国際ワークショップ−
我が国における高レベル放射性廃棄物地層処分における
技術的信頼性について−の開催結果について

 

1.開催の趣旨
 原子力委員会原子力バックエンド対策専門部会(以下、「専門部会」という。)では、核燃料サイクル開発機構の技術報告書「わが国における高レベル放射性廃棄物地層処分の技術的信頼性−地層処分研究開発第2次取りまとめ−」(以下、「第2次取りまとめ」という。)に示された研究開発成果について評価を行ってきた。評価に当たっては、専門部会の審議に資するため「地層処分研究開発第2次取りまとめ評価分科会」を設置するとともにその検討状況については適宜報告を受けてきた。
このような状況を踏まえて、専門部会は、第2次取りまとめの研究開発成果に関し、より客観的かつ透明性をもった評価のために、国内外の専門家及び公募による参加者から広く意見を聴取するとともに幅広い観点から意見交換を行う標記ワークショップを開催することとした。

2.開催日時
  平成12年8月8日(火)11:00〜17:40
       8月9日(水)10:00〜18:00

3.会 場
  三田共用会議所 講堂(1階)
  (東京都港区三田2−1−8)

4.参加者
  ・基調講演者  2名
  ・パネリスト 18名
  ・公募による一般参加者215名
  ・原子力バックエンド対策専門部会委員 16名
  ・地層処分研究開発第2次取りまとめ評価分科会委員 11名
  ・その他関係者

5.プログラム


6.概要

(1)基調講演
  • セントラル野球連盟会長高原須美子氏に「国民・社会と放射性廃棄物」というタイトルで講演いただいた。この中で、近年、我が国では原子力に関する国民の最大の関心事の一つとして放射性廃棄物があるとした上で、処分地の選定と処分の事業化が進んでいるフィンランドにおける高レベル放射性廃棄物処分の進め方について紹介があった。その概略は次の通りである。
    フィンランドでは、再処理を行わないため、使用済燃料が高レベル放射性廃棄物となる。1995年、国内での処分が急務であるとして、高レベル放射性廃棄物の処分事業に向けた非営利企業として大手電力会社の共同出資でポシバ社が設立された。ポシバ社は327の候補地から何段階にもわたる絞り込みを行い、1999年に最終処分地としてオルキルオト地区を選定した。エウラヨキ市議会は、2000年1月に、環境アセスメントの結果を受け、オルキルオト地区が高レベル放射性廃棄物の最終処分地になることを承認した。今後、国会及び内閣の承認が必要であるものの、同地域に最終処分場が建設されることはほぼ決定されたものと考えられる。今後は2002年に地下研究施設の建設、2010年に処分場着工、2020年には運用開始となる予定である。フィンランドにおいて、処分場が地元に受け入れられた理由として、ポシバ社が地元との共生をはかったこと、数多くの候補地から段階的に絞り込むことにより、サイト選定の過程を明らかにしたことなどがある。
    処分場受け入れの意思決定のための信頼感、安心感は一日では得られない。我が国でも日頃から、原子力発電に対する信頼性や安全性の向上に努めるとともに、情報公開に努めることが重要である。
    また、処分場候補地の選定に当たってはプロセスが重要であり、多くの場所を調査した上で段階的に絞り込んでいくなどの取組が重要であると考える。
  • スウェーデン核燃料・放射性廃棄物管理会社社長Peter Nygards氏により「スウェーデンにおける使用済燃料処分計画」というタイトルで講演いただいた。この中で、スウェーデンのサイト選定の過程や世論調査の結果などを示しながら、同国の放射性廃棄物管理計画の紹介があった。その概略は次の通りである。
    スウェーデンの原子力発電は1964年に始められたが、1980年の原子力計画改正により、原子力発電は2030年までにフェーズアウトすることとなった。スウェーデンでは、非営利団体である核燃料・放射性廃棄物管理会社(SKB*i)が、廃棄物の管理責任と最終処分場のサイトを決定する責任を負うとともに、SKBをチェックする機関として、原子力監督局(SKI*ii)、放射線防護機関(SSI*iii)が設置されている。現在、スウェーデンの6都市を高レベル放射性廃棄物の処分場候補地として世論調査を進めているが、世論調査の結果より2都市が撤退した。今後、残り4都市のうち2都市のサイト特性調査を行い、1箇所に絞り込み、2015年に処分場建設に着手する予定である。スウェーデンでは廃棄体の10%を埋設し、技術の再検討を行なった後、2040年〜2050年に国民の最終意思決定を行うこととしているため、処分場は廃棄体の再取り出しが可能な設計にしている。
    放射性廃棄物処分に当たり、国の政策決定には技術的課題、科学的課題、社会的課題、地元問題の解決が不可欠であり、処分場の立地等では民主主義を尊重すべきである。また、処分方策には社会的価値の変化に対し柔軟性を持たせるべきであり、最終意思決定が民主的に行われるような段階的アプローチを取り入れることが重要である。


*iSKB:Swedish Nuclear Fuel and Waste Management、スウェーデン核燃料・放射性廃棄物管理会社
*iiSKI:Swedish Nuclear Power Inspectorate、スウェーデン原子力発電検査局
*iiiSSI:Swedish Radiation Protection Institute、放射線防護機関

(2)セッションI:地質環境の評価
<パネリストの意見>
 Klaus Kuhn)
  • 第2次取りまとめはすばらしい作業の成果をまとめたものとして高く評価したい。また、第2次取りまとめは廃棄物処分についての世界の様々な状況も勘案したものとなっている。
  • 放射性廃棄物の処分場は天然バリア、人工バリアからなる多重バリアシステムが考えられているが、多重バリアシステム全体が処分場の長期安全性を確保するものである。
  • 第2次取りまとめに示されている日本の多重バリアシステムの性能評価は、世界で発表されているものと同レベルと言える。
  • 多重バリアシステムのうちでも天然バリアが重要な役割を果たすべきであり、システムの根幹であるべきである。集中して封じ込めるシステムが好ましい。
  • これまでに蓄積された技術基盤を拠り所として、最終的なサイト選定の後、サイト特性調査が始められ、それによって得られるデータを用いることによって長期的な評価ができると考える。
  • 日本で地層処分を検討する際には、粘土層や頁岩層などを検討することが重要である。これらの地層は十分な隔離能力を持っていると考えられる。
  • 処分場として好ましい地層の立地条件としては、透水性が低い、動水勾配が低い、破砕帯がほとんどない、可塑性をある程度有する、均質性が高いといったことが重要である。
  • サイト選定に当たり、数量的な基準を運用する場合は慎重に行うべきである。また、適切なサイトを除外しないよう柔軟性を持つべきである。地質は標準化できるものではないから、最適なサイトを1つ探すのではなく、適切なサイトを探せばいいということに留意すべきである。その適切なサイトが規制の基準を満たせばよいということである。
  • 実施主体は地質調査所や各地域の大学の地球科学関連部門と協力すべきである。
  • 規制当局に地球科学的知識を有する者が必要である。

 Julia M. West)

  • 第2次取りまとめはすばらしい報告書であり世界でも最も先進的で高度なものであると考える。しかし、高度な報告書であるにもかかわらず、2箇所のフィールド試験のデータと文献値のみから結論が導かれているという印象である。
  • 既存の情報や調査に基づいて、活断層などについて検討されているが、活断層や火山の多い日本でどのように地層処分を行うのか、より詳細な調査を行い慎重に取り組む必要がある。
  • 個々の活断層の活動度・リスクを調べて重要度によってランキングするなど、活断層の安全評価を行うことが重要である。国民に納得してもらうには、安全評価によって断層のリスクがどういうものかを評価して提示することが重要である。
  • サイト選定においては、自然は標準化できないものであるため、絶対的な基準値だけで決めるのではなく、サイト特性調査の結果を重要視すべきである。
  • サイト選定に際しては、プロセスの透明性が重要である。
  • 第2次取りまとめ以降留意すべきことは、サイト選定、サイト特性調査等の各段階における国民への情報提供と国民の関与の重要性である。

 西垣誠)

