米国エネルギー省2001年度予算要求について

平成12年3月14日
原 子 力 調 査 室

1.予算の概要
 米国エネルギー省(DOE)は2月7日、2001年度予算要求を発表した。総額は、2000年度予算より9.1%増額の、約189億ドル、うち、民生プログラム関連予算が約59.3億ドル(前年比約10.3%増)であり、国防活動関連予算が約130.1億ドル(約8.5%増)となっている。
 また、DOEの全体予算から内局、関係機関、収入等を除いた、エネルギー・水資源開発の予算項目は、約180億7,324万ドル(約9.0%増)、このうちエネルギー供給関連予算は、約7億6,490万ドル(約19.0%増)、一般科学関連予算は、約31億5,107万ドル(約12.0%増)となっている。なお、前年度まで原子力防衛活動としていた項目は、今年度より、国家核安全保障管理と環境及びその他防衛活動とに分割されている。

 また、これらの予算を事業内容別で整理すると以下の通りとなる。

2.予算の詳細内容

○エネルギー供給

1.太陽・再生可能エネルギー
 光発電エネルギー・システム:約82百万ドル(24.4%増)、バイオマス・エネルギー・システム:約102百万ドル(44.8%増)、風力エネルギー・システム:約50.5百万ドル(55.5%増)、電力貯蔵システム:48百万ドル(27%増)など。

2.原子力エネルギー
(1)新型アイソトープ動力システム(8.6%減)
将来の宇宙計画のための革新的動力システムの開発。
(2)原子力エネルギー・プラント最適化(NEPO)(0.5%増)
既存の原子力発電所の運転寿命延長等の研究。1999年度にも10百万ドルの予算要求を行ったが、議会にて却下された。2000年度から認められた。
(3)原子力エネルギー研究イニシャチブ(NERI)(56.3%増)
経済性、安全性、放射性廃棄物等に関する原子力プラント技術の研究開発支援。
2000年度からの継続分に新規提案分約15件を追加。また、今年度よりI-NERIと呼ばれる先端技術における、海外協力研究を進める(7百万ドル)。DOEでは、I-NERIによる12-13件の、海外研究施設との協力プロジェクトを予定している。
(4)民生研究開発で予算化されていた「加速器を用いた廃棄物の消滅処理(ATW)」は、2000年度中に予定されたATWプログラム計画を完遂させるとして、新たな資金を要求していない。
(5)高速中性子束試験施設(FFTF)(57.2%増)
FFTFの施設維持、管理。2001年度中にFFTFの再始動、または解体、いずれかの決定をする予定である。
(6)廃 止(6.1%減)
研究用増殖炉(EBR-Ⅱ)の閉鎖。
(7)ウラン計画(27.3%増)
六フッ化ウランの管理及びポーツマス等のガス拡散法ウラン濃縮プラントのクリーン・アップなど。
(8)アイソトープ支援(15.8%減)
医療、産業及び研究用アイソトープの製造と配給。

○一般科学

1.高エネルギー物理(1.5%増)
 ヨーロッパ合同原子核研究機関(CERN)による大型ハドロン衝突装置(LHC)計画の支援。フェルミ研究所におけるフェルミ・メイン・インジェクターにおけるニュートリノ研究(NuMI)プロジェクト及びウィルソン・ホール安全性向上プロジェクト。スタンフォード直線加速器センター(SLAC)のB-ファクトリーの初期運転及び研究オフィス・ビルの建設など。

2.原子核物理(4.0%増)
 トーマス・ジェファーソン国立加速器施設(TJNAF)の連続ビーム運転。マサチューセッツ工科大学(MIT)のBATES施設の運転と検出器の組立(前年度では、除染・解体に入ると予定されていた)。ブルックヘブン国立研究所(BNL)の相対論的重イオン衝突器(RHIC)の運転。オークリッジ国立研究所(ORNL)の放射性イオン・ビーム(RIB)施設の運転など。

3.核融合エネルギー科学(0.2%減)
 主な核融合装置として、GAのダブレットⅢ-D(50.9百万ドル、5.9%減)、MITのAlcatorC-Mod(17.4百万ドル、5.9%減)及びプリンストン大学の国立球形トーラス実験装置(NSTX)(26.7百万ドル、5.7%減)による実験を行うとともに、プリンストン大学のTFTRの解体(19.6百万ドル、46.2%増)を進める。

4.生物環境研究(2.5%増)
 「低線量影響評価」(11.7百万ドル、35.7%減)では、環境回復に関わる作業員のために安全な被ばくレベルを決定するために人体に対する低線量放射線(及び化学物質)による被ばくの影響について調査する。

○国家核安全保障管理

1.その他の核安全保障
 核不拡散及び国家安全保障の項目内に新規予算として「ロシアのための長期核不拡散計画」1億ドルが要求されている。詳細内訳は以下である。

(1)民生用分離プルトニウムのさらなる蓄積を防ぐため使用済燃料のままで貯蔵するための乾式貯蔵施設(38.0百万ドル)
(2)マヤクにおける核物質防護、管理、計量(MPC&A)の向上支援(5.0百万ドル)
(3)マヤクにおけるプルトニウムの記録作成(2.0百万ドル)
(4)使用済燃料及び放射性廃棄物貯蔵に対する長期的解決策に関する共同研究(5.0百万ドル)
(5)核拡散抵抗性のある原子炉及び核燃料サイクルを推進するための共同研究計画(20.0百万ドル)
(6)ロシア海軍の原子力サイトに関して、核物質をより少ないサイトのより少ない建物にまとめ、核物質防護、管理、計量を実施する活動(15.0百万ドル)
(7)核兵器製造施設の閉鎖を促進する活動(10.0百万ドル)
(8)緊急時管理計画の整備、及び原子力省緊急時管理センターと原子力設備群とのネットワーク化(2.0百万ドル)
(9)旧ソ連が外国に提供した研究炉燃料の返還計画(3.0百万ドル)

 要求書と併せて配布された資料(ファクトシート)によると、「民間核燃料サイクルに関する新しいイニシャティブは、他国の民間核燃料サイクルについて言及するものではない。特に西欧及び日本における民間原子力計画におけるプルトニウム利用に対するコミットメントは維持するとした、1993年からの方針に、何ら影響を及ぼすものではない」と明記されている。

○環境及びその他の防衛活動

1.その他の防衛活動(19%増)
 「健康研究計画」(53.0百ドル、8.2%増)では、DOEの現職員、元職員等の健康を向上・保障すること、及び人体に対する放射線の影響を理解するための努力を支援することを目的とする。

2.廃棄物処分基金
 廃棄物処分基金は、原子力廃棄物処分基金1)と、「環境及びその他防衛活動」内の防衛核廃棄物基金2)の2つから構成され、両者を合わせて、437.5百万ドル(26%増)であり、このうちユッカマウンテンのサイト特性調査には358.3百万ドルが割り当てられている。