原子力政策円卓会議モデレーターからの提言を受けて

 

平成12年3月14日
原 子 力 委 員 会

 

 当委員会は、我が国の原子力の研究、開発及び利用に関する国民各界各層のご意見を伺い、今後の原子力政策に反映させることとし、平成10年7月、「新たな原子力政策円卓会議の進め方について」を決定し、原子力政策円卓会議(以下「円卓会議」という。)の開催・運営を5名のモデレーターの方々にお委せしました。また、昨年4月には、「原子力政策円卓会議モデレーターからの中間提言を受けて」を取りまとめ、平成11年度も引き続き円卓会議の運営をお願いしたところです。
 モデレーターの方々には、この2年の間に12回にわたり、東京だけではなく、立地地域や大消費地において会議を開催いただき、提言の取りまとめにもご尽力いただいたところです。
 去る2月25日には、モデレーターからの提言をいただき、28日には、長期計画策定会議においても提言を説明いただいたところです。当委員会としては、本提言に対して以下の通り見解を取りまとめました。また、長期計画策定会議においても、この提言を受け止めて審議を行っていただいていますが、関係省庁、原子力関係者、更には、国民の皆様にもこの提言について考えていただくことを望みます。

  1. 今後のエネルギー需要と供給構成については、エネルギー源としての原子力利用に大きな影響を与えるものであると認識しています。エネルギー需要や供給の在り方は、国民生活に直接的に関連する問題であり、政府や国民が様々な場において真剣な検討を行っていくことが必要です。このような検討を通じて、原子力のエネルギー供給に果たす役割や意義についての理解が一層深まることを望みます。
     また、当委員会では、原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画(以下「長期計画」という。)の審議において、省エネルギーや新エネルギーの可能性を踏まえた上でのエネルギーとしての原子力利用の在り方について今後とも検討を行ってまいります。

  2. (株)ジェー・シー・オーの東海村ウラン加工工場における臨界事故については、40年余りにわたる我が国の原子力研究開発利用の歴史の中で、極めて重大な事故であり、国民の原子力に対する信頼を大きく揺るがすものでした。この事故を教訓として、原子力災害対策特別措置法の制定や原子炉等規制法の一部改正といった政府の取組やニュークリアー・セーフティー・ネットワークの設立といった事業者の取組等が行われていますが、この事故が提起した諸問題について、長期計画審議等の場において、さらに検討を進めていくこととしています。

  3. エネルギーの安定供給確保の問題は国家の重要な政策課題であり、政治の場等においても、原子力問題を含めた幅広い議論がなされることが重要なことであると考えます。当委員会としても、様々な場において、原子力に関する幅広い議論が行われるよう努めてまいりたいと思います。

  4. 原子力施設と立地地域の共生は、原子力の長期的な定着のためには不可欠な課題です。原子力施設の立地が地域の発展にどのように寄与し、立地地域が直面している課題にどう対応していくかについて、今後とも長期計画の審議の中でも扱っていきたいと考えています。

  5. 原子力に関する教育の問題については、当委員会としても重要な問題であると認識しています。学習指導要領においては、原子力に関係する環境やエネルギー等の記述が増えてきており、また、既存の教科の壁を超えた「総合的な学習の時間」ができるなどの動きがありますが、現場の教師が、放射線、原子力やエネルギーに関する正確な知識を提供し、生徒自らが考えていく力をつけることができるよう、環境の整備を図っていくことが従来にも増して重要な課題と考えています。

  6. エネルギー資源に恵まれない我が国が、経済社会活動を維持、発展させていくためには、将来を展望しながらエネルギーセキュリティ−の確保を図っていくことが不可欠です。そのためには、科学技術先進国である我が国としては、核燃料サイクルに関する研究開発を進めていくことが必要です。
     当委員会としては、高速増殖炉開発を将来の非化石エネルギー源の一つの有力な選択肢として、その実用化の可能性を追求するため、安全確保、地元の理解などを前提に研究開発を進めることが妥当としています。原型炉「もんじゅ」については、この研究開発の場の一つとして位置付けており、提言も踏まえ、今後の研究開発の進め方を検討してまいります。

  7. 当委員会では、平成10年12月に取りまとめた「省庁再編後における原子力委員会の在り方」において、省庁再編後、国民各界各層からの公聴機能を強化していくこととしていますが、その一環として円卓会議の在り方についても検討してまいります。