  • 地下深部においては、動水勾配が非常に小さく、深部の岩盤の透水係数は極めて小さい。この動水勾配及び透水係数が流速を支配する。流速が遅くなると移流・拡散は小さくなる。
  • 第2次取りまとめには沿岸地域で動水勾配がないとの記述があるが、実際は非常に小さいだけであって動水勾配はある。
  • 浅地層、深地層で動水勾配を測定した例があり、1,000m深部の2つの動水勾配が例示されている。より長い距離を測定するとその値はもっと小さくなると思われる。
  • 深部に向かうと動水勾配は小さくなるという流れのモデルが例示されているが、深部に向かうにつれ透水係数が小さくなるのか疑問がある。堆積岩なら比較的このモデルに従うと考えられるが、結晶質岩では多少異なる可能性がある。しかし、一般的には、深部に向かえば上部からの荷重があって透水係数は小さくなると考えられる。
  • 海に近い地域では、堆積層により表層が被覆されリニアメント(線構造)が発見しにくい。どのような調査技術を確立していくかが重要と考える。
  • 地下1,000mに処分する場合、地下2,000m程度、また、広さ6km四方程度の調査が必要と考える。
  • 調査段階でわからない問題が掘削を始めてから明らかになる場合、どのようなグラウチング技術で対処するか、長期間期待できるグラウトについてはさらなる研究が必要であると考える。
  • 小さなスケールで廃棄物を埋設する試験を行った上で、スケールアップを図ることが重要である。これは社会の理解を得る上でも有益である。

 水谷伸治郎)

  • 地震・火山活動は不規則に起こっているわけではない。ゆっくりと定常的に変化するものは予測が可能である。また、地震や火山活動などの不連続な現象は、現象の規模及びその現象が起こる周期性から、ある程度、それらの活動性を予測することが可能と考える。
  • 既存の地質学的データから地質の長期安定性を論理的に説明することは可能であると考える。
  • ただし、実際の地下深部の情報が、現在のところ、瑞浪と釜石のみに限られていることに一抹の不安を覚える。地下研究施設を作り、深地層の地質の調査をもっと行うことが必要である。
  • 今後のサイト特性調査はきちんと行われるべきである。また、地下研究施設では、地層処分研究を目的として研究が行われるべきである。

 楠瀬勤一郎)

  • 第2次取りまとめでは、10万年の長期予測、火山・断層活動の影響の範囲、日本の地質環境の実データと文献との比較などを調べてとりまとめを行った。
  • 第2次取りまとめには、明らかに不適な場所を除外するための情報と、地層処分の工学技術や安全評価に受け渡す際の我が国の地質としてありそうなもののべ一スを検討するための情報が整備されている。
  • 地層処分研究開発協議会検討部会において、過去数10万年のデータから10万年後の予測をする際にどのくらい遡るべきかの検討を行った。基本的に外挿を行うには広域的なテクトニクスが少なくともここ10万年程度変わらないことが前提となるが、果たして、そう考えていいのかという議論になった。
  • 長期予測は外挿を基本として行われているが、場所を特定すればもう少し長い時間の予測が可能と考えている。
  • サイト選定のプロセスに進む前提はできあがったと考える。

<パネリストによる意見交換>
【地質環境の長期安定性について】
  • 断層が生じると処分場に大きな影響を及ぼすことが考えられるが、断層が新たに発生する可能性を検討する際には、核種の放射能が3桁程度下がるまでの処分後1,000年程度が特に重要である。
  • 地震は突発的現象だが、例えば新しい断層の成長は数百年の単位で生じるのではない。地質学における全ての変化はもっと緩慢である。地質史の研究から10万年程度の予測は可能と考える。
  • 第2次取りまとめでは、具体的にいつ地震が起こるかということを予測するのではなく、その影響を決定論的に評価する性能評価の手法が適用されている。
  • 性能評価の中で、断層の成長が考慮されているかを明らかにしてほしい。
  • 断層活動による亀裂の開口が必ずしも核種の移行を促進する側に働くわけではないことに留意すべきである。
  • 長期安定性予測の論理的べ一スは外挿である。連続的な現象と見なされる隆起や侵食についての予測は比較的容易であるが、突発的に起こる地震や火山活動の予測は難しいと考えられる。ただ、第2次取りまとめの研究結果から、これらの現象には、ある規則性が認められることが分かった。また、我が国の第四紀後半から現在に至る時期においては、隆起・沈降・侵食などの現象は定常的と考えられることから、外挿は可能と考える。
  • サイト選定は危険個所を避ければよいと考える。しかし、深部についての情報が東濃地域と釜石鉱山におけるデータしかないため、全ての場所を予測できるとは言い切れないと考える。

【地質環境の特性について】

  • 一般に地層中には微生物が存在しているため、地下水の化学特性が変化する可能性や岩石自身が変質する可能性など、微生物による処分場への影響を検討する必要がある。
  • 一般の廃棄物処分と比較検討する場合には、放射性廃棄物では放射能が減衰するという点に留意すべきである。
  • 第2次取りまとめは、地層処分でどれくらいの広さの場所をどこに選べばよいのかを調査する際の考え方を示すものとして重要である。
  • 岩盤強度に関する文献値は、何か問題があって測定されたものが多いと考えられるので、それらのデータが日本の地質を表しているとするのはやや保守側であると考えられる。
  • 岩盤の機械的強度に関するデータは問題ないと考える。今後取得されるサイト固有のデータが重要である。
  • 深いトンネルを掘る技術が日本にはあるので、それらの経験を活かすべきである。

  • グラウチングについては操業性を確保することを目的としているのか、深層地下水の流れの特性評価を目的としているのか、それとも長期的な地下水システムの改善を目的としているのか。
  • 土木分野では一般にセメントのグラウチングが行われているが、地下水への化学的影響など長期的な耐久評価は行われていない。長期的な問題も考慮して、グラウト材として粘土が研究されているところである。
  • ドイツでは、人工バリアについては人工材料は使用すべきではなく、天然で長期耐久性が示されている天然材料を使用すべきであると考えられている。例えば埋め戻し材にベントナイトや玄武岩、砂利などを使うべきという考え方である。
  • 石油備蓄などの現場で粘土によるグラウトが行われている例もある。

<会場との意見交換>
  • 海岸付近の地下水流動の例が示されていたが、地下水の流動が断層活動により変化することはないか。
  • 海岸付近についていえば、日本の場合、塩淡境界付近で動水勾配が高いので、塩淡境界はやや海側に押された形になっているが、塩水が淡水と混合して上に上がってくることが考えられる。そこに亀裂があれば動きが早くなることが考えられる。
  • 地下水は、長期間地層の中に留まることで周囲の地層と化学的な平衡に達しており、安定な階層構造を有していると考えられる。階層構造を超えて地下水が撹乱することはないのではないか。
  • 浅いところや流速の早いところでは地下水の化学状態は非平衡であろう。
  • 塩淡境界についてはもう少し研究事例が必要であろう。

  • 地震の振動による破壊は考えていないのか。
  • 振動の影響については、廃棄体が剛体として挙動すると考えると、岩石の変形許容範囲ととらえることができる。
  • 地震動は、地表面では自由面があるため理論的には地下の倍の振幅となる。
  • 第2次取りまとめでは、地震が起こった場合、地下水流動が変化してしまうのではないかということに留意した。しかし、地震動による地下水流動の変化も、地層処分で問題としている時間スケールと比較すると短期的に回復することがわかっている。
  • 地震により透水性が仮に高くなったとしても、場所によっては危険側にならない場合もある。
  • 透水性のダイナミックな変化などの現象にも留意すべきである。

  • 安定している場所について安定している理由を説明できるのか。説明がつけば理解してもらえるのではないか。
  • 積極的に安定していることを示すことは難しい。危険なところを避けるということである。
  • これからも研究は進歩するので説明ができるようになるかもしれない。

  • 断層の影響について、活断層から処分地までの具体的な距離を示していないのはどうか。
  • 断層からの距離については、それぞれを個別に評価することが重要であり、一律に数値を示すことを目標としているわけではない。
  • 断層からの距離は画一的に定まるものではない。
  • 原子力発電所の操業のリスクを容認しているので、将来の処分場のリスクについても生活の中の他のリスクと比較して議論してほしい。

