第2回JNC原子力平和利用国際フォーラム−新たな概念の創出に向けて−
開催結果について


平成12年2月29日
核燃料サイクル開発機構

1.開催の趣旨
 我が国の原子力の研究、開発及び利用は、原子力基本法にありますように平和利用目的を大前提としたものです。近年、冷戦終結後の世界情勢の変化により、核不拡散問題への国際的な取組みの必要性が叫ばれ、原子力平和利用に際しては、より透明性を持った利用技術の開発を指向すべきことが求められています。
 このような情勢において、国内外の信頼を得て原子力平和利用を推進するにあたっては、我が国の原子力平和利用政策について内外に積極的に発言を行なっていく必要性が指摘されています。
 当機構は、安全性に関し特別の配慮を払いつつ競争力を持つ核燃料サイクルの技術的確立に向け研究開発を進めておりますが、併せて、核不拡散に細心の注意を払い、厳に平和利用に徹して業務を進めていくことが大切であると認識しております。
 標記フォーラムは、当機構の核不拡散に関連した技術開発や国際協力への取り組みについて紹介を行ない、それに対して海外の専門家を中心に議論を行なっていただき、その内容をサイクル機構の今後の活動に反映させていきたいと考えております。

2.開催要領
日時:平成12年2月21日(月)〜22日(火)
場所: 全社協・灘尾ホール(新霞が関ビル)
    〒100-0013  東京都千代田区霞が関3-3-2 新霞が関ビル
主催: 核燃料サイクル開発機構
後援: 原子力委員会、科学技術庁、通商産業省
形式: 特別講演と3つのセッションでの講演とパネル討論等(国内外から14名を招聘)、およびイブニングセッション。公開形式で開催し、イブニングセッション以外は日/英同時通訳付
プログラム:別添1参照

3.結果概要
 (1)参加者数
総数             358名
特別講演及びセッションT  約200名
セッションU        約180名
セッションV        約180名
イブニングセッション          48名

(参考)部門別出席者数一覧

部門別出席者数
パネリスト等33名
政府関係者32名
電力関係者45名
大   学 17名
プ レ ス15名
外 国 人16名
そ の 他200名
 計 358名

(2)講演及びパネル討論の概要
別添2参照
以上



別添2

第2回JNC原子力平和利用国際フォーラム

 

特別講演「21世紀に向けての原子力の進め方」 遠藤哲也(原子力委員会委員)
 わが国では次の3つの観点から原子力を必要としている。第1はエネルギーの安全保障で、わが国のエネルギー供給構造の脆弱性を克服するためであり、長期的には資源確保のための核燃料サイクル確立が重要である。第2は環境保全で、COP3による温室効果ガス削減目標達成のため、原子力発電の役割は大きい。第3は経済性で、原子力発電システムは、コスト的に他の発電システムと十分競合できるものである。その推進にあたり国民の安全と安心の確保、核不拡散対策、放射性廃棄物の処理・処分問題に対する地道な取り組みが必要であり、かつ世界の日本に対する核疑惑を払拭するため、IAEAの行う保障措置活動への真摯な協力が重要である。

