原子力政策円卓会議(第10回)
議 事 録


日 時: 1996年8月22日(木)
     13:00−17:30

場 所: プラザ萬象

出席者



開  会

【中川】  それでは、時間がまいりましたので、第10回原子力政策円卓会議を開催したいと存じます。ご多忙中にもかかわらず、皆様方にはご都合をつけていただいて、本日のこの会議にご出席をいただきましたことに対し、心から感謝を申し上げたいと存じます。ありがとうございました。
昨年12月に発生しました「もんじゅ」のナトリウム漏えい事故では、地元の皆様方に多大なるご心配とご迷惑をおかけいたしました。まずもって、この場をおかりをして、改めて心から深くお詫びを申し上げる次第でございます。この原子力政策円卓会議は、その「もんじゅ」事故を契機として、原子力に関する国民的な合意の形成に向けた国のより一層の努力を求める、福井県知事さん初め、多くの皆様方のお声に真摯に答えるために、各界各層の方々から原子力に関する幅広いご意見を伺い、これを政策に的確に反映させるという考えから原子力委員会に設置したものでございます。
4月25日の第1回会合以来、今回でちょうど10回目を迎えますが、特に今日は地元、「もんじゅ」の事故を起こしました敦賀市での開催ということで、栗田福井県知事、河瀬敦賀市長、古池大飯町長初め、地域の方にも多くご出席をいただくことになりました。これまでいろいろな分野の方からご出席をいただいて、活発な論議をし、議論を深めてまいりましたが、今日は前々回の第8回に引き続きまして、原子力と社会の関りに関する事項をテーマにいたしまして議論を深めてまいりたいと存じます。地域社会との関りといった点において、特に今日は地元での開催ということでございますので、より実りの多い議論ができるのではないかと、心からお願いを申し上げたいと思う次第でございます。また、今回も一般公募、及び既に国からお願い申し上げております原子力モニターの方からのご出席者5人のご参加もいただきました。皆様方には、市民の目から見た率直なご意見を大いにお願いを申し上げたいと思っております。さらに、今日は敦賀市の皆様のほか、福井県及び近隣町村の皆様をはじめ、たくさんの方々に傍聴にお越しをいただいております。地域での関心の高さを伺い知ることができまして、まことにありがたく、また原子力政策の責任者として、その責任の重さを痛感もいたす次第でございます。
さて、これまでの会議でも、原子力と社会の関りといった観点からは、人間にとって原子力というのはどういう意味を持つか等、人間・文明社会の関りといった分野はもとより、安全と安心・広報等の理解活動、地域社会との関り等、多くの議論があったところでございます。特に、地域との関りといった点では、立地地域だけの議論ではいけないのであって、消費地との関係、一般国民の皆さんが自らの内側の問題として考えていただく問題、そしてまた、立地地域の地域振興の問題等、多くの問題提起がございました。商業用の原子力発電が運転を開始しましてから、もう既に四半世紀以上の歴史を持つ現在、原子力と社会との関り、地域との関りは、いま一度、本当に国民全員で真剣に考えていくべき時期にきていると考える次第でございます。本日の会議が実りの多いものになることを心からお願いを申し上げ、冒頭の私のこの会議を設置した者のごあいさつとさせていただきたいと存じます。
それでは、会議を始めたいと存じます。議事進行上、伊原委員長代理から、まずお始めをいただきます。どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
【伊原】  伊原でございます。円卓会議では、議論を効果的に行うためにモデレーターの方々6名、この方々に議事の進行取りまとめをお願いをいたしてきております。本日は、慶応義塾大学新聞研究所教授の岩男さん、京都大学経済研究所長の佐和さん、日本経済新聞社論説委員の鳥井さん、埼玉大学大学院政策科学研究科長の西野さんの4人にお越しをいただき、議事の進行をお願いいたしました。4人でご相談していただきました結果、前半を岩男さん、後半を鳥井さんの進行でお願いいたしまして、佐和さんと西野さんにはお二人のご支援をいただくと、こういうことでお願いいたしたいと思います。
それでは、岩男さん、どうぞよろしくお願いいたします。
【岩男】  岩男でございます。どうぞよろしくお願いいたします。今、伊原委員長代理からご説明がございましたように、前半は私が議事進行をさせていただきまして、後半は鳥井さんに進行をバトンタッチさせていただきたいと思います。
まず最初に、原子力政策円卓会議の趣旨や運営に関する基本的事項等につきましては、お手元に資料が配られておりますので、ぜひご一読いただきまして、会議の円滑な進行にご協力をお願いしたいと思います。
この円卓会議では、単に狭い意味での原子力政策についてご意見をお伺いするということではなく、原子力をめぐる幅広い議論が行われるよう、議事運営をしていきたいと存じております。
それでは、まず最初に、本日ご出席をいただいている方々をご紹介したいと思います。今回は、各界からの招へい者の方に加え、一般公募による参加及び原子力モニターからの参加をいただいておりますが、国民各界各層の方々にご参加をいただく円卓会議ということでございますので、敬称はすべて「さん」というさんづけで呼ばせていただきたいと思います。
それでは、五十音順にご紹介をさせていただきますけれども、まず最初にお断りをしておきますが、一般公募でご出席のご予定でございました福井県の杉本英弥さんが、本日、急病のために急きょご欠席となりましたので、ご承知おきいただきたいと思います。
それでは、井上さんからご紹介いたしますけれども、原子力モニターの井上尚行さんでございます。よろしくお願いいたします。
次が、核燃サイクル阻止一万人訴訟原告団代表の大下由宮子さんです。
その次が、原子力発電に反対する福井県民会議事務局長の小木曽美和子さんでございます。よろしくお願いいたします。
お隣が、敦賀市長の河瀬一治さんでございます。
次が、京都大学大学院エネルギー科学研究科教授、京都大学原子炉実験所教授の神田啓治さんでございます。よろしくお願いいたします。
お隣が、福井県知事の栗田幸雄さんでございます。
お隣が、大飯町長の古池和廣さんでございます。よろしくお願いいたします。
次が、フリージャーナリストの小林 巌さんでございます。よろしくお願いします。
お隣が、社団法人敦賀青年会議所理事長の高橋一夫さんでございます。よろしくお願いします。
次が、一般公募でご出席をいただいております長瀬克己さんでございます。
そのお隣が、原子力モニターの西川かす美さんでございます。
次が、関西経済連合会副会長で関西電力株式会社取締役副社長の南 賢兒さんでございます。よろしくお願いいたします。
次が、財団法人日本原子力文化振興財団理事長・村田 浩さんでございます。
次が、一般公募でご出席をいただいております矢口邦夫さんでございます。
最後になりましたけれども、一般公募でご出席をいただいております安井 深さんでございます。
続いて、原子力委員の皆様をご紹介いたします。まず、原子力委員長の中川秀直科学技術庁長官。
次が、原子力委員長代理の伊原義徳さん。
原子力委員の田畑米穂さん。同じく藤家洋一さん。それから依田 直さんでございます。
本日は、これらの方々に、先ほどご紹介いただきました我々モデレーター4名を含めて議論を行っていきたいと思っております。
さて、本日のテーマでございますけれども、先ほど大臣からもお話がございましたように、原子力と社会との関りに関する事項について議論を行っていきたいと思っております。この問題につきましては、去る7月24日に行われた第8回の会議においてもご議論をいただいたところでございますが、本日はより深い議論を行っていきたいと考えております。
テーマといたしましては、「原子力は何をもたらすか?−原子力と社会との関り−」という設定をさせていただきました。私どもといたしましては、このテーマはより具体的には、人間・文化・社会と原子力、あるいは原子力の安全確保や安全と安心の問題、また立地地域と消費地の問題、原子力に関する教育・広報の問題、さらには情報公開・政策への反映といったような議論の項目が考えられるのではないかと思っておりますが、もちろん皆様方の自由なご発想でご議論いただければ幸いに存じます。
私どもモデレーターといたしましては、皆様に十分ご発言いただけるよう、会議の議事運営に努めるだけではなく、議論の流れを十分踏まえつつ取りまとめをしてまいりたいと存じておりますので、出席者の方々には日ごろお考えになっている忌憚のないご意見をお聞かせ願いたいと思います。
それでは、具体的な議事に移りたいと思います。本日は、テーマが広範にわたることもあり、また参加されている方々も多岐にわたることから、以下のような議事運営を行いたいと思っております。まず最初に、一般公募及び原子力モニターから参加されている5名の方々全員にご意見をいただき、引き続き、それら一般参加者を中心とした自由討議を行いたいと思っております。これは、おおむね4、50分を考えております。その後は、全員による自由討議を行いたいと思っております。なお、今回は広く一般公募等により参加された方が多数いらっしゃいますので、ご発言に際しましては専門的な用語は極力控えて、わかりやすい議論が進められますよう皆様のご協力をお願いしたいと思います。

自由討議

【岩男】  それでは、まず一般公募及び原子力モニターからご参加いただいている方からご意見をいただきたいと思いますので、五十音順で、まず井上さんからお願いをしたいと思います。恐縮でございますけれども、お一人5分以内でお願いをしたいと思います。それでは、まず井上さん、お願いいたします。
【井上】  まず最初に、このような機会を与えていただいたことに対しまして感謝申し上げます。本日は、冷房が入ってないんかなという気がしたんですけれども、うれしいことに入っておりましたので、二つの喜びでございます。時間のことでございますので、私のほうの提案から、勝手でございますがさせていただきます。
原子力政策に、私は現在のところ、賛成でも反対でもございません。なぜなら、原子力関係施設が遠くにできるのは賛成しておるんですが、近くにできるのは大反対という立場をとっておるわけです。要は、勝手なのですが、日本の国民の大半の方はそうではないかと思っております。原子力に詳しいから恐ろしい、知らないから怖い、いずれにしても完成されたものでないことだけは確かだと思っております。
安全に関しましては、相当の専門家でないと判断できぬ部分が多くあろうと思います。また、専門家でも判断できない部分、多々あると思います。しかし、専門家でない大部分の私たち国民は、安心を求めようとしております。未来の地球を考えたとき、温暖化など、地球環境の面からも一助になる原子力発電は大きなメリットであります。そのことから、一層の心理的安心を得るために、私は目線にある地上の原子力施設を完全に安全と判断できる時期が来るまでは、地下の安定した地層に存在させればいかがかと考えております。地上より地下のほうが、不慮の出来事を含め、はるかに安全ではないでしょうか。相当の費用が当然、必要と思われますが、現在稼働中の原発で人間を含め、動物に対して死に至らしめるような事故が発生すれば、日本での原発は直ちに停止すること間違いないと思っております。
そこで、三つの提案をしたいと思って、本日、参りました。
まず一つ目は、安全な地下層に大規模な原発関係総合施設の建設を行うということです。非常に細かいことでありますが、掘ることによって大量の土が出るでしょう。その土で地上、真上に小高い山を作り、その山には果樹を含む植林を行ってほしいと思います。なぜ植林を行うかといいますと、言うまでもありませんが、ちょうどタイミングよく、きのうの朝日新聞に出ておりましたが、植物が放射線を養分として吸い上げるということがございますので、その意味での植林を行うということ。
二つ目は、福祉社会を目指している日本のことですから、福祉の立場からいろんな各種の犬の訓練所を設けてはいかがかと思っております。そうやることによりまして、実施後は植物の変化と犬の動向に注意を払っていく必要が当然あろうかと思います。その山のもう少し遠い範囲の広い周囲には、特別区を設けてはいかがかと思っておるんです。特別区を設け、電力を多く消費する多数の企業を誘致し、特別に安価な電力と特別に安価な土地を提供してはいかがかと思っております。これらによりまして、過疎など、地域社会振興対策、高齢社会対策、障害者対策など、産業振興にも大いに役立つのではないかと思っております。
二つ目の提案ですが、高レベル放射性廃棄物の処分ですが、このことにつきまして、我が国において今後、処分予定地の選定と、その地域住民の十分な理解を得るための努力は、他国での事情と違い、原爆投下を受け、被爆した日本では、土地面積も少なく、世界有数の地震国でもあり、想像の域を超えているのではないでしょうか。その理由から、四つ提案したいと思います。
まず、地球以外の惑星の処分ができないものかどうかということが一つ。もう一つは、資金提供により、他国へのお願いはできないものかどうか。三つ目でございますが、太陽系以外への放出方法はできないものかどうか。四つ目は、IAEAによる、利用国応分の負担のもとで、世界共同の処分地決定などを話し合い、推進できないものかどうかということを思っております。
三つ目の提案でございますが、教育に関したことでございますが、早い時期より、内容の充実したエネルギー問題、原発に関した教育が絶対必要であると思います。既に文部省に対して要望されていることは、「原子力白書」を読んで知っておりますが、もう少しスピーディーに、確実にお願いできないものかということを本日、この三つの提案をもってまいりました。
ありがとうございました。
【岩男】  ありがとうございました。
それでは、次に長瀬克己さんにお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
【長瀬】  それでは、三点ほど私の感じましたこととかをちょっと述べさせていただきたいと思います。
一つが、まずエネルギー政策に関してでございます。私たちの生活は、戦後の物不足の時代から、今、まさに豊かさ、快適さを求める時代へ変わってきていると思います。これは、私たちの諸先輩たちが、戦後の物不足の時代から力をあわせて、現代までの復興に努力されて築かれたものだと思います。この諸先輩方が築いた今日の財産といいますか、今日の繁栄といいますか、こういったものは、我々の子供たちに引き継ぎ、さらには繁栄させてもらうこと、これが今の私たちに必要な使命かと思っております。この諸先輩が現在の繁栄を築くに至るに当たりましては、いろいろなハードルを乗り越えられてきたことだと思います。
このハードルの一つに、オイルショックが挙げられると思います。当時、私はまだ新米の社会人だったわけでして、過去二度にわたるオイルショックが日本に与えた影響は非常に大きなものなんではないかと思っております。とりわけ、私たちにとって最も身近なものでありましたのが、トイレットペーパー騒動です。市場から物がなくなってしまうのではないかという不安感、これは数多くの人が抱かれたのではないかと思います。大阪で豊中市かどこかだと思いましたけれども、トイレットペーパーがなくなると言われた、その言葉に端を発したと思いますが、日本中、日本国民がパニック状態になったと記憶しております。私も、母に言われましてトイレットペーパー探しとか、また、さらには洗剤がなくなるというようなことも言われまして、今度は洗剤探しにと、あちこち走り回ったことを覚えております。また、会社では、例えば鉛筆が短くなって書けなくなっても、キャップを差して使うとか、昨今では就職難と言われていますけども、就職も今とは比べものにならないくらいの厳しい状況であったんではないかと思います。これは、まさに石油がもたらす影響の大きさ、すごさ、この辺をまざまざと私たちに見せつけられたのではないかと思います。このような事態を二度と繰り返さないためにも、それからまた、私たちのこれから子孫といいますか、子供にも経験させないためにも、今後とも長期的視野に立ったエネルギー政策に積極的に取り組んでいただきたいと、推進していってもらいたいと思います。
それから、二点目ですけれども、安全関係とか安心関係という、先ほどモデレーターの方の話もありましたが、こちらの観点からちょっと一言申し上げます。安全面ということなんですが、人が作り出したものというものには、絶対というものはないんではないかと。例えば、機械とか設備とか構造物とか、作り出されているわけですけれども、絶対というものはないんではないかと思います。こう言いますと、絶対というものがないんであれば、絶対的な安心とか絶対的な安全とかいうものは社会に受け入れられないんじゃないかと言われる方もいらっしゃるかとは思いますが、これを言いますと、今の社会の相当な部分が受け入れられなくなってくるわけでして、そこで私たちが人が作り出したものといいますか、文明の利器といいますか、これを受け入れるに当たり、受け入れようとするものが人に与える有益さといいますか、メリットと、その反面、請け負うこととなりますリスクといいますか、そのバランスをどう考えるかで判断していくんじゃないだろうかと。例えば、私が飛行機を使って移動しようとした場合に、移動の所要時間が短い、早く目的地まで行けるという有益さと、飛んで落っこちないかという事故の危険性といいますか、その辺のリスクをはかりにかけて判断するわけでして、結果として有益さを選んで飛行機等を利用するわけですが、その場合の判断基準として、私の判断基準になるわけですけれども、事故の起きる確率の大小で、多分大丈夫だろうというほうが確率が大きいだろうと判断して乗っているということだと思います。原子力に関しても、その安全性を受け入れるに関しても、それが持つ有益さとリスクのバランスを考えて判断していくことが大切ではないかと思います。今日、いろんな先生方も来ておられますけれども、この辺の確率的な話も、一部聞けるようでしたら後からお願いしたいと思います。
それから、三つ目ですけども、情報の話も先ほど出ましたが、情報の公開はやはり私も必要だと思います。正確な情報を公開する必要があるかと思います。ただ、そのタイミングでありますとか、内容でありますとか、その範囲でありますとか、この辺に関しましては、これからいろいろコンセンサスを諮っていく必要があるかと思いますし、こういった場でもさらに議論を深めていかなければならないことだと思います。それと、その情報が我々に伝わりますのは、やはりマスコミの力を借りて伝わるわけでして、マスコミの方々の公平な立場での情報の提供といいますか、伝達をお願いしたいなと思っております。
以上三点。
【岩男】  ありがとうございました。
それでは、次に西川かす美さんにお願いいたします。
【西川】  和歌山から参りました西川です。よろしくお願いします。
和歌山には、原子力発電所というものが一つもありませんので、私もこの原子力モニターになるまでは、さほど興味というか、全く知識もなかったんですが、この原子力モニターにお願いされてというか、なってからは、いろいろな資料を読んで勉強している最中です。今日、ここに来るに当たって、周りの身近な者に行くのでということでお話ししたら、気づいたことは、周りの人間も全く原子力に関して認識も知識もなかったということが本当のことでございます。
危険であるというようなことは漠然とした形ではわかるんですが、どこか外国の出来事のように、チェルノブイリでしたらほんとに外国ですけど、「もんじゅ」のことでさえ、自分の近くにあるというような認識が和歌山県民にはないのではないかなと私は思っております。その原因の一つとして、学校教育で原子力ということを取り上げることというのは、自分が受けてきた中には一つもありませんで、資源がいつかはなくなるということは習うんですが、それに関してどういうことが必要であるとか、どういうことをしなければいけないというふうなことというのは深く教えてもらったというような記憶はありません。これは、やはり情報公開とも深く関係してくるのではないかなというふうに思います。
その情報公開についてですけども、報道でしか知ることとか見ることができないものですから、それを見てると、あまりにもわかりにくかったりとか、例えば動燃という言葉でも、それが国がしてる会社なのか、どういうところがどういうふうにやっているのかというのさえわからない人がほとんどの中で、その説明もなく報道を見ているというような現状が本当だと思います。それが、政策の中に政策と情報公開と、今日の議題の中にあるので、そこら辺の疑問とかが納得して帰れればなと思っております。
【岩男】  ありがとうございました。
続いて、矢口邦夫さんにお願いいたします。
【矢口】  矢口と言います。私は、電力関係の会社に事務職として従事しておりまして、もともと学生のころから原子力発電をめぐる論議には普段から関心を寄せておりまして、このような機会があることを知りまして、喜んで参加をさせていただきました。レジュメのほうには、いろいろと考えていることをつらつらとつづってあるのですが、時間の都合もありますので、二点ほどに絞りましてお話をさせていただければと思っております。
まず第一に、原子力の安全の確保というところに絡む問題なんですが、この安全確保というのは、原子力政策の何よりも一番の基本であると考えております。原子力の安全確保については、万が一、重大な事故が起こっても、周辺の環境に問題となる影響を与えない、そのために何重もの安全対策が施されている。だけれども、実際には新聞に発表される発電所のトラブルの情報を見るたびに、本当に安全なんだろうかと不安に思ってしまう方が多いのが実際ではないかと思っております。その問題というのは、原子力発電所というのが安全なのかというよりも、先ほどおっしゃられた方もいらっしゃいますけれども、安心できる施設なのかというところにあると思っております。具体的に発電所設備の構造上の問題や、あるいは設計上の問題というよりは、いわゆる原子力情報の信頼性に対する不信であったり、あるいは原子力に対する漠然とした不安であったり、こういったことがやはり原因にあるのではないかと思っております。
