大臣談話
平成12年9月29日
国 務 大 臣
科学技術庁長官
大 島 理 森
1. 昨年9月30日のJCO臨界事故から明日で丁度1年となります。この事故では、住民の方々の避難、屋内退避が行われたほか、三人の作業員が重篤な放射線被ばくを受け、懸命な医療活動にもかかわらず、このうちの二人が亡くなられるなど、我が国の原子力の平和利用史上前例のない事故でありました。亡くなられた、大内さん、篠原さんには、あらためて心よりご冥福をお祈り申し上げます。国としては、この事故により国民、さらにはこれまで原子力の開発に御協力いただいてきました地元住民の方々の原子力に対する信頼が大きくゆらいだことを厳しく受け止め、再発防止や万一の際の防災対策はもとより、地元住民の方々への対応に全力を挙げて取り組んでまいりました。
2. 再発防止等につきましては、事故の教訓を踏まえて新たに原子炉等規制法の改正及び原子力災害対策特別措置法の制定が行われました。これらの法律の下で安全確保のためのシステムの強化及び緊急時の対応システムの整備が行われましたが、これらのシステムが十分に機能するためには、関係者1人1人が十分にその役割を果たし、特に現場にいる人間が緊張感と使命感をもって取り組むことが必要不可欠であります。また、折りに触れ関係者に強く求めているところでありますが、現場の職員に対する保安教育の徹底等、安全確保に係る人材養成が極めて重要であります。
現在、原子炉等規制法の改正法(本年7月施行)に基づき、原子力立地地域に原子力保安検査官を配置し、原子力施設における保安規定の遵守状況に係る検査等を実施しているところであり、こうした日常監視体制の強化によって、原子力事故の未然防止に最善を尽くす所存です。また、原子力災害対策特別措置法(本年6月施行)に基づき、オフサイトセンターの整備、原子力防災専門官の配置等、緊急時に備えてハード、ソフト両面において万全を期すべく全力を挙げているところです。来月28日には、同法に基づく国、地方公共団体、事業者等の協力による初の総合防災訓練を実施する予定です。
3. 地元住民の方々への対応につきましては、線量評価を行うとともに、原子力安全委員会健康管理検討委員会において健康影響について検討していただき、さらに、健康に対する不安を一日も早く取り除いて頂くため、茨城県等と連携・協力して、心のケアも含めた健康相談や健康診断を実施してまいりました。また、損害賠償につきましては、迅速かつ適切な賠償が行われるよう事業者に対して指導を行い、9月22日現在で、総請求件数7,025件の約98%について当事者間で合意がなされております。風評被害対策につきましても、茨城県等が行う観光PR等に対する協力を実施してきたところです。今後とも、これら地元住民の方々への対応につきましては、関係自治体や関係機関と密接な連携を図りつつ、誠意をもって取り組んで参る所存であります。
4. 原子力が引き続き我が国の重要なエネルギーの担い手として存在するためには、地元の方々や国民の皆様の理解と信頼、そして協力が必要不可欠であります。国としては、原子力に携わる関係者とともに、JCO事故を決して忘れることなく、常に緊張感をもって安全確保の徹底を図ることを基本中の基本として取り組んで参る決意であります。
(参考)
JCO臨界事故の教訓を踏まえた科学技術庁の取り組みについて
T.再発防止対策の強化
1.運転管理の段階における安全規制の強化
(1) 核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(原子炉等規制法)の改正(本年7月1日施行)
- @加工事業者に対する施設定期検査(年1回)の受検等の追加
A保安規定の遵守状況に係る検査(保安検査)制度(年4回)の創設
B事業者による保安教育の義務の明確化
C従業者の安全確保改善提案制度の創設
- (2) 原子炉等規制法の改正を踏まえた安全規制強化の取り組み
- @原子力保安検査官の現地への配置及び保安検査の実施