セッションI 「新しい保障措置の展開と保障措置技術開発の進め方」
(1)講演
@新しい保障措置とサイクル機構の対応
岩永雅之 JNC国際・核物質管理部長
 これまでのPu燃料加工施設、再処理工場等のプルトニウム取り扱い施設の運転経験を基に、プルトニウムの処理量の変化と、運転に伴い実施してきた保障措置技術開発の考え方について報告があった。また、現在議論が行われている新しい保障措置に対し、JNCとしては、実際の施設を運転している者として技術開発の観点から取り組んでいきたいとの説明があった。
Aサイクル機構の保障措置技術開発(プルトニウム燃料施設における保障措置技術開発) 高橋三郎 JNC東海事業所プルトニウム燃料センター 技術部 核物質管理室長代理
 これまでプルトニウム燃料施設が取り組んできた保障措置技術開発とその成果と効果について説明があった。新しい保障措置における遠隔監視技術等の重要性について指摘があった。
Bサイクル機構の保障措置技術開発(再処理燃料施設における保障措置技術開発)
早川 剛 JNC東海事業所再処理センター 技術部 核物質管理部副主任技術員
 これまで東海再処理工場が取り組んできた保障措置技術開発、特に計量管理技術の改善に関する技術開発について説明があった。今後の課題として、査察の非立ち会い化、低レベル放射性廃棄物中の核物質量の測定に対する取り組みがあるとの説明があった。
C新しい保障措置への大洗工学センターでの試行
橋本 裕 JNC大洗工学センター 照射施設運転管理センター技術主幹
 1999年9月から12月にかけて行われた新しい保障措置の試行結果について説明があった。また、今後新しい保障措置を実施していくにあたっての課題として、核物質を用いない研究開発活動の定義、サイトの定義、目視の方法の確立、原子炉等立ち入りが困難な地点へのアクセス方法の確立等を提示した。

(2)パネル討論
1)招聘者からのショート・スピーチ

@オリ・ハイノーネン IAEA保障措置局実施A部長
 新しい保障措置のグローバルな状況、及び査察の実施部門の立場から新しい保障措置に対するIAEAの取り組みについて説明があった。特に新しい保障措置の実施目的については、核物質の転用及び未申告原子力活動がないことについて信頼できる保障を与えることである、とした。
Aケネス・サンダース 米国DOE国際保障措置部長
 DOEが実施している新しい保障措置に関する研究開発及び各国との国際協力の現状について紹介があった。米露IAEAの3者間で実施している検認技術の開発状況、
新しい保障措置については、遠隔監視、環境サンプリング等の技術、また大量の情報を管理し、評価する方法が開発されている。実施にあたっては、費用対効果、事業者の活動を妨げないことが重要である。
B坪井 裕 日本原子力研究所調査役
 新しい保障措置を実施し、この結果国全体の評価として「未申告活動がない」と判断された国に対しては、査察が軽減されてもよいのではないかという私案を示した。NPTの無期限延長を踏まえて核軍縮にも貢献する普遍的な保障措置を確立することが重要であるとの指摘があった。

2)パネル討論内容
@新しい保障措置を実施に移していく上での課題と必要な技術開発を明確にし、その中でのJNCの役割について考えていきたい、という意見が出された。
A遠隔監視については、効率化のために必要である。信頼性の向上が必要であるコンピュータ通信を遠隔モニタリングに活用すべき、という意見が出された。
B環境サンプリングについては、潜在的に強力な手段であるが、実施にあたっては追加的な費用が発生するので効率化が必要である、まだ技術的問題があるのでレベルアップが必要である、拡大申告の情報と補完的に用いるべき、という意見が出された。
C新しい保障措置については、従来の保障措置協定(INFCIRC153)と追加議定書(INFCIRC540)を包括し、合理的なコストで実施でき、施設の操業を阻害するものでないことが重要である、という意見が出された。