これは、国、事業者の今までの安全に対する取り組み方に、やはり不信感が持たれているということに原因があるのではないか。この点では大いに反省をする必要があるのではないかと考えております。そのためには、何よりも安全確保に努めようとする謙虚で真摯な態度が、今、まさに国や事業者に求められているのではないかと思います。原子力の安全に関する論議の中で、チェルノブイリの例を出して、原子力の安全神話は崩れたではないかという意見をよく耳にするのですが、そもそも安全に神話というものはなくて、そういうふうに安全性の問題に対応してきた、あるいは誤解を与えてきた事業者あるいは国の姿勢というものがあれば、それは改めなければいけないと思っております。人間というのは不完全であって、その不完全さを認識して事故の発生を恐れる気持ちを持ち続けることが、何よりも安全確保の基本だと思います。実際、今まで約30年間、日本では原子力発電所、商業用の発電所を運転してきておりますけれども、事故は起こっていない。何よりも原子力発電所の最前列に携わっている人々がいて、一生懸命、日夜トラブルを起こさないためにはどうすればいいかということに取り組んでいる、こういう積み重ねが、時間はかかるとは思いますけれども、原子力発電所の信頼につながって、それがひいては安心感につながっていくのではないかなというふうに考えております。
二点目は、原子力の立地の問題なんですけれども、今、原子力の立地問題ということで大きな問題というのは二点なのかなというふうに私は思っております。一点目は、原子力発電所の立地によって、いろいろな負担とか悩みとか、そういったものを抱えているのはやはり地域の方々。一方で、大量の電力を消費する都会に住む人々というのは、そういった地域の抱える有形無形の負担であるとかリスクというのを理解しているんだろうかというところの問題が、まず一点。もう一点は、原子力発電所というのを受け入れてくださっている方々というのは、原子力発電の立地というのがトータルで考えると自分たちにとってメリットがあるから、やはり受け入れてくださっているのではないか。具体的に言うと、例えば地域の振興であるとか、発展であるとか、そういったものが挙げられると思いますけれども、ただ、どうも地域の振興とかメリットというものが思ったとおりに表に出てこない。少なくとも、いろいろとデメリットのほうが目立ってしまっていて、一体どういうことなんだろうかということが、この立地問題に関する私の勝手な考えですけれども、二点あるのではないかなと思います。
要は、社会に必要な施設の立地によって、リスクをこうむる地域と利益を享受する地域というのが別々にあって、そのリスクのバランスというのをどのようにとっていくのかというのが問題になっているのではないかと思います。これに対する、例えば原子力に関する従来の解決方法というのは、電源三法などによる交付金ということが挙げられると思うんですけれども、これが本当に有効に機能しているんだろうか、もっといい方法があるのではないかということにつながると思います。ちなみに、私の両親の話をすると恥ずかしいんですけれども、私は東京に住んでいるんですが、東京電力さんに電力料金を払っている。その中に交付金というものが含まれていて、我が家の電力料金の一部が、例えば福井県であるとか、あるいは福島県であるとか、そういった電源を立地してくださっている地域に何がしかの形で負担しているということを実は知らなかったりしているわけです。あるいは、この交付金についても、立地地域、地元の振興のために長期的な視野に立って活用しようとしても、その使用目的に制限があって、なかなか思うように使用できない。あるいは、この交付金がかえって住民の従来の生活パターンというのを乱してしまって、どうも交付金というのがダーティーなイメージでとらえられてしまっている節がある。
こう考えると、この制度のよい、悪いというのはまた別の問題として、もう一度原点に立ち返って、これは原子力発電の立地の問題だけではないと思うんですけれども、立地地域と消費地とのバランスというのを、本当にどのようにとっていくべきなのか、どういうあり方が一番国民が納得できるようなあり方なのかということを真剣に検討し直す時期に来ているのではないかと思っております。
あと、話がそれるんですけれども、別になりますけれども、私が実感しているのは、情報というか、報道というか、教育の問題にもなるかと思うんですけれども、イメージとしての原子力というのは新聞やメディアを通じて、よく知っている。だけれども、実際のところとなると、よくわからない。例えば、私は採用の業務というのをさせていただいたことがあるんですけれども、そのときにたまに原子力について、ちょっとどういうお考えですかと聞いてみる。そうすると、いろいろ言われているんだけれども、必要じゃないかとか、いや、やっぱり危険なんだからやめるべきだというのは、まだいいほうで、よくよく聞くとよくわからないけれども、そういうのがあるんですね、ということ。ただ、そうは言っていても、一方で私が例えば大学の同窓会なんかに行くと、「矢口、まだはげてないね。」というイメージでの原子力はよく知っているんだけれども、実態としての原子力というのはよく知らない。そう考えると、原子力発電の政策の今後について、国民的な合意の形成が必要というふうにあるんですけれども、どうもほんとにこのような状況で国民の合意形成というのができるのかなと、ちょっと不安に思ったりしています。
最後に、私は石油・原子力にかわる代替エネルギーというものが諸問題を克服して、実用化されれば、それにシフトしていけばいいというふうに考えております。ただ、それは決して原子力に対してネガティブということではなくて、すべての発電方法にはやはりマイナス部分がある。原子力についても、高レベル廃棄物の処理・処分の課題というのがあるけれども、これは私の勝手な考え方かもしれませんけれども、それは決して実現不可能な問題ではないというふうに思っております。少なくとも、50年あるいは来世紀中は現実的に原子力発電が主力電源になると思いますし、そういった技術力というのは日本はやはり持っていると思います。そのため、今は実際に原子力発電の最前線に携わっている人たちが、自分の仕事に自信や誇りを持てるような、また次の時代を担う若者たちが決してイメージで原子力をとらえるのではなくて、積極的に原子力という分野にチャレンジをしていってみよう、というような、そういう原子力政策の議論が闘わされてほしいな、というふうに思っております。
以上です。
【岩男】  ありがとうございました。
それでは、お待たせいたしましたけれども、安井さん、お願いいたします。
【安井】  安井でございます。原子力に関します日ごろの私の考えを述べるチャンスをお与えいただきまして、ありがとうございました。
私の原子力に関する基本的な認識ということにつきましては、一つ目には、日本が資源小国であるということは国民のだれ一人、疑念を持つ余地はない。それから、二つ目に、地球環境の保全と資源の温存を優先すること。それから、三つ目に、原子力発電を他の科学技術−−産業ですけど、との対比において扱うことでございます。
まず、エネルギー源の使い分けをしていく時代に来ているというふうに認識しております。最近の地球環境問題への対応を考えたとき、エネルギー源として貴重な化石燃料に過度な依存はとるべきではないと考えます。貴重な有限の化石燃料である石油等の炭素源は、日常の生活用品等に振り向けていくべきで、後世に資源の温存を図ることが肝要であろうと思います。ウランは、発電用燃料以外に利用しにくいこと、クリーンなエネルギー源であることから、大いに発電用に利用していくべきではないかと考えます。よくこれ以上、原子力は増やすべきでないとよく言われますが、全くそうとは考えておりません。予測される世界の人口増、開発途上国のエネルギー使用量増等を考えあわせますと、我が国のエネルギーシステムはしっかりと確立する必要があろうかと日夜思っております。
それから、理科教育の見直しを図るということでございます。これは、社会科教育も含めた話でございます。エネルギー問題、原子力に関する教育が学校教育でほとんど行われていないやに聞いております。また、教科書の記述も不正確か、誤った表現がかなり見られます。それから、エネルギー、原子力に関する情報がほとんどマスコミのセンセーショナルなニュース、あるいは三面記事によるところが大きいと思われるところに問題があるのではないかと思っています。いたずらに原子力は怖いと言うだけで、本当にいいかどうか。怖いというイメージは、教科書あるいはマスコミが作り上げたもののようにも、私は思っております。
原子力発電は、核分裂反応部分を除けば、普通の化学プラントとそんなに変わりはないと思っております。高等学校における理科教育で、その内容が正しく理解でき、自分で判断できる人材の育成が望まれるのであります。現状は、医療等の診断・治療用の放射線は許容され、原子力発電の放射線は恐れられる。天然において原子炉があったと言われるオクロ鉱床、日常摂取する食物に放射能が含まれていること。ましてをや、自分自身が放射能を持っていることすら教育されておりません。これでは、文盲国とちっとも変わりがないのではないかと考えています。理科教育、社会科教育を含めた見直し、教科書の是正等に関する文部省との連携強化が重要ではないかと思っています。
それから、安全は作り上げていくものであるという私の安全哲学です。原子力の安全性については、その高い稼働率を見てもわかるように、我が国においては確立されたものと判断しております。現状、トラブルの再発という情報は少なくとも聞いたことがございません。また、これは確実に改良が図られていること、また水平展開が十分になされている証左ではないかと考えています。今回の「もんじゅ」事故では、「もんじゅ」が研究開発段階であるという立場に立っておりまして、特に私はとやかくとりたてて騒ぐつもりは毛頭ございません。情報公開内容についても、自分なりに疑問に思っておりました化学的な面でのナトリウムの安全対策について、よく理解できました。なお、これを契機に、試験プラントとはいえ、もう少しきめ細かな安全対策について公表されたほうがよかったんではないかと思います。
安全は作り上げるという立場に立ちますと、確認試験中に膿は十分に出し切って、信頼性の高いプラントにしてもらいたいと思っています。解決できないような技術的に未熟な日本とは、到底考えておりません。現状の安全評価尺度が放射能のみの評価基準のようでございますが、「もんじゅ」では化学プラント化してきているので、この面での見直しが肝要ではないかと思っております。よく言われる、危険を立地県に押しつけているとございますが、消費地には消費地としての危険がございまして、猛毒ガス等は背中あわせの状況にあることを理解してもらいたいと思います。
一つ飛びまして、最後に、かつて水害などの救援活動が自衛隊に対する国民の理解を深める上で大きな役割を果たしてきました。侵略を受けたときだけでなく、大きな災害や事故から国民の生命・財産を守ることが自衛隊の主要な任務との位置づけが、より明確になったと同様、こと原子力発電の推進についても、一刻も早く大多数の国民的な合意形成が図られることを期待しております。
以上です。
【岩男】  ありがとうございました。ただいま、一般参加者の方々から大変多岐にわたるご意見がございました。それで、これから先の議論の進め方なんですけれども、先ほどご説明いたしましたように、第8回の円卓会議においても同じような問題を取り上げて議論をいたしました。そのときの教訓を実は生かして、次の約20分ぐらいの議論の運営を考えておりますけれども、それは一つのやり方としては、ここで全員の議論にするということもあるわけですけれども、そうしますと、一般参加の方々がなかなかご発言をなさらないというようなこともございましたものですから、今回はその次の約15分から20分ぐらいを、今、ご発言いただきました一般参加の5名の方々と、それから原子力委員とを中心とした議論にして、そしてその後でほかの参加者全員の方々のご意見をいただくというふうにしたいと思います。
それで、まずいろんな議論が考えられるわけですけれども、今いくつかお話がございましたのが、例えば安全と安心の問題、あるいは教育についてもお触れになった方が随分ございます。それから、情報公開の問題についてもほとんどの方がご意見があったように思います。また、立地県とそれから消費地との問題についてもお話がございました。こういったようなこと、あるいはもっと広く議論をしていただいて結構でございますけれども、まず一般参加者の方あるいは原子力委員の中から、これまでの議論を踏まえて、どなたかご発言があれば、どんどんご自由にお手をお挙げいただきたいと思いますが、いかがでございましょう。先ほど、井上さんから地下でというご提案がございましたけれども、これについて原子力委員の方から何かご意見あるいはご説明というんでしょうか、何かご反応があれば伺いたいと思いますけれども、いかがでしょう。
【藤家】  原子力発電の安全をどういう観点から整理してみれば、安心が行く段階まで至るのかという中での地下発電所のご提案だったと思っております。これまで日本で30年、原子力発電の歴史を持っている中で、少なくとも放射能漏えいに関する問題についての安全は十分確保してきたということは井上さんもご承知だろうと思うんですが、ただ、そこだけでは問題が解決しない時代になってきたということは私ども、ある段階から認識しつつあります。まさに、それがこの席で安心という言葉になって表現されてきたんだろうと。
この安全から安心へという、この安心の話は非常に社会的あるいは心理的問題を含んでおりますので、これで地下にした場合、技術的にはどうなのかということになりますと、今の原子力発電の技術的な安全の延長上において、地下発電所にしてどうという問題は特にないと思っておりますし、日本でもほぼ地下発電所に近いような場所もございます。ただ、実際問題として、技術的な安全を確保するという面で見れば、必ずしも地下発電所にすることによって圧倒的に安全度が上がるというような認識をしていないことも、また事実でございますから、むしろ安心という観点から、この問題を十分ご議論いただいて、もしこれで社会的合意が得られるとするならば、それに対する技術的対応をやることは十分考えられるものだろうと私自身は認識しております。この辺の問題については、この福井県でも、昔、私、青年団の方々と夜を徹して、格納容器を何倍にするとか、地下発電にするとかという議論をやったことがございました。
【村田】  井上さんの地下発電所の建設という一つのサゼスチョンは、安全と安心ということを議論する上では確かに一つの取り上げ方だと思います。ただ、私の経験ですと、皆様ご存じと思いますけれども、スカンジナビア半島、ノルウェー、スウェーデン、こういう国は原子力発電を始めたときに最初には地下につくることをやったわけです。スウェーデンの例で言いますと、都市から約15キロぐらい離れた岩山に穴を掘りまして、その地下に大きな発電所じゃありませんけど、熱出力で10万から15万キロワットぐらいの軽水炉を作りました。そこで発生した蒸気、高温のエネルギーを都会に運んで、そして寒い国ですから、暖房用に使うと、こういうことであったわけです。都会にどうしても近くつくらなければなりませんので、今のように岩山に穴を掘りまして地下につくった。私も行って見たことがあります。オーゲスタという発電所ですが、二回か三回行ったんですが、初めのうち、よかったんですけど、そのうちにこれをやめてしまいました。なぜやめたのか聞きましたら、いろいろ理由はあったようですけど、一つは平常のメンテナンスが非常にやりにくい。地上にありますものに比べて、地下につくってありますものですから、人の出入り、あるいは部品の交換、その他において非常に不便である。そういうようなことで、地下につくった発電所で冷却水の漏えい事故が起こりまして、その関係で補修が非常に難しくなった。その結果、これをやめて放棄してしまったわけです。
そういう例、これからやりますと、もっともっと技術が進んでいますから、いろいろ改善の方法はあると思いますけれども、人口集中地に近づけたようとした、そういう努力が、地下の発電所という構想に発展したにもかかわらず、現実的には必ずしもうまくいかなかった。その後、スウェーデンでもご存じのとおり、すべて原子力発電所は地上につくっております。
【岩男】  ありがとうございました。どなたか一般参加者の方でご意見がおありの方、ございませんでしょうか。あるいは原子力委員の方で何か追加のコメントがございましたら。
【伊原】  今、大臣から原子力のことを考えるについて、国内の問題だけでなくて、国際的な観点からの配慮も必要である、こういうご示唆が……。
【中川】  そうじゃなくて、ご提案の一つに、井上さんから、資金提供して他国にお願いしたらどうかとか、ちょっとその辺もお答えがあれば。
【伊原】  失礼しました。廃棄物につきまして、よその国で受け入れるところがあれば、そこにお願いすればどうかというお考えを一つのご示唆をいただいておりますけれども、これは世界的に申しまして、それぞれの国がまず自分の責任でもって廃棄物を処分すると、こういうことが基本であると。それがございませんと、結局、自分の嫌なものを人に押しつけるという非常に好ましくない態度と受け取られるわけであります。したがいまして、まず、それぞれの国で永久処分の技術を確立すると、こういうことが必要かと思われます。
それから、地球外に処分するということにつきましては、これは非常に打ち上げのときのリスクというものがありまして、まず、どこの国の人もそういうことをよろしいとおっしゃっていただけないんじゃなかろうかと。あらゆる国の人が、例えばロケットで高レベル廃棄物を地球外に打ち上げるということはご賛成いただけないのではないかと思います。
ただ、一つ、国際原子力機関で国際的な話し合いをするという、このご提案については、あるいは長期的に見て意味があることかと思われます。
以上でございます。
【田畑】  今、委員長代理のほうからもお話がありましたが、廃棄物については非常に重要なことであることは言うまでもありませんが、実は産業廃棄物と比較しますと、原子力の分野では一番早い時期から再処理、廃棄物処理をきちんとやらなければいけないというふうなことでスタートしているわけでございますが、もちろん技術的に、あるいは社会的にもいろいろ難しい問題がございまして時間がかかっているわけですが、今後、最大限努力しなきゃいけないということでございます。
廃棄物の量から言いますと、産業廃棄物と高レベル廃棄物の比で、大体100万分の1ぐらいの量で、非常にコンパクトでございますし、低レベルの廃棄物を考えますと5万分の1ぐらいということで、かなり量は少なくて、そういう点から言えば、非常に処理がしやすいという側面もございます。しかし、質的には放射能を持っている、長寿命であると、そういったような問題があるわけでございます。
一方、将来、長い目で見て、廃棄物は実はいろんな貴重なコンポーネントというか、エレメントが含まれているわけでございまして、消滅処理とか群分離とか、そういうふうなことをやってまいりますと、いろんな成分が有効に使える可能性も持っておるのではないかと思っております。
【神田】  あまり言いにくいことなので言われないのかもしれませんが、現実に外国で二つの国が放射性廃棄物をビジネスとして受け入れることが可能かどうか検討している。一つは大国です。実際に交渉に行ったことがございまして、かなりの利益が上げられるなら名乗り上げたいけど、世界世論は賛成してくれるだろうかという相談を受けました。ですから、考えている国がないわけではないんですけれども、一般に自分の国でできないことを外国にといったとき、日本がどういう説明をし切るのだろうかということで、これは去年の話ですけれども、その後、話が進んでいないように理解しております。それから、一カ国のほうはあまり大国ではありませんでした。
それから、もう一つ、先ほどの地下発電所の問題ですけれども、もう少しちゃんと言ってもいいんじゃないかと思いますので言わせていただきます。我が国で実際に地下に原子力発電所を持っていくという検討会はいくつかの場所で既に行われていると思います。それで、コストもざっとはじいてありますけれども、かなりの割高になります。その割高になったときに、やった人たちは、先ほど藤家原子力委員がおっしゃったように、安全のためには意味がないというのが大体の考えのようでして、これだけコストをかけてやっても、何かメリットがあるのか。安全上、特にメリットがない。技術者のほうから行くと、安心のために金をかけるということは、今まであまり意義を見出しておりませんでしたから、特に地下発電の検討会をやっても意義がないんじゃないか、と。
それから、もう一つは、電力中央研究所を中心としてやられたものがあります。地下に30年間のメンテナンスフリーの発電所を作ろうという話です。これは、先ほど村田さんがおっしゃったように、メンテナンスが大変だというんで、30年間メンテナンスフリーというのは、何もしなくても30年間は暖房のエネルギーを出すというものです。あるいは、浄水のため、水を浄化する海水の軟水化のために使えるというんで、電力中央研究所、OECD/NEA、IAEAが中心になって4年間か5年間、検討会をやりました。
それから、もう一つは、カナダにメープルリアクターという概念がありまして、カナダは暖房に使う電力が非常に大きいので、これはかなり具体的な実験まで進みました。地下で行う暖房用の原子炉、出力は大体5メガワットから10メガワットという熱出力です。そういう計画がありました。
ですから、地下に置いた場合に、何がいいか悪いかという技術的な検討はそれなりに行われていた。だけれども、それで技術的に地上に置いて問題がないのに、どうして地下にしなきゃいけないのかというあたりについては、少なくとも検討会を一緒にやった技術者たちは、技術的に安全なものはいいんじゃないかということで、ちょっとそのあたりのみんなとの感情というか、受け取り方の食い違いはあったんじゃないか。今、藤家先生の話を聞きながら、そういういろんなことを思い出しましたので、ちょっと。
【岩男】  ありがとうございました。一般参加者中心の議論と最初、申し上げていたんですけども、自然に全員の議論のほうに移ってきたと思いますので、これからはどうぞご自由に全員の方にお手をお挙げいただいて、ご発言をいただきたいと思いますが。一般参加者の方も、どうぞご遠慮なさらずに、積極的にぜひご発言いただきたいということを繰り返してお願いをしておきたいと思います。それで、ここでまず、大臣が一言ご発言あるそうでございますので、まず大臣からお話を伺いたいと思います。