  • 廃棄体周辺の熱による対流及び温度上昇に伴う間隙水圧上昇による岩盤破砕や変質については検討されているか。
  • 熱水の影響により、核種を含んだ鉱物が沈殿したり、割れ目を充填する鉱物が生成したりもする。
  • 熱水の影響は、廃棄体の配置、中間貯蔵による温度の制御、廃棄体からの熱を最大1,000年程度考慮すればよいことなどから、問題となるものではないと考えられる。

(3)セッションU:処分技術
<パネリストの意見>
 Arnold Bonne)
  • 第2次取りまとめは優れた報告書であり、処分事業を進めていく上で非常に重要なベースになると思う。将来の適切な勧告の基盤となりうると考える。
  • 第2次取りまとめ分冊2「地層処分の工学技術」第5章、処分場の建設、操業、閉鎖については、ほとんどが品質管理に関するものであり、よくまとまっているが、処分場建設段階におけるサイト特性を把握するために必要な事項及びそれに関する考察が本章に入れば、より有益になるであろう。
  • 第2次取りまとめ分冊2「地層処分の工学技術」第6章、処分場の管理については、モニタリング、廃棄体の再取り出し性に関するものである。この章では詳細には論じてないが、後々の安全審査や管理方針のための参照のことを考えれば、閉鎖のための許認可などに当たり、サイト管理についての記録が重要である。
  • 第2次取りまとめは原子力委員会原子力バックエンド対策専門部会報告書*iv(以下、「専門部会報告書」という。)に基づいて設計のベースを提示するものであり、要件を示すものではない。


*iv専門部会報告書:高レベル放射性廃棄物の地層処分研究開発等の今後の進め方について(平成9年4月)

 Keith Nuttall)

  • 第2次取りまとめは全体として極めて質の高いものといえる。量的に十分な記述が行われ、英語も質が高い。専門部会報告書の個別要求事項に沿っており十分な技術的深さを持っている。日本の高レベル放射性廃棄物処分において非常に大きな実績である。
  • 核燃料サイクル開発機構(以下、「サイクル機構」という。)を中心とした専門家が技術開発と同時に、規制について検討する上での技術基盤を整えることとしたのは良いアイデアであった。
  • 人工バリアシステムは柔軟で堅固なシステムが考えられており、これは、処分地が決まっていない現時点では戦略的に重要である。設計要件については系統的に考えられている。
  • 建設、操業、閉鎖に関し、操業時の安全性、品質管理のデータ、モニタリングについては今後の許認可の点から重要である。
  • 第2次取りまとめは全般的な目標を達成しており、確固としたベースを示すものとして評価できる。

  青木謙治)

  • 第2次取りまとめを技術基盤として、今後、基準の策定などに進んでいくためにさらに必要な技術課題について整理してみた。
  • 設計手法については、現実の岩盤試験等による岩盤の物性、特に深部の実際の岩盤のデータセットの拡充が重要と考える。早い機会に設計手法を既存のデータを用いてつめるべきである。
  • 解析の条件に対して、破壊基準の決め方、他の評価手法との比較、現実の空洞の挙動との比較等の検討が重要である。
  • 空洞の耐震安定性について人工バリアシステムの詳しい検討が行われているが、今後は大深度の立坑について、いかに検討を行っていくかが重要である。
  • 建設工法については硬岩でのトンネルボーリングマシンの実績も増えてきている。限定せずに更なる工法の検討も必要である。
  • 湧水等への対策工について、ファーフィールドでのフラクチャー、グラウチングをどう取り扱うか、整理しておく必要がある。

 佐藤努)

  • 第2次取りまとめは、専門部会報告書の要求事項に対して非常に良く対応している。
  • 特に緩衝材、埋め戻し材の仕様が具体的に示されていることが評価に値する。これらは必要な要件を満たしており、かなり裕度を持たせて設定されている。
  • 緩衝材、埋め戻し材の製作や定置方法等のテクニカルフィージビリティーが具体的に示されている。
  • 将来の課題としては、安全評価で求められる圧密ベントナイトの性能を満たすためのベントナイトの要件、品質を示すことが必要であり、将来の判断材料となる。
  • 他の人工バリア材に比べて、緩衝材や埋め戻し材についてはオプションが示されていない。

 北山一美)
  • 処分場全体の基本コンセプトを実現するためにどうしたらよいかということを検討した。いろいろなスキームがあるが、処分場を設計するに当たっては、人工バリアの設計をベースに施設の設計を行うべきと考える。
  • 地質環境条件や安全評価結果からフィードバックされるものもあり、今後、それらのデータを充実していくことになる。
  • スケジュールやいつまでにどのレベルまで進めるかを明示したことが、今後、事業を進めるに当たっての第2次取りまとめの大きな成果である。
  • 第2次取りまとめにおける処分技術の検討を通して、研究を進めてきたサイクル機構側と実施に係わる電力会社側の信頼関係が深まったこと、また、一般の人に対して地層処分の必要性、安全性を示すこととしたこと、Y章を設け、技術的拠り所をまとめたこと等が特に意味のあったことと考える。

<パネリストによる意見交換>
【処分場管理の文書化の重要性について】
  • 文書化に関しては、特にサイト特性調査の記録が必要である。
  • どのような情報をどうやって誰が責任を持って集めるのかをあらかじめ定めておくことが必要であり、これらの情報は信頼の源になるという点で重要である。
  • 建設、操業、閉鎖の際に、記録があって初めてチェックできる。そのためにも品質管理などの情報が必要である。

【人工バリアシステムの最適化について】
  • 現段階は全般的な描写であり、それでよいが、今後、さらに研究開発や実証、最適化の作業が必要である。
  • 高レベル放射性廃棄物について、大規模な実証試験は他国でも行われていない。技術的に可能な範囲内でも、それを実証していくという作業が残されている。研究から実施へ向けての大規模な実証プロジェクトが必要と考える。
  • 設計における岩盤の物性値の決め方について、弾性係数と一軸圧縮強度との対比として示されているが、実際の深い岩盤でもこの通りになるのか現実的なデータでの確認が必要である。
  • 応力の再配分領域については、原位置の岩盤に対して解析手法も含めた物理的な意味づけをどのようにしていくかが基準をつくる上で重要になってくる。

【処分場の設計・建設について】
  • 湧水を伴う建設過程におけるグラウチングはいつの時点で、いかなる方法でやるのか、早い時期での検討が必要である。
  • 第2次取りまとめでは、コンクリートプラグを施さないと緩衝材が流出してしまうことを心配していると思われるが、どの程度流出していくのかイメージできない。再冠水した方が良いという記述もあるが、どれくらい人工バリアシステムに影響するのかがよくわからない。
  • プラグ、グラウチングについては基本的に作業中に水が出た場合等の短期的なものである。現在のところ、プラグ、グラウチングについては安全評価に要求されるような長期的な機能は期待していない。
  • 圧密ベントナイトの仕様については、今後、機能として要求されるものを検討し、仕様をつめていくことになる。緩衝材については自然のものである等の条件を満たせばベントナイトに限らなくてもよいかもしれない。地質条件の良いところでは緩衝材の要件も変わる可能性がある。
  • 緩衝材や埋め戻し材の仕様に関して粘土には様々な機能がある。WIPP*vでは埋め戻し材に酸化マグネシウムが使用されたが、吸着性、低透水性は期待されていない。第2次取りまとめではベントナイトの機能を都合良く期待している。必要な性能、必要でない性能を明確にしておくべきである。


*vWIPP:Waste Isolation Pilot Plant、廃棄物隔離パイロットプラント(米)

