原子力政策円卓会議(第10回)議事概要
- 日 時
- 8月22日(木) 午後1時30分〜午後5時30分
- 場 所
- プラザ萬象(福井県敦賀市東洋町1−1)
- テーマ
- 「原子力は何をもたらすか?」
- −原子力と社会との関り−
- (1)人間文化・社会と原子力
- (2)原子力の安全確保
- (3)安全と安心
- (4)立地地域と消費地
- (5)原子力に関する教育、広報
- (6)情報公開、政策への反映
- 出席者
- モデレーター
- 岩男 壽美子 慶応義塾大学新聞研究所教授
- (議事進行を担当)
- 佐和 隆光 京都大学経済研究所長
- 鳥井 弘之 日本経済新聞社論説委員
- (議事進行を担当)
- 西野 文雄 埼玉大学大学院政策科学研究科長
- 一般からの参加者
- 井上 尚行 原子力モニター 滋賀県
- 長瀬 克己 一般公募 愛知県
- 西川 かす美 原子力モニター 和歌山県
- 矢口 邦夫 一般公募 東京都
- 安井 深 一般公募 愛知県
- 招へい者
- 大下 由宮子 核燃サイクル阻止一万人訴訟原告団代表
- 小木曽 美和子 原子力発電に反対する福井県民会議事務局長
- 河瀬 一治 敦賀市長
- 神田 啓治 京都大学大学院エネルギー科学研究科教授
- 京都大学原子炉実験所教授
- 栗田 幸雄 福井県知事
- 古池 和廣 大飯町長
- 小林 巌 フリージャーナリスト
- 高橋 一夫 社団法人敦賀青年会議所理事長
- 南 賢兒 社団法人関西経済連合会副会長
- 関西電力株式会社取締役副社長
- 村田 浩 財団法人日本原子力文化振興財団理事長
- 原子力委員
- 中川 秀直 委員長(科学技術庁長官)
- 伊原 義徳 委員長代理
- 田畑 米穂 委員
- 藤家 洋一 委員
- 依田 直 委員
- (敬称略 五十音順)
注)参加予定であった杉本英弥氏(一般公募、福井県)は急病のため欠席。
- 議事概要
注1:文章整理の関係から表現が必ずしも発言通りではない場合がある。
参考別紙:
- 「原子力政策円卓会議開催に当たっての基本的事項」[別紙1]
- 「招へい者の方から提出のあった資料等」[別紙2]
《中川委員長開会挨拶》
- 昨年12月に発生した「もんじゅ」のナトリウム漏えい事故では、地元の皆様には多大なるご心配とご迷惑をおかけしたことを、この場をお借りして、改めて深く心からお詫び申し上げる。
- 原子力政策円卓会議は、「もんじゅ」事故を契機として、原子力に関する国民的な合意の形成に向けた国のより一層の努力を求める多くの声に真摯に答えるために、原子力委員会に設置したもの。
- 本日は第8回に引き続き「原子力と社会との関り」に関する事項をテーマに議論を深めて参りたい。地域社会との関りといった点について、特に地元での開催ということもあり、より実りの多い議論ができるのではないかと期待。
- 今回も、一般公募及び原子力モニターからの出席者5名の参加もいただいている。市民の目から見た率直な意見に大いに期待。
- 本日は敦賀市の皆様の他、福井県及び近隣町村をはじめ、たくさんの方々に傍聴にお越しいただいている。地域での関心の高さを伺い知ることができ、誠にありがたく、また、原子力政策の責任者としてその責任の重さを痛感している。
- これまでの会議でも、「原子力と社会との関り」といった観点からは、人間文化との関りはもとより、安全と安心、広報等の理解活動、地域社会との関り等、多くの議論があった。特に、地域との関りといった点では、立地地域だけの議論ではなくて消費地との関係、一般国民が自らの問題として考えていく問題、立地地域振興の問題等、多くの問題提起があった。
- 原子力と地域との関りは、今一度国民全体で真剣に考えていくべき時期にきていると考える。
《モデレーター冒頭挨拶》
- 本日は「原子力と社会との関りに関する事項」について、議論を行いたい。この問題については、第8回の会議においても議論されたが、本日は、より深い議論を行っていきたい。
- テーマとしては「原子力は何をもたらすか?−原子力と社会との関り−」と設定したが、より具体的には、「人間文化・社会と原子力」、「原子力の安全確保や安全と安心」、「立地地域と消費地」、「原子力に関する教育、広報」、「情報公開、政策への反映」といったものが議論の項目として考えられる。
- 出席者の皆様には、日頃考えている忌憚のない議論をお願いしたい。
《一般公募・原子力モニター参加者からの意見》
□ エネルギー一般
- 2回にわたる石油ショックでは、物が市場からなくなるかもしれないという不安感から、トイレットペーパー騒動が起こり、日本中がパニックになった。再発をさけるため、長期的視野に立ったエネルギー政策に取り組んでほしい。
