| ○ | 日本原子力産業会議では、1986年より14回にわたり台湾の原子力関係機関と「日台原子力安全セミナー」を東京と台北で毎年交互に開催している。このセミナーでの情報や最近の交流等を通じて得た情報をもとに最近の動向について報告する。 |
| ○ | 台湾では、ご承知のように、去る3月18日に総統選挙が行なわれ、その結果、民主進歩党(民進党)の陳水扁氏が新しい総統として選ばれ、1945年以来55年間政権を握っていた国民党の長期政権が終わり、5月20日に陳水扁新政権が発足した。 (→参考資料1) |
| ○ | 陳水扁新総統は閣僚ポストを民進党関係者で占めず、(例えば、李登輝政権時の唐飛国防大臣を首相に任命するなど)国民党政権時の閣僚も少なからず登用し、急激な政策変更を避けたものと見られる。原子力関係者では、前原子力(能)委員会委員長の胡錦標氏が副首相に次ぐポストの政務委員(上級相に相当)に(6人のうちの1人)、前核能研究所(原子力研究所)の夏徳所長が原子能委員会委員長(閣僚級)に昇格した。(また、前駐日台北経済文化代表處代表(駐日大使に相当)の荘銘耀氏も国家安全局秘書長に昇格した。) (→参考資料2) |
| ○ | 陳水扁総統は、選挙期間中、民進党の綱領である「@新規原子力発電所の建設反対。A代替エネルギーの積極的開発。B運転中の原子力発電所の段階的閉鎖」を選挙公約として掲げ、就任後の発言が注目されていた。(→参考資料3) |
| ○ | この点に関しては、総統就任後、原子力発電所建設の停止、計画の中止を示唆する発言はなされていない。また、近々、現在建設中の「第4(龍門)原子力発電所」に関し「評価委員会」を設置し、今後4カ月程度をかけて、建設続行の是非を検討を行ない、その結果に基づき最終判断を下すと見られている。 |
| ○ | この委員会のメンバーは、台北県長、環境庁長官、経済部(通産省に相当)エネルギー局長、原子力(能)委員会委員長、経済企画庁長官、全国商工会議所の推薦者、その他学者等、20名程度で構成される予定。 |
| ○ | この動きに関連して、台湾の産業界および原子力関係者は、民進党の公約として掲げた「第4原子力発電所計画の中止」を実行すれば多くの混乱が生じるとみて、それを避けるため現実的な路線を選択したと見られている。 |
| ○ | 陳総統としては、党の綱領および選挙公約を無視することはできず、どこかで結論を出す必要から中立の委員で構成する評価委員会にその結論を委ねるようにしたものと考えられる。 |
| ○ | 台湾のエネルギー/原子力事情 ここで、台湾のエネルギー事情についてふれると、台湾は日本と同じく、エネルギー資源に恵まれず、エネルギーの約96%を輸入に依存している。エネルギー供給の構成は1997年実績で、石油が5割、石炭が約3割、原子力1割、その他、天然ガス6%強、水力3%弱などとなっている。(→参考資料4) |
| ○ | 台湾の産業界としては、エネルギーの大部分を輸入に頼っている台湾が、今後もコンピューター等ハイテク製品の製造・輸出を中心とした産業を維持するためには、エネルギーの安定供給は重要課題であり、現在、電力の約4分の1を供給している原子力発電を縮小することは受け入れられないものである。 |
| ○ | 陳水扁総統は、@将来、電力不足が生じないこと、A代替エネルギーの確保、B建設続行の場合の費用、C建設中止の場合の損害賠償額、D放射性廃棄物管理などを考慮して評価委員会に検討を指示する考え。 |
| ○ | 台湾の原子力関係者は、評価委員会委員も一般国民も冷静に台湾の将来の安定したエネルギー供給を考えれば、原子力発電所の必要性は十分理解してもらえると考えている。 |
| ○ | 一方、民進党の林義雄主席は、「党の綱領の修正なしに、第4原子力発電所の建設を認めるわけにはいかない」と主張しており、今後4カ月間は、台湾の原子力の将来を決定する重要な時期となる。 |
| ○ | 最近の台湾のケーブルテレビによる世論調査の結果からも、過半数は第4原子力発電所建設に賛成を示しているが、この問題は国民投票を実施すべきとの意見も大勢を占めている。(→参考資料5) |
| ○ | 今後の見通し 今後の見通しについては、新たに発足する評価委員会にその検討を委ねるが、陳水扁総統は就任後、選挙公約にとらわれず、穏健で現実的な政策を選択しているため、原子力政策についても柔軟な姿勢をとり、最終的には現実的な選択を行うものとみられる。 |