【中川】  5人の方からご発言のあった中で、まだ触れられていない点について、私のほんとに乏しいコメントでありますが。学校教育の問題も触れられました。文部省の指導要綱あるいはまた教科書検定、いろいろな公平な立場での議論は調べてみましたが、ある程度やっておるようでございます。それから、教科書もそれぞれ全く触れられていないのではなくて、現物も取り寄せてみましたが、かなり公平な記述が一般的にはなされておるような気がするんですけれども、現実に大学受験等で出題などはあまりない。したがって、教育現場では教科書に書いてあるけれども、そこをパスしてしまう、つまり超えてしまうというようなケースもあるようでございます。私、たまたまこの前、全国の科学教育学会総会というのがございましたから、ぜひ公平な立場でこの分野についての教壇におけるご努力をお願いしたいということは申し上げてきたところでございます。ささやかなコメントで恐縮ですが、そういう点でございます。
それから、あと、立地と消費地の問題等については、私からコメント申し上げるという以上に、これからの議論の大テーマだろうと思います。
最後に、情報公開の問題については、既にご案内のことだと存じますけれども、安全にかかわる情報は、もう原則として公開という原則でこれからやるべきだということで、今、私ども原子力委員会、また安全委員会は安全委員会でご検討いただいておりますが、行政当局、そういう姿勢で臨んでいこうということで、先般、アメリカの原子力規制委員会にも参りまして、どんなことをやっているかということを、私自身も委員長にお願いして資料もいただいて帰ってまいりました。大変参考になる努力を随分やっているということを感じまして、そうして入手した資料も参考にしながら、この円卓会議からご提言があったテーマでございますので、我々としての一つの方式というものを鋭意検討して答えを出してまいりたい、このように思っております。
以上、簡単ですが。
【岩男】  それでは、これからの議論でございますけれども、一つの中心的なテーマとなりますのは、今、大臣もご指摘になりましたように、本日は初の立地地域での円卓会議の開催ということでございますから、やはり立地地域と、それから消費地域との問題、先ほども遠くならいいけれども、自分の裏庭には嫌なのよというような、そういう非常に率直なご意見もございましたし、あるいは消費地の無関心というような問題をどういうふうにアピールしていったらいいんだろうかというような問題もあったと思います。ですから、一つは立地地域と消費地域をめぐる問題をぜひご議論いただきたいと思いますし、それからまた、情報公開のお話が繰り返し出てまいりますけれども、それでは一体、どういう内容の情報を公開すればいいのか。情報公開というと、大体みんな賛成なんですけれども、より具体的に一体何を求めているんだろうかという、そのあたりももう少し私は議論を深める必要があるように思いますので、その辺もご発言いただければ幸いだと思います。あまり欲張らないほうがよろしいようでございますので、それではまず、そのあたりからどうぞ活発なご意見をいただきたいと思います。それで、くどいようですけど、どうぞご発言の前にお名前をおっしゃっていただきたいと思います。それから、お一人のご発言は3、4分で、できるだけ議論がかみ合って回っていくようにご協力をお願いしたいと思います。  それでは、南さん。よろしくお願いいたします。
【南】  今、先生のご指摘の点だけに絞りたいんですが、ちょっとその辺も含めて、私、電気事業に携わる者としまして、また関西経済連合会で地球環境エネルギー委員会の委員長をいたしておりますので、そういった立場も含めまして感じておることを三つほど言わせていただきたい。
第一点は、これからのエネルギーの基軸は原子力だということでございます。これは、先ほどからの議論にもいろいろ出ておりましたので、もうあえて繰り返しませんで、結論だけを申したいと思うんですけれども、化石燃料の可採年数とか、地球温暖化の問題等を考えますと、これから資源と環境、こういった問題をクリアすることができるかどうか。それが21世紀の社会なり文化、そういったものを花開かせることができるかどうか。それの鍵になっているんではないか。私どもは、現在、まさにその岐路に立っているんじゃないか、そういうふうに私は思っております。資源小国である日本が生き残っていきますためには、化石燃料の需給や価格変動に振り回されないエネルギーの基盤を、原子力を基軸として確立するといったことがどうしても必要である。国際貢献という立場から考えましても、原子燃料リサイクルの確立が技術先進国である日本の責任ではないかというふうに考えております。特に、将来のリサイクルの本格化、そういった時代に備えまして、着実に技術開発を進め、体制を整備していくことは非常に大切なことでございまして、現在、使用済みの燃料を再処理して得られたプルトニウムは、プルサーマルとして軽水炉で利用していきたいというふうに考えております。プルサーマルをやることによりまして、プルトニウムは資源として有効活用できるわけでございます。また、核不拡散上も大変大きな意味を持つということでございます。
第二点は、先生おっしゃいました、原子力に対する社会的信頼と情報の公開でございます。原子力というのは、安全が何よりも優先されなければならない。常に初心に立ち返って、真摯な姿勢で取り組んでいかなければならない、私どもはそういうふうに考えております。ただ、電気事業者としては、そういった技術的安全を社会的信頼と安心感につなげていくために、やはり地道に安全の実績を積み上げていくということと、情報の公開、それから提供といったことに力を入れていきたいというふうに考えております。この情報の公開に当たりましては、まず第一には正確な情報を迅速に提供するということでございますけれども、情報がマスコミ、その他の媒体を通じて国民の皆さん方にわかりやすい形で伝わり、国民の皆様方ご自身が情報を理解し、考えていただける、そういった工夫をすることが大変大切なのではないかなというふうに考えております。そのためには、いわゆる技術的な情報だけではなくて、例えば環境とか資源とか経済、そういった関り、各エネルギーに依存し得る限界やコスト評価、あるいはライフスタイルとの関り、そういった幅広い情報をお伝えして、国民の英知に問いかけていくという姿勢が必要なのではないか。この点、マスコミの方々のご理解をいただくことが不可欠であろうと思っております。
第三点は、地域振興の問題でございますが、原子力施設の所在地につきましては、21世紀のエネルギーの基軸は原子力であるということで、総力を挙げて地域活性化を図っていくということが必要であろうと思います。そして、その基本はまず私ども電気事業に携わる者が地域の一員として生活しておる、この地域から離れないんだという事業者としての基本的な認識、そういったことをもって事業者が地域と一体となって、自ら汗を流していくということで、初めて地域共生の実が上がるんではないかな、かように考えております。それから、地域自身が自らの将来を見詰めて、多様な価値観がございますので、それをまとめて街づくりの計画を具体化していくということ。これにつきまして、国の関係省庁が一丸となって、広域的な、恒久的な、恒常的な地域活性化のための基盤整備、そういったことを支援していただきたいなというふうに考えております。
最後に、大都市に対するお願いでございますけれども、電力生産地の実情にもう少し大都市も心をとめていただいて、その生産地が持っておる、その重みを理解していただきたいというふうに思います。率直に申し上げまして、現在、大都市の原子力立地地点に対する関心は甚だ薄いと言わざるを得ないのではないかと思います。私ども事業者といたしましても、さまざまな広報の努力を続けていきたいと思いますし、関西経済連合会では折に触れて勉強会も実施しておりますし、この敦賀市におきましても、年一回、地球環境エネルギーフォーラムを開催しております。また、北陸経済連合会との交流や消費地の行政、そういった接触を通しまして、原子力立地のコンセンサスの形成に努力していきたい、かように考えておりますので、国におかれましても、引き続きご支援をよろしくお願いしたいと思います。
以上でございます。
【岩男】  それでは、ただいまの南さんのご意見の大半が立地地域と、それから消費地の問題であったように思いますので、情報公開の問題を少し後に置いておきまして、まずとりあえず、この立地地域と消費地の問題を中心に議論をしたいと思います。
【古池】  大飯町長の古池であります。あらかじめお断りをしておきますけれども、健康をちょっと害しておりまして、お聞き苦しい点もあろうかと思いますが、どうかひとつよろしくお願いを申し上げたいと思います。いろいろたくさん申し上げたいことがあるわけですけれども、どうも時間が限られておるようでございますので、十分言い尽くせないかと思いますが、立地から見たところの現行の立地対策について、ひとつ私のほうから日ごろ感じておることを述べさせていただきたいと思います。
まず、その前に安全の問題がいろいろと議論をされておるわけですが、私ははっきり申し上げまして、一つあると思うんですね。それは何かと言うたら、危ないと思ったら即止める。そのマニュアルというものをはっきりしてもらえば、皆さんが心配されておるようなことは、まず起こらない、私はそう思っております。そういうマニュアルをはっきり作成をして、それを国民に広く公開をしていくと、それでもって国民がチェックしていけば、十分安全性は確保できる、私はそのように思っております。
そこで、大飯町の現状を少し申し上げたいと思いますが、ご承知かと思いますけれども、大飯町は昭和44年に1、2号基、そして平成に入りまして3年に3号基、5年に4号基が営業運転を開始して、現在、総出力471万キロワットということで、我が国最大の原子力基地と、こういう自負心を持って取り組んでおるわけであります。誘致当時のことを見てみますと、まさに町は誘致賛成、反対をめぐって1年あまりの間、町民が骨肉相はむような激しい争いを展開をしました。そういうことで、時の町長はその責任を取って辞職をするという非常に不幸な事態が発生をしたわけでございますけれども、その後、町長、議会、そして住民の血のにじむような努力と尽力によって、今日の原子力基地として発展をしてきておる、こういう状況でございます。それは、やはり過去におけるところの著しい過疎化の進行、そして貧弱な財政基盤からの脱却という住民の切なる願いがそういう結果を出したんであろうと、私なりに思っております。
しかし、そうした悲願のもとに原子力基地として発展をし、今、町行政は原子力を誘致したけれど、そういうことの言われないような町にしなければならないということで、一生懸命取り組んでおるわけでございますが、ただ、現実的にはこれはなかなか難しい、こういう気持ちが非常に強うございます。と言いますことは、やはり現行の立地対策というのは、一番我々が熱望をしておりますところの肝心の地域経済に対するインパクトがあまり大きいとは言えない。そういう意味で、我々が当初期待しておったようなものを実現ができておらない、こういう状況であります。
そこで、若狭地域を見てみますと、今、ご承知のとおり、若狭地域には15基の原発があるわけでございますが、皆さんご承知のとおり、原発の償却年数というのは15年であります。たまたま15基と償却年数が一致をするということでありますが、それは理論上は若狭湾で1基ずつ毎年償却をしていくということになるわけです。ということは、1基2,000億とすれば、2,000億ずつ若狭湾で償却をしておる、こういうことでありますけれども、その償却を終えた利益というものは、他のところへ持っていって電源開発のために投資をされていく、こういうことですから、若狭地域は現地でたくさんの電気をつくって都会へ送り込んできておるわけでございますけれども、そのほかにも、今申しましたように、いわゆる再生産のためにも大きく若狭地域というのは貢献をしておる。いわゆる償却を終えた利益というものが、次のところへ再投資をされていくということですから、再生産に対しても大きな貢献をしておる、こういうふうに私は思っております。
そういうふうにはかり知れないほどの貢献をしておるわけでございますし、そしてまた、発電所にも巨額の投資がなされておる。ですけれども、地域経済のバロメーターであるところの製造品の出荷額、あるいはまた観光客の入り込み数においても全く横ばいの域を出ていない。人口にしても、ずっと下降線をたどっておりまして、一向に上向く気配がないと。さらに、地域振興で私どもが一番熱望をしてきておりますところの高速道路、鉄道、そうしたところの経済インフラというものが他の地域に比べて大変おくれが目立っておる。そういうところに、住民の原子力に対する不信というものが私は存在をしておるんじゃないか、このように思っております。
もう私がくどく申し上げるまでもございませんけれども、立地の目的は電力の供給ではないわけでありまして、あくまで地域振興の手段にすぎない、こういうふうに私は認識をいたしております。つまり、国の立場というのは、電力の供給という絶対的な使命というものがあるわけですけれども、いわゆる立地にはそういう絶対的なものがない。何が何でも原子力に頼らなければならないということにはならないわけでありまして、そこが両者に間に根っこのところからチャンネルが違う、こういうふうに私は思っておるわけでありまして、そういう違いから、トラブルが発生をすると直ちにそういう拒絶反応が出る、こういうことではないかなと、このように思っております。
それと、先ほども言いましたように、安全・安心の問題ですけども、安全につきましては、工学的には私は確立されておると思ってはおりますけれども、そこに人為的なミスというものがいろいろなトラブルをつくっておる、こういうことでございますから、さっきも申しましたように、いわゆるコンピュータだけに頼るのではなくして、危ないと感じたら止めるというマニュアルというものをはっきりしてもらえば、やはり原子力の安全性というものは守っていけると、このように思っております。
それと、安心の一つとして、地域の住民が原子力の立地効果というものを肌で感じられるような地域振興策を追求して、原子力と住民の絆というものをしっかり深めていく、こういうことも大事ではないかと、このように思っております。そのためにも、今までのようにいわゆる縦割りで対応するということじゃなくして、各省庁間の横断的な対策というものをぜひひとつ考えていただきたい、このように思います。
それから、もう一つ、バックエンド対策についていろいろと議論のあるところでございますけれども、今当面の問題として使用済燃料の問題がございます。この問題につきましては、「もんじゅ」と密接不可分の関係にあるわけでありまして、それだけに今回の「もんじゅ」の事故というのは各立地にとっては大変深刻な問題である、こういう認識を持っておるわけであります。つまり、この事故によって核燃料サイクルというものが大きく揺れるということになりますと、これは勢い立地、サイト内に使用済燃料が蓄積をされていく、これはもう物理的にそうならざるを得ない。したがって、この問題については私は二律背反の関係にあるんではないか、このようにも思っておるわけであります。そしてまた、長期計画を見ましても、いわゆる使用済燃料は再処理をされるまでの間は発電所内に保管すると、こういうことでうたわれておるわけでありますが、私もたまたま河瀬市長と一緒に全原協の役員をしておりまして、94年、長期計画改定以来、この2年間、ずっとこれに対してはっきりした中・長期的な対策というものを明確にしてくださいということを訴え続けてきたわけでありますが、いまだに具体的な対策について、何ら国のほうからなされておらない、こういうことについては、我々立地として大変納得が行かない非常に残念なことである、このように思っております。
この使用済燃料につきましては、やはり私どもは誘致当時から、燃料が冷却されるまでの間、こういう認識でおったわけでございまして、冷却をされた後々までもそういうものが発電所内に置かれるということは、全く認識外の問題でございます。したがって、立地として現行のままでは、絶対にそのまま発電所内に置くということは到底認めることができないと、ここではっきりと申し上げておきたいと思います。したがって、この問題について、立地として間違っても不本意な判断を示されることのないように、この際、放射性廃棄物の処分を含めて、適切かつ早急に恒久的な対策というものを確立してほしいということを強く求めておきたいと思います。
それから、いろいろと国民的な合意形成の問題も出ておりますけれども、今、いろいろと消費者の間から、立地対策はまるで一種の麻薬のようなものだ、こんな言葉が出たり、ほんとに都市の人たちは、私どもから言いますと垂れ流しのように電気を使いながら、立地に対して大変冷やかな目で見ておる、そういうことについてはほんとに残念な気持ちでおります。こういうような現状では、いかに私ども地域振興のためとは言いましても、国策を信じ、国家の反映を願って協力してきた住民の立場というのは一体どうなるのかと思いますと、ほんとにやり場のない憤りすら感じる、こういうことであります。原子力の選択、原子力エネルギーの選択というのは、いわゆる立地地域だけの問題ではございませんので、その原子力の一つの国民的なコンセンサスに当たっては、私どもに言わせたら、まず消費者が立地の苦しみ、悩みというものを理解するところから始まる、こういう認識であります。
そこで、もう一つつけ加えて申し上げたいと思いますけれども、現状において、国の省庁間の理解すら十分得られていない、そういう状況でありまして、これでは到底、国民的なコンセンサス以前の問題である、こういうような気持ちも持っております。そこで、国民的なコンセンサスというのは、重ねて申しますけれども、都市住民と立地住民の痛み分けの合意であると、こういうふうにはっきりと私は定義づけてほしいと思います。そして、電源開発の困難性について、もっともっと消費者の皆さんが具体的な形でどう理解を示すことができるかということを、わかりやすく体系的に位置づけていくということが大事じゃないかな、このように思うわけであります。そういう国民一人一人がわかりやすい形で、先ほども矢口さん、おっしゃいましたけれども、今、電力料金というものは割り引き制度がありますけれども、これも言いかえれば、消費者の皆さんが負担していただいておるわけですけれども、全く消費者にはわからぬわけですね。ですから、消費者の皆さん方にわかるように、ひとつそういう電力の輸出入に応じたところの、私は相対的料金体系というふうな言い方をしておるわけですけれども、そういうものもぜひひとつ検討してほしい、このように思います。
最後に、原子力の是非ということを、いわゆる住民投票に問う動きというものが一般化されつつありますけれども、立地住民、特に地域のリーダーの血と汗と涙の結晶として原子力があるということを国民全体が理解をし、いま一度、原点に立ち返って、住民投票に対抗し得る立地対策、いわゆる既成概念を超えたところの抜本的な対策を講じなければ、明日の日本のエネルギーはないということを強調して、大変長くなりましたけれども、立地の立場から今日の立地対策の現状について申し上げました。
以上です。
【岩男】  ありがとうございました。実は、古池さんは先ほどご本人もおっしゃいましたように、ちょっと体調を崩されておりますので、場合によっては中座されるということでございましたので、時間を超過しているのは承知の上で、ちょっと長くしてご発言をいただきましたので、どうぞほかの方はぜひ3、4分でお願いをしたいと思います。よろしくお願いをいたします。
【伊原】  使用済燃料の発電所内管理の問題が言及されたわけでございます。核燃料サイクルの確立と密接な関係をこの問題が持っておるというのは、おっしゃるとおりでございまして、現在、我が国では原子力発電所で発生する使用済燃料は再処理をするということが基本方針でありまして、英仏に委託する、あるいは国内でも東海再処理工場に続きまして、六ヶ所再処理工場の建設が進められております。したがいまして、いずれ再処理工場に搬出されるわけであります。しかし、しばらくの間、発電所内でエネルギー資源の備蓄として、安全かつ適切に貯蔵していただく。決して、発電所内に永久に置かれると、こういうことではございません。しかし、現在のところ、使用済燃料の発生量と六ヶ所あるいは東海の再処理工場の能力との間に多少、差がございます。したがいまして、貯蔵量が多少増えていくということがあり得るわけでありますから、中・長期的にこの問題をどういうふうに扱っていくかということにつきまして、原子力発電所立地地域の皆様方、あるいは再処理立地地域の皆様方、関係者の間でしっかりした検討をしなければいけないと思っております。早く答えを出すように期待しているのに、なかなか答えが出ないというお叱りはごもっともでありますけれども、この問題は原子力委員会としても今後しっかり対応させていただきたいと、こう思っております。
【古池】  ずっと置くつもりはないんだというふうにおっしゃっておられるわけですが、いわゆる長期計画を見ますと、発生量と再処理との間に数のアンバランスがあるということを明確にうたっておるわけですね。ですから、我々は当然、そんなものは永久に置かれるという認識でおるわけではないですけれども、先ほども申し上げましたように、立地は燃料が冷却されるまでの間という認識で今日まで来たということなんですから、10年や15年ならいいじゃないですかということでは、立地は大変困ります。ですから、とにかく国の方針というものをきちっと長期計画の中で明確にしてほしいというのが我々の言い分なんですね。このままではアンバランスで、再処理されるまでは発電所内に置きますよという表現では困りますよということを申し上げておるわけです。
【岩男】  それでは、小林さん、高橋さん、河瀬さんからお手が挙がっていると思いますけれども、その前に大臣が一言。
【中川】  最初の使用済燃料の問題は、先ほどのご発言も真摯に受けとめてまいります。実際、言うは易く行うは難しいところがございますけれども、問題点は我々も本当に真剣に受けとめなきゃならない状態でございますので、全力を挙げて長期計画はもとより、今、町長がご指摘のあった、将来、立地地域としてそんな長く受け入れがたいよというご意見も十分踏まえて、ほんとに真剣に努力をいたします。今は、得る状況を全部ご説明する時間はありませんので、省略いたしますが、詳しくは資料も全部お出しますけれども、ほんとに真剣に努力してまいります。
