調査結果報告の概要
平成12年5月
(財)若狭湾エネルギー研究センター
国等が行った世論調査に基づく分析
1)原子力発電の安全性及び安心感
①原子力発電の安全性の経年変化:表1
「安全」と答えた人: 推進に肯定的82% 否定的 3% 「安全ではない」と答えた人: 肯定的41%、 否定的40% |
「安心」と答えた人: 肯定的(増設)67% 否定的(廃止) 3% 「不安」と答えた人は:肯定的(増設)36%、 否定的(廃止)30% |
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「原子爆弾との違い」「耐震性」を正しいと認識する人は「安心」と思う割合が多い。
②原子力発電の利便性が高いと思う割合は一般(68%)に較べ専門家(95%)の方が可成多い。
③原子力発電の危険性に関する認識については一般と専門家の間に大きな違いが見られる。特に大きな差が生じているのは、
A | 原子力発電所は原子爆弾のように爆発する。 原子力のつくり出す放射能は広島の原爆の1000倍。 プルトニウムは約24kgで許容量の一兆人分にあたり全人類を死滅させうる程巨大な危険性を有する。 |
B | チェルノブイル事故で見られるように、一旦事故が起きると、その被害は国を越えて広い範囲に及び被害者は数十万人に及ぶ。 |
C | 放射線はたとえ微量でも被ばくすればがんになり、また遺伝的影響を子孫に与える。 |
A | 原子力発電所は原子爆弾のように爆発することはない。 原爆による放射線障害について、放射線源を分析すると、Cs137等長半減期の核分裂生成物及びプルトニウムの寄与は無視出来る程小さい。 核実験により大気中に放出された約3トンのプルトニウムによる約50年間の個人の被爆線量は同じ期間の自然放射線の1%である。 |
B | チェルノブイリ事故では、火傷および放射線障害により31人が死亡した。これ等の犠牲者は、緊急活動に従事した人々から出た。 地域住民の健康への影響については、事故後10年間調査で白血病、がん、遺伝的影響について放射線被ばくによる発生率の上昇は見付かっていない。 ただし、一部の地域で小児の甲状腺腫瘍の発生率の上昇がみられたが、放射線被ばくによるものかどうかはわからない。 他の国の人々も被ばくしたが被ばく線量は少なく、その年の自然放射線の線量の1/4以下である。 実際に発生した被害は、放射線による二次的被害が大きい。一つは放射線被ばくに対する恐怖感等心理的な被害であり、他の一つは住民の移住による経済的、心理的被害である。 |
C | 原爆の被ばく者の二世に対する40年間に渡る大規模な疫学調査に基づくと、遺伝的疾患の発生は認めらなかった。 約200ミリシーベルト以下の低レベルの放射線被ばくでがんになるという説は仮説で、実証的根拠はない。原爆で200ミリシーベルト以下の被ばくを受けた7万5000人の生存者には被ばくによるがん形成の証拠はない。 |
これ等の事実から判断すると、原子力の事故の影響は他の事故(例えば航空機墜落事故)に較べ被害が大きく、影響する範囲が広いということはない。従って原子力の安全を特別に扱う理由にはならない。
問題は低レベル(200mSv以下)の放射線被ばくによる障害の発生の可能性である。この障害は医学的には放射線に起因するか否かの見きわめは不可能である。そのような障害の発生を仮定する所に、原子力の安全(放射線に対する安全)の特異性がある。
2)社会的安全、安心
について調査、検討した。その結果をまとめると、次の2点になる。
(1)原子力の安全性評価における社会と専門家の役割分担の合意形成