第4回高速増殖炉に関する日仏専門家会合の結果について

平成12年3月21日
科学技術庁原子力局

1.日時、場所  平成12年3月13日~14日
         フランス原子力庁(マルクール)

2.出席者    別紙1参照

3.議事概要
(1)オープニング
 トゥーニョル・ドゥ・クロ局長より、1999年の仏原子力界の動きとして、年末に仏全土を襲った暴風雨による電力供給への影響、高レベル放射性廃棄物の最終処分に関する研究を行う地下研究所の工事が開始されたこと、コジェマ社がフラマトム社の筆頭株主になったことなどの産業界の再編について、欧州内電力自由化の進展に伴い電力市場の競争が激化している中、仏電力公社は原子力発電所の運転寿命の長期化を戦略として捉えていることなどの発言があった。
 続いて、和田課長より、JCO事故後に安全規制の見直し等が行われたこと、新たな長期計画の策定作業の中で高速増殖炉及び関連する核燃料サイクルの研究開発を重要なテーマとして取り上げ検討していること及び検討の中で国際協力の重要性が認識されていること、サイクル機構が電気事業者と一体となって高速増殖炉サイクルに関する実用化戦略調査研究を進めていること、中間貯蔵施設に関する法律整備が行われたこと、高レベル廃棄物処分の体制に関する法案が国会で審議予定であること、BNFLの不正問題がプルサーマル計画に影響を与えているが、今後も計画が円滑に進むよう努力を継続していくこと等の発言があった。

(2)研究開発の現状
 ルクレール本部長より仏における高速炉研究開発の状況について説明があった。
和田課長よりウラン加工工場臨界事故の概要及び政府の対策について、サイクル機構相澤理事より実用化戦略調査研究について説明がなされた。また、サイクル機構、日本原電及び電中研がそれぞれの研究開発の現状について説明を行った。
仏側の主な発言及び発表内容は次のとおり。

仏の電力需給は緩やかであり、当面、高速炉を導入する必要はないが、21世紀中には必ず必要になると思っている。
高速炉の導入・実用化までの30~40年の余裕期間を利用して、十分知り尽くしているナトリウム冷却以外の高速炉(ガス、鉛-ビスマス冷却など)の検討を行っている。
「フェニックス」は7~8年後には停止する。その後の長寿命核分裂生成物(LLFP)、マイナーアクチニド(MA)燃焼を行う場を確保する必要がある。「フェニックス」停止後は、当分の間、日本の「常陽」、「もんじゅ」に期待するところ大である。
緊急時の対応体制、オフサイトセンターの設置には非常に関心がある。本会合の直接のテーマではないが、緊急時の体制について議論する場をいずれ設定したい。
実用化戦略調査研究は非常に野心的で興味深いプログラムである。特にLLFPを出来るだけ少なくするという考え方は日仏とも共通しており、両国が協力して研究を行う必要がある。
配管の中にセンサを挿入して測定しなければならないのはナトリウム冷却炉だけでなく原子力プラント共通の弱点。そこには溶接の問題、腐食の問題が存在する。配管中にセンサを挿入しない計測技術の開発は重要。

(3)共同研究の進捗状況報告
 共同研究テーマごとに進捗状況が報告され、これまで得られた成果についての評価や今後の作業計画等について意見交換と確認が行われた。全体的にほぼ予定通り作業が進んでいるが、一部のテーマについて、ある程度の時期に中間レポートを出すよう要求を追加すべきとの勧告があった。
また、このような共同研究を通して両国の協力を一層強化することが両国にとって必要との合意が示された。
 主な意見は次のとおり。

仏には「スーパーフェニックス2」において免震設計を行った経験があり、そのような情報も提供できるよう仏側として配慮したい。
高速炉導入シナリオについては多くの不確定要素がある。特に、仏電力公社は既存原子炉の耐用年数の長期化を考えており、既存原子炉の更新時期の想定も様々である。そのような事情も考慮しつつ、研究開発の推進にとって有益な結果を出していく必要がある。

(4)敦賀地区における共同研究
 日本側より、「もんじゅ」の現状について説明を行い、ナトリウム漏えい対策、高速増殖炉プラントの監視・診断技術、ナトリウム透視技術、核燃料サイクル事業の社会的受容性向上などを「もんじゅ」に関連する共同研究候補テーマとして提案した。
 日本側の提案に対する仏側の意見、考え方は以下のとおり。
また、日本側提案に対して仏側が早期にコメントを提出し、今後、従来の協力の枠組みの中に「もんじゅ」を用いた共同研究が実行に移せるよう、その具体的な内容について協議を進めていくことが了解された。