それから、地域振興についていろいろご意見ございましたが、ほんとに縦割りでなく、高速道路や、あるいはまた鉄道の問題も含めてやるべきだと、おっしゃるとおりだと思います。その点も、ほんとに真剣に考えます。
【岩男】  それでは、小林さん、お待たせをいたしました。
【小林】  私、手を挙げはしなかったんですけれども。それでは、ご指名によりまして、司会のさっきの方針がありますので、電力の消費地と生産地、その話からちょっと意見を申し上げたいと思うんですけれども。
先ほど、井上さんという方が賛成でも反対でもないと、遠いところには賛成で近いところには反対であると。まことに言いにくいことをはっきりおっしゃいまして、驚きましたけれども、しかし、これは国民のそういう感覚というのは自然なものであろうとは思います。しかし、自然なものであろうと思いますけれども、それは間違いでありまして、やはり電力の供給地と消費地とは、ある意味では運命共同体のようなものでありまして、実は10年ぐらい前でしたか、北朝鮮へ行きましたときに、北朝鮮で初めて原子力発電所を計画をしているということを関係者に聞きまして、はたして孤立した技術水準の中でできるのであろうか、安全が確保されるんであろうか。もし、そうでなければ、日本海全体が汚染されると、これはちょっと言いにくいことですが、私、個人的に非常に危機感を感じたことがあります。韓国も原発をやっていますから、この原発の問題はある意味で近隣諸国の、ロシアも含めて一つの運命共同体にあるわけでありまして、地域で賛成、反対という、それは私は間違いだろうと思います。
地域においてはいろいろ論議がありますが、正直に申し上げまして、いろんなメリットやベネフィット、いろいろありまして、例えば昭和40年の初めころですか、この敦賀半島はまだ道もなくて、例えば選挙が行われますと投票箱を船で運ぶという、原始は原始でもプリミティブな原始の、陸の孤島という言葉がよく新聞に使われる時代でありまして、それから見れば、原子は原子でもアトミックの原子になりましたけれども、大きな地域社会全体が受益を受けたことは事実だと思います。しかし、それに対するさっきの話のように、大きな不安といいますか、そういったものも起きていますし、またFBRのようにいろんな事故などを起こしますと、それに対する地域住民の不安感というのは高まるばかりですから、なかなかプラスマイナス、言いにくいところがありますが。
具体的には、今、言おうかと思いましたら、大臣がお答えになりましたけれども、やはり科学技術庁とか通産省だけではなくて、ほかの方もおっしゃいましたが、各省庁一丸となってと言いますが、言葉はいいんですが、ほとんど一丸となっていないんですね。例えば、高速道路の問題にしたって、これは原発地帯、地元の要請も非常に強いわけで、知事なんかも非常に力を入れているところですから、まずこれを内閣として、また与党としてコンセンサスを得て、こういうところにという決定といいますか、簡単なことではないと思いますけれども、そういった内閣全体で力を入れていくということが私はもう一つ感じられないんですね。
それから、政府広報なんかも、一般的な原子力広報というよりは、都市住民向けの広報の中で、今日ただいま非常に快適な生活を送っている、この電気はどこから来てるんでしょうかというようなタイトルで、こういうところから来てるんだ、こういうところで原子力発電所で日本の電力の3分の1のシェアを持っているんだという、そういうことも広報してもらいたいなというふうに思います。いろんな交付金とか何とかで、これまでバランスをとってきたような、そういう考え方よりも、やはりこれは食糧でも何でも同じですが、生産地というところが一番苦労しているわけです。そして今、お隣の大飯町長がおっしゃったように、町長の頭の中の8割は原発ですよ。ですから、そういったことを十分に認識してもらいたいなという感じがいたします。
それから、もう一つだけ、もう時間が迫っていますけれども、追加したいのは、先ほどご意見の中にマスコミのセンセーショナルな扱いということが書いてありますね。どういうマスコミがそうかは知りませんけれども、私も地元のマスコミに三十何年おりましたけれども、かつて自分が、また自分の同僚がセンセーショナルに記事を書こうという、そういったのを見たこともありませんし、ほとんど聞いたこともありませんね。最近の若い記者は極めてクールでありまして、そんなセンセーショナルに何をしてということは私はあまりないと思うんですが、メディアとしてはそういう意見は十分にお聞きをしなければいけませんけれども、記者の勉強不足というようなことも、それは確かにありますけれども、社内事情もいろいろありますけれども、知識をどんなふうに蓄積するのか。勉強会も開きますし、また海外への視察も行きますし、最近見ましたら、支局の記者も外国へ行っていろいろ勉強したりしているようですけれども、やはり記者が得る知識というのは、別に大学時代に特別な教育を受けているわけではありませんから、文学部の人もいますし、何学部の人もいろいろいるんですよね。そういうことですから、センセーショナルに事を扱うというようなことについては、私は認識を改めてもらいたい。一部のマスコミは全く否定はできないかと思いますけれども、新聞協会加盟のちゃんとした日刊紙あるいは放送各局においては努力をしておりますので、さらに一生懸命やると思いますので、ひとつお願いをしたいと思います。
【岩男】  ありがとうございました。
それでは、高橋さん、河瀬さん、小木曽さん、大下さんの順番でお願いをしたいと思います。高橋さん、お願いいたします。
【高橋】  それでは、私は立地地域と消費地域の関係についてだけ申し上げたいと思います。基本的には、これから21世紀にかけて、この関係は一言で表するならば、やはり共生の意識が持てるかどうかということになるかと思います。特に、この共生という言葉が出始めましたのは、たしか阪神大震災のころだと思います。あの当時にあれだけの震災があったときに、日本の方はボランティアという名前のもとで助け合いながら、あの地域へ皆さん入られたと思います。そういうような素地というものは、日本人は持っていると思います。基本的には、その素地が一番大事ではないかと思います。我々は、この地域について、この電源地域についてのいろいろな風評とかで被害を受けているのは事実であります。しかし、今後、消費地との関係について前向きに考えるならば、やはり思いやりであり、お互いさまの感覚を持てるかどうか。何も我々はそれで電源をつくってるから感謝をしてほしいとか、それから逆に言うと、だから苦労を分かち合ってくれというわけではなくて、お互いに思いやっていただきたいということが一番大事ではないかというふうに思います。
そのことが、今後のこの問題についての一番のキーになるのではないかと思いますが、我々として、やはりそのことのまず第一歩として、先ほどちょっと私、気になりましたのは、大変申しわけないですが、井上さんがおっしゃった中に、国外にそういった放射能廃棄物を持っていったらどうだという考え方というのは、これはそのままそっくり10年前、これは原子力発電所の問題ではないですけれども、この敦賀市周辺に産業廃棄物を大都市部から持ってくるという問題で大問題になったことがあります。基本的な都市部の考え方の中には、結局、補助金であるとか、お金をある程度、ローカルの地域に落とすことができるなら、それはある意味で言うなら受け入れてもいいだろう、受け入れてくれるだろうという安易な考え方というのが依然あるのではないか。それが、そのまま今度は外国に対して向かえば、当然のことながら、これは国際摩擦に発展しますし、日本人のわがままと言われてもいたし方ないのではないか。それは、もちろん井上さんがそういうつもりでおっしゃったんじゃないとは思いますけれども、基本的なスタンスとして、そういうことというのは誤解を受けるのではないか。やはり、この問題については自己責任をどうきちっとした形でやれるかどうかというのが一番大きな問題ではないかなというふうに考える次第です。
【岩男】  ありがとうございました。
それでは、河瀬さん、お願いいたします。
【河瀬】  立地の地元の長といたしまして一言お願いしたいと存じます。私も二回目になるわけでございまして、第1回目のほうでかなり言わせていただきましたので、それと今ほど大飯町長のほうからも地元の立地という立場でいろんなお話をしていただきましたので、私も簡単にひとつお話をしたいと存ずる次第でございます。
今ほど、うちの敦賀青年会議所理事長のほうからも、思いやりの心ということで非常にいい言葉が出たわけでございます。そのとおりでございます。私どもは、国策として原子力発電所を誘致し、そして、かつては夢のある、そして自信と誇りを持ったすばらしいエネルギーだということを前提に、そのプラス地域振興というのも求めてまいりましたけれども、そういうことがあって非常に誇りに思っていた時代もありました。ところが、時代の流れにより、またいろんな状況の変化もあったと思いますけども、今では非常に肩身の狭い思いをしているのが現状でございます。これは、皆さん方もご承知のとおりだというふうに思います。こういうことで一体いいのかなということが、私ども立地としての非常に苦しんでおることでもございますし、このことを今、強く国のほうに対しまして、いろんな点で求めているところでございます。
そして、この円卓会議というのも、私どもの福井県知事をはじめ、3県知事の提言によりまして、今回10回目という会議を設けておるわけでございますが、その間で現在118名の方が招へいを受けまして、こういう発言をいろいろとされておるわけでございます。言いっ放し、聞きっ放しではたまったものではございません。また、この会は11回もあるというふうに聞いておりますけども、最終的にはもう一度、そういう招へいした方々を一堂に呼んで、そして今まで出たお話の、会議で抽出された問題がたくさんあると思いますけれども、そのことに明確に答えていただくというような会議を将来持てないかということを、まずお聞きをしていきたいと思う次第でございます。
原子力の問題というのは、私どもは全原協という会議も持っておりますけれども、全国にいろんな立地の自治体もございます。また、いろんな条件等も違います。そういう中での先ほどのサイト内の貯蔵の問題をはじめ、プルサーマルの問題もございます。いろんなことがございまして、それを私どもは全原協という立場でまとめながら、また国のほうにもいろいろ要請をしておりますけども、かつてから要請をさせていただいておるいろんな問題もあるんですけども、先ほど話が出ておりましたが、耳のこちらから入ったら、こちらから出ていっておるようなことが感じられます。その間にしっかりとした吸い取り紙でもつけていただきまして、国のほうは私どもの意見を真摯に受けとめていただきたいというのが率直な気持ちでございまして、確かにこの円卓会議も10回目を迎え、そしてそれなりの評価はできるやに思いますけども、その点を改めて強く要望をいたしておきたいと思います。
【岩男】  ありがとうございました。今後のことについては、ただいまのご提言を踏まえて十分にまた検討をさせていただくということになると思います。
それでは、小木曽さん、お願いをいたします。
【小木曽】  廃棄物の処理の問題について、本当に頭が痛いというところが現地の問題でありますけれども、このことについて自己責任を持たなきゃいけないという発言も続いておるわけです。つまり、自分で出したごみは自分で処理するということが原則なんだということを伊原委員長代理もおっしゃっているわけですけども、だけど、この核のごみに関しては、これは発生したところの自治体の責任ではございません。これは国の政策で立地して進めてきた、その結果の状況であるわけです。そもそも、この原発の立地の際に、ごみ問題、当然出てるわけですから、これをどうするのかということに対して国が責任を持って、とにかく現在は指し示すことはできないけれども、科学技術の発展のテンポは非常に早いと。だから、間もなく、少なくとも10年以内ぐらいには処理の方法がきちっと提示できるというふうなことの中で、福井県、福島といった原発地域は設置に協力して今日を迎えているわけです。
だけども、二十数年、もう30年近くなって、廃棄物の処理問題がいまだに、何の具体的なイメージすら出されてこない、そこにいろんないら立ちがあるわけです。国に対する不信、住民の不信もそこにあるんです。自分たちが出したわけじゃないんだけれども、自分たちのふるさとの中に引き入れた原発がはき出してくる、このさまざまな放射能のごみを一体どうするんだということが問題なんです。そして、その中で一番、今、差し迫っているのが使用済燃料でああいう形で古池さんから出されているわけですけれども、自己責任の全うというのは大変重要な問題です。これは、この政策を最初にちゃんと始末しますよ、必ず提示しますよというふうな、そういう甘い約束で原発を推進してきた原子力委員会の、国の責任ではありませんか。その責任を原子力委員会こそが全うしていただかなきゃならないと思うんです。今日、30年近くかけていろいろと努力されてきただろうけれども、イメージすら国民の前に出すことはできない。どれほどの努力をされたのかということも全然見えてないんですよ。言葉の中では、中川長官も今、一生懸命努力とおっしゃってる。けれども、その中身が全然出てこないんです。一体、この原子力予算、科技庁の予算の中で原子力関係にどれだけのウエートが置かれていますか。相当なウエートですよ。その中の一番重要な問題について、その科技庁が使う予算の大半を費やしてもよろしいんじゃないでしょうか。それだけの覚悟がなければ、廃棄物問題の処理はできません、進みません。
伊原委員長代理は、何回かのこの円卓会議の中で、廃棄物処理の問題が確立して原子力は完成するというふうに発言されておりますよね。それならば、廃棄物の処理ができない現状では、原子力は未完の技術であることは明白なんですよ。今、真っ先に手をつけなければならないのは、日々刻々と増え続けている、この廃棄物の処理問題です。これを最優先にしていただかなければなりません。長官、委員長のお考えを示していただきたいと思います。
【中川】  先ほど伊原さんからもお話ございましたが、また小木曽さんがこの使用済燃料問題、廃棄物問題を今の国の原子力政策の柱にしなければならないとおっしゃるお気持ちは、私はもうほんとに同感です。その意味で、これからの予算編成、その他においても、当庁も、また通産省も含めて全力を上げようと思っております。言葉だけで申し上げたのでは、もちろんいけないわけですが、今、小木曽さんから全然、国のイメージが出てこないというお話ですけれども、多少この点のPRというか、PAも非常に不足していると僕は思います。現実に、六ヶ所で再処理工場が建設されておりますし、処理工場、一時受け入れの施設は来年6月から稼働いたします。来年6月からは使用済燃料の受け入れが始まるわけですね。使用済燃料を基本的に再処理するというのが我が国の基本政策でありますが、その再処理工場も2003年には完成するわけです。私もこの前、青森に行ってまいりましたが、そういうことは現実に着々と進んでおります。
だが、それでずっと大丈夫かというと、確かに心配がある。そこで、その埋め合わせをするような、これは2010年ごろに新たな対応策が必要になってくるわけです。つまり、2010年までは再処理工場も稼働しますし、大丈夫だということは見通しがついております。しかし、その先の対応策ということを今、真剣に考えなきゃいけない。
それから、もう一点は、最後に高レベルの廃棄物が残るわけです。それをどうするか。これは、先ほど外国に出せとか宇宙へというお話がありましたが、そんなことは現実にはなかなかできない。そうすると、これは今の技術では最終的に深地層へ処分しなきゃいかん、これは国際的な技術方向です。それをどこへ立地していただけるかという、これがまた大きな立地問題になってまいります。これは、諸外国でも同じような、アメリカでもそうですし、どこでもまだ成功していないことでございますが、そういうことも含めて、今、委員会には懇談会も設け、専門部会も設け、技術的にも社会的にも鋭意検討を始めて、何とかその実施主体も2000年ぐらいにはスタートさせていきたい、このように考えております。そういう点を、私どもももっともっと真剣にお訴えをして、真摯に取り組んでいく、それに全力を挙げていくということをご理解いただけるような姿勢をもっと明確に出していかなきゃいかんと、このように私は考えております。
【岩男】  大下さん、お願いいたします。
【大下】  今、科技庁長官から高レベル廃棄物の安全な処理・処分の技術というのは、世界でも確立していないというふうに言われて、ほんとにぞっといたしました。
【中川】  いや、確立していないんじゃなくて、技術的にはそういう方向で行こうというのが世界の大勢で、そういうことで言っておるんですが、現実に立地問題、例えばアメリカでもユッカマウンテンとか、立地地域を選定してNRCも努力してるんですが、地元住民のご理解をいただけなくて、まだ事業の実施が始まっていないと、こういうことでございます。技術的に確立していないのではない。
【大下】  いや、技術的には確立していないんですね。それは、例えば私どもの知る限りでは、ワイゼツカー博士が議長をしたウェストファーレンやニーダーザクセン州の廃棄物処理会議というものがございまして、そこではっきりと、これは技術的に確立していないと。結局、このことが結果的には原子力政策というものが撤退、つまりこのまま原子力政策を進めていけないんだという最大の根拠になっているわけですね。撤退あるいは停止あるいはトーンダウン、こういうものをしているところの理由は、ほとんどがそれです。そして、ご存じと思いますが、高レベル廃棄物は現に六ヶ所村に運ばれてきております。それは、遠い国の話ではなくて、この日本の青森県の問題であるわけです。
お手元の資料に、そもそも電事連がこれを立地したときのいくつかの計画案がありまして、私、資料Aというところでお出ししておりますけど、再処理施設とともに高レベル一時貯蔵施設というものを言っているわけです。ただし、当時は高レベル貯蔵施設は省いて、ウラン濃縮と低レベル廃棄物の捨て場と再処理施設と、いわゆる三点セットということで言ったわけです。そして、残念ながら、当時の青森県知事はこれをのんだわけなんですが、その後に高レベルというのが実際に物が出てくるわけですから、出てきまして、昨年2月にフランスを出航して運ばれてきているわけです。日本に着いたのはもう少し後ですけど。私、ちょうど2月にアメリカのバークレーで行われました高レベル廃棄物会議に出席しておりましたので、世界各国の反応というのをほんとに身に染みて痛感してまいりました。現に、こういうものが運ばれてきているというのが青森県の実情なんです。
私は一般の方々、お隣にいる方を非難とか、そういうことではなくて、遠くにできるのはいいんだけど、近くにあるのは嫌だというのは正しくはないかもしれないけど、本音だろうと思います。しかし、六ヶ所村の場合は、もうすべてのもの、すべての廃棄物が運ばれてくるという、そういうシステムの中でこのプランが成立しているわけなんですね。そうしますと、現地としては、これは如何ともしがたい。どんなことを言ったって、共生とか、お金を出すからいいじゃないかというものではないんですね。なぜかといいますと、普通の商品とかでしたら、多少傷んでいても安いからいいじゃないかという考え方が成り立つわけですけど、放射能の問題はそうではないわけです。ですから、結局お金をもらえるからいいという問題では断じてないということ。命の問題ですからね。しかも、その人一人、例えば私一人が死んで、あと関係ないということではないわけです。それは、皆さん、よくご存じだと思います、ここにいらっしゃる方は。チェルノブイリもそうですし、広島・長崎もそうですし。
そういう意味では、ただいま現在解決すれば、しのげば、我慢すればいいという問題では絶対にないので、だからこそ、私たちはこういう問題についてもっと抜本的な、根本的な国の政策というものを求めているわけなんです。そういう意味では、原子力という会議だけども、原子力が唯一の方法だというふうに私たちは考えておりません。それは、私だけじゃなくて、世界のエネルギー政策ということを考えれば、皆さんのほうがよくご存じだと思います。エネルギーが必要なのであって、原子力が必要なのではない、原子力だけが必要なのではないということをもう一度、ここで申し上げたいと思います。なぜかというと、これも皆さん、よくご存じのように、原子力発電をすれば必ず廃棄物が出ます。廃棄物なしに発電できないわけですよね。そして、その処理・処分あるいはその解決策というものについて、皆さんは英知であるとか、お金であるとか言います。しかし、お金や英知というものは、間違った目的のために使うべきものではないと思います。正しい目標に向かって、その手段として英知を結集し、それからまた経済力をかけ、そういうものだと思います。ですから、今、間違った方向に向かって、そこに経済力、お金をあげるからいいじゃないかとか、英知を結集してというのはまやかしだというふうに私は思います。
そういう意味で、現地の人間としてはっきり申し上げたい。お金をもらえばいいという問題ではないんです。例えば、今、地域振興のことでも、あの広大な六ヶ所村に道路ができたじゃないかとおっしゃいます。その村の人が歩く必要もないほど大きな、立派な道路を何が通ったと思いますか。高レベル廃棄物が通ったんですよ。高レベル廃棄物が小雨の中をもうもうと湯気を上げて通ったんです。それを村の人たちがみんな見たんですよ。それは地域振興ではありませんよ。それからまた、マンションができました。こういう原子力関係のところで働く人たちのマンションです。村の人たちは、別にマンションが欲しかったわけではない。そして、そういうところで働いてる人のためにバーができました。そういうところに行って、バーで酒を飲みたかったわけではないんですよ。そういうものは、地域振興だと私は思いませんね。村の人たちも思っていません。