- 地球環境問題への対応を考えるとエネルギー源として化石燃料に過度に依存すべきではない。貴重な化石燃料は日常生活用品等に振り向け、後世に資源を温存すべき。ウランは発電以外の利用が困難なため、大いに発電用に利用すべき。世界人口増、途上国のエネルギー使用増を考え、我が国のエネルギーシステムはしっかり確立する必要がある。
□ 原子力一般
- 未来の地球を考えたとき、地球環境面からも原子力は大きなメリットである。
- 安全な地下層に大規模な原子力関係総合施設の建設を行い、その上には植林を行うほか、犬の訓練所施設を設ける。また、その周囲には特別区を設け、電力多消費企業を誘致し、安価な電力と土地を提供することを提案する。
- すべての発電にはマイナス面がある。原子力発電からでる高レベル放射性廃棄物の処分は不可能ではない。今後少なくとも50年は原子力が主力電源となる。原子力に携わる人が自信と誇りを持て、若者が原子力にチャレンジしてみようと思えるような原子力政策の議論を戦わせてほしい。
- 原子力発電の推進について、一刻も早く大多数の国民的な合意形成がはかられることを期待する。
□ バックエンド関係
- 高レベル放射性廃棄物の処分に関しては、我が国において処分予定地を選定することは困難と考えられるため、地球外への処分の研究、他国へのお願い、IAEAによる世界共同処分地の決定などについて進めることを提案する。
□ 安全関係
- 安全に関しては専門家でないと判断できない。しかし国民は安心を求めようとしている。
- 心理的な安心が一層得られるように、原子力発電所を地下に作ることを提案する。
- 人が作った物に絶対的に安全、安心なものはない。絶対に安全でないと受け入れられないとなれば、多くのものが受け入れられなくなる。原子力についても、受けるメリットと、請け負うことになるリスクとのバランスを考えて判断すべき。
- 新聞で原発事故を見る度に実際には影響がなくても不安に思う人が多い。これは安全というより安心の問題であり、原子力情報の信頼性に対する不信や漠然とした不安に関するもの。これまでの国や事業者の安全への取り組みに関する不信感も一つの原因であり、その払拭の努力が必要。
- チェルノブイル事故で安全神話は崩れたというが、安全に神話などありえない。自らの不完全さを認識し、事故の発生をおそれる気持ちを持ち続けることが、安全確保の基本である。
- この30年間、国内の商業用原子力発電所では事故はなく、この積み重ねが、時間はかかっても信頼に、そして安心につながる。
- 現状の原子力発電では同一トラブルの再発は聞いたことがなく、再発防止の対応が十分になされている。
- もんじゅは、事故を契機として、よりきめ細かな安全対策についても公表した方がよい。安全は作り上げるものであり、もんじゅは確認試験中にウミを十分に出し切り、信頼性の高いプラントにしてもらいたい。
- 現状の安全評価尺度は放射能のみの評価基準のようだが、「もんじゅ」は化学プラント化してきているため、その面での見直しが肝要。
□ 教育・理解増進関係
- 「安全」だから「安心」の図式が得られれば、原子力発電所には賛成してもらえる。そのために、早い時期から原子力発電所に関する充実した教育を行うことを提案する。
- 原子力に関して周囲の人に確認しても、漠然と危険とは思っているが、「チェルノブイル」はもちろん「もんじゅ」でさえ遠くの話と思っており、これに関する認識も知識も少ない。この理由には学校教育で原子力を取り上げていないことがある。情報公開にも関係するが、今後、何が必要で何をすべきかを教育すべき。
- 原子力については、イメージは知っているが実体はよくわからないという人が多い。この状況で、国民的合意形成ができるのか不安である。
- エネルギー問題、原子力に関する学校教育がほとんど行われておらず、また、教科書の記述にも不正確な表現が多く見られる。
- 国民が得るエネルギー、原子力に関する情報のほとんどが、マスコミのセンセーショナルなニュース等によるところが大きいのは問題。食物や自分自身にも放射能があることすら教育されていないのでは問題。理科、社会科教育の見直しに関する文部省との連携強化が必要。
□ 立地地域と消費地関係
- 原子力発電関係施設が遠くにできるのは賛成だが、近くにできるのは大反対。国民の大半は同じ考えだと考える。
- 原子力発電所の立地地域が持つ有形無形の負担や悩みを消費地の人が理解しているのか。また原子力発電所の立地地域は地域振興、発展といったメリットがあるから受け入れているのではないか。原子力発電所の立地のデメリットばかりが強調され、メリットが表に出てこない。