<会場との意見交換>
  • 第2次取りまとめはガラス固化体の仕様がまだ製造されていない日本原燃仕様をもとに検討されている。緩衝材の温度制限もあり、ガラス固化体の冷却期間が30年の場合の発熱量は、50年の場合と比較すると1.6倍となり、厳しくなる。第2次取りまとめにおけるガラス固化体についての条件の設定はおかしいのではないか。
  • 日本原燃の仕様は再処理される使用済燃料の燃焼度を高めに設定してある。いろいろな仕様があり若干の差があるが、処分場の設計等で対応できると考える。
  • 第2次取りまとめでも冷却期間が30年の場合には発熱量が高く、深さ1,000mでは埋められないとなっているがどうか。
  • 緩衝材の制限温度は現状100℃としているが、今後、緩衝材への熱影響を詳細に評価し、制限温度が設定される。発熱の大きいガラス固化体があった場合でも個別の管理で対応できると考えられる。そのために30〜50年の幅がある。
  • 処分場全体の本数では4万本で検討しており、そのうち海外仕様は3,500本程度である。処分場が決まれば、その場所の条件で最適に設計すればよい。サイトの岩盤の条件によっても設計がかなり異なる。
  • 第2次取りまとめでは全体のシステムとして地層処分ができるということを示しており、ある設計を提案するというものではない。
  • ギリギリの条件であることがよく読まないとわからない。クリティカルということをもっと明確に示すべきである。
  • クリティカルとは考えていない。地温勾配等にしても場所によって条件が異なる。設計の最適化の問題である。

  • 処分坑道の安定性を評価する際の側圧係数にかなりばらつきがあるが、評価にはあまり影響しないのか。
  • 第2次取りまとめは現時点での技術的な情報を整理したもので、地圧の分布が深度に応じてどう変わるか、この値を変動させるとどうなるかといったことは次の段階で検討されるものである。

  • 今後、処分事業の実施の各段階毎に、それぞれ設計が行われていかなければならないが、現時点で、すべて最適化されているわけでもない。どこまでできるかやってみないとわからないが、柔軟性のあるシステムが必要である。安全評価研究も進展するであろうし、実施に当たってはもっと改善が必要であり、いくつかのハードルも超えなければならない。
  • 事業を進めるという観点からは、事業のスケジュールにあわせた形で進める。つまり、必要なもの、必要なレベルを設定し、その各段階をクリアしていくことが重要であるということが第2次取りまとめの検討を通じてわかった。

  • 緩衝材に何を要求しているのか場合によって違う。技術の一貫性というものが必要である。

  • 不測の事態、例えば遠隔操作が不能となった場合に誰がどうやって修理するのか。また、実際には技術がいつまでにどのくらい進歩するのか。
  • 地層処分研究開発第2次取りまとめ評価分科会でも、不測の事態については注意が足りないのではないかなどいろいろな意見が出されたが、どれだけ検討を行っても不測の事態は起こり得るのではないかという結論に落ち着いた。
  • 遠隔自動の運転設備がどれだけの期間運転するのかは決まっているわけではない。しかし、自動の機械が10年も故障なく運転できるとは考えていない。しかし、どういう時点で、どういう形で、どうメンテナンスしていけばよいかについてはそれほど難しくはない。いずれにせよ、第2次取りまとめで記述したものが最後まで続くというものではなく、今後の技術開発の進展に伴い、十分に実績のある最先端の技術を取り入れつつ実施していくことが重要である。
  • 遠隔操作技術についてはいろいろな種類の技術が既に使われており、日本は開発において先頭を切っている。これらの信頼性についての情報は産業界にある。
  • 第2次取りまとめの範囲外かもしれないが、ガラス固化体を保管している間にキャニスターが腐食して取り出すことができなくなる可能性はないか。
  • 設計前に何が起こるかをあらかじめ検討して設計されるものであり、それを織り込んだ形で最初から検討されるはずである。

  • 廃棄体の再取り出し性、可逆性に関してどう考えるか。
  • 長期的な安全性を確保するという意味で廃棄体を再取り出しする必要がないというのは明確であるが、一般の人に対して安心していただくことが必要になってきている。ほとんどの国では不測の事態を想定しているわけではなく、信頼感という観点から再取り出しという話が出てきている。
  • 可逆性は元に戻って考え直す余地が残されているということである。これは技術的な問題ではなく、処分において安心感があるかどうか信頼性に関することであり、安全性とは関係ない。
  • カナダ規制に関する記録では、15年前に廃棄体の再取り出しが要求されていた。処分のコンセプトが発展するにつれて全般的な意味で再取り出しの考えが入ってきている。
  • これは時間と関連した問題で、ある時点で再取り出しできるかということは、国民の安心感につながる。処分場の閉鎖段階では国民の意向もあろう。

(4)セッションV:安全評価
<パネリストの意見発表> 
 Neil.A.Chapman)
  • 第2次取りまとめはチームを構成して経験を積み重ねてきたという点で大変重要な意義のあるものである。また、他国の成果との比較検討もよく行われている。地球化学データのいくつかについては、世界的にも貴重な成果が得られている。立地計画に向けてデータを追加すべき点もあるが、第2次取りまとめは何が検討すべき焦点なのかを示しており、実施主体設立の出発点となっている。
  • 安全評価は繰り返し行う必要がある。今後は、地図の中に線を引いていくというレベルの全般的な段階から、より検討を具体化し、どのような処分場の建設が可能かの検討を行っていくことになる。その際にはサイト選定を進めると同時に安全規制・基準についても検討を進めるべきである。また、安全基準については、放射線とその他のさまざまな環境基準とのバランスをとり、一貫した環境基準として検討すべきである。さらに、高レベル放射性廃棄物だけでなくその他の長寿命放射性廃棄物についても先取りした形で議論を行うべきである。研究炉等からの廃棄物も存在している。
  • 第2次取りまとめは実施主体設立の出発点となるレポートとして成果を挙げているが、全ての問題を解決しているものでもない。特に具体的な地下水移行経路を取り扱う評価とこれに基づくより詳細な不確実性の解析が重要である。サイトを特定しないと難しいものもあるが、課題をどのように取り扱うのかについてある節目を設けて研究開発に取組むべきである。
  • 実施主体が取組むべき重要課題としては、今後のサイト選定作業において初期の段階から一般の人々に関わっていただくこと、そしてそれを公開の場で進めることが大変重要である。

 Margaret.S.Y.Chu)

  • 仕事柄多くのレポートに目を通してきたが、第2次取りまとめは大変質の高いレポートであり、先行する諸外国の情報も十分取り入れられている。
  • 結論としては第2次取りまとめにより地層処分を行うための技術的基盤が確立されたと考える。
  • 第2次取りまとめには、1)安定した地層が存在していること、2)地下深部に人工バリアシステムを構築できること、3)安全評価のためのツールがあること、が示されており、日本においての地層処分の可能性は確立されている。
  • 今後はサイト選定の過程において正しい道を歩み、資源を最適に使うためにサイト固有のデータ等を踏まえた詳細で包括的な検討を行うことが必要である。特にFEP*viに関しては系統的、包括的に検討すべきであり、そのサイトについて何を残しあるいは除外するのかを一貫した基準の下、慎重に議論する必要がある。
  • 不確実性については性能評価の評価方法を用いて繰り返し検討を行うことが大切である。繰り返すことにより何が重要なのかが明らかになる。不確実性に対しては系統的に対応しなければならない。プログラム全体への影響を考えた上で、データの分布の幅の両端の値を有意と考えるのか、あるいは考えないのかなどを明確にする必要がある。
  • WIPPの反省点として安全規制や安全基準がもっと早く確立されていた方が良かったと考える。安全を示すためには、「安全」の定義が必要である。研究開発や意思決定に影響を与えるからである。また、品質保証のための活動を開始するのが遅かった。さらに現在の安全評価手法、感度解析と不確実性解析を検討の最初から使っていたわけではなかった。安全評価は繰り返し実施し、常に最新の知見を取り入れることが資源とコストの削減の観点からも重要である。
  • WIPPの検討においては、20年にわたりレビューチームが活躍した。このチームは、権威ある機関であるNAS*vii、DOE*viiiによって設立されたもので、専門家でかつ批判的な人々の意見も入れて進めたため、多くの指摘が行われ計画が大幅に改善された。また、難しい問題については国内及び海外ピアレビューを活用し重要な成果を挙げた。また、WIPPで良かった点は最初から全ての人に対して公開し、長年にわたり信頼感を構築してきたことである。品質管理プログラムに関連したこととして、最後の段階では、研究者等が入れ替わることを踏まえて徹底的に文書化を進めて追跡可能な情報として残すことに努めた。


*viFEP:地層処分システムに影響を及ぼすと考えられるシステムの特質(Feature)、そこで生ずる事象(Event)や過程(Process)をいう。
*viiNAS:National Academy of Sciences、米国科学アカデミー
*viiiDOE:U.S. Department of Energy、米国エネルギー省