現に、今年の8月、村民投票というわけになかなかいかなくて、この高レベル搬入に関しての投票をいたしました。お盆のシーズンですから、都会に働きに出てる人たちも帰ってきたんですね。そういう中で、91.1%という高率で高レベルを拒否してるんですね。もちろん、これは村がやったわけではありませんので、村がやったわけではないという、その理由は、私が提出しました資料の中の、前回出席したと思いますが、現土田村長が最初に立候補したときに政策協定をしております。その政策協定の中で、例えば核燃再処理施設については村民投票をするというようなことを政策協定しておりますけれども、彼は村長になった後、していません。ついでに見ていただくところには、立地条件の劣悪さというものをよく知ってるんですよ。こういうことは、現地に住んでる人間は自分たちの毎日の日常生活に響いてくることですから、よくわかっていますよ。例えば、東京にいて科学技術庁のふかふかしたいすに座って会議をやってるわけじゃなくても、わかりますよ。だから、そういう意味では、例えば外国に廃棄物を押しつけるのはいけないと言うけど、日本の中ならいいんでしょうか。人に迷惑をかけるのはいけないと言うけど、青森県民ならいいんでしょうか。そうじゃないと思います。
だから、どうしてそういうことになるかというと、廃棄物を出さずには稼働できない、たとえ事故がなくても稼働できない方針だけに頼っているエネルギー政策を見直していただきたいと思って、私は今日出席しました。はっきり言いますと、どうせ原子力政策会議なんか出たって、推進の人ばかりいっぱいいて、わーわー言って、しようがないからあんなところ出るなって言われました。しかし、私は何で出たかというと、これが国の政策会議だからです。例えば、県庁にも行くし、村長にも会います。でも、村長は国の政策だから仕方がない、県知事も国の政策だから仕方がないと言うんです。これは国の政策だからこそ、私は国のエネルギー政策をぜひ見直していただく、そのことを発言するために参加いたしました。
【岩男】  ありがとうございました。
それでは、伊原さんと、それから大臣からも一言お話があるようです。
【伊原】  非常にいろんな論点をおっしゃったので、いくつか私のお答えできる範囲で申し上げますが、まず高レベル廃棄物の返還問題につきましては、これはずっと青森県に置かれるということではないという前提のもとに返還廃棄物をお引き受けいただいておる。この問題は、前回にもたしか青森の平野さんでしたか、お話がありまして、それに対して原子力局長のほうからお答えをしております。
それから、いま一つ、地層処分というのが現在、高レベル廃棄物の永久処分方法として国際的に大体、専門家の間では合意が得られておるわけでございます。あるいは、ウェストファーレン会議なんかで別のご見解があったかもしれませんけれども、OECDの原子力機関(NEA)、ここで国際的な集約意見というのが昨年、世界各国の専門家の間で合意されております。簡単に申しますと、地層処分の安全性を評価する手法は既に開発されており、今後は特定の場所の地質環境条件に関する十分な情報を用いることで、地層処分システムの長期的な性能を明らかにすることが可能であると。そのほかにも、世代間あるいは同一世代の中での倫理的な責任問題と、こういうものをよく考えなければいけない、こういうふうな報告が出ておることをご説明させていただきます。
以上です。
【大下】  今のご発言に関してですが、私が提出しております発言メモの三番目、それから資料の二番目、要するに立地条件の悪さというのを土田さんの政策協定の中に挙げております。それから、国が回答していると言いますけれども、非常にあいまいなものです。それで、この三番目に書きましたように、とりあえず何年か、いや20年、30年、もしかしたら50年、こんなことで信用しろというのは無理ですよ。
【岩男】  それでは、大分時間も経過いたしましたので、大臣に一言ご発言いただいて、そして休憩に入りたいと思います。
【中川】  今、大下さん、たくさんのことをおっしゃったので、一遍に私もすべての論点についてお答えできませんが、後ろのほうからまいりますけれども、この円卓会議は賛成派ばかりだからと、こういうご意見でございましたが。
【大下】  そう聞いたんです。
【中川】  私どもはなるべく同数にして、一般公募の皆さん方も、一般公募で全部いただいた方から抽せんで毎回選ばせていただいております。恣意的に賛成派ばかりにしようなどということは一切考えておりません。その点はご理解いただきたいと存じます。
それから、高レベルのことですが、我が国でも今年の5月に準備会等でいろいろな研究をしていただいた基本的な検討事項中間取りまとめというものを新聞でも公表しておりますけれども、出させていただきました。どのぐらいの事業が必要であるか、そしてまた、技術的には、特に地層という点でいろいろな岩質も岩盤もあるでしょうから、そういうものを研究しなきゃいけないとか。いずれにしても、2000年には処分事業の実施主体を設立すべく、今、精力的にやらせていただいております。いずれにしても、使用済燃料が再処理しようと、あるいはしまいと、既にもう3分の1以上の電力エネルギーを原子力に依存してしまって、そして使用済燃料が相当ある。もし、そのままにしていたら、使用済燃料は先ほど言ったように、二律背反の問題になりますが、これを処理・処分していかなければサイトにどんどんたまる一方であるわけであります。
したがって、その部分をガラス固化して地層処分する高レベルの廃棄物の地層処分というのはどうしても必要だし、あるいはまた、そうすることによって使用済燃料も相当小さくなるし、また放射線の減容というか、量を減らすこともできる。環境に対する負荷も低減できる。いずれにしても、そういう点からもやらなければならないことであるわけでございます。
青森の問題で青森に押しつけようとおっしゃいましたが、私もこの前、青森の高レベルの貯蔵施設へ行ってまいりました。現実に外国から返ったものも、今ごらんになっておわかりのとおり、1本半入っておりますね。全体には四十何本ありまして、まだまだ入るところがある。でも、あれは貯蔵施設です。現実に貯蔵していても、ああやってご見学いただけるような技術的な安全性というものは確保しつつやっている。ましてや、地層処分ということになれば、徹底的な技術的な安全を確保してやらなきゃいけない。そういうことは、技術者たちも真剣にやっているわけでございます。そういうことで、これから我々は全力を挙げてまいりたいという点をあえて申し上げておきます。
【岩男】  それでは、お手が挙がっておりますけれども……。
【栗田】  立地地域と消費地域の問題はその後やるんですか。
【岩男】  また、後半の冒頭に少し。もう2時間以上たちましたものですから、この辺でちょっと休憩を入れたほうが皆さんにもよろしいんじゃないかと思います。
【栗田】  やり方を明らかにしてもらわないと、もうその問題をやらないのなら、今、発言します。
【岩男】  それでは、後半のモデレーターにしっかりバトンタッチをいたします。では、ここで15分程度休憩をいただきたいと思います。3時50分にお戻りいただきたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。

(休 憩)


【鳥井】  それでは、後半の部に入りたいと思います。
後半に入りますときに、一つお願いがあるんですが、実は、記録をとっている関係上、傍聴の皆さん、拍手をされたいような気持ちにおなりになることもあると思うんですが、記録をとるときに、聞こえなくなってしまうそうでございまして、ひとつ、ご静粛にお願いをしたいと思います。
後半は、私、鳥井が議事の進行を務めますので、よろしくお願いいたします。前半に引き続き、活発なご議論をいただきたいと思います。
前半、主に立地地域と消費地の関係の議論をしてまいりました。お約束したとおり、そこからもう1回始めたいと思います。栗田さん、お手を挙げていらっしゃいましたので、どうぞお願いいたします。
【栗田】  立地地域と消費地域の問題でございますが、従来の原子力政策の進め方を見てみますと、国民全体のエネルギー確保という、大変重要な、国家的命題であるにもかかわらず、立地地域固有の政治・行政問題にとどまっておりまして、電力消費地を含む、全国レベルでの関心事になっていないというのが現状ではないだろうかと考えます。
25年余の原発の歴史があるわけでございますが、その中にありまして、本県におきましても、本来、国家レベルで対処すべき諸課題について、県が、あるいは市町村が対応を迫られるということで、地域住民や行政担当者が、大変な苦労をしてきているという実態があるということを、まず認識いただきたいと思います。
そして、現に電力を消費している消費地サイドから、あんな危険なものをよくも立地させたものだとか、あるいは福井県の農産物は、放射能に汚染されているといったような、あらぬ誤解を受けるような、あるいは、また、地域イメージがダウンするような、そういう発言も聞かれるわけでございます。せっかく国のエネルギー政策に協力していながら、肩身の狭い思いをしているということは、まことに残念である、このように考えております。
さきの「もんじゅ」の事故の場合にも、中央と地方、また消費地と立地地域の認識の差、あるいは温度差というものが感じられるわけでございます。これが、まさに今日の原子力行政の実態ではないか、このように考えられるわけでございます。
そこで、国がもっと前面に出て、この原子力政策というものを推し進めていかなければならない、このように考えておりますし、また、学校教育におきましても、日本におけるエネルギーの現状、また、エネルギーとしての原子力をどのように考えるべきかといったようなことにつきまして、政府関係機関が一体となって取り組む必要があろう、このように考えております。
また、地域振興につきましては、従来、国の進め方は、運転開始当初の一時期に傾斜して進めているということで、悪い言葉で言いますと、釣った魚にはえさをやらないといったようなところが見受けられるわけでございます。原発立地が、地域の恒久的振興、発展につながっていないというのが実態ではなかろうかと考えております。
また、地域全体としての振興も必要でございます。福井県の場合でいいますと、嶺南地域にございます、基幹的な道路、鉄道、あるいは小浜線がまだ電化されていないといったような、そういう状況。あるいはまた、新規の企業立地といったような意味におきまして、国として積極的な対応をしていただく必要があるのではないか、このように考えるわけでございます。
こういった地域振興を進めるのに、科学技術庁や通産省が、ほかの省にお願いするという立場ではなくて、やはり内閣として原子力政策を進めるのに、地域振興はどうあるべきかということを、国全体、内閣全体、政府全体として考えていただく必要があるわけでございます。そういった体制整備ということも含めまして、地域振興にさらに力を入れていただきたいと思います。
福井県には、15基の原子力発電所が立地しているわけでございますが、現にある原子力発電所と共存する地域の振興策ということに、さらに力を入れていただきたいということでございまして、新規立地の場合、電調審の立地部会におきまして、そういった地域振興のことを取り上げるということも聞いておりますが、現にある15基の原子力発電所を持っている福井県の嶺南地域の振興というものにつきまして、国がさらに積極的に対応していただくように、ぜひお願いをいたしたい、このように考えております。
【鳥井】  ありがとうございました。
南さん、前半の後半にお手をお挙げだったように思いますが。
【南】  先ほど、休憩の前に、ちょっと大下さんがおっしゃいましたことにつきまして、私どもとしてもちょっと一言。
今、先ほど大臣が高レベル廃棄物につきましての処分方法をお話しいただきましたので、大変ありがたかったんですが、第二点としまして、地域振興が安全の対価になっておるというふうな意味に、私はとったのですけれども、私ども、電気事業者といたしましては、低廉な電力を安定的に供給するというのが私どもの責務でございまして、そういった意味で、原子力発電所を立地させていただいておる地域につきましては、やはり消費者のコンセンサスが得られる範囲内で、最大限地域振興に協力していくということは当然のことだろうと思いますし、また、甚だ口幅っとうございますけれども、原子力というのが国策、国のエネルギー政策として行われる以上、国全体のメリットを、やはり一部地元に還元していただきたい。これは定量的に把握することは大変困難かもしれませんけれども、やはり感謝の気持ちと、その一部は、ぜひ地元に還元していただきたい。決して地域振興というのは、金で買おうというものではないということを一つ申し上げたかった。
それからもう一つ、原子力によらないエネルギーがある。原子力に頼らないほうがいいと。実は、私ども、迷っておりますのは、石油、石炭、LNG、すべてCO2を排出するわけでございまして、この地球温暖化のCO2の処理をどうしたらいいのかというのは、世界中、知恵がまだ何も出ておらないわけでございます。これをいかようにしていくか。多分、太陽光によればいいというふうなお話が出ようかと思いますけれども、大変エネルギー密度は低うございますし、効率も悪うございます、利用率も低うございます。ただ、これは非常に貴重な、新しい、すぐれたエネルギーでございますので、分散型の、小型の家をお建てになる場合は、ソーラーをつけていただく、あるいは断熱材を利用した住宅をつけていただくというのは、大変大事なことだと思いますけれども、それをエネルギーの主流に据えるということは、とても量的に、コスト的に限界があるのではないか。
ご承知かもしれませんけれども、非常に密度が低いので、面積的に、ソーラーは原子力の200倍の面積が要ります。原子力100万キロワットを作りますのに、大体50万平方メートルの土地が要りますけれども、同じだけの、100万キロワットの太陽光発電をつくろうと思いますと、それの200倍の土地が要る。仮に坪10万円で計算するとしますと、200倍でございましたら、3兆円になるわけです。そういったことが、土地の面積といった、あるいは機械装置の装置費といった面、これでも5倍とか十数倍とか言われているわけでございまして、我々は何とか技術的にブレークスルーし、将来のエネルギーとして育てていかないといけないと思いますけれども、ここ数十年間は、やはり原子力がどうしても、私はメインになるのではないかということをちょっと。済みません。
【鳥井】  ありがとうございました。
【中川】  先に、栗田知事のご発言について。立地地域と消費地という問題でございますので、お答えをさせていただきます。
まず、立地地域の地域振興について、先ほど古池町長からもお話がございましたが、内閣全体で考える体制をというご意見がございました。先ほどもお答えいたしましたが、まことにそういう部分が大いにあるだろうと思います。私、今日で福井県に来るのが四回目でございますが、道路の問題、あるいは鉄道の問題等、私から建設大臣に閣議の席でお願いをしたり、いろいろ知事がおっしゃったとおり、お願いをするという形で今日まで来ました。しかし、それだけの問題ではないだろうと、本当にそう思うわけでございまして、総理にもお話をいたしまして、そういう体制がつくれるように、これから私なりの、精いっぱいの努力をしてまいりたいと思います。
それから、いろいろな新しい地域振興のための既設立地地域に対する配慮をということでございますが、これも本当に、今までも電力移出県交付金等によって、企業の誘致を都道府県単位で図っていただくとか、あるいはまた、市町村単位に、医療施設や教育文化施設の整備のための努力をしていただく措置等々、取り組んでまいりましたが、本当に電源立地地域が夢と誇りを持てる、そうした郷土になるために、全力をこれから尽くさなければいかん。やっぱり地域が発展したと、目に見えるような形で、思えるような形にしていかなきゃいかん、このように思います。
これは、批判的なお立場の方からすると、そういうことをやること自身、ご批判の対象になるだろうと思いますが、これも円卓会議で出た議論でございますので、私どもは、それに対する答えとしてどういうものがあるか、また、今、各省間で鋭意検討しておりますけれども、いずれにしても、立地地域が長期的に発展するような、そういうものに対してご協力できる、そういう財政面、あるいはまた融資面、いろいろな面での努力を新たに創設したいと、来年度予算に向けて、今、鋭意検討もさせていただいております。
それは、これからまたご相談をしながら進めてまいりたい、このように考えております。決して釣った魚にえさをやらないなんていうことにならないようにいたしたいと思っております。簡単ですが。
【鳥井】  大下さん、先ほどお手をお挙げでしたが、今回の議論で、太陽かどうかというのは、ちょっと対象外ということで、地域と生産地との関係ということで絞って……。
【大下】  私、太陽のことは全然申し上げなかったのですが、南さんがそういうふうにおっしゃったのです。私は、別に太陽発電がいいとか、そういうふうに言ったわけではないので、ただいまの南さんのご発言に対して申し上げます。
よく、原発を批判しますと、じゃあ対案を出せということをそうそうたる専門家がおっしゃるのです。でも、普通の市民にとって、そんなに簡単に対案というのは出ないわけです。当然です。市民が考えて、思いつきでできるぐらいだったら、偉い方々がとっくにやっているわけなんです。だから、その対案を出さなければ、反対あるいは批判ができないというそういう姿勢は改めていただきたいと思います。
そうして、今、私が申し上げたいのは、原子力だけにエネルギー政策を偏らせて、先ほど小木曽さんもおっしゃいましたけれども、それが間違っているんじゃないか。いろいろなことを考えていくべきなんじゃないか。いろいろなことというのは、地域にも条件がありますし、国にも条件があると思います。エネルギーは必要です。だけど、だからそれが即原子力だというのは、先ほども繰り返して言っていますように、原子力発電は、必ず廃棄物が出るのですから、事故がなくても必ず出るのですから、そうすれば、これは必ずどこかに持っていって、捨てるとか、押しつけるとかということを考えていかなければならないので、それが私、先ほど申し上げました、間違ったことに向かって英知とか経済力を使わないで、本来あるべき方に向かって英知や経済力を使っていただきたいということを言ったわけです。
ちなみに、私がさっき挙げましたワイゼツカー案というのは、もちろん皆さんご専門の方々ですから、おわかりと思いますけれども、この方は、エルンスト・ウルリッヒ・フォン・ワイゼツカーという博士です。彼は環境研究所長でありますし、国連開発科学技術センターの所長でありましたし、カッセル大学の学長でありましたし、そういう専門的な分野のことをちゃんとやってきた方が所長を務めていらっしゃるところでの提案なんです。
ですから、例えばこういうことが、皆さん本当に真剣に検討なさっているのだったら、原子力発電を守ろうと、これを死守しようというのではなくて、本当にエネルギーを考えていらっしゃるのだったら、そういうことをちゃんと検討の視野に入れていただきたいということは申し上げております。私が申し上げたのは、そのことでございます。別にCO2が出ないとか、出るとか、それは出るでしょう。そして、どういうふうな問題にもいろいろなマイナス面はあると思います。ただ、総体的にいって、解決できないものをどんどん出し続けて、それをどこかにどんどん押しつけるということは、押しつけられる地域としては絶対に納得ができない。だから、さっきの六ヶ所村の91.1%の人たちの声というのは、むしろ悲鳴ですよ、悲鳴を上げているんですよ。こういうところに来て、皆さんと対等にしゃべるチャンスもないし、そういう意味で、私は申し上げているわけです。
【鳥井】  議論を、生産地と消費地との、神田さん、先にお手をお挙げでした。
【神田】  昨年11月1日に、ちょうどこの場所で、福井県の県民大会というのに、私は招待されまして、福島大学の教授と、若狭研究センターの所長と、三人で討論する機会がありました。そのときに、福島大学の先生が、原子力発電所ではないけれども、地域振興で成功した例として、熊取町というのを取り上げられました。私が、今住んでいますのは熊取町でして、京都大学の研究用の原子炉があるところです。そのときの議論で、ちょっと思い出しましたので、地域振興にご参考になるかもしれませんが、どういうふうなことができたかということをご紹介したいと思います。
というのは、熊取町にあるのは、京都大学の原子炉ですから、国立機関ですので、全く援助とか補助金とかは出せないわけです。したがいまして、熊取町にはお金が払えない、国立機関の研究所であるから。それで、よその原子力施設はすべてお金が入っているのにという、原子力の地域連絡会というのに町長が出かけていって、いろいろ勉強してきて、もっと金を払えと言われるのですが、法律がそれを許さない。それならば、かわりのことをやってくれということで、我々ができたことというのは、例えば大学をあそこに増やすのに努力してくれというので協力するとか、道とか鉄道をとめてくれとか、そんなのはくっついていけばいいのですが、それ以外に、例えばオーストラリアと姉妹都市を結ぶことに努力してくれと言われて、大使館に行ったり、オーストラリアに出かけていきまして、姉妹都市契約をして、毎年、ホームステイの小中学生が2、30人ずつ熊取町に来るようになったとか、そうすると元気が出てくるとか。
それ以外に、今、うちはがん患者の治療をやっているのですけれども、がん患者の治療を年間15人しかやっていないのを、50人ぐらいに増やしてくれということで、ちょうど今月から治療装置ができて、多分来月か再来月から治療が始まるでしょうけれども、15人がん治療をしていたのを、50人に増やせと。それで、熊取町で出た患者は最優先してくれというふうなこととか、そういうところでしかお助けすることというか、お金が出せませんから、知恵を出そうと。
それから、もう一つ条件があって、京大の先生方は、原則として全部熊取町に住んで、熊取小学校、熊取中学校に行けというのがありました。これはかなり決心が要りました。そのころ、熊取なんてすごく田舎ですから、そこに引っ越してきて、なおかつ小学校、中学校を出さなきゃいけないのかという大決心をしたのですが、それでも一応やってみました。
福井県の場合はどうかというのは、そのときの大会に思ったのですけれども、若狭湾エネルギー研究センターとか、そういうところを振興していくというのは、お金で道をつくれ、補償金を出せとか、そういう種類の問題じゃない地域のものがあるんじゃないか。むしろ、今はどちらのほうを地域の人は喜んでいるかというと、そういうことじゃなくて、みんなが努力してくれたことのほうが、結局、市にはよかったんじゃないかというふうに思っているということを……。そのことを、福島大学の先生が紹介されたので、私はびっくりしたんですけれども、あそこまでご存じなんですかということを言ったので、思い出したのです。
