平成12年度原子力研究、開発
及び利用に関する計画

 

平成12年3月
原子力委員会

 


目次

Ⅰ.平成12年度における原子力の研究、開発及び利用の展開についての考え方

Ⅱ.具体的施策
 1.原子力安全対策の推進
 2.国民の理解促進に向けた取組
 3.原子力施設の立地の促進
 4.軽水炉体系による原子力発電の推進
 5.核燃料サイクルの推進
 6.バックエンド対策の推進
 7.核不拡散対策の充実強化
 8.原子力科学技術の多様な展開と基礎的な研究の強化
 9.国際協力の推進
 10.人材の養成と確保
 11.新たな原子力研究開発利用長期計画の策定等

Ⅲ.予算総表
 1.平成12年度原子力関係予算総表
 2.平成12年度科学技術庁一般会計原子力関係予算総表
 3.平成12年度各省庁(科学技術庁を除く)
  一般会計原子力関係予算総表
 4.平成12年度電源開発促進対策特別会計
  原子力関係予算総表


Ⅰ.平成12年度における原子力の研究、開発及び利用の展開についての考え方

 昨年発生したウラン加工工場における臨界事故は、40年余りにわたる我が国の原子力研究開発利用(以下、「原子力利用」という。)の歴史の中で極めて重大な事故であり、国民の原子力に対する信頼を大きく揺るがすこととなった。この事故は、安全確保や防災対策にとどまらず、エネルギー・セキュリティの観点からみた我が国の核燃料加工等のあり方、国内の原子力産業のあり方、経済的効率性の追求に伴う課題等、今後当委員会が原子力政策を審議するに当たって考慮すべき課題を投げかけている。これらの諸課題については、新しい原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画(以下、「長期計画」という。)の審議等の場においてさらに検討を進める必要がある。また、原子力のエネルギー供給に果たす役割や意義について国民の理解を一層深め、原子力政策への信頼を得ていくとともに、原子力の長期的な定着のために原子力施設と立地地域の共生を図っていくことがますます重要な課題となっている。
 人類が将来にわたって経済社会の健全な発展を図り豊かな生活を実現するにはエネルギーの長期的安定供給が必要であり、エネルギーの安定供給確保は国家の重要な政策課題となっている。エネルギー資源に恵まれない我が国にとって、経済社会活動を維持、発展させていくためには、将来を展望しながらエネルギー・セキュリティの確保を図っていくことが不可欠である。原子力は、供給安定性が高く、発電過程で炭酸ガスを発生しない等の特徴を有する最も有力なエネルギー源の一つであり、我が国では既に総発電電力量の3割以上を担う重要なエネルギー源となっている。また、ウラン資源の有効利用、放射性廃棄物の環境への負荷の低減を図るため、放射性廃棄物対策を含めた核燃料サイクルの確立に向けた取組を引き続き進めていく必要がある。
 また、エネルギー需要や供給の在り方は国民生活に直接的に関連する問題であり、エネルギー源としての原子力利用は、今後のエネルギー需要と供給構成に関し政府や国民が様々な場において行う検討を踏まえて進めることが重要である。
 なお、「核兵器の究極的廃絶」と「原子力の平和利用」は、国際社会が取り組むべき共通の課題であり、我が国としては原子力の平和利用に徹しつつ、国際的な核不拡散体制の維持・強化に貢献するとともに、これまで培ってきた平和利用技術をもとに国際的な核不拡散の取組に積極的に協力していくことが重要である。さらに、原子力の分野でフロントランナーとなった今日、世界に対してその成果を発信していくとともに、技術的蓄積や経験をもとに、国際協力において中核的な役割を担うことが求められている。
 一方、原子力の研究開発は物質やエネルギーの根源に対する知識をもたらし先端的な研究開発を牽引するとともに、放射線の利用は健康の増進や生活の利便性向上に大きな貢献を果たしてきた。今後も医療をはじめとする国民生活に身近な分野における放射線利用や未来を拓く先端的な研究開発の展開には大きな期待が寄せられており、科学技術創造立国を目指す我が国としては、研究者・技術者のポテンシャルを結集し、社会的・経済的ニーズに対応した研究開発を推進していかなければならない。
 現在審議を行っている長期計画において、これまで上記を含めた幅広い観点から議論を行ってきており、今後、広く国民の意見を聞くなどの手続を経て、21世紀に向けた原子力利用の全体像と長期展望を提示する長期計画を策定することとしている。また、平成13年1月には中央省庁等改革が行われるが、今後の原子力の高度化と裾野の広がりに対応し、国民や社会の期待に一層的確に応えられるよう、原子力行政体制の整備を進めることが重要である。