セッションU「新たなFBRサイクル技術と核拡散抵抗性」
(1)講演
@FBRサイクル研究開発の計画(実用化戦略調査研究への取り組み) 野田 宏 JNC FBRサイクル開発推進部長
 昨年7月より、オールジャパン体制で実用化戦略調査研究を開始した。目標は、安全性の確保、経済性、資源の有効利用、環境負荷の低減及び核拡散抵抗性の確保である。最初の2年で技術的選択肢の検討、有望な実用化システム像の抽出及びその開発戦略の策定、次の5年程度で要素技術についてのデータの取得を踏まえて高速炉サイクル全体の整合性のあるシステム構築を行うと報告があった。新技術の検証、確認のためにももんじゅの運転再開が必要であるとの見解が出された。
A新型炉の開発について
佐賀山 豊 JNC FBRサイクル開発推進部 炉システムグループリーダー
 FBR実用化調査研究では、炉システムの検討範囲を冷却材と燃料の組み合わせで定めた。時代のニーズから5つの開発目標を設定した。シーズ技術として多面的なアイデアを公募するなど炉システムについて広範に検討を進めている。また、開発目標の1つである核拡散抵抗性の強化のため、不純物を含むウランやプルトニウムの使用、保障措置作業の容易な機器システムなどが検討されている、との報告があった。
B核燃料サイクル技術の開発について
小島 久雄 JNC FBRサイクル開発推進部 燃料サイクルシステムグループグループリーダー
 将来の有望な核燃料サイクル技術について燃料形態、再処理技術及び燃料製造技術を組み合わせて評価した。FBRサイクル施設への設計要求を整理した上で、酸化物燃料への適用例を中心として溶媒抽出工程の前に余分なウランを回収しPuはUとNpの混合物として低除染で回収する先進湿式再処理法や乾式再処理方の3つの概念(酸化物電解法、金属電解法、フッ化物揮発法)、燃料製造技術として簡素化ペレット製造法や燃料振動充填法などについての検討結果が紹介された。また金属燃料製造技術として新たに遠心鋳造法に着目したことが紹介された。

(2)パネル討論
1)招聘者からのショート・スピーチ

@アナトーリ・シュメレフ
 日ロ二つの工科大学の共同で研究している自己整合性のある原子力システムとして加速器、核融合も含めたマルチコンポーネントシステムの紹介があり、核拡散抵抗性、特にPu238による防護の考え方が述べられた。
Aユーン・チャン
 次世代炉概念における核拡散抵抗性は(イ)様々な技術開発目標の1つとして考慮すべき、(ロ)世界的な制度的枠組み、特に保障措置制度の中で考慮すべき、(ハ)原子炉システムに自然と備わった性質(固有の性質)として考慮すべき、という3つの指針が提案された。

2)パネル討論内容
@JNCの実用化戦略調査研究については、現在のスケジュールは野心的であり、50年から100年先を考え、できるだけ多くのオプションを選んで研究開発を行なうべき、という意見が出された。
AFBRサイクルが全てを解決できるわけではなく、環境負荷低減には核変換が必要なので、加速器駆動システム(ADS)や核融合も補完的に考えていくことが必要である、という意見が出された。
B技術選択にあたっては、費用対効果も重要であるが、社会的側面も十分検討されるべき、という意見が出された。
C核拡散抵抗性技術の開発は、国際協力が重要であることが強調された。また、欧米諸国が先進的な原子力技術に対して積極的でないので、日本は原子力の開発分野で将来の世界において重要な役割を担っており、そのためにも、JNCの実用化戦略調査研究の成果に期待する、という意見が出された。

セッションV「ロシアの余剰核解体プルトニウム処分問題への貢献」
(1)講演
@ロシアの余剰核兵器解体Pu処分問題に関するサイクル機構の取り組みについて
大和愛司 JNC理事
 ロシアの余剰核解体Puの処分に関するJNCの支援は、米露の要請に基づき解体PuをMOXバイパック燃料にして高速炉BN−600で燃焼させるオプションへの協力である。本オプションにより2020年までに20トンの解体Puを燃焼させる。作業は、部分MOX炉心化を経て全MOX炉心化へと進められるが、詳細な作業分担項目は調整中である。
Aサイクル機構による露の余剰核解体Pu処分に関する国際的役割
山内康英 国際大学グローバルコミュニケーションセンター教授
 非核化支援協力協定の基で、わが国(JNCが担当)はCIS諸国、特にロシアの核兵器解体Puの民生用高速炉(BN−600)への転用計画への協力を行っている。本協力計画の国際政治論的位置付けは、STARTと表裏一体の関係にあり、米ソ関係の安定化にも繋がるものである。今後は経費面、技術面など各種の運用上の困難が予想されるので、外交当局の機敏な外交手腕が不可欠となるであろう。

