このような制度的方策は、基本的に放射線防護の最適化の観点から考慮されるものである。
     管理の内容については、覆土の維持管理、地下水のモニタリングなどの能動的管理と、廃棄物処分に関する記録の維持管理などの受動的管理が考えられる11)。これらのうち、処分事業者が対応すると考えられる能動的管理については、有限期間内に終了することになると考えられるが、処分に関する記録の維持管理などの受動的管理については、長期間有効となるようにすることについても検討すべきである。

11)制度的管理のうち、モニタリングや修復活動などの具体的な行為・活動を伴うものを能動的管理、処分に関する記録の維持管理や跡地の適正な利用形態の明確化などの制度的な取り決めによるものを受動的管理といい、IAEAなどで考え方が整理されている。

  

(3)地下利用に余裕を持った深度への処分などの可能性について
 ウラン核種の濃度が上記処分可能な濃度を超える廃棄物については、素掘り処分及びコンクリートピット処分と比べて、放射性核種の移行速度の低減や処分場跡地の掘削などによる被ばく防止の観点から十分な措置を講じる必要があると考えられる。そのためには、地下水の流速が小さく、かつ高層建築物などの支持層の上面よりも深く適切な離隔距離を確保した地下へ処分するとともに、資源の存在状況についても考慮することが必要であり、既に処分の基本的考え方が示されている12)「地下利用に余裕を持った深度への処分」を行うことが考えられる。
 仮に、地下利用に余裕を持った深度への処分を想定して、評価の長期性に伴う不確実性は考慮せずに線量評価を行い、処分可能となる廃棄体中のウラン濃度の上限値を試算した結果によると、地下利用に余裕を持った深度への処分を行うことにより、対象廃棄物のほぼ全てに対応できる可能性があると考えられる。
 この場合も(2)で述べた処分と同様に、対象となる廃棄物の濃度基準の設定については、評価の長期性に伴う不確実性を考慮した適切なシナリオ、評価期間に応じた評価目標値や評価指標、評価期間に応じたモデルやパラメータなどの不確実性を考慮すべきであり、起こるかもしれない事象とその影響について総合的に判断することが重要である。この際、発生する可能性の小さい事象に対しては、通常考えられるシナリオと分けて考察し線量を評価した上、その評価結果と事象の発生の可能性との関連から、処分の安全性について総合的に評価することも考えられる。具体的な濃度の値については、対象廃棄物の特徴を踏まえつつ、放射性廃棄物処分の全体的な安全規制の枠組みの中で検討・設定されるべきである。
 さらに、ウラン濃度がより高い廃棄物が存在する場合には、人間の生活環境から長期間隔離しておくことが必要であると考えられる。この条件を満足する既存の処分概念としては、「人間の生活環境から十分離れた安定な地層中に、適切な人工バリアを構築することにより処分の長期的な安全性を確保する地層処分」が考えられる。
 対象廃棄物の地層処分の検討に当たっては、既に処分の基本的考え方が示されている超ウラン核種を含む放射性廃棄物の地層処分についての検討結果13)を踏まえつつ進めることが可能であると考えられる。ただし、対象廃棄物は、含まれる核種が基本的にウランとその子孫核種であること、放射性核種濃度が低いため超ウラン核種を含む放射性廃棄物のように発熱を考慮する必要はないことなどの特徴を有している。したがって、対象廃棄物の地層処分については、これらの特徴を十分考慮することが必要である。

12)「現行の政令濃度上限値を超える低レベル放射性廃棄物処分の基本的考え方について」原子力委員会(平成10年10月16日)
13)超ウラン核種を含む放射性廃棄物のうち、MOX燃料加工施設から発生するものには、ウランとプルトニウムの同位体(235U,238U,239Pu,241Puなど)が多く、放射化や核分裂に伴い生成したβγ核種はほとんど含まれていない。これらについて、緩衝材を設けない人工バリアを設置した地層処分施設の一例が示されている。

