第72回原子力委員会
資料第2-1号

第1回アジア原子力協力フォーラムの結果について
 
 
平成12年11月24日
国際協力・保障措置課

1.主催:原子力委員会(日本)及び科学技術環境省(タイ)
2.場所:タイ、バンコク市、スコタイホテル
3.参加者:別添1参照
4.日 程:
11月10日(金) 上級行政官会合(SOM-1)
13日(月) 大臣級会合(MM)、記者会見
14日(火) 上級行政官会合(SOM-2)
15日(水) テクニカル・ツアー

5.議事概要

(1)上級行政官会合(SOM-1)

 ①特別講演:「新しい原子力長計案の紹介」 遠藤原子力委員(日本)
 ②新規プロジェクト及び戦略計画(FNCA Strategic Plan)案の討議
我が国から、新規プロジェクトを含む新たな活動の展開を提案(別添2)すると共に、今後のFNCAにおける活動計画を含む「戦略計画」について討議。
 ③共同コミュニケ案の確認

(2)大臣級会合(MM)

 ①開会セッション
タイのアーティット科学技術環境大臣、トライロン副首相兼原子力委員長に続いて、大島大臣から共催国としての開会挨拶を行った。

 ②各国代表者による発表
「アジアにおける原子力の将来とその安全性」という基調テーマの下、各国とも各国の取組等を中心に発表。我が国は、以下の点について発表。
・我が国の原子力開発利用の基本的考え
・原子力利用の果たす役割
・原子力利用における安全確保の重要性
・アジア地域における原子力国際協力の必要性、重要性 等

 ③円卓討議
以下の3つのトピックスについて各国の大臣等で議論を実施。
「原子力利用の推進」(トピック1)
 大島大臣より、我が国の原子力政策、人材養成、国民の理解、原子力損害賠償制度の整備の重要性等につき言及。
 各国からは、放射性廃棄物処理・処分のシナリオの必要性、核不拡散問題への配慮等について発言。
「原子力安全」(トピック2)
 大島大臣より、JCO事故への対応とその後の対策に触れつつ、原子力安全の重要性に言及。また、緊急の課題として、使用済線源の管理についての協力活動を開始することを提案。
 各国からは、安全文化と安全規制・標準の整備、非発電分野の安全性についての協力の拡充、人材の養成等について発言。
「原子力協力の進め方」(トピック3)
 大島大臣より、アジアとの原子力協力の重要性、各国からの可能な範囲での資金的貢献の必要性等について言及。
 各国からは、訓練施設等の共同利用の提案、エンドユーザーとの連携の必要性等について発言があった。更にオブザーバーであるIAEAから、IAEA/RCAとFNCAが協調することが重要であり、具体的な内容の重複を避けていく工夫が必要とのコメントがあった。

 ⑤戦略計画、共同コミュニケの採択
   上級行政官会合にて調整された両文書を若干の文言修正を付して採択。
(別添3-共同コミュニケ)

(3)上級行政官会合(SOM-2)

 今回のFNCA会合のサマリーレポートの取りまとめ、次回コーディネーター会合の議題等について討議した。

6.所 感

(1)参加国間では、非発電分野(農業、医学、工業など)における原子力利用が、主流である。
(2)開会セッションがTV撮りされるなど、タイ側は熱心に広報活動を実施。記者会見も活況であった。
(3)初の試みである円卓討議でも各国活発な発言がなされたのをはじめ、会議全体を通しても、非常に活発な議論が展開された。
(4)大臣間で原子力推進等に関する議論を進めることができ、最終的に原子力利用推進に向けたコミュニケを採択することができたのは大きな成果。
(5)第2回会合は来年度日本で開催されるが、今次会合におけるモーメンタムを維持しつつ、今回、我が国が提案した新たなプロジェクトをいかに進めていくかが、今後のポイントと思われる。


別添1


我が国からの主な参加者

大島 理森 国務大臣 科学技術庁長官 原子力委員長
遠藤 哲也 原子力委員会委員
中澤 佐市 科学技術庁原子力局長
服部 幹雄 科学技術庁原子力安全局次長
中原  徹 科学技術庁原子力局国際協力・保障措置課長
本田  明 科学技術庁原子力安全局原子力安全課原子力安全国際室長

岡崎 俊雄 日本原子力研究所 副理事長
小山 和俊 核燃料サイクル開発機構 国際核物質管理部 技術主席
町  末男 アジア原子力協力フォーラム コーディネーター
(社)日本原子力産業会議 常務理事他

 

各国からの代表参加者

タ イ アーティット・ウライラット科学技術環境大臣
豪 州 ヘレン・ガーネット原子力科学技術機構(ANSTO)
専務理事
中 国 張 華祝中国国家原子能機構(CAEA) 主任
インドネシア ムハマッド・ヒカム研究技術担当国務大臣
韓 国 ハン・ジョンキル科学技術部(MOST) 次官
マレイシア ロウ・ヒェン・ディン科学技術環境大臣
フィリピン フィレモン・ウリアルテ科学技術省(DOST)長官
ウ゛ィエトナム ヴォン・フー・タンウ゛ィエトナム原子力委員会(VAEC)
副委員長