 このような基本認識の下、平成12年度は、特に以下の事項に重点を置きながら、具体的施策を展開することとする。

 

1.安全確保、防災対策の充実・強化

 原子力利用を進めるにあたって安全の確保は大前提であり、ウラン加工工場の臨界事故等により高まっている原子力に対する国民の不安感、不信感を払拭するためにも、事故の教訓を踏まえ、安全確保及び防災対策に万全を期していく。特に、昨年成立した原子炉等規制法の一部改正及び原子力災害対策特別措置法に基づき、安全審査・検査の充実等により安全規制を強化するとともに、オフサイトセンターの整備、防災計画の見直し等により防災対策の抜本的強化を図る。

 また、原子力安全委員会については、中央省庁等改革による平成13年1月の内閣府移行に先立ち、平成12年4月からその事務局機能を科学技術庁より総理府に移管し、より独立性を高めるとともに人員の拡充等事務局機能の充実強化を図る。

 

2.国民の理解促進への取組

 原子力利用を進めるに当たっては、国民の理解と協力を得ることが不可欠であり、情報公開を徹底し、国民一人一人が自らの問題として考え、判断するために必要な情報が分かりやすい形で適時的確に提供されるよう一層の努力を払うことが重要である。このため、国民各界各層の多様な意見の原子力政策への反映、積極的な情報公開等を進めるとともに、教育等の場においても、放射線、原子力やエネルギーに関する正確な知識を提供し、生徒自らが考えていく力をつけることができるような環境の整備に向けた取組を行う。
 また、原子力施設と立地地域の共生は、原子力の長期的な定着のためには不可欠な課題であり、原子力立地地域振興等に向けた取組の強化を図る。

 

3.核燃料サイクルの確立に向けての着実な取組

 近年、核燃料サイクルの確立に向けての取組が進展する中、英国におけるMOX燃料製造データ問題は、我が国における初期のプルサーマル計画に影響を及ぼすこととなっているが、一刻も早く適切な対策が講じられ国民の信頼を回復し、プルサーマル計画を着実に進めていくことが重要である。また、六ヶ所再処理工場については、その着実な建設・運転が原子力政策の遂行上、極めて重要であり、スケジュールに沿って実現されるよう最善の努力を傾注すべきである。また、使用済燃料の中間貯蔵については、今後、事業者による具体化を着実に推進することが必要である。
 また、核燃料サイクルに関する研究開発については、核燃料サイクル開発機構(以下、「機構」という。)が中核的な役割を担っているが、社会のニーズを的確に視野の中に入れ、大学及び民間と連携を図りつつ、長期的展望の下、安全確保と透明性を大前提に着実に研究開発を行うことが求められている。高速増殖炉については、将来の非化石エネルギー源の一つの有力な選択肢として、その実用化の可能性を追求するため、安全確保、地元の理解などを前提に研究開発を進める。特に、重要な研究開発の場である「もんじゅ」については、原子力政策円卓会議の提言等も踏まえ、運転再開に向けて、安全性の確認や地元の理解を得るための取組など諸環境を整えるための努力を引き続き着実に行う。また、これまでの研究開発で得られた知見を踏まえ、電気事業者の協力の下、FBRサイクルの開発戦略を明確にする上で必要な判断材料を整備し、軽水炉サイクルに比肩する経済性等を達成し得る実用化概念の構築及び実用化に向けた研究開発を進める。さらに、東海再処理工場については、地元の理解と協力を得て、高燃焼度燃料、MOX燃料等の再処理データの取得を目的として、できるだけ早い時期に運転が再開できるよう努める。

