木元原子力委員の海外出張報告について

平成12年9月19日

1.目的
 昨年3月に世界で初めてTRU廃棄物の地層処分を開始した米国の廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)の視察を行うとともに、廃棄物処分に関する意見交換を行う。また、アルゴンヌウェスト研究所において先進リサイクル技術関連の施設視察を実施するとともに、金属燃料関連技術、乾式再処理技術に関する意見交換を行う。さらに、原子力の社会的側面について、米国原子力エネルギー協会(NEI)関係者等との意見交換を行い、一般公衆に対する原子力の広報、メディアの誤報に対する対策等について議論を行う。

2.出張先
 アメリカ(カールスバット、アイダホフォールズ、ワシントン)

3.日程

9月4日(月)成田発→カールスバッド着
  5日(火)廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)視察
カールスバッド発→アイダホフォールズ着
  6日(水)アルゴンヌウェスト研究所視察(燃料コンディショニング施設(FCF)等)
アイダホフォールズ発→ソルトレイクシティー着
  7日(木)ソルトレイクシティー発→ワシントン着
  8日(金)米原子力エネルギー協会(NEI)要人との会談
(アンジー ハワードNEI副会長、アン ビスコンティ元NEI副会長ら7名)
  9日(土)ワシントン発
 10日(日)成田着

4.結果
(1)廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)視察
 日 時;9月5日 10:00〜12:30 WIPP(カールスバット)
 対応者;Mr.J.Ingram(ウェスティングハウス社)、Dr.E.Webb(サンディア国立研究所)
 主な内容;
 WIPPは、昨年3月に世界で初めて操業を始めたTRU廃棄物地層処分場であり、ニューメキシコ州カールスバッドの東約40kmの地点にある。地層処分場は、地下約650mの岩塩層中にある。当該岩塩層は約2.25億年前に形成されたものであり、米国最大(1120×480km)の規模を誇るSalado層群の南西端に位置する。処分場の広さは約2.2km2である。処分場は8つのパネルで構成され、1つのパネルにさらに8つの処分坑道(ルームと呼ばれている)を設置している。現在は最も北東側のパネル1のルーム7に廃棄物を埋設している。また、パネル2が建設中であり、パネル3、4、5については計画中であった。
 本施設で対象としているTRU廃棄物は、米国に25か所ある軍事施設から出た廃棄物であり、主にプルトニウムで汚染された衣類、布類、道具類などである。現在比較的放射能濃度の低いCH(contact handled)廃棄物と呼ばれているものを処分している。元々使用済燃料の処分も対象として建設されたため、技術的には高レベル放射性廃棄物の処分も可能であるが、現在は法律によって高レベル放射性廃棄物は処分できない。
 軍事施設からは、専用のトラックで陸送で輸送する。ドラム缶は専用のキャスク(TRUPACT−II)で運搬している。運搬頻度は週に3台程度である。現在、運搬に際しては運搬経路上の市町村、警察に衛星を通じ、現在地点、放射能量等の情報がタイムリーに伝達されている。将来的には、操業関連情報も含め、オープンにしていく方針。
 埋設はドラム缶7本を1つの単位として行う。埋設に当たっては、酸化マグネシウムを廃棄体の上下に配置する。酸化マグネシウムには、炭酸ガス等を吸着する性質、地下水を吸収する性質、地下水をアルカリ性にする性質がある。本施設では65万本の廃棄物が埋設可能であり、35年間操業する予定である。