- 立地によってリスクを被る地域と、利益を享受する地域が別々にあり、その従来の解決方法としては電源三法等による交付金などが挙げられるが、これが有効に機能しているのか。我が家で払っている電力料金に交付金が含まれていて、立地地域に対しなにがしかの形で負担しているということを知らなかった。交付金は用途に制限があったり、住民の従来の生活パターンを乱したりといった問題もある。国民が納得する立地地域と消費地域とのバランスのあり方を検討し直す時期に来ている。
- 危険を立地県に押しつけているといわれるが、消費地には消費地の危険があり、猛毒ガス等と背中あわせの状況にあることを理解してほしい。
□ 情報公開関係
- 正確な情報の公開は必要だが、そのタイミング、内容、範囲についてはコンセンサスを得るための議論を深めることが必要。
- 情報が我々に伝わる際にはマスコミを通すことが多いので、マスコミには公平な情報の伝達をお願いしたい。
- 国民は報道を通して情報を得るが、わかりにくい。例えば「動燃」がどういう組織なのかがわからずに記事を読んでいる人がほとんどである。このことについて納得して帰りたい。
《自由討議》
□ エネルギー、原子力一般
┌─────────────────────────────────┐
│ 化石燃料による地球温暖化、新エネルギー技術の現状も踏まえ、資源小│
│国の我が国としては、原子力を基軸エネルギーとするべきとの意見が出さ│
│れたことに関連して、処分方法が解決されていない放射性廃棄物を作り出│
│すエネルギー政策は間違っているとの意見が出された。 │
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- 資源小国である日本が今後生き残っていくためには、化石燃料の需給や価格変動に振り回されない原子力が基軸エネルギーとなるべき。
- エネルギーは必要だが、原子力が必要なのではない。そういう意味で放射性廃棄物を出さなければ稼働できない原子力に頼るエネルギー政策自体を見直すべき。
- 石油などは、地球温暖化の原因となるCO2を出すが、それをどうするかは、世界中でいい知恵がない状況。太陽光は、CO2を出さないエネルギーであるが、密度が低く効率も悪い。ただし、非常に優れたエネルギーであり、分散型としてやっていくのは大切であると考えるが、主流に据えるには無理がある。
- 同じ電力規模の施設を作るのに、太陽光は原子力の200倍の土地が必要。また、機械装置も現状、5倍から十数倍のコストがかかるといわれている。太陽光も技術的にブレイク・スルーし、将来のエネルギーとして育てて行かねばならないと思うが、この数十年は原子力に頼らざるを得ない。
- 原子力発電を批判するとよく「対案を出せ」と言われるが、普通の市民がそんな簡単に対案を出すことは困難。市民が考えてすぐできることは、偉い人がとっくにやっているはずである。そうした意味では「対案を出さなければ批判できない」という姿勢は改めてほしい。
- 原子力だけにエネルギー政策を偏らせていることが間違っている。様々なことを考えていくべきではないか。原子力発電は必ず廃棄物が発生し、それをどこかに持っていって捨てなければいけないものであるということを考えるべき。間違った方向に向かって英知や経済力を使うのではなく、本来あるべき方向に使ってほしい。
- 解決できないものをどんどん作って、それを押しつけられるのでは、押しつけられる地域は納得できない。
□ 核燃料リサイクル関連
┌─────────────────────────────────┐
│ 核燃料リサイクルの確立は重要であり、その本格化に備えプルサーマル│
│を実施していくことが重要との意見が出された。 │
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- 核燃料リサイクルの確立は技術先進国である日本の責務。将来の核燃料リサイクルの本格化に備え、技術開発を進め、体制を整備していくことが重要であり、現在使用済燃料を再処理して得られたプルトニウムは、プルサーマルとして軽水炉で燃焼させていくことが資源の有効利用、核不拡散の観点からも重要。
┌─────────────────────────────────┐
│ 使用済燃料の問題について、サイト内貯蔵は冷却されるまでの間との認│
│識であり、国は適切かつ早急に対策を確立してもらいたいとの意見に関連│