 

4.高レベル放射性廃棄物処分対策の充実・強化

 高レベル放射性廃棄物の処分に関しては、我が国における地層処分の技術的信頼性等を示す技術報告書「わが国における高レベル放射性廃棄物地層処分の技術的信頼性-地層処分研究開発第2次取りまとめ-」(平成11年11月機構)について適切な評価を行うとともに、機構をはじめ関係機関において、引き続き研究開発を進める。また、現在、処分事業に関する法整備が進められつつあり、今後、その具体化に向けた取組を円滑かつ着実に推進する。
 なお、廃棄物の処分を進めるためには、国民各界各層で広く議論が行われることが不可欠であることから、関係機関が一層の連携強化を図り、分かりやすい広報、情報提供等に努める。

 

5.我が国の平和利用技術を活用した国際協力

 核不拡散、原子力安全等の各国に共通する問題については、国際機関等における協力活動を通じて、主体的に国際協力を進めることが重要である。世界経済のグローバル化の進展に伴い、近隣アジア地域の一員として、技術的蓄積や経験をもとに、安全確保を大前提とした原子力利用の着実な推進を図るための協力を一層進める。

 また、国際原子力機関(IAEA)保障措置の強化・効率化への対応、包括的核実験禁止条約(CTBT)の実施体制の整備等国際的な核不拡散の強化に向けた取組に貢献していく。米国、ロシアの核兵器解体により発生する余剰兵器プルトニウムの管理・処分については、機構において培われた高速炉技術等を活用して積極的に協力を行う。
 さらに、国際熱核融合実験炉(ITER)計画については、引き続きEU(欧州連合)・ロシアとの3極による工学設計活動を着実に進める。ITERの建設については、我が国として具体的な判断ができるよう、その要件の明確化等について三極間で積極的に協議するなど必要な検討等を進める。

 

6.未来を拓く先端的研究開発

 放射線利用については、科学技術全体の進歩に大きく貢献し、新産業の創出が期待されるなど、様々な分野で拡大してきており、国民の一層の理解を得ながらその利用の推進を図ることが重要である。このため、RIビームファクトリー計画、中性子科学研究計画、重粒子線がん治療装置(HIMAC)や高温工学試験研究炉(HTTR)を用いた研究等の先導的研究開発を、科学技術面や社会的観点から適切に評価しつつ、着実に推進する。

 

7.原子力研究開発利用長期計画等

 現在審議を行っている長期計画について、原子力政策円卓会議の提言等を踏まえ、21世紀を迎えるに当たって、地球環境との調和を図る文明、エネルギー、地球環境、総合科学技術等幅広い観点から審議を行い、国民の意見を聞きながら、平成12年中に策定する。
 また、平成13年1月より中央省庁等改革により新たな体制となるが、原子力委員会は、国政上重要な具体的事項に関する企画立案及び総合的な調整の機能を担う内閣府に置かれ、従前の機能を継続していくこととなっている。原子力委員会は、昭和31年の設置以来、原子力利用に関する国の施策を計画的に遂行し、原子力行政の民主的な運営を図るため、原子力利用に関する政策等について企画、審議及び決定を行ってきたが、今後、これまで以上に各省の活動全般を大所高所から俯瞰し、民間活動の自主性をより尊重しつつ、国全体としての総合戦略を描くとともに、国内外の情勢の変化に一層的確に対応できるよう、柔軟な政策運営を確保することが求められる。政策の企画・立案、施策の総合的な調整にあたっては、国民の意識やニーズを的確に把握し、また、国内外の動向を視野に入れた総合的な分析、評価を行うとともに、国民各界各層からの公聴機能の強化等を図ることとする。

 