もう一度言います。福井県の場合でも、きっとそういうふうなことを振興されることのほうが、住民にとってみれば、誇りに思う福井県というのには、より近づくのではなかろうかという気がしたということです。以上です。
【鳥井】  小木曽さん、今、神田さんのほうからご意見が出まして、ちょっとお待ちいただけますか。先ほど、河瀬さんが、誇れるというご議論があったのですが、今、神田先生のご議論をどんなふうにお感じでしょうか。
【河瀬】  今、先生のほうから、誇れるという言葉が出たわけでございますけれども、私ども発電所を誘致して、最初に言いましたように、当初、夢のエネルギーであるということで、私は、まだその時分は小さかったのですけれども、私どもの先輩方々が、非常に誇りに思って、そして私の記憶ですと、昭和45年の万博の会場に電気を送って、これが原子の火だということで、やはりその当時は、誇れたのが事実だというふうに思います。だから、誇れる地域づくりというのは非常に大切ですし、おそらく巻町の今度の例もございますけれども、やはり世の中から見て、先ほど知事のほうからもお話がありましたけれども、なんしたものを持っておるんだというようなイメージを与えているのが現状でして、そういう面では、とても現状では誇れない。それは、やはり国として責任を持って誇れるもの、じゃあ、誇れるものにするには何かというと、やはり安全が第一だと、私は思います、まず安全。
そして、また、人間がやることですから、多少のトラブル、その他は現実にもございますけれども、あとは国民の皆さん方が、トラブルが起こったときに、どのように見るかということです。非常に危ないものを持って、あんなことを起こしているからそういう目で見られる。それが肩身が狭くなる。ところが、もし認識が深くなって、発電所というのはこれだけの、5重の構造で守っておって、少々のトラブルがあっても放射能は漏れませんよということが皆さんがわかれば、多少のことは人間のすることですから、あってもそういう目では見られないであろうというような面で私は、特に誇れる部分では、安全、そして国民の皆さん方の認識を、国が責任を持ってやってほしい。そのこと自体がなってくれば、もちろんその地域振興においても、私どもも今、若狭湾エネルギー研究センター、仮称でありますけれども、それを進めながら、がんの治療装置とも、これも非常にまた、そういう面ではプラスになっていくとは思いますが、安全、そして国民の一人一人の認識がしっかりしたものがあれば、再度誇れる場所にしたいというふうには思います。
このままでは、敦賀はいろいろな形の発電所を持っておって、何か実験台みたいだとか、それとか「原発銀座」というような言葉もいただきまして、非常に不名誉でありますし、敦賀の近くを通ると危ないと、昔は観光バスは窓を閉め、敦賀から嫁さんはもらうなというようなこと。また、今回の「もんじゅ」の事故等がありますと、魚が危ないから買わないというような、そういう状況だけは、もうとんでもない。全く許せないというような、私の気持ちですし、これは、敦賀市民のほとんどの皆さんが、そういうような認識でありますので、そういうあたりを、国としてしっかりやってくださいということを、また再度強く申し上げたいと思います。
【鳥井】  ありがとうございました。
藤家さんがお手をお挙げだったんですが、今の問題と関連した話でしょうか。じゃあ、短くお願いいたします。
【藤家】  日本の原子力は、すぐれて立地問題であると、私はこの30年ずっと考えてきたところであります。私の福井県とのおつき合いも、もう既に25年を超えておりますけれども、今、河瀬市長が言われたように、立地問題を考える上で、やはり最初は安全が最大の問題だということで、いろいろな形で、私も福井へ参りまして、皆さんとお話し合いを続けた、2、30回では済まないだろうと思っております。その中でだんだんと、嶺南を中心として、原子力を、エネルギー問題以外のとらえ方があるかというようなお話がございました。
アトムポリス構想というものでありまして、私は、立地問題は、まさに地方が原子力を考える時代への移行だと思っておりましたから、こういった地方を中心として、原子力を自らのものとして考える考え方は、大変大事だと思っています。言い方を変えれば、これまで、ともすれば国だとか集団だとかいったものを中心とした原子力から、人間あるいは個人を対象にした原子力へ移り得るのかどうか。これは、まさに原子力をエネルギー問題以外の、総合科学技術としてとらえる目であります。
その一つは、やはり地元が誇れる、それは何度も立地市町村の方々から伺って、私の耳にタコができるぐらい染みついていることでございますが、一つは、やはりその町が誇れるものとして何があるのか。それは、やはり安全を確保しながらも、原子力発電以外の分野、まさに地域コミュニティーを形成する上で、何を原子力に求められるかということであります。
一つは、今、神田さんが言われたようながん治療のような話、これは原子力の持っているもう一つの大きな側面であります。これは、明らかに人類対象から個人対象へ話を移せる非常に立派な方法だと思いましたので、そのアトムポリス構想の実現をご依頼もあってお手伝いし、もう既に10年近い歳月が流れ、平成10年にはスタートすると言われております。これは、まさに地元が発想した、新しい地域としての原子力のとらえ方だろうと思っています。これは、同時に新しい研究分野を要求することにもなっていくと思いますし、あるいはこの場所、福井というのか、嶺南というのか、敦賀というのか、これは英語の発音のしやすい名前をつけていただければいいのですけれども、おそらく知事がずっと考えてこられた、環日本海構想の中にみごとに入り込むような構想に発展していくだろうと思うんです。
私は、やはり原子力は、単にエネルギーではなくて、人類文明を根幹で支えられるものにどうやったら発展できるのか、原子力開発は、もう既に半世紀を過ぎております。また、人類が原子核というパンドラの箱をあけかけてから一世紀が過ぎております。今、そういったことを考えていく時期がきているのだろうと思っております。これは、まさに大きな流れの中で、地域が、あるいは地元が、自らのコミュニティー形成に積極的に参加できる方法だと思っておりますし、これについて、いろいろなアイデアが出てくることを期待したいと思っています。
それから、先ほど地下立地の話がございましたので、少し付加させていただきますと、安全問題は、技術論を超えた世界に入ったと思っております。これを安心という言葉でとらえるか、もっと別の観点からとらえるか、いろいろなとらえ方があるかと思いますが、今まで技術論で肯定的でない話であっても、私はやはり合意形成が得られるなら、もう一度再検討してみる必要があると思って、先ほど地下立地の話もかなり積極的な発言をしたところであります。
【鳥井】  小木曽さんは、先ほどからお手をお挙げで。どうぞ。
【小木曽】  中川長官の先ほどのお答えに、ちょっと引っかかりがあるのですけれども、地域の振興のために新しい制度、交付金の制度をつくったというふうに……。
【中川】  検討です。
【小木曽】  検討中、はい。今日の福井新聞に、「原発新交付金を創設」と、これは通産省のほうですけれども、こういう記事が載っております。これによりますと、新たに、結局、廃炉寸前まで原発の交付金を出していくという制度をつくるということで、通産省が8月の概算要求の中にそれを組み込むという記事になっておるわけです。それで、実は、私はビクッといたしましたのは、今、円卓会議が開かれているわけです。まさに国の原子力政策そのものを、これでいいのか、今までの進め方で本当に国民の合意が得られるのかということに対して、もう一度振り返って、見直さなきゃいけないものは見直そうということで、各界からの意見を聴取されていると思うんですけれども、その中で、前々回、つまり本日と同じようなテーマで開かれた第8回の円卓会議で、地域の問題を議論されております。
その中で、久米三四郎さんのほうから問題提起が指摘されているはずです。つまり、これまでの原子力の立地政策の誤りについて、利益誘導型の立地政策に誤りがあると、こういう進め方ではだめだと。それで、現在の、これまでやってきている電源促進の交付金みたいなものは、むしろやめるべきではないかという提案が出ておるわけです。そういうことが議論されているさなかに、片方で、国のほうが新しい交付金制度を創設して、そしてそれをばらまくという、こういう矛盾したやり方をしているのだったら、一体何のために私たちは議論してきているのだろうかというふうに思うんです。片方で、議論そのものをなし崩すようなことを、国自らがなさっているわけです。
なぜ、私はこう申し上げるかというと、そういう姿勢では、本当の見直しの具体的な提言を含む意見というものがどんどん出てくるような素地を失わせていくことになるからです。実は、こういう会議に最初から出ても意味がないという意見を持つ人は、かなりの数があるんです。だから、そういう人は参加もしてこないし、当然批判します。これでは合意されないんです。私は、原発の地域の交付金の問題ですけれども、福井の場合、受けとめ方はいろいろ、首長の立場とか、住民の立場で全然評価は違うかもしれませんけれども、事実として、さまざまな交付金が二十数年落ちてきました、いろいろな形で、協力金、寄附金も含めて。
それで、地域の振興が、あるいは地域が豊かになって、その地域が発展したかどうかということについては、だれ一人として、河瀬市長も含めて、そういうことを評価されておらないわけです。いや、増設問題が、今、敦賀では3号、4号の増設問題が出てきており、今、中断しておりますけれども、そのときに、増設を要請してきた、陳情してきた敦賀の商工会議所自体が、二十数年、国の政策に協力してきたけれども、見るべき地域の発展はないということを理由にして、3、4号をつくることで、少しこの際、もう少し息を吹き返させてほしいというのが陳情の趣旨なんです。
つまり、地元の経済界ですら、二十数年協力してきたけれども、長期の振興策になっていないのだということを認めざるを得ない状況なんです。これは各自治体、みんなそうです。そういう中で、原発の巨大な交付金制度というものは、むしろそれぞれの自治体の自立する力、創造する力、そういうものを地場産業を中心にして発展させる。そういうような、自らの力をたくましく養って、発展させる。そういうエネルギーをむしろ阻害してきたのではないか。要するに依存しようとする。だからこそ、新たな交付金をつくって、さらに、今までよりももっと金が落ちますよというようなやり方は、逆に長期の地域振興にはつながらないのではないかというふうに、私も考えているんです。だから、こういう制度というのは、本当に地域振興のことをお考えなのだったら、こういう制度で増設の立地を進めようとするような姑息な政策はとるべきではないというふうに私は考えます。
【鳥井】  ありがとうございました。
今のお話、三つぐらいの論点があったような気がします。一つは、円卓会議の進め方ということに絡んだ問題があったような気がします。これは、後でまた時間をとりたいと思います。それから、円卓会議をやっている最中になぜやったんだ、こういう交付金の話を決めたのだというお話がありました。それについては、通産省のほうから簡単に事実関係をお話しいただきたいと思います。
【谷口】  貴重なご指摘ありがとうございます。
きのう、京都新聞等にいろいろ新しい交付金の構想が出ておりますが、これはまだ全く構想段階でございまして、今週あたりから、与党各党の方々と議論を始めたということが、ああいう形でいろいろ出た一つのきっかけかとは思いますが、いずれにしましても、今月いっぱい、与党の方々と議論を詰めた上で、大蔵省の原案に対する原案という形で出されるわけですが、その後また、年内いっぱいかけて議論が行われまして、最終的に政府原案になって出るのが、多分年明けになり、かつ年度末まで国会の審議を経て、最終的に決まるということです。
私どもとしましては、こういう長いスケジュールがいろいろある中で、ここ、円卓会議のご議論もできるだけ配慮、反映しながら最終的にまとめ上げてまいりたいと考えておりまして、ただ、今までの10回の円卓会議を聞いていましても、非常にさまざまご意見がある中で、とりわけ、今議題になっています原子力発電立地の地元における苦労、特に地域の発展との関係で、先ほども栗田知事から、釣った魚にはえさはやらない、地域の恒久的発展につながるような配慮が足らないというご指摘もありましたが、今までも、各市町村の首長あるいは知事の方々から、類似の意見もございましたし、そういったものを踏まえた、今後の、まだ構想という段階ですので、ただいま小木曽さんからもご指摘がありました、自らの発展の力、努力を阻害するような交付金には疑問だというご指摘については、ぜひ、むしろそういった自助努力を助けるような、あるいは役立つような方向で配慮しながらやってまいりたいということでございます。
【鳥井】  長官のほうから何かご発言はありますか。
【中川】  これは、今、審議官もお答えをいたしましたが、どう整理いたしたらわかりやすいか、私も、今、ご意見を伺いながら思ったのですけれども、円卓会議の中にもそれを要望されるお声が強くあることは、小木曽さんも今までお出になられたことがあるので、ご理解いただけると思います。また、全原協、あるいはまた、それぞれ知事会、立地地域からのご要望も正式機関としてあるわけでございます。行政は、それに対して何も知らぬというわけにもいかないわけであります。
そういう中で、検討を始めているということは事実、そのとおりだろうと私は思います。ただ、この円卓会議で今ご議論いただいている、小木曽さんや皆さんのご意見も、これは貴重なご意見でございますから、また、今日そういうご指摘をいただいたことも含めまして持ち帰らせていただいて、こういうご意見もあるんだよということは申し上げてまいります。しかし、私は、一つ誤解があるのは、こういう交付金があるから地域の発展を阻害するというのは、ちょっと言い過ぎなのではないかなと思います。
地域が発展をしていくためには、もちろん自立性、創造性が必要でございます。交付金というのは、ひもがついたお金ではございませんで、一般の公共事業のように、国庫補助が3分の1とか、この事業をやりなさいよとか、各省縦割りの中でやっているのではなくて、一括に地域発展のプログラム立てていただいて、それにお使いをいただけるような形でやっていこうというのが、一番地域の創造性を生かす。事業をやるためには、どうしても資金も必要なわけでございますから、そういう意味の交付金として、さらにこれから……。現実に、もう3割原発があるわけであります、エネルギー依存をしているわけです。そして、そういう中で立地地域がご苦労されていることもあるわけでございます。それに対して、そういうご要望に、もう何年かたったら一切そういうものは打ち切りですよではなくて、それに対しておこたえするというのも、またこれは行政当局や政治として、私は、全部間違っているとは言えないだろうと思います。
そういう意味で、冒頭申しましたとおり、そういうご意見があることも円卓会議のご意見でありますから、持ち帰らせていただきます。
【鳥井】  もしよろしければ、その交付金について少し議論ができたらなというふうに私は思うんですが、古池さん。
【古池】  地域振興について誤解があるようでございますので、ちょっと立地の立場から申し上げておきたいと思いますが、立地は、何もそういう法外なものを生んでおるわけではないわけでして、とにかく我々は、本当に苦労しながら、大都市へ向けて電力の供給という役割を担っておるわけですけれども、電力の供給を受けて豊かな生活をされておる都市の皆さんと、あまり大きな差の出るような生活を、この際ひとつ、少しでも近づけようやないか、近づけてほしいという、素朴な願望から協力させていただいておる。だから、最初から申し上げておりますように、あくまで立地は地域振興の手段である。これははっきり、私は申し上げておきたいと思うわけです。
そういう中で、今、福井県の場合、特に嶺南地域、何が皆さんが不満に思っておられるのかといいますと、さっきも言ったわけですけれども、高速道路にしても、よそより遅れておる。そして、鉄道にしても、よそはどんどん電化が進んでおる中で、いまだにディーゼルが走っておる。そういうところに住民は、これだけの原子力発電所がありながら、なぜそういうものが整備されていかないのだろう。こういう不信感が非常に強いわけです。ですから、さっきも言ったように、もっと省庁間の垣根を取り払ったところの、総合的な振興策を講じてほしい。こういうことでお願いをしておるわけであります。
そこで、これは大変厳しい言い方になるかもわかりませんけれども、これまでの、いわゆる立地対策というものを見てきますと、ちょっとどうかと思いますが、私に言わせると、何か生かさず殺さずで、今日まで来たというような感じがしないではないわけです。漁法でいうならば、一本釣り漁法というんですかね、そういう、例えば、新規立地に対しては、電気料金2分の1にしますよという政策が出てきたりするということについて、一体国はどういう認識でおられるのかなという疑問を持たざるを得ない。新規立地は、もうどんどん、私のところなんかは視察に来るわけです。実際、既存の立地は、原子力を誘致して、どんな町になっておるのかな、それが物差しになっておると思うんです。やはり目の前にえさをぶら下げて、これでどうですかというようなやり方は、この際、ひとつ改めてほしい。このように思います。
それから、いわゆる国民的コンセンサスの問題、国民に原子力というものを正しく理解してもらうことが、一番大事なことでございまして、先ほど河瀬市長が言われたように、それが誇りのある地域につながっていくということにもなると思うんですけれどもね。実は、私の経験したことを申し上げますと、小さいことですけれども、うちの町で、大阪の私立の−−いわゆる中学校から大学までの一貫教育をやっている、学園のセミナーハウスの誘致をしたんです。ところが、これは女子学校ですので、役員はほとんど女の人、会長、副会長だけ男の人で、うちへセミナーハウスの候補地を見にきたわけですけれども、そこで私は、これは奥さん方、二十数人で見えたわけですけれども、原子力の話はあえてしなかったわけですよ。
そこで、バスに乗ってから、その奥さんの中から「原子力は大丈夫だろうか」とこういう話が出て、「じゃ、心配ならば一遍発電所を見に行ってくださいよ」ということで見に行ってもらった。ところが、帰りのバスの中でどういう言葉が出たかといいますと、「見てよかったね」。改めて役員会はやらずに、この場で役員会としては大飯町に立地するということでOKしましょうということで決まったわけです。それで、学園へ行きまして役員さんと話をしたわけですが、そこでも原発の話が話題になりまして、大丈夫だろうかと、大学の先生はたくさんおられましたけれども、そこで理事長が言われた言葉は、今でも私は覚えておるんですが、「とにかく我々が今こういう生活ができるということは、立地の皆さんが本当に一生懸命原子力に取り組んできておるおかげですよ。したがって、原子力の町だから近づかないということは、これは差別につながりますよ」という言葉を使って、学校の理事さん方を説得されたというのを私は覚えておるんですが、これはやっぱり都市と立地と交流をどんどん促進をすることによって、いわゆる原子力というものが理解されていくんじゃないかなと、このように思いますので、参考までにひとつ申し上げておきたいと思います。
えらい長々とすみませんでした。
【鳥井】  ありがとうございました。村田さん。
【村田】  いろいろと立地県、立地地域の問題が出ておりまして、お話はそれはごもっともだと私は思います。数回前のこの円卓会議に、茨城県の東海村須藤村長が出てこられたと承知しておりますが、そのときに須藤さんからもお話があったと思うんですけれども、現在、東海村では原子力施設と村との間の関係というのは、非常に良好にいっております。そのことを村長さんは施設者と村民との間、顔がお互いに見えているからだと、こういう言い方をしておられます。私もそうだと思いますが、私はもう一つ別な理由がそこに厳としてあったと思うんです。
それは何かと言いますと、あそこには日本原子力発電株式会社の東海1号炉、2号炉という発電所が動いておりますが、すぐその隣に、ご存じのとおり日本原子力研究所があります。またすぐその横には、動力炉・核燃料開発事業団の燃料施設がございます。この日本原子力研究所、私もおったものですからその知識で申すのですが、大体、研究者、技術者を集めて1,700名ぐらいおります。動燃事業団の工場関係の人を入れると約2,000名になると思います。こういう方々が、何もなかった東海村に家族もろとも入ってこられて、そして今や40年の歳月がたちました。東海村では、この10月26日には40周年の記念大会を催そう、施設者も村民も、あるいは県の方も一緒になってそのお祝いをしようということで今、準備を進めています。
この発電所だけでなくて、研究機関がそこにあって、しかもそこでは非常に大事な原子炉の安全試験研究を詳細にやっているわけです。この原研の安全試験研究は手前みそみたいでおかしいですが、世界でも最高級のものであります。その一つの証左として、最近ではアメリカのほうから、アメリカの設計した軽水炉の安全試験研究を東海研究所に頼んできているんです。それだけの実績を持っているわけでありますが、そういった研究者、技術者が40年住んでおり、その子供さんたちが東海村の小学校に行き、水戸の高校に上がりということで、そのまた高校を出られた人が原研で働いている。そういう研究機関と原子力施設と、それから村民と、間が非常に密接不可分な関係で今日に発展してきている。 私がここの話としてそれを振り返ってみますと、ここには、先ほども知事さんが申されたように14基の発電所がある。しかし、これに対応した研究施設が十分にあるのだろうかという気がします。いろいろな援助、あるいは受け入れ地域に対する協力という話がありますが、お金だけの問題ではなくて、そういう文化的なものをそこに入れていくということが非常に大きいのだと思うんです。このごろ安全文化ということが盛んに言われますが、原子力の安全に関連した立派な研究機関がそこにあるということは、これは県民、あるいは市町村の方々にも非常に大きな安心感を与えるわけです。先ほどから安全か、安心かというお話がありますけれども、結局そういうところに行き着くのではないでしょうか。