│して、原子力委員長より、真摯に受け止め真剣に努力していくとの意見が│
│表明された。 │
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- 核燃料リサイクル政策が大きく崩れると、使用済燃料がサイト内に蓄積されていく。そういう意味で、使用済燃料の問題はもんじゅ事故と密接不可分。
- 使用済燃料については中長期的対策を要望していたところであるが、未だ示されていないことは残念。そもそも使用済燃料のサイト内貯蔵は冷却されるまでの間と認識。適切かつ早急に恒久的対策を確立して欲しい。
- 使用済燃料は再処理を行うことを基本としており、いずれは再処理工場に搬出する。永久に原子力発電所に貯蔵するわけではない。しかし現在のところ、使用済燃料の発生量と、六ヶ所、東海の再処理工場の能力との間に多少差があるため、貯蔵量が多少増えていくということがあり得る。中長期的にこの問題をどのように扱っていくのか、立地地域の人々、関係者の間でしっかり検討すべき。原子力委員会としてもしっかり対応したい。
- 使用済燃料の貯蔵は燃料が冷却されるまでの間と認識。10年や15年ならいいではないかということでは困る。国の方針を長期計画の中で明確にしてほしい。
- 使用済燃料貯蔵の問題、発言を真摯に受け止め、真剣に努力していく。
□ バックエンド対策
┌─────────────────────────────────┐
│ 高レベル放射性廃棄物の処分に関しては地球外の処分、他国へのお願い│
│も考えてはどうかという意見に関連して、 │
│・p棄物の処分は自国ですることが基本であり、自国でできないから他国│
│ にお願いするのは国際的な問題になりかねない。 │
│・宇宙での処分は、打ち上げのリスクを考えるとどの国の人にも賛成して│
│ もらえない。 │
│との見解が示された。 │
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- 外国に廃棄物の処分を依頼する提案については、世界的に自国において処分することが原則となっており、各国での永久処分の技術の確立が必要。
- 地球外での処分については、打ち上げのリスクがあり、どの国の人にも賛成してもらえないと考える。
- IAEAにおいて、共同処分に関する話し合いをすることについては、長期的には意味があると考える。
- 廃棄物問題は重要であり、原子力では当初からきちんと処理することでスタートしている。放射能を含むなど質的には異なるものの、量の観点からは、産業廃棄物と比べて高レベル放射性廃棄物は100万分の1、低レベル放射性廃棄物も5万分の1であり、処理はしやすい。廃棄物は、貴重な成分を含んでおり、消滅処理、群分離などの技術開発により利用が可能となる。
- 海外では、放射性廃棄物の受け入れをビジネスとして検討していた国もある。ただ、自国でできないことを他国にというのは、対外的に通りにくい話で、話は進んでいないと理解している。
- 「国外に廃棄物をもって行ったら」という意見も聞くが、お金を渡せば受け入れてくれるだろうという安易な考えが見られる。国際摩擦の原因となったり、日本人のわがままと言われかねない。
┌─────────────────────────────────┐
│ 原発からの廃棄物は国が責任を持って処分方法を確立するべき。30年│
│近く努力はしてきても、イメージすら示されていないし、どのくらい努力│
│しているかも示されないとの意見に関連し、原子力委員長より、 │
│・国としても全力を挙げて対応する。 │
│・努力している姿勢についても、もっと明確にご理解いただくような努力│
│ も必要。 │
│との意見が表明された。 │
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- 廃棄物は出した本人が自己責任をもつべきとの意見があったが、放射性廃棄物については立地自治体に責任があるわけではない。そもそも、立地の際には、国が責任を持って間もなく処分方法は提示できるとのことで福井県や福島県は設置に協力した。しかし、立地から30年近く経つが、未だイメージすら見えてこない。そこに国に対する住民の不信もある。
- 放射性廃棄物対策が、今すぐできるとは思っていない。しかし、30年近く努力されてきてイメージすら国民に出すことができないし、また、言葉では努力していると言うが、どれだけ努力しているかについても見えない。
- 科学技術庁予算の大半を放射性廃棄物対策にあててもいいのではないか。放射性廃棄物処理処分まで含めて原子力が完成するとのことだが、つまり原子力は未完の技術ということである。放射性廃棄物の処理処分を最優先の課題とすべき。