Ⅱ.具体的施策

 平成12年度の具体的な施策について、政府予算を踏まえ、個々の施策の概要を記述するとともに、当該施策の主な項目及び関連予算という形で取りまとめた。

1.原子力安全対策の推進

1)原子力安全規制の抜本的強化
 原子力利用に当たっては、安全の確保が大前提であり、厳重な規制と管理の実施、安全研究の実施等を通じて、安全確保に万全を期すことが必要である。昨年9月30日に㈱ジェー・シー・オー東海事業所のウラン加工工場で発生した臨界事故を受け、可決成立した原子炉等規制法の一部改正を着実に施行し、安全審査・諸検査の充実等を図る。また、原子力安全委員会については、中央省庁等改革による平成13年1月からの内閣府への移行に先立ち、平成12年4月からその事務局機能を科学技術庁より総理府に移管し、独立性を高めるとともに人員の拡充等事務局機能の充実強化を図る。

[主な項目]
①厳しい緊張感を持続するための枠組みの整備(原子炉等規制法の一部改正)
  • 加工事業に対する定期検査制度の追加
  • 全事業に対する保安規定の遵守状況に係る検査制度の創設
  • 原子力保安検査官の主要施設への配置
  • 事業者による従業員教育の義務の明確化
  • 従業者の安全確保改善提案制度の創設
②核燃料加工施設などの臨界阻止のための対応策等の徹底
  • 核燃料加工施設等における臨界阻止のための対応等の徹底、安全審査等における 対応

2)原子力災害に係る防災対策の抜本的強化
 上述の臨界事故への対応を教訓として、我が国における原子力災害に対する対策について、迅速な初期動作、国と地方公共団体との有機的な連携、原子力災害の特殊性に応じた国の緊急時対応体制の強化、原子力事業者の責務の明確化等の必要性が明らかとなった。このような現状に鑑み、原子力災害に係る対策に特別な措置を講ずるため、昨年12月に原子力災害対策特別措置法が可決成立した。今後、同法を適切に運用することによって原子力災害対策の抜本的強化を図る。

[主な項目]
①迅速な初期動作と国、都道府県、市町村の有機的連携の確保
  • オフサイトセンターの設置
  • 総合防災訓練の実施等
②原子力災害の特殊性に応じた国の緊急時対応体制の強化
  • 原子力防災専門官の設置
  • 原子力安全委員会による技術的助言の法的位置づけの付与等
③原子力防災における事業者の役割の明確化
  • 敷地内における放射線測定設備の設置義務の明確化及び記録の公表の義務づけ
  • 事業者の「原子力事業者防災業務計画」の策定義務の明確化等

2.国民の理解促進に向けた取組

 原子力利用に当たっては、国民の理解と協力を得ることが不可欠であり、原子力に関する国民の認識を深め、国民一人一人が原子力について考え、判断できるような環境づくりを行うことが重要である。
 具体的には、適切かつ迅速に情報を公開・提供し、国民各界各層の意見を十分に聞き、シンポジウム等の様々な場を活用した対話を促進するなど、政策の決定過程の透明性の向上のための施策等の充実を図る。
 また、諸外国との密接な情報交換、国際機関等の活動への積極的な参加から得られる成果により、我が国における原子力への理解の促進を図る。

[主な項目]
  • 原子力委員会等の会議の公開、報告書案に対する国民の意見の募集
  • 商業用核燃料サイクル施設、中間貯蔵施設の必要性・安全性についてのPA対策
  • 青少年のための原子力情報提供
  • インターネット、マスメディア等を活用した原子力広報の推進
  • 核燃料サイクル開発機構の立地地域に対する情報発信機能の強化
  • 高レベル放射性廃棄物処分事業推進のための広報活動

3.原子力施設の立地の促進

 原子力発電施設等の立地に当たっては、立地地域住民の理解と協力を得ることが重要である。このため、原子力発電施設等の立地地域住民の福祉の向上等を目的として、電源三法に基づき、当該施設の立地の初期段階から運転終了に至るまで各段階に応じ、ソフト・ハードの両面にわたる各種の支援措置が講じられているところであるが、さらに、立地地域の要望も踏まえ、予算措置の増額だけでなく、各種交付金・補助金の統合等による地域活性化に向けた支援を充実・強化する。