(4)処分に当たって留意すべき事項
 処分場の施設概念については既に、素掘り処分、コンクリートピット処分及び地下利用に余裕を持った深度への処分などの施設概念が、処分場の管理の考え方と直接関係しないものとして検討されてきており、対象廃棄物についても、これらの施設概念を参考とすることができる。
 この際、放射線防護以外の観点から処分濃度が制限される可能性もあり、ウランの重金属としての性質による影響や核燃料物質の臨界管理の観点についても考慮する必要がある。ウランの重金属としての性質による影響については、平成10年に厚生省の飲料水基準の監視項目にウランが追加されているが、排水基準や環境基準などの項目には含まれておらず、実際の処分時には、水質保全や環境汚染に係る規制動向などを考慮した検討が必要である。さらに、核燃料物質の臨界管理の観点からは、対象廃棄物中のウラン核種濃度、ウラン濃縮度、廃棄物定置密度などを考慮し、検討することが必要である。
 また、対象廃棄物が、産業廃棄物に対する規制を適用すべき性状を有している場合には、産業廃棄物に対する規制との整合性の観点から、産業廃棄物の規制も満足するような処分施設概念を採用することが必要である。例えば、有害物質を含む場合や焼却灰については、素掘り処分ではなく、コンクリートピット処分が必要になる場合もある。
 処分場の操業においては、対象廃棄物に含まれるウランによって従事者及び一般公衆の被ばくが法令に定められた限度を超えることがないように管理を行い、廃棄物の受入が完了した後は、廃棄物の処分量、ウランなどのインベントリ、処分位置などの記録を維持することが重要である。また、(2)c.で言及した受動的管理が、長期間有効に行われるための方策についても十分検討することが重要である。
 なお、これまで述べたような安全確保方策を合理的に可能な限り取り入れたとしても、長期間を対象とする評価において、シナリオ、モデル、パラメータ、将来の人間の生活様式などの不確実性の影響を完全に払拭することは不可能であると考えられる。しかしながら、予測できないような事象が、遠い将来に万一発生したとしても、ICRPなどの考え方に示されているとおり、放射線防護の体系の中には、事故による放射線影響、自然放射線源からの慢性的被ばく及び過去の事象あるいは状況による残留汚染に対して必要と判断された場合は適切な対応措置をとる「介入」という概念があり、発生した事象に対して国などの適切な機関による対応が可能であると考えられる。なお、ICRPは、約10mSv/年という値を、それ以下であれば介入が正当化されそうもない14)一般的な参照値として、反対に、約100mSv/年という値を、それ以上のレベルでは介入がほとんど常に正当と考えるべき参照値として使用できるであろうと勧告している(ICRP,Publ.81,82,2000)。

14)被ばくが起きている状況において受ける不利益に対して、介入を行うことによって新たに発生する作業者の被ばくが大きい場合や、わずかな不利益を排除するために必要なコストが不釣り合いに大きい場合には、そのような介入は正当化されないと考えられる。

6.技術開発課題について
 以上の検討により、対象廃棄物は、廃棄物の濃度及び性状に応じて適切に区分し、素掘り処分、コンクリートピット処分、地下利用に余裕を持った深度への処分などを行うことにより、安全かつ合理的に処分することができると考えられる。
 今後、対象廃棄物の処理処分を具体化するに当たって、より一層の安全かつ合理的な処理処分を目標として、次のような技術開発を行うことが有効と考えられる。

(1)処分前の技術開発課題
 今後発生する対象廃棄物については、放射性核種の濃度や廃棄物の性状によって適切に分別・管理し、それらのデータを整理しておくことにより、廃棄物処理の負担を軽減することが重要である。
 対象廃棄物に対してクリアランスレベルを適用する時点及び対象廃棄物の処分に先立つ廃棄体の確認行為の時点において、対象廃棄物の放射性核種濃度を測定などによって評価する必要がある。特に、クリアランスレベルの確認においては、低濃度(1Bq/g以下のオーダー)の確認が必要になることも考えられ、それに対応できる精度を持ち、適切な測定時間で対象廃棄物の放射性核種濃度を評価する技術及びシステムの検討を行うことが重要である。
 対象廃棄物の処分に当たっては、除染処理によって合理的に可能な範囲で対象廃棄物からウランを除染回収することを検討する必要がある。対象廃棄物に対する除染技術については、一部の廃棄物について除染性能データが得られているが、除染対象廃棄物の範囲の検討を含め、さらに効率的な除染処理技術の実用化などを積極的に進めることが重要である。また、廃棄物の発生過程と除染技術の適用工程を考慮した除染処理の合理化の可能性についての検討も重要である。
 廃棄物の固型化処理などによる安定化や減容処理は、廃棄物処理の基本的な要件であり、処分場跡地の安定化などのために重要である。また、産業廃棄物としての処理要件を考慮した処理が必要とされる可能性もあり、適切な廃棄体形態の選定が重要である。

