海外ウラン探鉱についての平成10年2月の原子力委員会決定、 同8月の科学技術庁方針案の原子力委員会承認等を受けて、平成10年10月1日に発足した核燃料サイクル開発機構(以下、サイクル機構)は、平成12年度末までに探鉱事業の整理を完了することを目標に、成果のとりまとめおよび海外ウラン探鉱権益(以下、権益)の国内民間移転のための検討・準備を行ってきた。
● | 譲渡対象の21件の権益の多くは初期的な段階の探鉱プロジェクトであるが、中には十数年後から生産可能な有望プロジェクトを有しており、それら主要権益を国内企業に移転できれば、我が国のウラン資源の長期的な安定確保に役立つものであること |
● | しかしながら、昨今の世界のウラン市場の低迷状況・国内の経済情勢において、我が国の民間企業が容易にウラン探鉱事業に進出できる状況にないこと(特に単独での権益継承は困難であること) |
● | 権益継承後当初十数年間は事業収入が得られない見込みの一方、共同調査分担金の拠出等権益を維持するための費用が必要である。したがって、国内民間移転を可能とするためには、民間企業のリスクを低減化するとともに最低限の維持経費を支援する仕組みが不可欠であること |
以上を考慮し、平成11年9月10日、サイクル機構は、権益の国内民間移転の窓口機関であるウラン資源確保対策委員会(URDC)を通じてその会員各社(29社1機関)に対し、以下の3つの基本的譲渡条件を示し、保有する21件全権益の譲渡提示を行った。
① | 譲渡対価の支払いは成功延べ払い(純利益の10%)とすること。 |
② | カナダの全権益を譲渡する場合、ミッドウエスト鉱床に関する権利の対価収入を権益の維持費に活用すること。 |
③ | 譲渡後、最低5年間は権益を維持すること。
(注) ミッドウエスト鉱床に関する権利:1991年に民間移転したカナダのミッドウエスト鉱床権益に関し、譲渡対価の支払いを受ける権利(別添1参照)。 |
<国内民間移転のスケジュール>
平成12年 6月中旬: | 基本合意書調印 |
6~8月: | 譲渡契約書草案作成(継承企業によるコンソーシアム/現地子会社の設立) |
9月 : | 譲渡契約締結 |
① | アーネムランドウエスト地区(豪)の権益については、世界有数の鉱床地域に位置し有望性が高い上、目下カメコ社が探査費を全額負担しサイクル機構が保有していた権益の2分の1(49%)を取得中であることから、カメコ社の権益取得が完了する2002年頃まではサイクル機構の権益を残し、その時点での国内企業への移転の可能性を再度検討することとする。 |
② | その他の豪州およびアフリカの4権益については、平成12年度中に海外売却、放棄等を行う。また、米国およびカナダの2権益に保有するロイヤルティーについては、経費負担がないため当面機構が維持していく。 |
① | カナダ、オーストラリアの世界の最有望地域を主に、カメコ、コジェマの2大メジャーに次ぐ探鉱権益を保有し、約4万tUの鉱量を確保。 |
② | 1991年に、カナダのミッドウエスト鉱床の動燃権益15%を、海外ウラン資源開発株式会社に譲渡(別添1参照)。 |
③ | 空中電磁探査法の新規導入によるカナダのシッソンズ鉱床発見等、世界のトップレベルのウラン探鉱技術、データ解析ノウハウを保有・蓄積。 |
④ | 天然ウラン市場、鉱山データ等の情報収集・解析を行い、関係機関への情報提供を継続的に行うとともに、長期需給予測を実施。 |
1991年2月、旧動燃は、カナダのミッドウエスト鉱床の権益15%を、海外ウラン資源開発株式会社の100%子会社であるOURD(Canada)(以下、総じてOURD)に譲渡した。その後、OURDはミッドウエスト鉱床権益の一部を近隣のマックリーンレイク鉱床権益の一部と等価交換し、両プロジェクトは共同開発されることになった。
マックリーンレイク鉱床は昨年6月からウランの生産を開始し、今年1月までに順調に試験操業の段階を終え、2月からフル操業の段階に入った。2000年からは目標の年間 600万ポンドU3O8(2,300tU)の生産を達成できる見込みである。
OURDからサイクル機構への譲渡対価の支払いは、ミッドウエスト鉱床およびマックリーンレイク鉱床からのウラン生産量に応じて毎年支払われることになっている。1999年12月までのマックリーンレイク鉱山の生産量に応じた対価 30.3万C$(円価換算約 2,200万円)が3月20日にサイクル機構カナダ法人に支払われた(サイクル機構受領は3月28日)。今後、約15年にわたって、総額約15億円(約1,900万カナダドル)の譲渡対価が先方より支払われる見込みである。
(1) | サイクル機構は、カナダ権益(14件の鉱業権益およびミッドウエスト鉱床に関する権利;別添図表参照)を、継承企業が設立する合弁企業(以下、コンソーシアム)に譲渡する。 |
(2) | 2000年9月を目処に譲渡契約を締結する。コンソーシアムのサイクル機構に対する義務は2030年3月31日あるいは事業撤退時をもって終了する。 |
(3) | 譲渡契約締結以降、カナダ権益に関する義務はコンソーシアムに移転するが、契約締結以前の活動に起因する義務についてはサイクル機構が責任を負う。 |
(4) | 上記(3)にかかわらず、2000年4月1日以降の権益維持費用はコンソーシアムが支払う。 |
(5) | コンソーシアムは権益継承後、最低5年間はカナダ権益を維持する。 |
(6) | 譲渡対価の支払いは成功延べ払い方式とし、コンソーシアムは鉱山生産開始後、その純利益の10%をサイクル機構に支払うものとする(ロイヤルティーの支払)。 |
(7) | コンソーシアムは、ミッドウエスト対価収入をカナダ権益の維持管理のみに使用できる。 |
(8) | 権益譲渡後5年以内に権益維持に支障をきたす大きな状況の変化があった場合、双方協議の上善後策を定める。5年後以降に同様の状況変化があった場合、コンソーシアムはサイクル機構に理由を説明し事業撤退できる。 |
(9) | コンソーシアムが事業撤退する場合、カナダ権益(ミッドウエストの権利含む)を売却し、売却収入をサイクル機構への譲渡対価の支払いに充てるものとする。基準となる譲渡対価を上回る実収益があった場合には、サイクル機構とコンソーシアムとの折半とする。 |
(10) | 権益継承後5年後以降、コンソーシアムは権益の個別売却または他権益との交換を行うことができる。売却収入は、原則として残りの権益の維持管理または新たな権益の取得に使用するものとする。交換し新たに取得した権益はサイクル機構へのロイヤルティー支払の対象となる。 |
(11) | コンソーシアムは、ウラン鉱量のある権益については極力権益率を維持するものとするが、経営上の判断により必要な場合は事前説明しダイリュートできる。 |
(12) | 2030年3月31日あるいは事業撤退までの期間、コンソーシアムはサイクル機構に毎年度の事業内容および決算報告を行うものとする。 |
(13) | コンソーシアムは、豪州のアーネムランドウエスト権益を追加取得するオプションまたは優先買取権を有する。 |