[主な項目]
  • 原子力発電施設等周辺地域交付金及び電力移出県等交付金を統合した 電源立地特別交付金の創設
  • 原子力発電施設等立地地域長期発展対策交付金の拡充

4.軽水炉体系による原子力発電の推進

 軽水炉については、今後も相当期間にわたって引き続き我が国の原子力発電の主流を担っていくと考えられることから、信頼性及び稼働率の向上、作業員の被ばく低減化等の観点から、自主技術を基本として技術の高度化を図り、我が国に適合した軽水炉を確立するため努力を継続し、将来の軽水炉のさらなる高度化に向けた技術開発を行う。一方、軽水炉の安全性を確保する観点から、燃料集合体の信頼性実証試験等を行う。
 核燃料サイクル開発機構におけるウラン濃縮技術開発及び海外ウラン探鉱の業務については、適切な過渡期間を置いて廃止することとしている。
 このうち、ウラン濃縮については、ウラン濃縮原型プラントの役務運転を平成12年度で終了し、技術成果の取りまとめ等を行うとともに、濃縮機器の廃棄に係る技術の開発及びこれに必要な研究等を行う。
 海外ウラン探鉱については、適切に成果の取りまとめを行う。権益については、適切に売却を進める。ただし、国内企業による承継の意志の最終確認のための期間を考慮した、保全のための必要最低限の探査経費については拠出する。以上の基本的考え方に基づき、権益を適切に取り扱うこととする。
 また、提案公募方式により安全性・経済性を向上させる革新的・独創的な実用原子力技術開発課題を大学等から発掘し、原子力発電及び核燃料サイクルの安全性・経済性を向上させるための技術開発について補助を行う。

[主な項目]
  • 将来の軽水炉に関する技術開発の推進
  • 革新的・独創的実用原子力技術開発の推進

5.核燃料サイクルの推進

 エネルギー資源に恵まれない我が国としては、将来の世界のエネルギー需給を展望しながら長期的なエネルギーセキュリティの確保を図るとともに、環境への負荷の低減を図っていくため、使用済燃料を再処理し、回収されたプルトニウム等を有効利用する核燃料サイクルの確立を原子力政策の基本としている。
 このため、平成9年1月31日付け当委員会決定を踏まえた同年2月4日の閣議了解「当面の核燃料サイクルの推進について」に基づき、地元をはじめとする国民の理解の促進に努めつつ、六ヶ所再処理事業、プルサーマル計画、使用済燃料貯蔵対策等について着実な展開を図ることが重要である。また、核燃料サイクルを技術的に確立するため、機構を中核として、安全確保及び地元の理解を前提に、高速増殖炉及び先進的な核燃料リサイクル技術の開発及びこれに必要な研究、東海再処理工場を活用した高燃焼度燃料やMOX燃料等の使用済燃料の再処理技術の開発及びこれに必要な研究等を進める。
 なお、英国におけるMOX燃料製造データ問題については、一刻も早く適切な対策が講じられ、地元を始めとする国民の信頼を回復していくことが重要である。また、使用済燃料の貯蔵については、貯蔵の事業に関する規制の整備に伴い、中間貯蔵施設の安全性確認を行うクロスチェックに用いる解析コードの改良及びこれ必要な試験を実施する。
 機構では、これまでの研究開発で得られた知見を踏まえ、電気事業者の協力をもとに、FBRサイクルの開発戦略を明確にする上で必要な判断材料を整備し、安全性の確保を前提として、軽水炉サイクルに比肩する経済性等を達成し得る実用化概念の構築及び実用化に向けた研究開発シナリオの策定(FBRサイクル開発戦略調査研究)を行う。
 また、運転停止中の高速増殖原型炉「もんじゅ」については、安全確保を大前提に適切な維持管理に努める。
 新型転換炉「ふげん」については、平成10年度から5年間運転した後、運転を停止する。なお、運転停止後の廃止措置を円滑に行うため、「ふげん」の原子炉システム固有の廃止措置技術の開発及びこれに必要な研究を実施する。