 新堀 雄一)

  • 結論から言うと、全般的な評価と今後実施される場所を絞った検討のバランスが重要であろう。また、技術的な情報をわかりやすく伝えていくことが重要で、線量やリスクを補完する指標を取り入れることでより安心を得ることができると考えている。
  • 性能評価はシステムの性能を知ろうとすることと考えるが、安全評価においては極端なシナリオも含めてよく検討する必要がある。
  • 性能評価ではなく、あくまでも安全評価として第2次取りまとめではレファレンスケースを含めて37のケースが評価されているが、最も極端な例についても自然の放射線レベルを超えることはないという結果が得られている。その結果、地下水シナリオに関しては1)人工バリアの設計・施工、2)生物圏における線量への換算、3)還元性を維持している母岩、4)断層を移行する経路、の重要性が示されている。一方で、接近シナリオに関しては、岩盤そのものが重要であり、ボーリングについては、ボーリングにより出た岩石・土砂と核種で汚染した岩石・土砂が混じり合うことによる希釈効果やボーリングを行う確率を考慮して検討されている。これらが技術的信頼性に結びついていく。
  • 処分場の深度に関しては、帯水層の下になるようにすべきであって、その深度は場所固有の問題である。地下の不確実性を考慮すれば、場所固有の情報と全般的なアプローチとのバランスで、深度の問題を考えていくことになる。
  • 割れ目モデルは3次元ネットワークと比較して適用性を検討した1次元重ね合わせモデルで近似しているが、これは私どもの研究成果からも妥当であると考える。透水量係数の分布も1桁ずつの幅で振ってある。また補完的指標についても一定の方向性が示されていると考える。

 藤川 陽子)

  • 環境工学の研究に取り組んでいる立場から発言したい。
  • 安全評価の目的はある決定集団への最大リスクを保守的に予測することである。地層処分の特徴は多くの複雑なパラメータが存在し時間が大変長いということである。ただし、天然バリアの性能評価に関する限り、全てのプロセスを詳細にモデル化する必要もなく吸着と地下水の流動に話を絞ることで十分である。
  • 安全評価で最も大事なことは不確実性の評価であり、ある程度は人為的なミスを減らすことで不確実性を減らすことが可能である。
  • 安全評価のためのモデル開発の手順は、スクリーニングモデルを開発し、このモデルを用いた不確実性解析を行い大事なプロセスを絞り込んでいく作業が行われる。第2次取りまとめは、この段階に到達している。この後、最小限のパラメータでモデル化を行いその場所でのデータを用いてモデルを検証すること、最後にこれを拡張し事象を予測するためのモデルを構築し、不確実性解析を通じてリスクとエラーを導くことが必要である。
  • 第2次取りまとめは重要な核種やFEPがある程度絞り込まれており、一般的なパラメータによる感度解析が行われている。
  • 評価には不確実性が必ず含まれる。不確実性とは、予測したことと実際に起こったことの差と定義できる。モデルの構造の誤りによる不確実性、モデルのパラメータ、シナリオの誤りによる不確実性がある。前者は科学の進歩である程度是正できる。後者には人為的なミスや本質的に確率事象であるために低減できない不確実性が含まれる。
  • 実際に国民に納得してもらうための評価とは、フィールドデータと検証されたモデルを使うこと、破局的なシナリオについても考えること、本質的に確率論的なことも考えることが重要である。
  • 今後は、高レベル放射性廃棄物処分のための研究開発に要する将来の人的、経済的負担を軽減するために、不確実性の主要な原因を明確にして、実験的アプローチ等の主要な研究開発の努力を注ぐべき分野を限定すること、日本のデータを用いてモデルを検証すること、評価を行うための数学とデータに精通したモデラーの養成、が重要である。

<パネリストによる意見交換>
【不確実性について】
  • どんな段階の評価にも不確実性は存在しているが、その要因を特定する努力は必要である。不確実性はシステム、シナリオ、モデル、パラメータの4つについてそれぞれ存在する。解析評価を行うに当たっては感度解析を実施すること、代替のモデルや考え方を用いること及びいろいろなパラメータや考え方の幅がどれくらいか検討を行うことが重要である。また、どこに重心をおいて検討すべきかについて、ピアレビューを通じて議論を深めることも重要である。
  • 何に基づいて判断されたのかについての記録を残しておくことが大変重要である。
  • 感度解析を実施しておくのは大変重要なことである。パラメータによっては最終結果にあまり影響しないものもある。不確実性のうち最も重要なのは概念モデルに起因する不確実性である。WIPPでは"what if"解析を実施した結果、マトリクス拡散の重要性がわかってきた。
  • 第2次取りまとめにおいては、マトリクス拡散についても検討されており、その拡散深さや、ゆるみ領域の幅なども設定されている。また、検討の過程で頻度が小さいなどの理由から落とされたFEPもあるが、今後の研究によりFEPに関する不確実性も小さくできるのではないかと考える。
  • 第2次取りまとめにおける不確実性の取扱いについて説明すると、不確実性は地質環境の長期安定性、シナリオ、モデル、入力データに存在する。その原因は現在の知見が限られていること、場所を特定しない段階での検討であること、本質的にばらつく事象であることなどのためである。したがって、評価に当たっては柔軟な考え方を用いて評価を行った。パラメータの感度解析も実施しているし、シナリオについては、今後の検討に資するために、突飛なことや頻度が低いものは根拠を示しつつ落とすことにした。低頻度事象の評価を行う際には、無理に確率を値で与えるのではなく、その事象が発生した場合どうなるか、ということを示した。
  • 安全評価においては、実際に起こることと評価で考えることとの間にギャップがある。評価上、オーバーパックは1,000年で破損し、直ちに核種移行が起こるとしているが、実際には全く移動せず閉じこめられていることもあるかもしれない。
  • 場所を絞った検討を行う段階になればどんなシナリオも除外すべきではない。また、必要に応じて再検討を行うことも考慮すべきである。思いがけないデータや意外なことが起こったりすることがあり、意思決定を行う場合には記録を残しておくことが必要である。
  • WIPPでは、当初は予想されていなかったことだが、微生物活動により二酸化炭素が生成され地下水の水素イオン濃度が下がることがわかり、埋め戻し材として酸化マグネシウムを用いるという設計の変更が行われた。
  • 解析やFEPを包括することと、シナリオを包括することは別問題である。シナリオについては、全てのシナリオを解析する必要はなく、例示すればよい。レファレンスシナリオには、隆起・侵食も考慮すべきである。その上で、"what if"シナリオには火山や活断層直撃ケースを入れるべきである。その結果の影響の大きさを予測することは可能であるが、発生する確率を与えるのは困難である。なお、一般の人々に対して、これは悲劇的シナリオ、あるいは破滅的シナリオであるという表現は用いない方がよい。
  • 最近のICRP*ixの勧告では、このようなシナリオに対しては、通常とは異なる考え方を用いるべきであるとしている。基準値としても、0.1mSv/yを用いるのではなく、10mSv/yを使うべきであるなどとしている。ICRPは、線量と定性的な発生の可能性を組み合わせて評価すべきであるとしており、1つの計算結果で単純に決めるべきではないとしている。


*ixICRP:International Commission on Radiological Protection、国際放射線防護委員会

【シナリオについて】
  • ユッカマウンテンは不飽和の地層であり、地下水はそれほど重要視されていなかったが、解析を実施した結果、地下水による核種移行の重要性が明らかになり、研究開発の方向性も変わってきて、プログラムの変更を強いられた。つまり、飽和帯に関するデータの蓄積が欠落していたということである。
  • 重要な決定を行う際には、複数のシナリオを持っておくべきである。シナリオを除外するときには、慎重に行う必要があるということである。
  • 現象には線形な現象と非線形な現象がある。2つの不確実性が重なると結果が大きく異なり得ることに留意する必要がある。
  • 感度解析、不確実性解析など全てそうであるが、第2次取りまとめでは標準的なパラメータ・セットに対してパラメータを動かして感度解析を行っている。しかし、パラメータの変動に対する感度は、線形とは限らない。したがって、標準的なパラメータ・セット以外に対して感度解析を行えば、全く異なる結果が得られるかもしれない。しかし、この感度はまだ検討されていない。これは、シナリオについての感度解析についても言えることである。
  • 全ての現象が個々に理解されていればそのような解析も可能になろうが、例えば、核種の移動、遅延に関する様々な物性については、全体のシステムとして一貫したデータセットを用いた解析を行わないと感度が見えてこなかった。どこが感度として重要であるかは、なかなかわかりにくいことである。

