「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」の制定について

平成12年3月10日
原子力委員会決定

  1. 高レベル放射性廃棄物の処分については、当委員会としては、平成6年6月24日に決定した「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画」において、「高レベル放射性廃棄物は、安定な形態に固化した後、30年間から50年間程度冷却のための貯蔵を行い、その後、地下の深い地層中に処分すること」を基本的な方針とし、「処分事業の実施主体については、処分場の建設スケジュールを考慮し、2000年を目安に、研究開発等の進展状況や諸般の情勢等を総合的に勘案し、その設立を図っていくことが適当」としました。

  2. また、当委員会高レベル放射性廃棄物処分懇談会報告書ならびに平成10年6月に行われた当委員会の決定「高レベル放射性廃棄物処分の推進について」に基づき、2000年目途の事業化に向けた諸制度の整備、研究開発、安全規制に関する制度整備が、関係機関において進められてきました。なかでも、実施主体のあり方、資金確保策などの処分事業の制度化については、総合エネルギー調査会原子力部会において審議が行われてきました。
    その状況については、当委員会として、適宜聴取し、審議を行ってきましたが、今般「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律案(仮称)」の報告を受け、審議を行った結果、以下の結論を得ました。

  3. 本法案においては、高レベル放射性廃棄物処分懇談会報告書を踏まえ、国の役割、処分費用の確保方策、処分実施主体の設立、地元の意見の聴取を含めた処分地選定プロセスなどを定めています。また発電用原子炉のみならず、試験研究炉からの高レベル放射性廃棄物を含めわが国の原子力利用に伴い発生する高レベル放射性廃棄物を処分しうる枠組みとなっています。従って当委員会として、高レベル放射性廃棄物の最終処分の推進を図る枠組みを定める「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」を制定することは適当と判断します。

  4. 今後は、本法案に基づき、わが国の高レベル放射性廃棄物が確実に地層処分されるよう、早急に処分実施主体を設立するとともに、処分に必要となる資金を着実に確保していくことが重要です。特に、処分地等の選定を円滑に進めるためには、処分実施主体は、これまでの当委員会の方針を十分踏まえ、選定過程の透明性を確保するとともに、わかりやすい広報、情報提供に努めることが大切です。
    さらに、処分事業の進展に応じ、適切な時期に最適の技術が着実に提供されるよう、核燃料サイクル開発機構などの関係研究機関は、引き続き研究開発を進める必要があります。特に、深地層の研究施設は、技術的にも社会的にも重要な施設であり、一刻も早い実現が望まれます。当委員会としても、「わが国における高レベル放射性廃棄物地層処分の技術的信頼性−地層処分研究開発第2次取りまとめ−」の評価を進めてまいります。

  5. 当委員会としては、今後とも、高レベル放射性廃棄物処分への取組みが円滑かつ着実に進展することが、わが国の原子力研究開発利用を推進する上で極めて重要と考えており、関係機関に対し、一層の連携強化と更なる努力を要請するとともに、当委員会として適宜状況を聴取し状況の的確な把握と評価検討を行い、引き続き処分事業の早期具体化に取り組んで参ります。