現時点で「フェニックス」をいつまで使えるかは不明確。他の欧州諸国を見ても「もんじゅ」のような炉はない。仏の研究開発に「もんじゅ」を使わせてもらえればありがたい。仏として、日本側の提案を検討する。
仏はナトリウム冷却高速炉に関してこれまで20年以上の知見、技術を蓄積してきた。「フェニックス」停止以降も「もんじゅ」を利用することによって、これらを失わないようにまとめておく必要がある。
ISI(供用期間中検査)技術、制御技術、監視技術はナトリウム冷却以外の高速炉の研究開発にも共通している。特に、液体金属中の構造健全性の検査技術には大きな興味を持っており、このような研究開発を行っておかなければならない。
PAは非常に重要。特に高速炉に関するPAは努力を重ねていかなければならない。仏は独とともに環境保護団体による圧力が大きい(特に、再処理、核物質輸送)。このような分野についても日仏が協力して対処していくことが重要。

(5)フェニックス視察
 今回はフェニックスサイトで会合が開催されたこともあり、会合に併せて1時間半程度のプラント視察の時間が設定された。
①現在のプラント状態

②今後の利用計画

(6)次回会合
 第5回会合は、今年秋に日本で開催することで合意した。

以 上




日仏間の共同研究項目リスト

 

  1. 将来炉における経済性向上ならびにプラント性能の向上に関する共同研究
    (1)高速増殖炉及び関連サイクル技術の重要性指標の構築に関する共同研究
    (2)実用化を目指した長寿命の高速増殖炉燃料仕様に関する共同研究
    (3)三次元免震技術の高速増殖炉プラントへの適用性に関する共同研究

  2. 将来炉における安全性の向上に関する共同研究
    (1)社会的受容性の高い高速増殖炉を目指す合理的な安全論理の構築に関する共同研究
    (2)冷却材バウンダリ等に対する熱応力荷重の評価手法の高度化に関する共同研究
    (3)炉心変形に伴う影響の評価手法に関する共同研究

  3. 「常陽」および「フェニックス」炉を用いたプルトニウム、マイナーアクチニドの燃焼、及び、長寿命核分裂生成物の核転換(消滅)に関する共同照射試験研究

  4. 高速増殖炉関連技術の維持発展に向けた各種関連試験施設の必要性に関する共同研究

  5. 将来炉の設計概念、機器-系統の構成、燃料材料、冷却材等の主要目に関する比較検討を目的とする共同研究

  6. 将来を展望した各種の高速増殖炉の導入シナリオに関する共同研究


    平成12年3月16日

    第4回高速増殖炉に関する日仏専門家会合の結果について

    科  学  技  術  庁
    通  商  産  業  省
    仏・国民教育研究技術省
    仏・経 済 財 務 産 業省
    仏・原  子  力  庁

     平成12年3月13、14日に、日本代表団の和田科学技術庁動力炉開発課長及び仏国代表団のトゥーニョル・ドゥ・クロ原子力庁原子炉局長を共同議長として、第4回高速増殖炉に関する日仏専門家会合がフランス・マルクールにて開催された。
     本会合においては、第2回会合(平成10年11月)で合意された共同研究の進捗状況が報告され、これまで得られた成果について評価するとともに、今後の作業計画について協議した。両者は、今後、共同研究を通して両国の高速増殖炉研究開発の協力を強化すること、並びに、「もんじゅ」、「常陽」、「フェニックス」といった原子炉施設をこうした目的のために使用すること(「フェニックス」におけるマイナーアクチニド及び長寿命放射性核分裂生成物の核転換に関する研究を含む)が重要との認識で合意した。
     また、「もんじゅ」の現状を認識した上で、両者は、「もんじゅ」が日本だけではなく両国の高速増殖炉の研究開発にとって不可欠なプラントであるとの認識の下、今後は従来の協力の枠組みの中に「もんじゅ」を用いた共同研究が実行に移せるよう、その具体的な内容について協議を進めていくこととした。
     第5回会合は、今年秋に日本で開催することで合意した。

    以 上

       本件問い合わせ先:科学技術庁原子力局動力炉開発課
                電話 3581-5271(内線632)
                通商産業省資源エネルギー庁公益事業部原子力発電課
                電話 3501-1511(内線3876)