(2)処分時及び処分後の技術開発課題
 対象廃棄物の処分に関しては、基本的に既存の処分施設概念を参考とすることができると考えられ、現在の技術に基づいた施設設計によって必要な対策が講じられることになると考えられる。
 対象廃棄物の特徴から、処分当初は放射線の影響が小さいため、安全性が処分施設などの人工バリアに依存する度合いは、他の放射性廃棄物よりも小さい。しかしながら、長期間経過後に子孫核種の生成及び累積に伴って潜在的影響が増大していくことから、長期間の安全性評価の合理的在り方や、処分後の管理の役割及び合理的在り方についての検討が重要である。このため、他の放射性廃棄物に含まれる長寿命放射性核種に係る安全性評価に関する研究開発や、長期間の評価という観点から関連すると考えられる高レベル放射性廃棄物地層処分の研究開発などの成果を参考にしつつ、対象廃棄物の特徴を踏まえた処分の安全性評価などの研究開発に取り組むことも重要である。
 また、現行の政令濃度上限値の線量評価においては、減衰による放射性核種濃度の減少のみが考慮されているが、長期間経過後においては、地下水移行などによる濃度低減が有意になると考えられる。したがって、長期間の安全性評価については、このような因子を組み込んだ評価方法を検討し、安全かつ合理的な処分システムの設計に反映することも重要であると考えられる。

7.まとめ
 対象廃棄物は、これまでに処分方策を検討してきた放射性廃棄物と異なる特徴を有しているが、以下のような処分方策を行うことにより、安全かつ合理的に処分できると考えられる。
 対象廃棄物に対して除染処理を行うことにより、放射性核種濃度を低減し、クリアランスレベル以下になるものについては、放射性廃棄物として扱う必要のないものとして処分又は再利用を行う。それ以外のものについては、濃度などに応じて適切に区分し、それぞれの区分に応じた処分方策を講じる。対象廃棄物の処分について、素掘り処分を想定し、仮にICRPが勧告している0.3mSv/年を線量目標値として線量評価を行った結果、対象廃棄物の約9割が処分できる可能性があると試算された。また、地下利用に余裕を持った深度への処分を想定した場合、対象廃棄物のほぼ全てに対応できる可能性があると考えられる。
 今後、廃棄物の処分可能となる濃度基準の設定に当たっては、線量評価の長期性に伴う不確実性を考慮した適切なシナリオ、モデルやパラメータに関する不確実性を考慮すべきである。この際、発生する可能性の小さいシナリオに対しては、通常考えられるシナリオと分けて考察し線量を評価した上、その評価結果と事象の発生の可能性との関連から、処分の安全性について総合的に評価することも考えられる。また、線量目標値については、適切なシナリオを検討しそれに応じて設定することが必要であり、公衆の線量限度の1mSv/年を守ることを基本とし、国際的な動向なども踏まえて、被ばく管理の観点からは管理することを必要としない低い線量(10μSv/年)に代わる線量目標値を設定することや、評価シナリオの発生の可能性との関連においてその線量目標値を設定することなどが考えられる。その際、処分場の管理についても、その役割や合理的在り方について検討を行い、長期間有効となるように努力することが重要である。

 

第2章 ウラン廃棄物に相当するRI・研究所等廃棄物について

 「RI・研究所等廃棄物処理処分の基本的考え方について」(平成10年5月、原子力バックエンド対策専門部会)で述べたように、RI・研究所等廃棄物にもウラン廃棄物に相当する放射性廃棄物が存在する。これについては、対象廃棄物に準じて処分を行うことが適当である。このため、RI・研究所等廃棄物のうちウラン廃棄物に相当するものについて、第1章で示した処分方法が適用できるかどうかについて検討する必要がある。

1.発生の現状と将来の見通し
 RI・研究所等廃棄物は、サイクル機構、日本原子力研究所、大学及び民間の試験・研究機関などから発生しており、その中にはウラン廃棄物に相当するものがある。これらの廃棄物の平成11年度末(2000年3月末)時点までの累積発生量15)は、未処理の廃棄物として200㍑ドラム缶で約2万8千本(累積貯蔵量実績の調査による)となっている。また、2030年度末までの累積発生量(可燃物については焼却処理を仮定)は、200㍑ドラム缶換算で約4万本になると推定される。

(参考資料-1、2)

2.廃棄物の特徴
 RI・研究所等廃棄物のうちウラン廃棄物に相当するものには、紙、布などの可燃性廃棄物、塩化ビニールなどの難燃性廃棄物、コンクリートやガラスなどの不燃性廃棄物が存在する。これらのうち大部分は、対象廃棄物と同様に含まれる核種が実質的にウラン及びその子孫核種に限定されるが、トリウム及びその子孫核種を含んだ廃棄物も少量(容量比1%程度)存在する。廃棄物中のウラン濃度は、対象廃棄物と同様に、除染前で1010Bq/tオーダーから、自然界にも存在するレベルの10Bq/t以下まで幅広く分布している。また、廃棄物中のトリウム濃度についても、除染前で10Bq/tオーダーから、10Bq/t以下まで幅広く分布している。