これは私の単なる私案でありますが、例えばどんな研究機関を置くか。先ほど来の話の中に、原子力で解決されていない問題がある。高レベル廃棄物をどうするのか。今、原子力委員会の長期計画によりますと、高レベル廃棄物の分量を減らしたり、それから寿命を減らすための一つの技術開発、これを超ウラン元素の消滅処理と言っておりますが、つまり寿命の非常に長い高レベル廃棄物中の核種を放射線を当てて寿命の短い物質に変えていこうと、こういう技術。こういう技術を今後やっていかないと、先ほど来のお話のように、高レベル廃棄物の貯蔵、あるいは長期廃棄という点において、一体いつまでそれを保管すればいいのかというような疑問が出てきます。そういう点を、一歩でも二歩でも前進させていく、そういうような研究機関をここにお持ちになると非常にいいのではないかと思います。もちろん、今、計画されておりますのは、原研で加速器を使った消滅処理の研究をやっております。
しかし、私は先々は、加速器から具体的な事業として消滅処理をやるということになれば、高速炉が必要になると思うんです。これは、高速増殖炉ではありません。つまり、高速中性子を発生する原子炉であります。高速中性子がありますと、そういう寿命の長い廃棄物も寿命の短いものへ変えていくことが可能なわけです。ただ、その基礎的なデータをとるのにも、やはり加速器なるものが必要と思いますが、そういうものを施設としてここに持って、そういう安全文化を進めていく組織、そういう組織というものをここにつくっていくということが一つの方向ではないかと思います。
【鳥井】  ありがとうございました。河瀬さん、どうぞ。
【河瀬】  手短にいきます。まず、交付金のことですけれども、三法交付金というのはあるんですが、ご承知のように大変制約がございます。私どもも、やはり町づくりをする上にはお金が必要でありまして、ぜひそういう上での地域振興を図っていきたい。そういう点もひとつ考えていただきたいと思います。
それと、村田先生のほうからもお話がございましたけれども、文化的なということで、私は、やはりこれだけ集中している嶺南地域として、特にこの敦賀にそういうエネルギー関係の大学があってもいいんじゃないかというふうに普段思っております。これも申し伝えておきますし、それと先ほど東海村の話もありましたけれども、やはり私どものこの敦賀にも日本原子力発電所、そして動燃事業団の「ふげん」、「もんじゅ」があるわけでありまして、たくさんの皆さん方が働いていらっしゃいます。そして、そういう関係のいろいろな人を入れますと5,000人以上になるわけです。6万7,000人の町に5,000人からの関係の皆さん方が働いていらっしゃるということも、私どもは共存共栄をしていきたいというのが基本でございますし、やはりそういう点でも、先ほどに戻りますけれども、誇りを持てる、自慢のできるというようなところをぜひお願いをしていきたいと思います。
それと、特に今電気というのは、皆さん方一般的にも水と空気と一緒になったんじゃないかなというふうに私も錯覚するときがございます。部屋に入ってスイッチを入れれば電気がつく。差し込みをすれば、洗濯機が回る、何でも回るというような認識の中で、だからそういうことがあるがゆえにかえって、先ほどに戻りますけれども、原子力に対する認識が国民の中に薄くなっているというのも現実ではないかなと思います。その点も加味していただいて、今後の対策をお願いしたいと思います。
【鳥井】  ありがとうございました。大臣のほうから一言。
【中川】  10秒か20秒で済みますが、青森でも、先ほどもご発言がありましたが、今、むつ市に新しい海洋研究所を作りましたり、あるいはまた六ケ所村に地球環境研究所を作りましたり、また新しい研究設備も設けましたり、これ全部地元のご要望にこたえまして、私どもできる限り努力をしようということで、今やらせていただいております。がんの治療、放医研等でも大変な成績を上げておりますが、そういうものも地方展開をこれからしていきたい、福井県でもまたご検討もいただきたいと思います。立地地域にでもご検討いただきたいと思います。特に、この敦賀では、若狭湾エネルギー研究センターがいよいよ今年度着工しまして来年スタートいたします。その中で、今、村田さんご提案のようなそういった研究開発といったようなことに、大いにこの地域産業おこしにもつながるような、そういう展開をしていけるように、これは通産省、科学技術庁両省庁が所管をする公益法人でございますから、そういう面で精いっぱい充実を図ってまいりたい、このように考えております。簡単ですが……。
【鳥井】  ありがとうございます。まだご意見があると思うんですが、この話題はここまでにさせていただいて、もう一つ私のほうといたしまして詰めたいのが、安全と安心の問題でございます。多くの方が安全第一とこういうふうにおっしゃったわけですが、安全て何かといいますと、結構難しい問題でございます。何をもって安全と考えるかというのは大変難しい問題なような気がいたします。せっかく原子力モニターの方、一般公募の方来ていらっしゃるので、安全て何だろうというようなことについて、例えば、いろいろな考え方があると思うんですけれども、外部に放射線が漏れて被害を与えないならば安全だという考え方もあると思います。それから、一方で、原子力施設なんだからどんな故障でもあってはいけないのだ、何も故障を起こさないことが安全だという考え方もあるような気がします。それ以外にもたくさん安全というのは考え方があるわけですが、できましたら井上さんのほうから、どんなことをもって安全と考えるかというようなことをお話をいただいて、それで一般からご参加の方から順序に発言をいただいて、それについて30分もできないかと思いますが、少し議論をしてみたいと思います。
【井上】  安全というのは、私、よう判断しないんです。でも、安心は、やっぱり人間生きていく上で非常に大事なことだと思っているんです。安心というのは、要するに、しいて言えばイコール信頼ではないかという気はしておるんですね。
これは非常に個人的な話を申し上げて悪いのですが、私、最初に書類を出しましたように、数十年前に私は骨肉腫を患いまして、京大へ長いこと入院した経験がございます。そのときに、結果的にはいろいろな治療をいたしましたが、最終的には私の信頼している主治医の先生は放射線治療だろうということの話でありました。確かにそれで私、命は助かったんですが、残念なことにいまだにこの大きいプレートが入っておりまして、8本のボルトがとまったままです。それも骨はつながらないですね。まさに、諸刃の剣といいますか、一つは助けるけれども、一つはだめだったろう。でも、何も恨んでいないんですね。それは、命が助かったからじゃなくて、その先生のおっしゃること、行動を私は信頼しておりましたから、ですから何も、そういうことに関して、いまだに感謝しております。いまだにおつき合いしております。それと同じでありまして、安全とは何かと私に聞かれましても、残念なことに答えをよう出せないんですけれども、いわゆる何かについて信頼があれば安心につながる。その信頼は何かということからすべてが始まるんじゃないかと私個人的には思っております。
【鳥井】  ありがとうございました。それでは、長瀬さんでしょうか、次は。お願いいたします。
【長瀬】  今、おっしゃられたようなことを私も感じますけれども、先ほどちょっと放射能云々ということを言われましたが、やはりこの放射能が例えば外に出るから安全じゃないというふうに受け取るのか、それとも、それを未然に防ぐために何らかの、幾十の防護施設とか何かという話が先ほど出ていましたけれども、その安全を得るための何か装置なり、制御なりをされているというふうに聞いていますけれども、ですから安心感を得るためにちゃんとやっていただいているというのが広くわかれば、安心して原子力を受け入れられていくのではないかなというような気がいたします。あまり回答にはなっていないかもしれないんですけれども。
【鳥井】  ありがとうございました。西川さん、いかがでございましょうか。
【西川】  先ほどどなたかが還元という言葉をお使いになったかと思うんですが、というのは、それは地域振興のために金額で安全と安心をその地域の方に提供するということと受けとめたんですが、それでよろしいんでしょうか。
【鳥井】  地元に還元をするという発言があったわけですね。それについては、危険性を金額であがなっているわけではないというふうに、南さんのほうからご発言があったように思うんです。
【西川】  ということは、還元ということはどういう位置づけになるんでしょうか。意味は。
【鳥井】  一言だけ南さん。
【南】  安全とは関係ございませんで、要するに国益、国のエネルギー政策として、国家全体にとってメリットがあるのならば、その一部は当然地元振興に還元してしかるべきじゃないかと、安全の対価ということではなくと、こう申し上げました。
【西川】  そうすると、安心、安全というのは、国なら国がどういうふうにその地域の人に保証してくれるというか、もちろん原子力発電所が来るということは、和歌山のような原発がないところでしたら、未熟な認識の人では、私の身近にいてる人の意見では、道がよくなるであるとか、何か大きな建物が建つというような考えしかない人が多いんですが、もちろんそれには危険がついてくるわけですよね。それを安心と安全というような、安心感ですよね、それを与えるためにどういうふうに国がしてくれるのかというのが、少し会議に出て、皆さんの意見を聞いて位置づけがよくわからなくなったんですが。
【鳥井】  わかりました。ちょっとお待ちください、一回りしちゃいますので。
矢口さん、お願いいたします。
【矢口】  私も先ほど安全と安心ということに絡んでちょっとお話をさせていただいたんですけれども、技術的な安全というところは当然これはパーフェクトを求めて技術革新、イノベーションをしていった上で技術的な安全というのは確保していく努力は怠ってはいけない。ただ、今求められている安全というのは、そういう技術的な安全プラス見える形での安全というのを担保してもらいたいということだと私は考えております。
例えば、先ほど古池町長がおっしゃっていましたけれども、大飯発電所を実際に見学してもらう。実際に原子力発電所を見た方と、実際にまだ見ていないという方では、おそらく原子力発電所にかかわる印象というのは変わってくると思います。あるいは、施設を見るということだけではなくて、情報、これはマスコミも含めての情報ということなんですけれども、いろいろな原子力をめぐる状況、例えば、この前のチェルノブイリの事故で、日本の原子力発電所の形とロシアの原子力発電所の形は違うんだ、だからそもそも起こらないんだということで説明は受けても、具体的にどこがどう違って、だから起こらないのかというのが、どうもよく見えてこない。そうすると、また本当にそうなんだろうかというところが、また疑念として起こってしまう。そういうような情報であるとか、あるいは、たまたま一つの例としては、地域の公開であるとか、あるいは直接的には安全に関係しないかもしれないけれども、地元の人たちに顔の見えるような原子力の情報公開であるとか、そういう努力が最終的な安全技術プラスという意味での安全に必要なのではないかというふうに思っております。
【鳥井】  ありがとうございました。安井さん、お願いいたします。
【安井】  安全と安心に入る前に、先ほどセンセーショナルということで、ちょっとご意見が出ましたけれども、先ほどもどなたかおっしゃいましたけれども、一般の方の原子力に関する情報源というのは、マスコミ以外にないという話がありました。それと、今日は具体的な事例というのは用意しておりませんけれども、いみじくも先ほどおっしゃいましたけれども、記者の勉強不足があるかもしれないというような逃げの言葉がありましたけれども、マスコミの影響は非常に大きいと思っています。したがって、こんな安易な、勉強不足があるかもしれないとかいうことは、この原子力をとらえる上で、とても考えられない考え方、意見だと思います。こんなことは、後から聞きたいんですけれども、原子力委員会なりそういう分野の方がどのようにお考えを詰められているのか、そういうのをお聞きしたいと思っています。大体がマスコミのチェック体制はどうなっているのか、これをお伺いしたいということがございます。
それから、安全と安心に入ります。安全ということにつきましては、既に述べております。私は安全であると思っています。ただし、経営トップの方針次第で、悪ければ止める、この方針一つだと思います。あとは決められた期間での確実なメンテナンスをきちんとやっていくということだと思います。これをやれば、まず安全と安心は得られると私は思っています。
【鳥井】  ありがとうございました。小林さんでしたね、お手をお挙げいただいたのは。今までのご意見、それから今、安井さんのほうからちょっとあれが出ていましたね。それに簡単にお答えいただいた上で、その安心、安全の問題のお考えをいただきたい。
【小林】  今、主題であります安心と安全について、まずですね。安心というのは、やはり危険度が非常に低い、極めて低い、あるいはその危険度がゼロに近いという、そういう認識でもって安らかに生きることができる、そういう心の安定、スタビリティーといいますか、それだと思いますけれども、結局、安心というのは安全からくるものであって、結局それは逆上れば、技術への信頼というようなことに帰着するのではないかと思います。鳥井さんが病気になって、そして入院して、何を信頼するかというと、その先生を信頼したということですけれども、それは実はその先生の技術力とか、その先生の診断力とか判断力といった、そういったものを実はどこかで評価をして、単なる人柄にほれて信頼するわけではないと思うんですね。どこかで客観的な信頼の評価をしていると思います。したがって、そういうことでは、最終的に私は安心というのは、その源は、やはり技術力への信頼ということになるのではないかと思うんですね。
私、1月11日の若田さんなんかが乗ったスペースシャトルを視察に行きましたけれども、そのときに、若田さんではありませんけれども、直接ではありませんけれども、搭乗員に聞いたところ、やはりそれは我々NASAがつくったスペースシャトルというものは絶対に安全である。爆発したことがありますけれども、そういう困難を越えて安全であるという。それで安心して、日本風に言えば安心して打ち上げられるという受け身の形ですけれども、そういった技術というものが、先ほど大下さんや小木曽さんがおっしゃったように、それがどこまでということになりますと、これは千回のうちに一回か、一万回のうちの一回か、結局ゼロでなければいけないのかという、永久に。その辺は社会的な条件も加わりますから、特に放射能というものも加わりますから、なかなかそれは判断し得ることではないと思います。
マスコミに対しては、私、マスコミの今当事者ではありませんけれども、チェック体制ということですが、それは鳥井さんとか、岩男さんがよくご存じだと思うんですが、そういったチェックということについては、先ほども申し上げましたので略しますけれども、みんな万能ではありませんね。したがって、一生懸命勉強していることは間違いない、マスコミも。そして、全力を挙げて、たまにはそういう自分の主観も多少は入るときはあると思います。すべて客観的にというわけにはいかないときがあります。やっぱりこれまでの状況というものをいろいろ集積して、自分の頭の中で、またいろいろな資料を見るにつけ、その将来のことについては予想することもありますけれども、しかし一人一人の記者が良心的にやっている、これを信じるよりほかには私は手はないと思うんですね。ただ、勉強しなければいけないし、今のような意見は、これは十分に謙虚に受けとめる必要があると思うんですね。マスコミも大きな失敗をしたこともあるし、間違えたことを伝えたこともあると思いますけれども、しかしそのたびに大きな反省をもってマスコミが正確な情報をという、そういうことでは、センセーショナルということについては反論はしましたけれども、しかしマスコミというものが、世界のマスコミの中で比較的まじめ、比較的というとあれですが、まじめにやっていることは間違いないと思います。
先ほど小木曽さんが指摘されたような、つまり交付金制度の新たな創設についての記事が出ているがということになって、それについては構想の段階ということだと思うんですけれども、これははっきり言いますと、日本の明治以来の国家の統治方式というのは、補助金、交付金による、今日も全国自治体がそうなもので、結局それは大蔵省が財布を握っているという構造的な、頭を下げてぺこぺこして、何で同じ官僚が頭を下げなきゃいかんかという、私も東京支社におりまして、大蔵省、国会にも属していましたから、そのことをよく知っているんですけれども、そういった大蔵省中心の、まるで国民の金を自分のお金のように分け与える大蔵省といいますか、今日大蔵省の人がいらっしゃらないと思うので言うわけではありませんが、そういった統治方式というものを明治以来、百何十年続いている統治方式というものを一部改める必要がある。だからこそ最近の金融問題その他が起きてきているわけですから、その辺は国民とともにさらに考えていく必要があろうと思います。
【鳥井】  ありがとうございました。大変申しわけないんですが、ちょっと伊原さん、原子力の安全の考え方について、あまり時間が残っておりませんので簡単にご紹介いただけますか。
【伊原】  原子炉の安全確保の考え方でございますが、まず原子力安全委員会が専らご担当でございますが、原子力委員会として、あるいは私としてはこう理解しております。一般的に事業施設の安全確保は、第一義的には事業者の責任でございます。しかし、原子力の場合には、国の立場から厳しい規制が課せられております。原子炉を設置しようとする事業者は、法律に基づく許可を得ることが必要です。四つの許可の基準があります。
その一つが、「原子炉による災害の防止上、支障がないものであること」となっております。その申請を受けた規制当局は、原子炉の基本設計がこの基準に合致するかどうかを審査いたします。それをさらに原子力安全委員会が、いわゆるダブルチェックをします。これを安全審査と呼んでおります。前に矢口さんが「安全に神話なし、人間は不完全なものである」とおっしゃいましたけれども、そのとおりでございまして、安全審査の前提は、「人は過ち、機械装置は故障し、破損することもあり得る」ということでございます。事故が起きないように万全の努力をいたしますけれども、万一事故が起きても、それが災害に至らないように、多重防護の考え方、すなわち何重にも防護措置をとることによって放射性物質の外部への異常な放出の防止を図っております。これは河瀬市長さんがおっしゃったとおりでございます。
すなわち安全審査では、事故が起きても災害の防止上、支障がない設計になっていると、これを確認するわけです。砕いた言い方をいたしますと、敷地の中で機械装置が壊れるような事故があっても、敷地の外には影響が及ばないとこういうことであります。したがって、安全審査に合格したにもかかわらず事故が起こったことをもって直ちに安全審査に瑕疵が、ミスがあったということにはならない。つまり、事故が起きたが安全は確保された、これは技術的安全でございますけれども、これは他の分野での人類活動においてもあり得ることでありまして、原子力も例外ではございません。
しかし、原子力の安全が直ちに安心につながるかというとそうではないことを、今回痛切に私どもは感じたわけでございます。重要なことは透明性であります。敷地の中で何が起こっているかわからない状態では、周辺の方々が不安を感じるのは当然であります。ですから、発電所の中で何が起こったかについて知っていただく、理解していただくことに全力を挙げて努力しなきゃいけない。それが安心につながる。つまり、徹底した情報公開であると思うわけであります。
また、原子力施設で働く従業員が平素から周辺の方々に信頼されているということも、非常に重要な要素でありまして、井上さんのおっしゃるとおりであります。
また、日本の原子力技術は世界のトップであるということは、諸外国が認めておる事実でありまして、小林さんのおっしゃったように、技術への信頼ということについて、これは世界のトップであるとご理解いただきたいと思います。
栗田知事さんから中央と地方の温度差というご発言もありました。今後、私どもはこうした考え方について、繰り返し地元の皆様方にご説明をする。長瀬さんのおっしゃったように、そういうご説明をすることによってご理解をいただく。そのため、大いに汗をかかなければならないとこう思っております。
【鳥井】  ありがとうございました。大下さん、どうぞ。
【大下】  私どもは、専門家ではありませんので、何か事故とか、何かが起こったときに、そのことについてぎくっとするわけですよ。普段からは知らないわけです。青森県はこれだけの施設がありますから、大なり小なりさまざまな事故があります。例えば、ウラン濃縮だって、もう7回も電源関係の事故があるわけですね。もしかしたら隠しているかもわからないから、もっとあるかもわからない。私たちが知っているだけでも7回。そういうふうになりますと、最初に出てきた情報が正しかった試しがないんですよ。いつも必ず後でどこかからつつかれて、「あれは実はこうだった」「実はこうだった」という繰り返しなんですね。それが一点。
それから、例えば「もんじゅ」のときだって、もんじゅの事故が起こるちょうど一カ月前にもんじゅの裁判がありましたね。これはもんじゅ訴訟団の弁護団の記録から送っていただいてわかったんですが、それに間違いがなければ、科学技術庁の安全技術顧問といわれている斉藤伸三さんという方が、あれに関しては施設で全然心配はない、何かあっても必ずアフターケアができるようになっているということを裁判所の法廷で言っていますね。それで、それが記録に残っています。幸か不幸か、ちょうど丸一カ月たったら事故が起こりましたでしょう。そういうふうなことがあるから、私たち一般の市民は信じられないんですよ。それが、私たちはいつも単に誇大妄想狂で不安を感じているわけじゃなくて、必ず何かマイナスの事象によって、私たちはこういう問題について疑義があり、不安があるんです。