- 本年6月、保安検査の対象となる当庁所管の44事業所が所在する地域へ16名の原子力保安検査官を配置。
- 本年7月より保安検査を開始し、9月中に39事業所にて実施。
一定量以上の核燃料物質の使用者に対する規制の強化に伴い、新規に保安規定の認可申請を行う5事業者については、保安規定認可後に実施予定。- A保安規定における保安教育の実施計画等の明確化
- 本年9月中に、当庁所管の44事業所全てを対象に、保安教育の実施計画等について保安規定に特記するための保安規定の変更認可申請が行われる予定。
- 2.原子力防災対策の強化
(1) 原子力災害対策特別措置法の制定(本年6月16日施行)
- @迅速な初動動作と国、都道府県、市町村の連携の確保
A原子力災害の特殊性に応じた国の緊急時対応体制の強化
B原子力防災における事業者の役割の明確化
- (2) 原子力防災対策強化の取り組み
- @原子力防災専門官の現地への配置及び各種マニュアルの整備
- 本年6月、当庁所管の事業所が所在する地域へ7名の原子力防災専門官を配置し、地方自治体、事業者の行う原子力防災に係る研修、訓練、マニュアル整備等に対する指導を実施。
- 原子力災害対策マニュアル等各種マニュアルの整備の推進
- A原子力防災施設・設備の整備の推進
- 関係府県等と協力し、オフサイトセンターの建設、同センターに設置する防災資機材の整備、国、自治体、同センター等の間の情報通信ネットワークシステムの整備等の施設・設備の整備を推進。
- 緊急時における専門家の活動拠点となる原子力緊急時支援・研修センターの整備を推進。
- SPEEDIを活用した放射線の異常値検出に関する迅速情報システムの整備を推進。
- B原子力防災関係者の研修・訓練
- 国、地方自治体、事業者等が共同して原子力総合防災訓練を実施。本年度は、10月28日、島根県にて実施。
- 国(原子力防災専門官等)、地方自治体(警察、消防、医療関係者等)、原子力事業者に対する原子力防災研修を実施。
- C事業者の役割の明確化
- 原子力防災管理者の設置、放射線測定設備の設置等及び原子力事業者防災業務計画の策定を義務化。同業務計画については、本年12月15日までに全ての事業者より届出がなされる予定。
- D原子力防災対策のための予算措置
平成11年度第2次補正予算 461億円
平成12年度予算 58億円
平成13年度概算要求 67億円
- U.地元住民の方々への対応
1.健康管理の取り組み
- 原子力安全委員会健康管理検討委員会においてとりまとめられた周辺住民等の健康管理のあり方の提言(平成12年3月27日)を踏まえ、周辺住民の健康不安に適切な対応をとるため、茨城県等と連携・協力して、心のケアを含めた健康相談(平成12年4月)や健康診断(平成12年5月)を実施。
- 2.被害補償の概況
- 平成11年12月15日、衆議院本会議において茨城県東海村核燃料施設事故による被害者救済に関する決議。
- 平成11年12月中にJCOは茨城県及び東海村の協力を得て、約2700件について、総額約54億円の補償金の仮払いを実施。
- 平成12年1月末から3月上旬にかけて、JCOは茨城県及び東海村の協力を得て、補償金額確定のための窓口を設け、請求者と話し合いを行った。
- その結果、9月22日現在、請求件数の約98%にあたる約6885件について合意に達している。(総額約126.8億円、未合意案件は約140件。)
- 未合意分についても、早期解決に向けて、話し合いが進められている。
(原子力損害賠償紛争審査会に対する和解仲介の申立ては1件。現在対応中。)
- 3.風評防止対策
- 既存の広報予算等を最大限活用し、ニュースレターの作成・配布や新聞広告等による情報提供、心のケアのための健康相談事業を実施するとともに、県等が実施する観光・物産キャンペーンなどの事業を支援。
- また、平成11年度第2次補正予算等において、事故に対する影響の調査や、県民及び地域経済に対する影響の回復に資する事業等のための交付金を計上。
以上