3.処分の基本的考え方
 ウラン廃棄物に相当するRI・研究所等廃棄物の性状については、上述のように紙、布、ビニール、コンクリート及びガラスなどであり、対象廃棄物とほぼ同様である。また、廃棄物に含まれる核種の種類及び濃度についても、対象廃棄物とほぼ同様である。
 これらの特徴を考慮すると、前章において検討してきた「ウラン廃棄物」と同様に、廃棄物の放射性核種濃度などに応じて適切に区分し、処分を行うことが可能であると考えられる16)
 ただし、RI・研究所等廃棄物のうちウラン廃棄物に相当するものの処分を具体化するに当たっては、廃棄物に含まれる可能性がある有害な物質の種類など、前章で検討した「ウラン廃棄物」と異なる特徴の有無に十分留意する必要がある。


15)サイクル機構から発生するものについては、対象廃棄物の累積発生量に既に含まれているため、ここでの累積からは除かれている。
16)トリウムは天然起源の放射性核種であり、半減期が長いことなどウランと類似する性質を有している。一方、トリウムの子孫核種はウランの子孫核種と比較して半減期が短く、子孫核種の生成及び累積という点に関してはウランよりも影響が小さい。このため、第1章で示した処分の基本的考え方をトリウムを含む廃棄物に対して適用することは、基本的に問題ないと考えられる。

 

第3章 処分事業の責任分担の在り方、諸制度の整備などについて

1.責任分担の在り方と実施体制
 「ウランの製錬、転換、濃縮、再転換、成型加工などの各施設の運転・解体に伴い発生するウラン廃棄物」及び「RI・研究所等廃棄物のうちウラン廃棄物に相当する放射性廃棄物」(以下「当該廃棄物」という。)は、前述したような放射性核種濃度などによる区分に応じた安全な処分を行うことが可能と考えられる。
 処分の責任分担の在り方及び実施体制については、下記のような考え方を踏まえ、当該廃棄物の安全かつ合理的な処分が実施できるように、確立される必要がある。
 当該廃棄物の発生に関わる者は、廃棄物を直接発生する濃縮事業者、再転換・成型加工事業者、サイクル機構及び日本原子力研究所などの核燃料物質使用者のほか、廃棄物の発生に密接に関連する電気事業者など(以下「発生者等」という。)多岐にわたっている。また、RI・研究所等廃棄物事業推進準備会においては、RI・研究所等廃棄物の処分事業の具体化に向けて検討が進められている。
 当該廃棄物は、発生者等が処分の責任を明確にした上で、その責任において安全かつ合理的な処分が実施されることが原則である。発生者等は、自らの責任を踏まえ、処分の実現に向けお互いに協力し適切な対応をとることが重要である。
 処分事業を行う者は、処分の安全な実施及び長期にわたる処分場の管理を行うに十分な技術的能力、経済的基礎及び事業の継続性が要求されるほか、処分の安全確保に関する法律上の責任を負うことになる。この際、発生者等は密接に協力し、安全かつ円滑な廃棄物の処分の推進に万全を期すことが必要である。
 国は、当該廃棄物の処分に係る安全基準・指針の整備などを図り、これに基づく厳正な規制を行うとともに、発生者等及び処分事業を行う者が廃棄物の管理や処分を安全かつ合理的に実施するよう、関連法令に基づきこれらの者への指導監督などの必要な措置を講じることとする。また、当該廃棄物の潜在的影響は長期間にわたるため、処分に関する記録の維持管理などの適切な役割を果たすことが必要である。

2.処分費用の確保
 当該廃棄物は、発生者等が明確にした責任の下で安全かつ合理的に処分されることが原則であり、これに要する適正な費用が確保される必要がある。
 しかしながら、当該廃棄物の処分概念が定まっていなかったことなどから、これまで合理的積算が行われていない。したがって、今後、当該廃棄物の発生者等や処分事業を行う者は前述した処分方法を踏まえ、廃棄物の区分及び物量を明確にするとともに、より具体的な処分について検討した上で、当該廃棄物の処分方法に応じた処分費用の確保を図っていく必要がある。