[主な項目]
①高速増殖炉・先進リサイクルの研究開発
  • 「もんじゅ」の維持管理等
  • FBRサイクル開発戦略調査研究
②使用済燃料再処理
  • リサイクル機器試験施設(RETF)の建設
③その他
  • MOX燃料加工技術の開発
  • 使用済燃料中間貯蔵施設の安全解析コードの整備

6.バックエンド対策の推進  放射性廃棄物の処理処分と原子力施設の廃止措置は、整合性のある原子力利用の推進及び国民の理解と信頼を得る観点から最も重要な課題である。
 使用済燃料の再処理に伴い発生する高レベル放射性廃棄物の処分に関しては、当委員会の高レベル放射性廃棄物処分懇談会報告書等に基づき、2000年目途の処分実施主体の設立をはじめとする処分の具体化に向けた取組を進める。処分事業の具体化については、平成12年3月に「特性放射性廃棄物の最終処分に関する法律案」が国会に提出されたところであり、引き続き処分事業の具体化に向けた取組を進める。また、地層処分技術の開発及びこれに必要な研究については、地層処分の技術的信頼性並びに処分予定地の選定及び安全基準の策定に資する技術的拠り所を示す技術報告書「わが国における高レベル放射性廃棄物地層処分の技術的信頼性-地層処分研究開発第2次取りまとめ-」を機構が昨年11月に作成しており、その評価を行うとともに、引き続き地層処分技術の信頼性の確認、安全評価手法の確立に向け、関係研究機関の密接な協力の下、地層処分システムの性能評価研究、処分技術の研究開発、地質環境条件の調査研究、これら地層処分研究開発の基盤となる深部地質環境の科学的研究を推進する。  また、高レベル放射性廃棄物処分の推進を図る上で技術的にも社会的にも重要な深地層の研究施設については、岐阜県及び北海道における計画を地元の理解を得て推進する。
 その他、ウラン廃棄物等、低レベル放射性廃棄物については、区分に応じた合理的処理処分方策の検討を進める。また、RI・研究所等廃棄物の処分については、原子力研究のみならず、大学等の学術研究等我が国の研究活動全体にかかわる重要な課題であり、適切な処分対策を推進する。なお、廃棄物の安全かつ合理的な処理処分及び再利用を行う観点から、放射性物質としての特殊性を考慮する必要のないレベル(クリアランスレベル)の導入は重要であり、これについては、原子力安全委員会において検討が進められているところである。
 一方、原子力施設の廃止措置については、日本原子力研究所の動力試験炉(JPDR)の解体撤去による解体実地試験で得られた成果を踏まえ、原子炉解体技術の一層の高度化を進める。また、実用発電用原子炉施設の解体撤去工事の具体的方法を確立するため、廃止措置のエンジニアリング開発調査を行う。さらに、実用発電用原子炉の廃止措置に備え、解体廃棄物の合理的な処理・処分方策に向けた技術開発を行う。

[主な項目]
①放射性廃棄物の処理処分対策
1)高レベル放射性廃棄物関係
  • 多重バリアシステム性能に関する研究の推進
  • 超深地層研究所の計画の推進
2)低レベル放射性廃棄物関係
  • RI・研究所等廃棄物処分システム検討
  • 再処理低レベル廃棄物処理技術開発施設の建設
②原子力施設の廃止措置
  • 実用発電用原子炉廃止措置工事エンジニアリング開発調査
  • 原子炉解体技術開発