- 放射性廃棄物対策については、予算編成その他において科学技術庁、また通産省を含めて全力を挙げる所存。
- 放射性廃棄物処理処分問題について努力の中身が見えないとの意見があったが、この点のPAが不足していると認識している。再処理工場の建設状況や高レベル放射性廃棄物処理処分の検討状況、それに対して努力している姿勢をもっと明確にご理解いただけるような努力が必要。
┌─────────────────────────────────┐
│ 高レベル放射性廃棄物の地層処分は、技術的に確立しておらずそのよう│
│なものを青森県に押しつけるのは問題との意見に関連して、原子力委員よ│
│り、 │
│・高レベル放射性廃棄物の永久処分として、専門家の間では地層処分が国│
│ 際的に合意が得られている。 │
│・青森県に貯蔵している返還廃棄物は永久に置かれるものではない。 │
│との意見が出された。 │
│ また原子力委員長より、既に使用済燃料が存在することも踏まえ、全力│
│を挙げてやらなければならないとの見解が表明された。 │
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- ウェストファーレン州の廃棄物処理に関する会議によれば、高レベル放射性廃棄物の地層処分は技術的に確立していない。これが原子力から撤退する最大の根拠になっている。六ケ所村には実際に全ての放射性廃棄物が運ばれる。これは命の問題であり、お金がもらえればいいというものではない。外国に廃棄物を押しつけるのはいけないと言いながら、日本の中で青森に押しつけるのはいいのか。
- 核燃料サイクル施設の建設により広い道路ができ、高レベル放射性廃棄物が運ばれて通った。関連施設で働く人々のためのマンション、バーなどが作られた。しかし村民はそのようなものができることを望んだわけではない。これでは地域振興とは言えないし、村民もそう思っていない。現に村民投票とまではいかないが、高レベル放射性廃棄物搬入に対して自主的な投票をしたところ91パーセントもの村民が反対としている。
- 返還高レベル放射性廃棄物は永久に青森に置かれるということではないという前提で、引き受けていただいている。
- 高レベル放射性廃棄物の永久処分方法として、専門家の間では地層処分が国際的に合意が得られている。
- 国が(返還廃棄物を永久には置かないと言うことを)回答していると言うが、曖昧でとても信用できない。
- 高レベル放射性廃棄物の地層処分は、現実に既に使用済燃料が存在することからも、技術的安全を確保しつつ、是非とも全力を挙げてやらなければならない。
□ 立地地域と消費地
┌─────────────────────────────────┐
│ 立地地域が誇りを持てるように、国は消費地に立地地域の痛み、国のエ│
│ネルギー政策、原子力政策について理解させる努力をするとともに、恒久│
│的、かつ地元の本当に役に立つ地域振興策を、全省庁一丸となって実施す│
│ることをお願いしたいとの意見が示された。 │
│ これに関連して、原子力委員長からは、立地地域が夢と誇りを持てるよ│
│う全力を尽くしていくとの見解が示された。 │
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- 地域自身が多様な価値観をまとめ町作りの計画を具体化するべき。国は広域的、恒久的、恒常的な地域活性化のための基盤整備を支援するべき。
- 大都市住民は電力生産地の思いをよく理解するべき。
- 誘致当時には骨肉相食むような激しい争いがあった。しかし町長、議会、住民の血のにじむような努力により発展してきた。
- 原子力発電所を誘致したが、地域経済へのインパクトは当初の期待を実現するものではない。また人口、観光客の入れ込み数についてもいっこうに効果が見えない。この辺りに原子力に対する不信の原因がある。高速道路、鉄道等の経済インフラが他の地域に比べて遅れている。立地目的は地域振興であり、電力供給ではない。
- 国民的コンセンサス形成にあたっては、まず電力消費者が立地地域の悩み、痛みを理解することから始めるべき。国策に協力してきた地域としてはやり場のない怒りを感じる。この問題は立地地域住民と都市地域住民との間の「痛み分け」の合意であると定義づけるべき。
- 電力移出入に応じた相対的電力料金体系の検討を望む。
- 自分に遠いところに立地する場合は賛成で、近いところの場合は反対という意見は国民の感覚として自然とは思うが、実は間違いであって、電力消費地と生産地は運命共同体である。