【処分場の深度について】
  • 処分場の深度は場所それぞれの問題である。その場所のテクトニクスや岩盤の強度にもよる。柔軟な設計にすべきである。また、安全評価では深度を変えた評価も実施すべきである。ただし、深度については北半球では300m以浅では浅すぎるといわれている。逆に1,000mを越えると処分場を建設することが困難になるため、必ずしも深くすることがよいわけではない。
  • 先のセッションでもご指摘があったように、探すべきは最適なサイトではなく、適切なサイトである。深度も同様で、適切な深度が確保されれば十分である。処分場としての機能が満たされていればよい。
  • 第2次取りまとめではモデルと現実の事象が乖離していないか留意すべきである。
  • 深度について、場所により適切な深度を選ぶことはもちろんであるが、気になる点として、地表からの影響について、深度が定量化されていないことがあげられる。例えば、深度とともに地下水が還元環境になることがあげられる。

<会場との意見交換>
  • 地下水流動の変動に関する不確実性についてどう考えるか。
  • 圧密ベントナイトについては、フラクチャを形成すると透水性が何桁も上昇するということがあり得るのではないか。また、ベントナイトに砂を混合するということであるが、この影響も無視できないのではないか。さらに、ベントナイトは止水性が高いため、かえって静水圧が高くなり破断されやすくなる可能性があるのではないか。これらの現象と断層の直撃が重なると最悪のシナリオとして影響が大きくなりうるのではないか。
  • 現在はベントナイト自体の濾過効果によりガラス固化体に有機物や微生物が到達しないとされているが、ベントナイトが物理的に破損された場合、ガラス固化体への有機物や微生物の影響としては、核種移行の遅延効果や見かけの溶解度の上昇があり得るが、結局はガラス固化体からの溶解速度以上にはならない。
  • 第2次取りまとめのレファレンスケースでは、透水量係数について実測値をさらに一桁小さくして設定しているが、これは保守的な設定になっておらず地層処分の難しさをわかりにくくしようとしているのではないか。透水量係数が一桁大きくなれば、線量の最大値は数十倍となるし、誤差を考えると幅はもっと大きくなる。また、生物圏の設定も低い線量を与える設定になっているのではないか。
  • 数字の解釈に信念を入れるべきではない。安全評価の結果は様々な結果があり得る。第2次取りまとめで行われた検討は全般的な評価である。今後、場所を絞った検討が行われる。
  • 事実を覆い隠そうという意図はなく、第2次取りまとめの記述もそのようにはなっていないと考えるが、誤解を与える表現であるという指摘であれば、今後わかりやすい説明に努めたい。パラメータの設定に当たっては合理的と考えられる範囲内での組合せを用いて評価を行った。生物圏の設定については、将来の生物圏をどのように考えるかは難しい問題である。したがって、現在の生活様式が将来も継続するとして、判断の指標になるような評価を実施している。例えば、水の利用についても、年間何リットル飲用するかなどを一つずつ設定していき、理詰めで検討を行っている。評価ケースとして、地質環境の性能を考慮しないケースも評価しており、相当幅広い条件を対象とした結果が記載されていると考えている。

  • 確率を与えることが困難であったため決定論的に検討を行ったという説明があったが、今後の取組として確率論的な評価を行うべきではないか。
  • 例えば、火山が今まで存在していなかった場所に対して、火山が発生する確率を与えることは現時点では困難であると考える。また、モデル自体の不確実性を定量化することについても現時点では困難であると考えている。

  • モデル化を進めていく過程を公開しながら取り組んでいくことが重要である。

  • 現象が起こる確率について、ある一つの値に対しコンセンサスを得るのは非常に難しい。ICRPも、Pub.46の時点から一歩引いてきており、定性的な評価を実施すべきであるとしている。一つの値として議論するのではなく、線量の評価結果と確率を分けて議論するのがこれからのやり方ではないか。

(5)セッションW:総論
<パネリストの意見>
 Arnold Bonne)
  • 第2次取りまとめの構成と内容はすばらしいものである。研究開発としては、全体に優れており、国際レベルに達している。これは、研究の基礎となる日本の学術団体等が常に国際レベルの科学技術的知見を吸収していることによる。多くの研究開発においては物理学を初め、原子力以外の分野にわたって世界的な成果を広く取り入れている。多重バリアシステムという、これはIAEAでも推奨しているものであるが、これを用いて適切に対応している。品質管理、工学技術、安全評価の観点からは、人工バリアが最も重要となる。特に、品質管理は重要である。
  • 今後、事業段階に向けて、規制当局との関わりが重要であり、安全規制の指針を速やかに策定することが重要となってくる。また、サイト特性調査の進捗に応じた具体的な地質環境の情報の整備に基づき、解析評価の現実性を向上させていくことが重要である。工学的対策の実証や、信頼性・安全性を説明する上で現実的であることが重要である。さらに、あらゆることを網羅的に示すよりも、地層処分の安全性にとって重要なことをきっちり説明することが重要である。

 Klaus Kuhn)

  • 全般的印象として、第2次取りまとめが地層処分の安全性を示すという目的を達成しており、現状の優れた概説となっているということができる。他の国の研究開発との比較も行われている。忘れてならないのはジェネリックな研究開発成果をまとめたものであり、フィールドデータ、実験値、文献値を広く利用して評価を行っていることである。
  • 第2次取りまとめは、特定の場所を評価したものではなく、用いた方法論が有用かどうかを示した点で評価できる。本報告書に基本的欠陥、齟齬、問題点はない。今後へ向けて良い基礎を築いたと言える。
  • 今後重要なのは処分地の選定であり、先に述べられたように、早期に規制の要件を確立すべきである。この際、新しい実施主体に任せるのではなく、当局も一緒になって基準、クライテリアを築いてほしい。
  • 第2次取りまとめのアップデートを3〜4年後に行うことも重要である。また、既に確立している様々な分野の技術を適宜活用すべきである。例えば鉱山、トンネル掘削から学ぶことも重要である。
  • 地下研究施設の設置も重要である。日本が海外の地下研究施設での国際共同研究に参加していることは知っている。しかし、自国で持つことが重要であり、速やかに設置されることを期待する。ただ単に地下を調べるのではなくツールの開発、適用性の確認も重要である。また、カナダの地下研究施設のように大規模な実験を行うことや、様々な試験を行い技術の健全性を実証することが重要である。

 稲垣八穂広)
  • 技術的観点、社会的観点よりコメントする。
  • 第2次取りまとめは日本における地層処分の技術的基礎を十分に示しているといえる。地層処分が合理的であると受け入れられるためには、安全性、信頼性を技術的観点からだけではなく、社会的観点からも国民にわかりやすく伝えることが重要である。地層処分は、他の分野の技術と異なり、数万年以上という理解を越えた長期間を対象として安全性を評価判断することになる。このような判断を行うためには技術的観点からの評価に加え、社会的観点からも検討しておくことが重要となる。
  • 次のステップとしては、社会的観点から、例えば、経済性、倫理性、公平性、公開性、信頼性のようなことを考えていくことが必要である。また、現在の評価では、技術的観点からの評価と社会的観点からの評価が十分整理されず、混同して議論されている。これらの項目を明確に分類整理して議論し、それぞれの項目間のつながりを認識することが合理的な判断につながる。
     信頼性の判断を行うのは国民であり、自治体である。国民あるいは自治体が良識をもって信頼性の判断を行うためには、専門家はわかりやすく伝えなければならない。非専門家が技術的評価の詳細を全て理解するのは不可能である。したがって、最終的な評価結果に至る道筋や、評価を進める上での基本的な方針、ルールを示すことが必要である。1つの方法として提言したいのは、最善の方法を選択する過程を示すことで信頼性が増すということである。例えば、固化媒体としてガラスが選択されるまでには複数のオプションがあり、最終的にホウケイ酸ガラスが最善のものとして選択された。この過程を論理的に示すことにより、理解でき、信頼性が増す。
  • 提言の2点目に、性能評価の確実性を示すためには、複数の機関がクロスチェックしながら評価を進めなければならないことを提言する。現在はサイクル機構が唯一の機関であり、もし仮にその評価に大きな誤りがあったとしても、それを速やかに認識し修正することは難しい。第2次取りまとめの次の段階、場所を絞った評価へ移る過程で、この辺のことをもう一度考えてみることも必要と考える。