7.核不拡散対策の充実強化

 我が国は、原子力利用を平和目的に限るとの基本原則の下、平和利用と核不拡散を両立させる枢要な国際的枠組みである核兵器の不拡散に関する条約(NPT)の締約国として、国際原子力機関(IAEA)の保障措置の適用など本条約に基づく国際的責務を誠実に履行するとともに、我が国の自発的努力として国際協力を積極的に行っている。
 国際的な核不拡散を巡る最近の動向として、
○追加議定書の措置の適切な実施等IAEA保障措置の強化・効率化方策への対応
○核兵器解体により発生する余剰兵器プルトニウムの管理・処分への協力
○早期発効が期待される包括的核実験禁止条約(CTBT)の実施体制の整備
○NPT再検討会合への対応等国際的核不拡散体制の強化に向けた検討
 等がある。我が国は、原子力平和利用国家としてこのような国際的な核不拡散の強化に向けた取組に積極的に貢献していく。

[主な項目]
  • 六ヶ所再処理工場に対する保障措置の効果的実施に向けた技術開発等の推進
  • 保障措置検査等に係る民間機関の活用の着実な推進
  • 核兵器解体により発生する余剰兵器プルトニウム管理・処分への協力
  • 包括的核実験禁止条約(CTBT)の実施に係る研究開発等の推進

8.原子力科学技術の多様な展開と基礎的な研究の強化

 原子力の幅広い分野において、基礎研究から応用研究までの研究開発を総合的に推進することは、エネルギー源の確保及び放射線利用の進展はもとより、科学技術全体の進歩に大きく貢献し、新産業の創出が期待されるなど、より豊かな国民生活の実現に資するものである。このため原子核科学、X線レーザー等の光量子科学、中性子科学等の分野における基礎研究及び基盤技術開発を推進する。また、高温工学試験研究等原子力利用分野の拡大に関する研究開発を推進するとともに、医療、工業、環境保全、基礎研究等の幅広い分野に貢献する放射線利用研究を進める。さらに、必要な燃料資源等が地球上に広く豊富に存在し、原理的に高い安全性を持つなど優れた特長を持つ核融合について研究開発を着実に推進する。現在、国際協力によって進められている国際熱核融合実験炉(ITER)計画については、引き続きEU(欧州連合)・ロシアとの協力により、工学設計活動を着実に進めるとともに、ITER建設の要件の明確化等について関係極間で積極的に協議するなど必要な検討等を進める。

[主な項目]
①基礎研究及び基盤技術開発
  • X線レーザーの開発等の光量子科学研究の推進
②原子力利用分野の拡大に関する研究開発等
  • 中性子科学研究計画の推進
  • 高温工学試験研究の推進
③放射線高度利用研究開発
  • 大型放射光施設(SPring-8)による放射光の高度利用の推進
  • 重粒子線等によるがん治療臨床試行の推進
  • 重イオン科学総合研究の推進
  • RIビームファクトリー計画の推進
④核融合研究開発
  • 国際熱核融合実験炉(ITER)計画の推進
  • 臨界プラズマ試験装置(JT-60)による実験の推進

9.国際協力の推進

 原子力利用に当たって、二国間の協力はもとより、原子力安全等の各国に共通する問題については、国際機関等における協力活動を通じて、各国の協調のもとに問題の解決を図っていくことが重要である。我が国は、平和利用先進国として、各国の原子力利用の適切な推進に貢献することを基本に、主体的に国際協力を進める。

[主な項目]
  • 海外の原子力に関する情報収集や研修事業の推進
  • IAEA、経済協力開発機構原子力機関(OECD/NEA)等の国際機関の活 動への積極的な貢献

10.人材の養成と確保

 原子力利用の安全確保の一層の充実や関連する先端的技術開発の着実な推進を図るためには、その担い手となる優秀な人材の養成と確保に努力することが不可欠である。このため、政府関係研究開発機関における人材の養成と確保に加え、多様な研修活動を推進する。

[主な項目]
  • ポストドクター(博士課程修了者)等若手研究者の研究交流の充実

11.新たな原子力研究開発利用長期計画の策定等

 21世紀を迎えるに当たり、原子力の全体像と長期展望を明らかにするため、原子力委員会において、新たな「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画」を策定するための調査審議を行う。
 また、中央省庁等改革により内閣府に移行する原子力委員会が、従前の機能を十分に発揮していくため、事務局体制の整備等所要の措置を行う。

 


Ⅲ.予算総表