第44回IAEA総会について
平成12年10月3日
外務省科学原子力課
1.IAEA総会の主なポイント
(1)「保障措置の効率強化と追加議定書の適用」関連
我が国が提案していた追加議定書発効促進のための行動計画が認められる。
特に国際会合開催の可能性に言及。
(2)「放射性物質の輸送の安全」関連
ニュー・ジーランド提案に対し多数の沿岸国がこれを支持。特に事前の通報
及び協議制度を強く主張。我が国をはじめ米、英、仏と対立。長時間の厳しい交渉を経て昨年並みの表現でニュー・ジーランドが妥協。
(3)「革新的中・小型原子炉の開発」関連
ウルグァイ(G77と中国)提案及びロシア提案。米原則支持。
核不拡散抵抗性があり、安全かつ経済性のある核燃料サイクル開発を提案。
(4)「原子力安全の教育訓練」関連
ウルグァイ(G77と中国)提案。主として(3)の開発などに関連して原子力分野の人材維持と育成を図ることを狙いとする。
(5)予算関連
保障措置予算:途上国優遇制度につき今後25年をかけて漸廃を合意。
技術協力基金:2001、2002年は73百万ドルを維持し、2003年までに目標額に対する支払額(我が国提案の「達成率」の概念が承認される)を90%に引き上げることで合意。
2.RCA(アジア原子力地域協力協定)総会
(1)RCA地域事務所設置に関し、韓国が同国内設置を提案。右に対し問題点等につき検討することとなった。
(2)UNDPがRCAへの拠出を削減するとの意向表明。各国より再考を求める意見多数。
(3)「アジア・フォーラム」とRCAの重複を排除すべしとの意見あり(豪州、インドネシア、中国)。我が方より、両者の共調が建設的である旨応答。
3.科学フォーラム
原子力の技術的問題につきIAEAが加盟国の政府及び民間関係者に情報を提 供することを目的とする。本年で3回目。
本年のテーマは「放射性廃棄物管理」。(「現状認識」、「技術的側面」、「安全的側面」、「パネル・ディスカッション」)
第1セッション「現状認識」−議長:谷口東大教授
我が国の専門家より、安全基準の考え方等につきプレゼンテーション。
(参考)保障措置協定と追加議定書の発効促進に関する行動計画の内容
1.背景
(1)IAEAの保障措置を強化し、未申告の核物質・原子力活動を探知することを目的とする追加議定書のモデルが1997年に採択された。しかし、9月22日現在、16ヶ国の追加議定書が発効しているにすぎず、追加議定書の発効促進(普遍化)が重要な課題となっている。(署名国は53ヶ国。我が国の追加議定書は昨年12月に発効。)
(2)本年5月に取りまとめられたNPT運用検討会議の最終文書において、IAEA事務局長と加盟国が、保障措置協定と追加議定書の発効促進のための行動計画の策定につき検討することが要請された。
(3)これを踏まえ、今次IAEA総会において、大島科学技術庁長官が政府代表演説において、追加議定書の発効促進のための行動計画の必要性を訴えるとともに、これを支援するためIAEAへの特別拠出を行うことを表明した。さらに、関係国との非公式協議を踏まえて、我が国は追加議定書の行動計画を含む決議案(EUが提案した保障措置・追加議定書に関する決議案に対する修正提案)を総会に提出した。
2.行動計画のポイント
本決議に盛り込まれた保障措置協定及び追加議定書の発効促進(普遍化)に関する行動計画のポイントは以下の通り。
(1)IAEA事務局長による締結努力の強化(特に原子力活動を有する国に対する締結努力の強化)
(2)締結のための国内プロセスを促進するための二国間又は地域的な協議の強化
(3)締結及び実施に必要な知識・技術の提供を通じたIAEA及び加盟国による支援実施
(4)IAEA及び加盟国による締結働きかけ努力の調整の強化
(5)上記努力の進展を踏まえた、国際会合の開催を含む更なるステップの検討