私の出しました資料で、例えば六ケ所村の工場は間もなく完成すると長官は胸を張っておっしゃいましたけれども、その工場から排出される放射能、これは試算によりますと、クリプトン85とか、それからトリチウムは、最初はこれをある程度除去できるという、施設といいますか、そういうものをちゃんとつけて申請しているんですね。ところが実際着工のときはつけない。そういうものをつけないというのをおめおめと、じゃあ、いいですと言った。青森県も青森県だと思いますけれども、つまり最初はつけると言っていながら、つけない。その理由は、技術的に非常に困難だから。冗談じゃないんですよね、そういうこと。そういう現実です。私たちが反対をしている根拠は、すべて現実的な事実からで、単なる不安とか、そういうものからではありません。
【鳥井】  あとお一方。高橋さん。
【高橋】  まず、安全と安心の問題につきまして、大変皆さん、雄弁な方がいらっしゃいますので、お時間が大分迫ったということなんで、簡単に申し上げます。
まず、我々考えますのは、いわゆる安全神話というような、神話と名のつく実態のないことに頼らない、事実を直視した、そして、その存在を認めた上でのパートナーシップを構築することが安心への前提、先ほど井上さんおっしゃっていただいたように、信頼のきずなというのはそこから生まれるのではないかと思います。そのためには、我々がわかる、理解できる情報公開を求めたいということです。過ぐる阪神大震災のときに、これは後でわかったことなんですけれども、私どもは原子力発電所ができるときに一つだけ思っていたことは、原子力発電所ができるぐらいだから地震のない安全な町なんだろうと思っていたら、とんでもなくて、実は大きな断層が幾つかあったということが後でわかりました。そのことは実は39年に最初の1号炉ができるときに原子力関係の方はご存じだった。しかしそれが公開されるされないは別にして、そのあたりのことというのは、我々には全然知らされていなかったということ。こういうことは、逆に言うと、後での信頼関係に大きな揺るぎが出るということがあります。こういうこともありますので、やはりすべてのことはオープンにしていただいて、その俎上の上でいろいろと話していくことが一番大事ではないかと思います。
それと、鳥井先生の前で大変申しわけないんですけれども、私ははっきり申し上げて、これまでの都市と、それから、地元の関係にしてもそうですし、いろんな意味での風評の最大の原因は、私はマスコミだと思います。なぜかと申しますと、一つ言えば、昨今の巻町の住民投票の前に幾つかの報道番組の前提を見ていれば、これは明らかに世論操作と言われてもいたし方ないという部分があったのではないかと思います。また、逆に、一つの事例で事故・事件が発生しますと、一点の視点に対しての報道というものは非常に洪水のごとく流れます。当然我々よくわかりませんから、それを信用してしまいます。ところがそれに対しての、逆に、そうじゃないんだという、例えば、原子力委員会の先生方の報道というものについては、後で、小刻みに、しかし非常にわかりにくい言葉と、非常に難解な言葉を使って、しかも新聞の紙面でいきますと、タイムリーに出ている大きな露出度に比べて、非常に小さく出てきます。これで我々に理解しろと言われてもなかなか難しいです。
ですから、そのあたり、先ほども幾つかの先生方がいろいろと大変専門的なお言葉を出されておりましたけれども、基本的に、途中でやっぱり、私、不勉強な点は申しわけございませんけれども、わかりません。わからなくなるということは、逆に言うなら、住民の方に対してきちっとしたアプローチができていないのではないかという気がします。そのあたりのことを含めて私は思っています。そして一部のマスコミについては、我々はセンセーショナルな報道で被害を受けたことは事実です。例えば、敦賀へ来るときに窓を閉めるという、要するに、大都市部の方で、窓を閉めて敦賀を通過したとか、そういうことを本当にまともに私にお聞きになった方もいらっしゃいます。そういう部分は突き詰めていくと、放射能漏れだとか、放射能だとか、そういうことは露出をどんどんすれば、先ほど都市の方であまり原発のことも何も関心ないし、知らないと言っている方でも、その報道さえ見れば自然にその傾向が出てくる世論操作ではないかという気もします。そういう点から見てやはりマスコミの責任というのは大きいという気がします。以上でございます。
【鳥井】  ありがとうございました。神田さん。申しわけありませんが、短くお願いいたします。
【神田】  安全ということに関して、今までの理科系と言われている人間が、安全であれば安心するのは当然だという考えで社会に挑んできたという技術開発をしてきた。現実には、そうではなくて、安全であれば安心できるということではない。今まで理系社会が科学技術を支配してきたことに限界があったのではないかと思っているのでございます。だから言語も通じないようなことが平気で語られるし、これからは、理系の人がわかっても、一般の人にわかるように説明する言葉の翻訳の問題とか、そういうことに努力していくべきではないかと思っています。
【鳥井】  ありがとうございました。栗田さん、短く……。
【栗田】  安全と安心の問題ですけれども、原子力発電所が一番心配されるのは、放射能が漏れるということでございまして、そこはもちろん安全を確保するということで、きちっと対応していただかなければならないわけですけれども、原子力発電所で、放射能が漏れなければいいんだということではなくて、事故ゼロを目指していただく、そのことが安心に結びつくのではないかと思います。
それから、通報、どんな小さな事故でも通報していただくということが安心感を生むわけでございますので、通報義務を法律上明確にするということも大事であろうと思います。
それから、原子力防災対策ですが、災害対策基本法とは別に特別立法していただくということも何年もかけて要請しておりますが、ぜひこれも実現をしていただきたいと思いますし、それから、廃炉対策ですが、原子力発電所を運転してやがて30年になるわけでございますので、西暦2000年ごろまでには、国の政策として、廃炉をどうするかという政策をぜひ確立していただきたいと、このように考えます。
【鳥井】  ありがとうございました。
まだご意見があると思うんですが、実は、円卓会議今日で10回目でございまして、そろそろ次のステップといいますか、今後の問題を考えなくちゃいけない時期に入っております。後でそのことについてまた申し上げますが、円卓会議もしくは円卓会議みたいなもののあるべき姿について、なんかご意見のある方がありましたら、10分間ぐらいご意見をいただきたいと思います。
【小木曽】  「情報公開」はどうしたんですか。さっきより、ずうっと、後、後というふうに来ているんですけど。
【鳥井】  ああ、ごめんなさい。よわったな。
【小木曽】  岩男さんのときからずっと後回しですよ。
【鳥井】  ごめんなさい。じゃ、お願いいたします。
【小林】  鳥井さん、すみません。5秒間お願いします。私、30何年マスコミにおりましたけれども、世論の誘導というんですか、操作などとは考えたこともありませんし、そんなことは一回もありませんでした。
【鳥井】  ありがとうございました。小木曽さん、情報公開でご発言……。短くお願いします。トータルが決まっておりますので。
【小木曽】  情報公開で、この円卓会議、ずっと回を重ねていく中で、透明でなければいけないということと、それから、情報の質の問題、質が高くなきゃいけないということは大体合意されてきていると思うんですけれども、一般論としてではなく、必要とする情報が出なければ、公開したといっても公開にならないわけですね。だから情報の公開というのは、だけどすべて公開するというわけに、国の立場ではできないはずですから、特に原子力の関係ではプルトニウム関係というのはかなり制約があることは私も承知しております。しかし公開できる領域と、絶対公開できないという非公開の領域と、その辺を一方的に決めるというところが、情報を隠しているというふうな疑念のわくところになるわけです。そこのところ、どういう領域までは許されるのか許されないのかというところの議論はきちっとしないといけない。というのは、そのときの裁量権を握った人の判断で、出していいはずの情報が出されなかったということが現実にずっと起こってきていましたから、田村通産大臣のときから、事故問題でも。どこまでという領域の範囲は、お互いに理解できるようなそういう議論というのは、きちっと、基準は設けるべきではないかと思います。
それから、情報は逐次やっていく中で指示しているという、伊原さんのほうからの説明が前々回かなんかあったと思いますけれども、実は今回の「もんじゅ」の事故について、国もタスクフォース調査をなさって、二回の報告書が出ているわけですけれども、私どもやはりそれを国の調査にお任せするわけにいかないので、専門家グループをつくって、国の調査の検討委員会をつくって調査しております。その報告書は中川長官もお読みになっているはずですけれども、その中で、8月初めに、動燃と、科技庁長官あてに、かくかくしかじかの情報を提出してほしい、公開してほしいと必要な情報の一覧の要請をしております。その理由と根拠もお示ししております。ところが今のところまだ何の音さたもないんですけれども、当然今すぐにでも公開できるような資料の要求も入っているわけですので、一体これどうなっているんでしょう。
【鳥井】  今のお話、お答えいただけますか。
【中川】  先に総論を話します。
円卓会議からも、この円卓会議のあり方の問題、今、鳥井さんが口火を切られた問題とも関連するんですが、既に何回か前の会合を受けまして、小木曽さんも出席なさった後の会合だったと思いますが、いずれにしても政策決定に対する市民参加というものをもっと促進しなきゃいかんというご要望と、お申し入れと、それから情報公開の一層の推進についての申し入れをいただきました。これについて、今日は10回目ですが、まだ円卓会議は続いていくわけですけれども、とりあえずもう一回中央でこの円卓会議をやらせていただいて、その議論を踏まえた上で、その会議が終わるころには、またモデレーターの先生方ともご相談しながら、原子力委員会としての考え方をできるだけ早く、できれば9月中にも出させていただきたい。総論としては、その中で、先ほど申しましたが、諸外国はどういうふうにしているかということも、私自身も調査しておりますけれども、そういうものも踏まえながら、やはり安全というものは市民、国民のものでありますから、そういった、健康だとか、安全だとかに関する情報はいろいろな方法でアクセスできるような形で、基本的には全面的に公開をするということで、それを原則にしながら考えていきたいと思っております。
ただやはり、今言ったように、おわかりの上でのご意見でございましたが、核保障措置、いわゆる核ジャックや内乱に対する防護措置、これは国際的な取り決めもございます。そういう中で、出せないものはあるということはきちんと区別をして、考え方を出して、それをまた円卓会議でもご議論いただくような、そういうような形も考えなきゃいけない。最終決定までにまた皆さんのご意見も伺う。何段階かそういうことをやっていくということが、また政策決定に対する市民参加にもなっていくだろうと、このように考えております。そういう形で臨んでいったらどうかなと私は思っております。
【事務局】  原子炉規制課長の竹山でございます。先ほど、資料の公開要求をしたのに何の音さたもないということでございましたが、ちょっとご説明をさせていただきます。
非常に膨大な資料の公表についての要請がございまして、私どもの方、それから、動燃事業団の方で、それぞれにつきまして、どちらが所有しているものかどうかそれらを詰めております。また、内容的にも公開が可能なものかどうか、ここのところが、詰めておりまして多少時間を要しているところは申しわけございませんが、いずれにしましても、これらを詰めた後、ご報告を申し上げて、公開できるものはばらばらにということではなく、あるところでまとまって公開をしたいと考えております。
【鳥井】  それでは、できれば一つお願いがございます。10分間延長をお許しください。それで、ひとつ円卓会議か、それに類するものの今後のあり方みたいなことで、ご意見がございましたら。先ほど大下さんから……。
【大下】  ここは原子力政策の円卓会議ですので、どうしても、原子力ありきという形で進まざるを得ないと思うんです。いくらモデレーターの方がそうじゃないとおっしゃっても、なかなかそこから外れにくうございます。科学技術庁には、例えば、原子力以外の、エネルギー政策を担当している部署はないのでしょうか。
【中川】  ございますよ、それは。
【大下】  それはどういう部署ですか。
【中川】  例えば、研究開発局とか、振興局とか、科学技術全般の科学技術創造立国推進……。
【大下】  エネルギーに関してです。
【中川】  その中にエネルギーもございます。
【大下】  それでは私、提案をしたいのですが、原子力に限らないエネルギー政策、もっと言えば、言うところのクリーンエネルギー−−原子力をクリーンエネルギーと言うのは間違いだと思います、大変失礼ですが。必ず廃棄物が出るんですからクリーンエネルギーと言うのは間違いだと思いますが、それ以外のエネルギー研究の対策の現状とか、在野でもいろんな方がいらっしゃると思いますので、そういうクリーンエネルギーに対する円卓会議という設定を希望したいと思うんです。
【中川】  それは円卓会議でも何回も議論したんではなかったでしょうか。
【大下】  部分、部分ですね。私も資料をいただいて拝読していますけれども、そのことに集中した、原子力ではない分野のエネルギー政策……
【中川】  発言中申しわけないですが、全体時間がないので。
もちろん通産省もありますし、科学技術庁もございます。科学技術会議もあります。振興調整費もあります。いろんな分野で、サンシャイン計画や、ムーンライト計画とか、いろいろなことで、新エネルギー、光発電、太陽熱発電、あるいは、風力、いろいろな取り組みをいたしております。少々じゃないお金も注ぎ込んでやってきていますし、また補助制度も、一般家庭にも導入するための制度も作り、さらに拡充もしようとしている。それでも、先ほどのお話があったが、現実的に間に合わない。量も足らない。規模も足らない。ある方が出てこられてこの円卓会議でもその議論は私が出ていた会議だけれども2時間以上やりました。どなたか忘れましたが、高齢者の家で、太陽光パネルはとても危険で、持てないと。やはりきれいに表面をふかないと発電効率がどんどん落ちる。砂漠で太陽光パネルをどんどんやっても全然、というようなご発言もあったりして、現実に間に合わない。その分をどうするかというご議論もいただいたはずです。そういう取り組みは総合的に、それで間に合うならそれに越したことはないわけですから、全力を挙げていくということは国の方針です。
【大下】  私が提案しているのは、原子力政策ではなく、原子力に頼らないエネルギー政策というものを……
【中川】  それも視野に入れてご議論いただいているはずです。
【鳥井】  ご提案ですので、またモデレーターの中で検討させていただいて……。
ほかに、今後のあり方について。
【神田】  円卓会議そのものについて、ちょっと大臣とモデレーターの先生方にお願いがあります。あらかじめ今日が最後だというふうに伺って、聞いていたのが、またあるようなうわさも聞きますし、やっぱり、いつまでも円卓会議をやっているということは、みんなに聞こえはいいですけれども、その間、大臣の後ろに座っている方を見られるとわかるように、我が国の最高の幹部は皆来ているわけですね。みんながここにみえているということは、その間、ある意味では行政が足踏みをしているということになる。それによって生じるマイナス点ということも考えて、ある一定のところで、一定の区切りをして、それから、必要な問題についてまた再び始めることは構いませんが、同じ方式で10回やって、11回やってというのは、これだけのメンバーをつかまえていることには、かなり無理があるのではないかというふうな気がします。時間の関係で具体的には申し上げませんけれども。
【鳥井】  それについては後ほど述べさせていただきます。栗田さん。
【栗田】  円卓会議で、それぞれ発言された事項を聞きっぱなしということではなくて、ぜひ今後のエネルギー政策に取り上げていただきたいということは前々から申し上げているわけでございますが、それに関連いたしまして、原子力開発利用長期計画、いわゆる長計の見直しをぜひとも図っていただく必要があるのではないかと思います。ATRの実証炉が中止になっておりますし、今回の「もんじゅ」の事故もございますし、また、新増設の遅延の問題、あるいは、第一の再処理工場建設計画の大幅な変更といったようなこともございますし、そういったようなことを背景といたしまして、ぜひ長期計画の見直しを行っていただきたい。そのためには、専門部会の設置を、まずしていただく必要があるだろうと思いますし、見直しの過程を明らかにしながら作業を進めていただく必要もあるわけでございますし、また、徹底的な情報公開への特別な取り組みもしていただきまして、ぜひ長計の見直しをしていただく必要があると、このように考えております。
【鳥井】  ありがとうございました。一般から今日ご参加なさっている方、いかがでしょう。今日ご出席になりまして……。村田さん、どうぞ。
【村田】  私も円卓会議は今日だけですから、ほかのこれまでの9回はご報告を見せていただいたわけですけれども、もしこれと同じような形式で、今後また何回もやられるというのは、必ずしも得策ではないと思います。何事も初めがあれば終わりがあるわけでして、終わりをどうやってちゃんと終わりをつけるかということも一つの政策です。では、今度9月に11回をやられるとかいう話を聞きますが、それでお止めになるにしても、それだけでというわけにやっぱりいかぬ面があるのも事実だと思います。
私の提案は、原子力委員会は、今後原子力施設を立地している県に順繰りに回っていくわけです。毎月というわけにはいかないかもしれませんが。そしてそこで一日、このような、地域を中心にした会議をおやりになるというのがよろしいんじゃないかと思います。
【鳥井】  ありがとうございました。それでは、そろそろ時間も迫っておりますが、などと言いますと、ちょっと白々しいようですが、閉会を前にモデレーターのほうから、今後の円卓会議の運営についてご報告をしたいと思います。
国民各界各層のご意見を原子力政策に反映することを目指し、今年4月以降開催してきました円卓会議も、今回で10回目を終了することができました。この間大変多忙な方々に参加をしていただき延べ119人の招へい者の方々、一般公募により参加いただいた方のみならず、傍聴いただいた皆さん、大変ありがとうございました。
これまでの議論を若干総括しますと、1から4回までの議論では、原子力をめぐる問題の多様性を反映して、極めて多くの論点が表明され、大方の議論は出尽くしたという感じであります。このことを踏まえ、5回目以降各回テーマを設定して、より深い議論をお願いしてまいりました。しかし時間も限られており、私どもモデレーターといたしましても、項目によってはまだ十分議論がされていないなと感じているところもございます。
具体的に考えますと、エネルギー問題の中での原子力の位置です。先ほど大下さんがおっしゃった話にも関連する話ですが、これもちょっとまだ足りないかなという感じがいたします。
それから、例えば、プルサーマルをどうするか、高速増殖炉をどうするか。高レベル廃棄物をどうするか。こういう話もまだ十分に議論がされていないという感じがいたします。このようなことから、今後の円卓会議については、まずこうした問題について、もう一回だけ議論をしたいと考えております。
来る9月18日水曜日でございます。東京の東條会館で第11回を開催することにしたいと思います。さらに、その後につきましては、今もいろいろご意見があったわけでございまして、このままの円卓会議を継続するのか、また別な形にするのかということも含めて、この種の議論の場のあり方というのを検討したいと思います。
さらに、この議論の整理を通じて、円卓会議として何らかの提言を原子力委員会に行うことがとりもなおさず原子力政策に円卓会議の意見を反映させることにつながっていると考えています。この取りまとめをしたいと考えておりますが、何せ10回にわたってものすごく多くの議論をいただきましたので少しお時間をいただかなくちゃならない。9月下旬から10月を目指してモデレーターとしての提言を取りまとめたいと考えております。
以上、モデレーターといたしまして、今後の運営などのご報告でございます。

閉  会

【鳥井】  それでは、閉会に当たりまして、中川原子力委員長より一言お願いをしたいと思います。
【中川】  本日は長時間にわたりまして、貴重なご意見、あるいはまた、ご議論を賜りまして、本当にありがとうございました。
前回までの議論を、この敦賀で開催しましたこの第10回の円卓会議はさらに一層深めていただいたと。それぞれのお立場からまことに深く掘り下げたご意見をいただいて、また、かみ合ったご議論をいただいたと、このように私は印象を持った次第であります。いろいろ今日いただいた多くのこの貴重なご意見を、これからきちんと政策に反映すべく、モデレーターから賜ります円卓会議のまとめのご意見等もいただきながら、原子力委員会として責任ある答えを出してまいりたい。このように考えております。
同時に、今日は敦賀でやらせていただいたわけでございますけれども、我が国にもしビジョンがあるとすれば、「ビジョンなきところは人々滅ぶ」と言ったのはケネディでございますけれども、やはり科学技術創造立国といった、技術を中心とした新たな21世紀の夢と誇りを持てる国の、日本という我々のこの共同体の未来像であろうと思う次第でございますが、そういう中で、そういった夢と誇りが持てるような展開を、この原子力立地地域においても確保していただくような、そういったことを21世紀を目指していくべきだと私は痛感をしているところでございまして、そういう意味合いで、我々も全力を挙げて取り組んでまいる所存でございます。
まことに今日は、時間を延長してまでご意見をいただいたこと、そしてまた、ご参加いただいたこと、傍聴いただいたこと、ほんとに心から感謝をして私の御礼のごあいさつにかえさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
【鳥井】  つたない司会で、多々発言を抑えましたり、失礼なことがあったと思いますが、お許しいただきたいと思います。
これにて閉会にさせていただきます。ありがとうございました。
−−了−−

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