(2)パネル討論
1)招聘者からのショート・スピーチ

@ローラ・ホルゲート
 米国はハイブリッド型のプルトニウム処分戦略を進めており、再び核兵器として使えない形態にすることを目指している。BN−600を使ったPu処分計画に2001年分として米議会は約4,000万ドルの予算を承認した。ロシアとの共同研究で余剰Pu処分技術開発を行っている。米露協定では、双方34トンのプルトニウムを処分する方向であり、全体コストとしては、ラフに15億米ドルと評価している。日本のBN−600支援は歓迎するが、もっと資金的に貢献してほしい。
Aバレンチン・イワノフ
 ロシアではBN―600を利用したPu燃焼計画を検討している。実際に核兵器級Puを使ったMOX燃料が出来上がり3月にはBN−600に装荷する予定である。ロシアとしては資金援助を必要としているが自助努力をしないわけではない。
Bエリック・プルースト
 仏・露共同のロシア解体核支援プログラムAIDA?MOXは1993年から始まった。現在第2段階(AIDA-MOX2)にあり、仏独露の3ヶ国に伊とベルギーが加わり、Pu転換プラントCHEMOXとMOX燃料製造施設DEMOXの設計を進めている。2000年にはコスト評価用の概念設計が終了する予定である。当初は年間2トンであるが,将来は5トンまで増強可能とする。

2)パネル討論内容
@各処分オプションについては、Pu処分には既存炉や他の炉型も活用するなど様々な原子炉が必要とされるが、そのためには政治的な決定が必要である、HTGRオプションについては、トムスクの地域暖房に利用するという計画があるが、長期間かかりすぎる、という意見が出された。
A米が高速炉(BN―600)オプションを認めた背景については、高速炉が増殖炉から燃焼炉に転化する点を考慮し、実務的な観点から核拡散上の問題が低減する、Pu処分が迅速にできるなどの大きな魅力があって協力することになった、との認識が示された。
BBN−600のMOX利用許可の見通しについては、現在規制側で検討中であるが、1ヶ月くらいで認可される見通しである、BN−600では、最初18体、ハイブリッド炉心では50体位装荷できるようになる、という意見が出された。
C情報の共有については、政府間の外交交渉とは別の非公式な交渉も大切であり、交渉する個人の資質が重要である、また情報の管理にあたっては日本が利用している再処理技術は他国では機微技術であるとも考えられるので、情報公開に関しては留保条件をつけるなど、外交上の見地から情報を健全に管理すべき、という意見が出された。
D国内の原子力研究開発との関係については、各国の国内的利益と外交関係の結合が大切である、今回の日本の事例では、研究開発目標と結合しているという点、更には、技術力を持っているところ(JNC)から具体的な提案が出され、解体核Pu処分協力が進展している点に注目したいといった意見が出された。
E核軍縮を進めるのは、米露だけといった考え方もあるが、資金や技術面において米露以外の国の協力が必要である。また解体核Puの処分プロセスに関連する技術を保有する国の協力により信頼性が高まるとともに、各国が参加することで核軍縮をグローバルに確認できることは透明性向上の点から大きな意味があるという意見が出された。

イブニング・セッション「核不拡散問題へ認識を高めよう」―若手研究ゼミ―
(1)話題提供等

 司会から原子力体制と核不拡散体制について20世紀のレビューと21世紀の展望に分け、それぞれを軍事・外交面と技術的視点から議論してもらいたいとの発言の後、話題提供者より日本核武装論は虚像か実像かなどの話題提供があった。

(2)討論内容
 討論では、米議会のCTBT批准拒否、核燃料サイクルへの懸念、Pu利用などが議論された。Pu利用は必要だがテロ対策を優先して技術を選定すべきである、多少不完全でも技術を積み上げながら核不拡散の努力を続けるべきである。その努力を具体的に世界に示すべきである、東アジア軍事情勢と米国の核の傘論については、シミュレーションが必要である、という意見が出された。会場からも原子力の軍事利用と平和利用を分けて議論すべきであるなどの意見が出されて、最後に話題提供者が、原子力関係者は核不拡散を意識しながら開発していくことが大切であると議論をまとめた。