1.3 ITER-FEATの技術目標
新しい技術ガイドラインに設定されている技術目標は以下の通りである。
(1)プラズマ性能
1.4 検討の視点
ITER-FEAT概要設計報告書の評価を行うにあたり、ITER-FDRに関する国内評価、その後の新ガイドラインの設定等これまでの経緯を考慮して、主に以下の項目について評価を行うとともに、今後の活動の過程で明確にすべき項目についても検討した。
2.2 物理分野の評価
ITER-FEAT概要設計報告書に示されたプラズマ性能は、1.3節に示した新しい技術目標を満たすものである。ただし、Q≧5の定常運転については現状では信頼性があるとは言えない。今後さらに詳細な設計を進める過程で、プラズマ性能とこれを支えるトカマク構成機器概念との整合性について、以下の検討を実施することを期待する。
(1)運転限界
(2)閉じ込め時間比例則
(3)ELMyHモード
(4)内部輸送障壁モード
(5)磁場リップル軽減/フェライト材
リップル磁場によるアルファ粒子損失の軽減は不可欠であり、フェライト材を用いることで、その損失を軽減するための検討が必要である。
フェライト材の導入により、プラズマの磁気流体特性への影響(ベータ限界値やディスラプションの起こる確率を変える)が予想され、それを評価しておく必要性がある。
(6)ダイバータ機能
(7)計測・制御
− 制御項目の洗い出しと必要十分性の評価
− 制御する方策の有無と信頼度の評価
− 個々の制御に必要なパワーと制御素子設置エリア
− 複数個の制御の干渉の有無
(8)燃料供給/イオン密度
2.3 工学分野の評価
プラズマの性能、運転シナリオから要求される工学機器の概念は妥当と判断される。ただし、FDRからの変更された、超伝導コイルの導体や構造及びブランケット等の主要機器の設計概念について、現在のR&Dからその成立性が保証されるかどうか記述する必要がある。
今後、詳細設計活動に入るにあたって、各機器の通常運転状態における、また安全に係る機器に関しては異常状態をも含めた、荷重条件や材料特性を明確に記述するすると共に、設計解析の妥当性を評価する基準を明らかにする必要がある。特に、詳細設計においては、下記の事項を明確にする必要がある。
(1)プラズマ電流(17.4MA)運転の工学的制約
@デイスラプション条件
(4)ブランケット冷却流路
真空容器内流路構成と真空容器外流路構成の2種類のオプションがあり、いずれのオプションにおいても構造の成立性を確認する必要がある。真空容器内流路構成の場合、これまで検討されてきた真空容器の構造設計基準を満足しているかを確認する必要がある。また真空容器外流路構成においては、中性子遮蔽性能、炉内構成機器との整合性及び電磁力の評価を実施して、設計基準を満たしていることを確認する必要がある。これらの詳細な解析に基づき従来の流路構成も含めた比較検討を実施して、早急にオプションを絞り込む必要がある。
(5)真空容器支持
真空容器の支持に関し、組み立て手順を含めた検討を実施する必要がある。特に、荷重条件については、垂直位置移動現象を含むディスラプション荷重及びトロイダルコイル高速消磁時に発生する電磁力と地震力との組み合わせを含めて評価し、成立性を示す必要がある。
(6)中性子フルーエンス評価
現設計における最大中性子フルーエンスを制限する要因の評価が必要である。また、将来、フルーエンスを上げる可能性を維持するために、増殖ブランケットの諸元と運転条件及び設計への適用性評価を行う必要がある。
(7)プラズマ対向壁材料
プラズマ対向壁材料の検討を進め、使用条件下での性能を評価するとともに、材料中のトリチウムインベントリー評価を継続することが重要である。
2.4 安全性
ITER-FEATの安全設計では、ITERが実験装置であること及び核融合炉の固有の安全性を考慮して、「深層防護」の原則に立脚することを基本的考えとしているが、これは妥当であると判断する。
今後、ITERの安全規制にとって重要であるトリチウムインベントリー等のパラメータを明らかにするとともに、安全解析を進めていく過程で、その解析の妥当性を評価することが必要である。また、放射性物質に対する閉じ込め境界の健全性については、今後の設計のなかで十分に確認される必要がある。
2.5 コスト評価
技術目標の実現性の確度を落とすことなく、ITER-FDRの建設コストを50%削減することを目指して努力することが重要である。
2.6 スケジュール
現状スケジュールは妥当なものと判断されるので、今後の設計の進展に伴い、機器の試験や組立の検討結果がスケジュールに適切に反映され、また安全規制上の諸手続きの具体化に併せて、スケジュールに対する適切な評価が行われることが望まれる。また工学R&Dのスケジュールに関しては、その成果が今後の最終設計に反映できるよう、一層の努力が重要である。
3. 付帯的勧告
− | ダイバータの排熱やアルファ灰排気の機能とプラズマ性能の両立性及びハードとしての成立性を示す必要がある。 |
− | 計測と制御はその妥当性が同時に示される必要がある。特に、ITER-FEATの標準運転パラメータがプラズマ運転領域の限界近くにあるので、高い信頼性をもつ制御が必要である。 |
[主査] | 若谷 誠宏 | 京都大学エネルギー科学研究科 教授 |
[委員] | 井上 信幸 | 京都大学エネルギー理工学研究所 所長 |
伊藤 智之 | 九州大学応用力学研究所 炉心理工学研究センター長 | |
伊藤 早苗 | 九州大学応用力学研究所 教授 | |
岸本 浩 | 日本原子力研究所 理事 | |
庄子 哲雄 | 東北大学工学部 教授 | |
野田 哲二 | 金属材料技術研究所 企画室長 | |
関 昌弘 | 日本原子力研究所那珂研究所 ITER開発室研究主幹 | |
早田 邦久 | 日本原子力研究所東海研究所 副所長 | |
田中 知 | 東京大学大学院工学系研究科システム量子工学 教授 | |
苫米地 顕 | (財)電力中央研究所 研究顧問 | |
早瀬 喜代司 | 電子技術総合研究所エネルギー部 総括主任研究官 | |
日野 友明 | 北海道大学工学部 教授 | |
藤原 正巳 | 核融合科学研究所 所長 | |
松田 慎三郎 | 日本原子力研究所那珂研究所 核融合工学部 部長 | |
宮 健三 | 東京大学大学院工学系研究科システム量子工学 教授 | |