「高レベル放射性廃棄物処分に向けての基本的考え方について」
(平成10年5月29日 原子力委員会高レベル放射性廃棄物懇談会)より抜粋

なぜ、高レベル放射性廃棄物を地層処分するのか

 高レベル放射性廃棄物は、長期にわたり放射能のレベルが高いため人間の生活環境から隔離して安全に処分する必要があり、その処分方法について長年、各国及び国際機関において様々な可能性が検討されてきた1)。人間の生活環境から隔離するため、宇宙空間への処分、南極大陸などの氷床への処分、海洋底又は海洋底の堆積物中への処分、深地層への処分が考えられてきた。宇宙空間への処分については、事故が起きた場合のリスクが大きい。南極の氷床への処分については、南極条約によって禁止されている。また、海洋底又は海洋底の堆積物中への処分については、廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約(ロンドン条約)によって禁止されている。一方、地表において廃棄物を超長期にわたって管理するという考え方もある。これについては、将来の世代にまでも廃棄物を監視し続ける義務を課し、また、将来社会が安定で制度が維持できるという仮定に立ち、戦争や革命などの人間による災害にも脆弱であると考えられている2)3)
 このような検討を経て、地層処分以外の処分方法については実現にあたっての問題が多いことから、現在、わが国を含めて国際的に、最も好ましい方策として地層処分が共通の考え方になっている。
 なお、国により、ガラス固化体ないし使用済燃料を地層処分のさいの廃棄体として選択しているが、いずれにおいても、深地層の研究を実施し、実施主体を設立し、事業資金の確保を行うなど類似の制度と体制の整備が進められている。


1)今までの検討の例として以下のようなものがあげられる。
米  国:"The disposal of radioactive waste on land."National Academy of Sciences-National Research
Council,NAS-519(1957)
USAEC,WASH-1297(1974)
USDOE,DOE/EIS-0046F(1984)
Rice,et al.,DOE/TIC-4621,370,(1981)
カ ナ ダ:A.M.Aikin,et al.,"The Management of Canada's Nuclear Wastes",Minister of Supply and Services Canada,M23-12/77-7,(1977)
ス イ ス:"Projekt Gewahr 1985",Nagra(1985)
OECD/NEA:NEA Groupe of Expert,"Objectives,Concepts and Strategies for the Management of Radioactive Waste Arising from Nuclear Power Programmes",OECD(1977)
"Geological Disposal of Radioactive Waste,An Overview of the Current Status of Understanding and Development",OECD(1984)
2)OECD/NEA「長寿命放射性廃棄物の地層処分の環境的及び倫理的基礎」("The Environmental and Ethical Basis of Geological Disposal of Long-lived Radioactive Wastes",OECD(1995))
3)カナダ:A.M.Aikin,et al.,"The Management of Canada's Nuclear Wastes"(前掲)