 登坂博行)

  • まず、自分の専門である地下水流動について焦点をあて意見を述べる。第2次取りまとめでは地下水に関する知見がかなり得られている。フィールドデータの取得、深いところからの採水技術、ボアホールデータの取得技術などを取り込んでおり、これ以上は場所を特定する段階にならないと無理である。地下の不均質性、異方性、フラクチャーについては、トモグラフィーなどの技術を取り込み、レベルは十分である。流れのモデル化については、核種の還元条件下での分配係数、ガスの発生、塩淡境界、フラクチャーネットワークの中での流れ、閉鎖後の挙動などが取り込まれていて非常によくまとまっており、ジェネリックな評価としては最先端と言える。長期の安全性に関しては、核種が漏出した場合どのような影響があるか、分かりづらい点があるが、全般的な評価としてはこれ以上はできない。
  • 基本的には技術レベルは十分なレベルに達している。全般的な段階を脱し、スぺシフィックな段階に進み得るものである。自然の不確実性をどのように詰めていくか、多くの人が納得できる点は、廃棄体はもはや爆発しない、地上より地下の方が安全、適当な自然条件の場所は必ず探せる、我々の世代だけでは閉じない、という点である。一方、サイト選定時に出てくると予想されることとして、情報の透明性に対する疑問、消費責任より被害者としてのみの視点、人為的なミスに対する不信感、などがある。
  • 情報の透明性は、必ずしも市民にとって透明ではないということを念頭に置くべきである。第2次取りまとめは、私にとっても難しいし、多くの市民にとっては理解することが困難と思われる。複雑なものを単純に説明することが必要である。その対応として、例えば公平性については、大都市と過疎地との公平性がわかるようにする、選定基準の客観性や透明性を示す、などが必要であると考える。

 梅木博之)
  • 第2次取りまとめの位置付けは全般的な評価であり、特定のサイトを評価するためのものではないことを再度強調しておきたい。したがって、東濃地域や釜石鉱山におけるフィールドデータは科学的知識として一般化を行って用いている。
  • 他のセッションでも指摘されているように、地層処分研究は柔軟性をもって行われることが重要であり、地層処分概念の成立性に関する議論においては、処分場候補地を選ぶこと、処分場を設計すること、安全評価の予測解析の方法を選ぶことに柔軟性があることに留意することが重要と考える。ここで予測解析とは、将来のシステムの状態を言い当てることではなく、安全性の判断に用いるものであり、現実的な中で保守性を維持したものであることに注意する必要がある。
  • 例えば1つのFEPの内容が今の段階で科学的に十分解明されていなくても、場所を選ぶことによって排除できるのであれば、これによって対応することができる。
  • また、第2次取りまとめはジェネリックに広く処分場になりうる場所が存在することを示そうとしたものであり、このため人工バリア性能に力点を置いたものになっている。非常に条件の良い場所であれば現在の人工バリアの仕様例をより簡素なものとして最適化することが可能であり、柔軟に対応することができるだろう。
  • 再取り出し性は長期的な安全性に直接関わるものではない。技術的には、閉鎖後の安全性を評価するための情報が十分であることを確認するまでの間は、再取り出し性を維持することが重要と考えられる。

<パネリスト及び会場との意見交換>
【全般】
  • 日本の場合、現在、仏国から返還されたガラス固化体を日本原燃株式会社高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センターで安全に貯蔵している。しかし、キャニスターが損傷したらどうなるのか、高レベル放射性廃棄物のキャニスターをモニターすることは可能なのか、英仏のガラス固化体と日本原燃仕様のものをミックスして貯蔵はできるのか、処分場のライフタイムは30年以上であるが、その間大丈夫なのか。中間貯蔵期間のずれによる熱荷重が処分場にかからないように温度の規格、クライテリアを評価できるのか。キャニスターが貯蔵中に損傷したとしてもオーバーパックに封入して処分場へ持って行くことができればよいのか。
  • モデル、コンセプトに関し、対立するアイディアがあれば、何が違うのかを明確にすべきと考える。
  • 単一の組織が責任を負うとともに政府当局が責任を持って処分に当たるべきである。米国では一つの環境評価グループが責任を担っているなど、一部の国では成功例があるが、日本においては、体制とその責任が明確に定義されておらず混乱しているのではないか。
  • 実施主体と規制当局の交流が重要である。スウェーデンでは、実施主体であるSKBと規制側であるSKIの交流が行われており、適切に機能している。それぞれが異なる義務を持つことを認識するとともに、責任も混同しないようになっている。これは日本も学ぶべき点である。また、多様な専門家を巻き込むことが重要であり、一般の科学者とのオープンで幅広い議論を行う場を設けることも重要である。

【人間侵入について】
  • 人間侵入については次の例が示唆に富んでいる。アメリカのNAS報告書では、将来ユッカマウンテン処分場へ適用する評価の考え方として、科学的な根拠に基づき将来の人間侵入が処分場に影響を及ぼす確率を推定することは不可能、様式化したシナリオに対してシステムが強固であることを示せばよいとしている。一方、WIPPの安全評価では規制上、人間侵入が相当詳細に考慮されているものもある。人間侵入の可能性については幅があるということである。私見ではNASの意見を入れて許認可の手続きについては人間侵入を詳細に勘案しなくてよいと考える。適切にシナリオを設定し処分場として健全性を示せばよい。
  • 人間侵入については安全規制のプロセスからそれを取り除くことがよいと考える。この問題については、将来の侵入を避けられないし、ほとんど手の打ちようがない。人間侵入に対するシステムの健全性を検討するにとどめるべきである。

【第2次取りまとめの位置付けについて】
  • 総論レポートでは、我が国においてもセーフティーケースを作成することが可能であることを示している。セーフティーケースの作成に当たっては、地層処分概念の開発のアプローチとして人工バリアに裕度を持たせることにより、幅広い地質環境に対して安全性を担保できるものとしている。
  • 第2次取りまとめでは、FEPの取扱いの検討及び設計した処分場の安全性評価を行っている。その中で、1,000年後にオーバーパックが破損し、100万年後にピークが出るとしているが、これが標準のシナリオだと思われてしまっているのではないか。
  • シナリオの確からしさをどう考えるかということだと思う。あるシナリオを示すと、それが保守的な安全評価上の想定であるにもかかわらず、あたかもそうなるように受け取られる。しかし、シナリオというのは、安全を判断するための論理構造としてとらえられるべき問題である。地層処分の専門家でない人々に説明するのが難しいことは承知している。シナリオはコンセプトと密接にかかわる問題である。例えば、スウェーデンのSR-97報告書*xのレファレンスケースでは、100万年間オーバーパックは破損しないとするとともに、システムの健全性についても議論している。システムについてのオプションや安全性のオプションなどの説明責任について考えていかなければならない。シナリオの扱いについては現在は国際的に受け入れられている方法を踏襲している。
  • 他の分野へのフィードバックが個別分野では行われているが、安全評価側から設計要件へのフィードバックが行われていない。設計要件へ反映するべきだと思う。


*xSR-97報告書:Post-closure safety , 1999, SKB Report 99-06

【深地層の研究施設の必要性等について】
  • IAEAで加盟諸国と接触した経験によれば、地下研究施設がどの程度技術的根拠を確立できるか、国民への説明に役立てることができるかが重要である。地下研究施設での研究は、単に技術レベルの進歩だけでなく、このような施設があれば、実際にそこへ行って見ることができるということで、一般の人にとっても有益である。コンセンサスを広く得るために重要な施設である。
  • 重要性は認識している。しかし、我が国では、現段階では研究施設といえども受け入れるところがないのではないか。
  • 既存の施設を用いる場合、例えば、東濃、釜石の場合、早期に研究は実施できるであろうが、放射性物質等の使用は許されない。放射性物質を使わなくても研究は可能である。いずれにせよ、地下研究施設は作る必要があり、市民に地下研究施設で何をしているか見てもらうことは重要である。処分場はその次である。