3.安全確保に係わる関係法令などの整備
 当該廃棄物については、その特性を考慮して適切に区分し、処分を行うことにより安全が確保されると考えられる。
 現行の低レベル放射性廃棄物については、既に原子力安全委員会において安全規制の基本的考え方、安全基準、安全審査の考え方などが取りまとめられている。これらを踏まえて、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律、同法施行令などに、廃棄物埋設事業の許可、保安規定の認可、埋設廃棄体の確認など一連の手続が整備されるとともに、濃度上限値、技術基準などが定められ、安全規制が行われている。また、現行の政令濃度上限値を超える低レベル放射性廃棄物については、原子力安全委員会において安全規制の基本的考え方などが示されたところである。高レベル放射性廃棄物の地層処分については、原子力安全委員会において処分に係る安全規制の基本的考え方が検討されているところである。
 今後、当該廃棄物についても、その発生量、放射性核種濃度、性状及び処分方法などを踏まえて、安全規制に関する基本的考え方や安全基準などについて検討し、これらを踏まえ関係法令を整備する必要がある。この際、当該廃棄物の特徴を踏まえ、長期にわたる安全の確保、制度的管理などについて検討することが重要であるとともに、それぞれの処分方法に応じた濃度上限値、当該廃棄物に関するクリアランスレベル、保障措置終了の手続などについても検討する必要がある。

4.実施スケジュール
 当該廃棄物は、安全かつ合理的な処分が早急かつ着実に実施される必要があり、適切な時期に処分に着手できるよう、廃棄物の帰属の明確化、費用確保策、当該廃棄物処理処分に係る研究開発、実施体制など処分の具体化に係る検討が発生者等において行われるとともに、当該廃棄物の処分に係る諸制度が整備されることが重要である。具体的には、今後の放射性廃棄物全体の処分計画などを踏まえ、実施体制を含めて当該廃棄物の処分計画の明確化及び安全確保に係わる関係法令の整備が行われることが重要である。

5.技術開発課題への取組
 当該廃棄物については、既に処分が実施されている低レベル放射性廃棄物に適用されている技術や、他の放射性廃棄物に含まれる長寿命放射性核種に係る安全性評価に関する研究開発及び長期間の評価という観点から関連すると考えられる高レベル放射性廃棄物地層処分の研究開発の成果などを活用するとともに、処分がより安全かつ合理的に実施されるよう、当該廃棄物の特徴を踏まえた処理処分に関する技術の研究開発や、より高度な放射性核種濃度評価技術の開発などによる当該廃棄物に関する精度の高いデータ整備を積極的に進めていくことが重要である。

6.積極的な情報公開、情報提供
 放射性廃棄物処分事業の実施に当たっては、安全が確保されるとともに、処分事業に対する国民の理解が得られ、国民はもちろん立地地域に受け入れられなければならない。このためには、諸制度の整備や実施体制の確立などの一連の取組とともに、放射性廃棄物全体の処分計画を踏まえた安全かつ合理的な処分に関する的確で分かりやすい情報を積極的に提供していくことが不可欠である。
 この際、当該廃棄物の発生者等が多岐にわたること、その処分方策についてもクリアランスをはじめ、当該廃棄物の濃度などに応じて適切に区分した上で、素掘り処分、コンクリートピット処分及び地下利用に余裕を持った深度への処分など複数想定されることを踏まえて、処分事業の各段階において必要とされる情報を分かりやすく提供できるよう体制を整える必要がある。

 

終わりに

 ウラン廃棄物については、廃棄物の放射性核種濃度などに応じた適切な区分を行うこと、それぞれの区分に応じた処分方策を講じることとする基本的考え方を取りまとめた。また、本報告書においては、ウラン廃棄物処分に対して、被ばく管理の観点からは管理することを必要としない低い線量(10μSv/年)に代わる線量目標値(例えばICRPが勧告している0.3mSv/年)を設定した場合の処分の可能性を示した。
 今後は、ウラン廃棄物の特徴や処分方法を考慮した安全規制の基本的考え方や線量目標値の設定をはじめとした安全基準などが、原子力安全委員会において検討されることを期待する。国においては、この結果を踏まえて必要な制度の整備を図ることが重要である。
 発生者等は、当該廃棄物の処分の具体化に向けて密接に協力しながら着実に取り組むことが重要である。
 また、ウラン廃棄物は、その処分方法が複数となることやその他の放射性廃棄物と異なる特徴があることを十分踏まえて、国民の理解と信頼を得るように処分に関する的確かつ分かりやすい情報の提供を行うことが必要である。