(2)アルゴンヌウェスト研究所視察
 日 時;9月6日 8:30〜16:00 アルゴンヌウェスト研究所(アイダホフォールズ)
 対応者;Dr.Y.I.Chang(理事長)、Dr.J.I.Sackett,Dr.G.L.Lentz,Dr;R.W.Benedict,Dr.G.R.Tarbet,Dr.R.L.Parks,Dr.J.R.Krusl,Dr.S.G.Johnson.
 主な内容;
 アルゴンヌウェスト研究所には、高速増殖実験炉(EBR−II)が1964年から1994年まで稼働しており、隣接する燃料コンディショニング施設(FCF)での再処理、燃料製造の研究とともに、高速炉の実用化(IFR)に向けた核燃料サイクル研究が実施されていた。FCFでは、金属燃料の製造、乾式再処理技術開発を行っていたが、1994年の政策変更に伴い、これらの研究を中止し、使用済燃料の安定化を目的とした研究開発を実施している。
 IFR計画では、高速炉に金属燃料を用いるため、従来の炉と比べ、安全性が増し、燃料製造コストを下げることが可能である。また、乾式再処理は、従来のPUREX法に比べ、プルトニウムを単独で取り出すことができないため、核拡散抵抗性が高い。
 チャン理事長は、アルゴンヌ研究所は米国で唯一の高速炉リサイクル技術を有する研究所であり、技術、人材、施設を、高速炉のオプションが残されている限り維持していきたいと考えている。
 FCFでは、実際に乾式再処理の心臓部であるマークIV、マークVの電解槽(Electrorefiner)及び関連の処理装置の視察を行った。セル内は、扱う物質に応じてアルゴンまたは空気で充填されている。
 HFEFでは、燃料破壊試験用の試料作成および試験後の試料分析を行っているセル、HIP(Hot Isostatic Pressing)固化体、PC(Pressureless Consolidation)固化体製造のための装置を見学した。セル内は、扱う物質に応じてアルゴンまたは空気で充填されている。
 また、様々な分析装置及び電子顕微鏡を見学した。いずれも廃棄体の変質、廃棄体からの核種の浸出等廃棄体特性を研究するために用いられている。また、現在は使われていないが、燃料製造用のグローブボックスを見学した。本グローブボックスでは、かつて4ヶ月でプルトニウム燃料を1000本作成した実績を有する。
(3)米原子力エネルギー協会(NEI)要人との会談
 日 時;9月8日 9:00〜14:30 NEI本部(ワシントンDC)
 対応者;Mrs.A.Howard(NEI副会長)、Dr.A.Bisconti(ビスコンティ研究所)、Mr.S.Peterson,Mr.S.Kerekes(NEI)、Mr.J.Stamos(DOE)、Mrs.P.Bryant(WIN)、Mr.C.Cameron(NRC)
 主な内容;
 まず、メディアの対応に関するNEIの取組みが紹介された。NEIでは、メディアの報道に対して事前に情報を得て、報道内容の正誤を確認している。この際、報道が誤っている場合には、事前に訂正する努力をしており、仮に受け入れられない場合、間に合わない場合でもメディアに対し、事実関係の教育を実施している。また、メディアが知りたい情報について中立な立場から正確に伝えることができるように第三者の紹介についても実施している。これら、メディアに対応する責任者はメディアトレーニングを受けており、常にベストメッセージを伝えるような訓練が施されている。正確な情報発信、専門家の推薦、緊密なメディアとのコンタクトを通じ、NEIとメディアとの信頼関係が確立されている。
 政府と地元のコミュニケーションに関する議論では、政治家と労働者が意見交換を行うことができる場を設定することが重要であるとの意見が出された。また、原子力施設における防災訓練の実施は、消防、警察、事業者に万一の備えができるとともに、そのことが地元の信頼及び安心につながる結果となることが示された。さらに、原子力施設の立地または増設においては、地元議員及び住民が同様の施設を見学する機会を与えることが重要であり、この様な場合、すべて地元が費用を負担しているとのことであった。
 アメリカの原子力政策について、IFRを基本とした高速炉の開発等の可能性について言及した結果、商用炉のコストが下がっており、新型炉がコスト的に不利なこと、プルトニウムを生産することが、アメリカ国民に受け入れられないことから、民間でこのような開発を行うことが困難であることが示された。
 NRCについても原子力施設の立地、増設等の際に、地元説明会合(Town Hall Meeting)を実施しており、説明及び電話等の応対に関し、スタッフを教育している現状が伝えられた。このような会合を通じ、強い独立した規制組織があることを国民に示すことによって、信頼性が高まったことが報告された。NRCの巨大化は、一方で原子力発電所の建設を阻止しているのではないかと質問したが、明確な否定はなされなかった。
 学校教育については、州レベルで行っており、さらに教育のライセンスがない者は指導できないため、NEIでは教師及び教育委員会への広報活動、資料要求等での対応を実施している。しかし、教科書等に過ちがあってもNEIとしては干渉しないとのことであった。
 原子力産業の育成には、若者の力が不可欠であるが、NRCには、インターンシップの制度があり、若者がこの制度を利用し、就職を希望する現状が伝えられた。
 女性に対するPAの議論では、私の関係する会では、女性だけを特定してPAを行うことをやめたこと、そう言った方法が逆効果につながる旨示したところ、この点については米国も同様であった。原子力産業では女性のキャリアアップの機会が少なく、原子力をやめる女性が多い。そのため、WIN(Women in nuclear)では、産業の中にいる女性の情報交換の場を作るなど、原子力をやめさせないような活動を実施している旨説明があった。
以上