【今後の進め方について】
  • 今後、事業を進めるに当たり、意思を決定する人たちにもう少し説明をすべきではないか。
  • 日本は、今後は今までのように世界から学ぶだけではなく、教える立場を担うことが重要である。日本の人たちには、積極的に殻を破っていってほしい。世界のリーダーの一員であるということを認識し、他のリーダー国と協力をすることも重要である。日本は先進国なのだから、研究センターを中心として、他の国の人に集まってもらうことが重要である。地震、断層、火山のような天然現象に係わる専門家による基礎的研究を推進することによって、処分のみならず様々な分野に成果が活かせると思う。また、国際的役割を果たすために、研究報告を日本語と英語の両方で毎年出していただくことを期待する。

【再取り出し性について】
  • 再取り出し性はもともと廃棄物処分の技術的な面に由来したものではない。そもそも我々の世代では処分場の長期的安全性の直接的な確認はできないが、再取り出し性を入れることによって安全性が損なわれてもいけない。再取り出しは技術的には可能だろうが、仮に再取り出しを取り入れた処分場を設計したとすると、最終的には処分場を閉鎖することを考えた上で、適切な形で全般的に技術を確立しておく必要がある。
  • 再取り出し性は、処分空洞内に既に人工バリアまで設置してあるものの、坑道は埋め戻していない段階でのことを考えているのか。
  • 最近、EC*xiが再取り出し性に関する報告書*xiiを出版したと聞いている。その詳細は把握していないが、段階的な再取り出し性はほとんどの国で考えている。ベルギーでは閉鎖してからブーム粘土中に処分ピットを入れて埋め戻すことが考えられている。ギャラリーは50年はアクセス可能としている。ギャラリーも最終的には埋め戻す。このため、再取り出しは当然難しくなるが、不可能ではない。信頼のレベルが上がれば再取り出しはいらない。このため、段階的にしてある。
  • ドイツでは岩塩を対象としている。岩塩は可塑性があるため、早く閉鎖した方が安全であり、岩塩の処分地では再取り出しは困難である。コスト面から考えても、廃棄体が再取り出しできる状態が最終解決ではないと考える。しかし、一般論としては再取り出し性に関する議論は重要である。再取り出し性は自主的にプログラムに入れるべきものではないが、可能性として残しておくという考え方が重要である。


*xiEC:European Commission、欧州共同体
*xiiEC報告書:J.B.Grupa, et al., Concerted action on the retrievacility of long-lived radioactive waste in deep underground repositories, EUR 19145 EN

【透明性について】
  • 透明性確保の上で、日本原子力学会として第2次取りまとめを検証したいのだが、現在、日本にサイクル機構と同レベルの研究所がないというのも現状である。もし、サイクル機構が間違っていても、チェックするところがない。もちろん、チェックできるようにする方がよいわけであり、学会がその役割を果たすべきと考えている。ただし、日本の専門家の多くが第2次取りまとめに参加しており、どのようにすればよいかわからないが、学会において見直すとどうなるのかということをやって、意見をまとめたい。
  • 日本は世界的に見てもユニークな状況にあると思う。それは、これから実施主体を立ち上げるからである。実施主体において、様々なグループ、科学者を巻き込んで最初からオープンで事業を進め、その人たちの信頼を得ることができる。これは、重要なことである。事業が進み、結果をオープンにしてから国民や科学者から反対があった場合は、そこで行き詰まってしまう。
  • どのように、メディアを活用するかを考えることも重要である。常に様々な段階でプレスリリースを行うことが国民とのコミュニケーションを行う上で重要と考える。
  • プレスリリースは重要であるが、伝達方法も大切である。また、市民の理解を得難いと思われることについてもきちんと伝えるべきである。第2次取りまとめにおいて我が国に地層処分場を作る場所がある可能性が示されたことについて、今日の会議で初めて知った。また、処分場候補地が選定された段階で、再度調査を行い、地層処分ができるかできないか判断するということ、今後、地下研究施設が必要という段階であるということも初めて知った。高レベル放射性廃棄物処分と切り離せない問題として、これ以上、原子力発電を増やすかどうかという議論がある。EU*xiiiでは、反原子力発電が進んでいる。原子力発電を続けていく中で処分のことを考えると言うのでは、広く市民に納得してもらうのは困難であると考える。
  • 地域の名前をどのように出せるか、透明性もあるが、公平性が大切である。全国が対象になるというコンセンサスをいかに得るか、人工バリアの開発も重要であるが、このような議論が先ず重要である。


*xiiiEU:European Union、欧州連合

(7)まとめ  小島 圭二
本ワークショップでは第2次取りまとめに対するご意見を中心にご議論いただいた。
 本ワークショップでは第2次取りまとめに対するご意見を中心にご議論いただいた。
 まず、基調講演では、高原氏に地層処分事業を進めるためには公衆の信頼感と安心感の醸成が必要であることを、実際のサイト選定、事業化が行われているフィンランドを例に話していただいた。Nygards氏にはスウェーデンのサイト選定プロセスやアンケートの結果を示しながら、処分計画における地域住民の参加、柔軟性の重要性について話していただいた。これからの地層処分の実現に向けて重要な提言をいただいた。  次に、各セッションでは、第2次取りまとめに対して行われた評価の主要な対象である地層処分の技術的信頼性、サイト選定、基準策定の拠り所を重点ポイントとして議論していただいた。
 国内外のパネリストの方々からは、専門部会報告書に重点項目が明確に示されており、これに基づいて取り組まれた第2次取りまとめにより地層処分の実現へ向けた基盤技術の整備充実がはかられた、との見解が共通して示された。
 パネルディスカッションでは、第2次取りまとめ以後の処分の実現に向けた進め方についても議論が交わされた。各セッションごとに総括すると、セッションTでは、自然現象の将来予測について過去の規則性を見直すことで将来を外挿できることが地球科学者間で合意されているとの認識が得られた。セッションUでは、人工バリアシステムについて、特に設計に関して、科学技術の進展に応じて第2次取りまとめで示された技術を今後更新していくことの必要性が指摘された。また、廃棄体の再取り出しについては、安心のために取り組んでいく必要があることで一致した。セッションVでは、不確実性の低減化の重要性について議論された。どんな事象が重要か、感度解析を行いスクリーニングし、データを蓄積して不確実性を低減していくことが技術的に重要な課題であるとの意見があげられた。さらに、セッションWでは、不確実性に対しては、不確実性への理解及び一般のコンセンサスを得るために、市民を巻き込んだ議論の必要性について議論が行われ、また、そのタイミングも重要であることが指摘された。
 パネリスト及び参加者からいただいた主要な意見として、次のことがあげられる。
  • 第2次取りまとめは幅広く全体の知見を整理することができている。
  • 地層処分実現に向けて何を考えるかに関し、評価報告書を裏付ける意見が得られた。
  • 地層処分の実現に向けて、一般市民の参加をどう促すかが重要である。
  • 国民の信頼、安心感を得ることが重要であり、さまざまな立場の人を含む公開討論が重要である。
  • 国民の信頼を得るには長期にわたりこの問題を特化して考える専門家集団が、評価や基準の策定に当たって必要である。
  • 実現へ向けての具体的な対策として、基準の早期策定、市民との討論、意思決定の記録を残していくことが重要である。
  • 地下のデモンストレーション施設及び実証型の大規模プロジェクトを推進し、認識を深め、技術を進展させることが必要である。
  • 第2次取りまとめから地層処分の実現まで時間があるため、常に新しい技術を取り入れ、第2次取りまとめの内容を更新をしていく必要がある。
  • 透明性が求められ、そのためには情報の伝達の仕方が重要である。
 全体について言えることは、サイトの選定に当たっては、最善、最適なサイトではなく適切なサイトの選定を行うことを目標とすべきであり、この際、どのように市民の理解を得ていくかが重要であること、などである。