別添2

我が国から提案した新たな活動の展開の例

分 野提 案 内 容
研究炉利用核医学診断に広く利用されるアイソトープ(Tc-99m )の製造技術の確立と普及。
農業利用放射線やRIを活用し、微生物を利用した環境に優しく安価なバイオ肥料の研究開発。
医学利用確立した子宮頚がんの治療手順の普及および新しい治療手順への拡大。(既存プロジェクトの高度化)。
原子力広報経験の交換を中心とした活動から、各国が行う広報活動の支援等への移行。
放射性廃棄物管理使用済放射線源の管理方法を明確にすると共に、国境を越えた予期せぬ放射性物質の移動を防止する方法についての検討の場の設置。
人材養成各国の人材養成戦略に基づく各国の人材養成シナリオ作成への支援(既存プロジェクトの拡充)。
 これらの提案は歓迎され、今後開催される各分野のワークショップ及びコーディネーター会合(来年3月開催)で詳細について議論して行くこととなった。


別添3
第1回アジア原子力協力フォーラム(FNCA)
共同コミュニケ(仮訳)

 2000年11月13日

はじめに

  1.  第1回アジア原子力協力フォーラム(FNCA)は、2000年11月10日および13日にバンコク市において開催された。オーストラリア連邦、中華人民共和国、インドネシア共和国、日本国、大韓民国、マレーシア、フィリピン共和国、タイ王国、ヴィエトナム社会主義共和国のアジア地域9か国から、原子力の平和目的での研究開発及び利用に対して責任を持つ大臣ならびに上級行政官が、ここに集まった。本会合は、また、国際原子力機関(IAEA)のオブザーバーとしての参加を歓迎した。本会合は、タイ王国科学技術環境省(MOSTE)及び日本国原子力委員会が主催した。

  2.  本フォーラムは、日本において過去10年にわたり開催されてきた旧アジア地域原子力協力国際会議(ICNCA)の諸活動を引き継いだ。ICNCA第10回会合において参加各国は、ICNCAがアジア原子力協力フォーラム(FNCA)に改組されること、および第1回フォーラムをタイにおいて開催することに合意した。

  3.  第1回コーディネーター会合で策定された以下のヴィジョン・ステートメントは本会議で採択された。「FNCAは、原子力技術の平和目的に限定したかつ安全な使用において、積極的な地域のパートナーシップを通して、社会経済の発展に貢献する。」

  4.  本会合は、FNCA体制およびFNCA下のアジア地域原子力協力活動(RNCA)について討議し、以下の点に関して同意した。

FNCAの理念

  1.  アジア地域は、世界で最も高い経済成長率を有する地域の一つである。限りある資源と環境保護・保全の必然性に対峙しつつ、そのような成長を維持するためには、原子力技術を効果的に利用することが地域に有益であり得る。原子力発電の拡大の予測(1)、(2)によれば、本地域は21世紀初頭には米・欧と並び原子力発電における3極を構成すると予測される。原子力発電に加えて、食料確保や、農業、健康維持、工業技術の改善、そして環境保護といった発電以外の分野での原子力利用もまた、各国民の日常の暮らしに等しく重要である。

RNCAとその目的

  1.  上記の状況を踏まえ、安全で平和的な原子力の利用をさらに意義あるものとして促進するため、以下の7分野のアジア地域原子力協力活動(RNCA)を実施する。
    • 研究炉利用
    • 農業へのラジオアイソトープ・放射線の利用
    • 医学へのラジオアイソトープ・放射線の利用
    • 原子力の広報
    • 放射性廃棄物管理
    • 原子力安全文化
    • 人材養成
  2.  これまでのこれらの活動は、参加各国における原子力技術の開発・利用基盤の有効な確立を導いてきた。また、これらの活動により、FNCA参加国に多くの社会・経済的な利益をもたらすこと、原子力技術の役割、貢献および安全対策、また原子力技術が自国の発展に役立っていることを、一般の人々が更に意識的に理解することが期待される。

  3.  FNCAを通じた原子力技術開発利用は、「経済の発展、資源・エネルギー・食料の確保、地球環境の保全」のいわゆる「トリレンマ問題」という、21世紀に人類が直面する重要課題の解決の一助となり得る。したがって、原子力技術利用を通じた持続可能な発展に寄与し得るRNCAの更なる発展を促進することが重要である。

将来の活動の方向性

  1.  本会合は、FNCA戦略計画を採択した。FNCAという新体制の下において、FNCA各国行政官は、明確な社会・経済的効果が期待される分野での、より多くのプロジェクトを立案・実施するよう一層協力し、また、IAEAその他の適切な国際機関とのより良い連携により、FNCA活動の効率を一層高める。これに関し、戦略計画に列挙されたイニシアチブは歓迎された。

  2. FNCA参加各国は、FNCA活動の強化と拡充のため、人的・資金的貢献が重要であることを認識する。また、各国は、FNCA活動を支援する国内的なシステムの確立に向けて努力する。

  3. 日本のJCO核燃料施設での臨界事故やタイの使用済コバルト60線源による被ばく事故のような、過去2年間に発生したような原子力事故を繰り返してはならない。この目標を達成するため、各国における原子力開発利用は安全性の側面に更なる注意を払いながら行われるべきである。また、これらの不幸な事故の経験を将来のFNCAの活動の実施に教訓として活かすことも重要である。

  4. 本会合は2001年度のワークショップの暫定的な開催地を以下のとおり承認した。
    • 研究炉利用(中国/ベトナム)
    • 農業へのラジオアイソトープ・放射線の利用(タイ)
    • 医学へのラジオアイソトープ・放射線の利用(マレーシア)
    • 原子力の広報(フィリピン)
    • 放射性廃棄物管理(ベトナム/韓国)
    • 原子力安全文化(日本)
    • 人材養成(日本/韓国)

次回会合

  1. 本会合は、第2回及び第3回FNCAを、日本国及び大韓民国において、2001年及び2002年にそれぞれ開催することに同意した。

参考文献
(1) OECD/NEA-IAEA "Uranium"
(2) IEA "World Energy Outlook"
以上