- 昭和40年代初め、敦賀では道もなく、投票用紙を船で運んでいたが、原子力発電所の立地により、地域社会が大きな利益を受けたことは事実。しかしながら地域住民は不安感をもっておりプラスマイナスは言い難い。
- 高速道路の建設などに当たって、各省庁は一丸となっておらず、内閣全体で力を入れているとは感じられない。政府広報も一般的広報でなく、都市住民向け広報である。もっと電力の3分の1は原子力立地地域から来ているといったことを訴えるべき。
- 立地地域と消費地域の問題については、共生の意識をもつことが重要。阪神大震災のときのボランティア活動に見られるように思いやりの気持ちが重要。
- かつては原子力に夢をもっていたこともあり、誇りがあった。しかし今では肩身の狭い思いをしている。
- 立地地域より様々な要請を行っているが、耳から耳へと抜けている感じがする。真剣に受け止めていただきたい。
- 従来の原子力政策の進め方を見ると、国民全体のエネルギー確保という大変重要な国家的命題であるにも拘わらず、立地地域固有の政治・行政問題に留まっており、全国レベルの関心事になっていないのが現状である。
- 福井県では原子力発電は、25年余の歴史があるが、本来、国家レベルで対応すべき諸課題に対し、県、市町村が対応を迫られ、苦労している実態があることを認識してほしい。
- 消費地サイドからは、「危険なものをよく立地させたものだ」「福井県の農林水産物は放射能に汚染されている」といったあらぬ誤解を受けるような発言があり、せっかく国のエネルギー政策に協力してきたのに、肩身の狭い思いをしているのは残念である。
- 「もんじゅ」の事故の場合も、中央と地方、立地地域と消費地の温度差を感じたが、これが今日の原子力政策の実態。国は、こうした実態に対し、もっと前面に出て原子力政策を推し進めるべきであり、学校教育でも政府関係機関が一体となって取り組むべき。
- 国のこれまでの地域振興への取り組みは、運転当初の一時期に傾斜した形で進められている。立地地域の恒久的な発展、振興につながっていない。新規立地だけでなく、現存するものの振興にも積極的に対応してほしい。
- 地域全体としての振興も必要。福井県嶺南地方は、原子力を立地しても高速道路、鉄道等が整備されていない。こうしたことを進める際には、内閣として地域振興はどうあるべきかを考えていく必要があり、そうした体制整備をお願いしたい。
- 電気事業者としては、低廉な電力を安定的に供給することが責務。そうした点から見て、立地させていただいている地域には、消費地のコンセンサスが得られる範囲で、最大限地域振興に協力していくことが当然と考えている。また、原子力を国策としてやっている以上、国としてメリットを得ているのであるから、国には感謝の気持ちとして、その一部を地元に還元してほしい。地域振興は金で買うと言ったものではない。
- 地域振興について、内閣全体で考える体制と言う意見があった。これまでも道路、鉄道の問題について、建設大臣に閣議の席でお願いしたりはしてきているが、しかし、それだけの問題ではなくなってきている。私なりに努力していきたい。
- 既設地域に対しては、電力移出県等交付金などで企業の誘致をはかっていただくなどの措置をしてきたが、もっと立地地域が夢と誇りを持てるよう全力を尽くしていかなければいけない。立地地域が長期的に発展することに協力できるような財政面、融資面など様々な面での努力を創設したいと考えている。
- 京都大学の原子炉がある熊取町が地域振興の成功例として紹介されていたが、これは、国立大学の研究炉なので、地域に対し金銭的援助は出せない。そこで、知恵を出し、以下の取り組みをした。つまり大学などを増やす努力の他、オーストラリアと姉妹都市協定を結ぶ努力をしたり、ガン患者治療を拡大した上、いざという時には熊取町の患者を最優先させるなどのことを議論している。さらに、京都大学の先生は、原則熊取町に住み、子供を地域の小・中学校にいかせる等のことも実施した。そうした努力による地域振興が、金銭的な援助より、地域の人達に感謝される結果となった。
- 当初原子力を誘致したときは、原子力は夢のあるものであり、誇りを持てるものであった。しかし、巻の例を見てもわかるように、現状では必ずしもそうではない。国には、責任を持って地域が誇れるようにしてほしい。
- 地域が原子力に誇りをもてるようになるためには、安全がまず第一。次に国民の認識、理解を深めることが重要。その二つを国は責任を持ってやってほしい。例えば、小さなトラブルは仕方ないと認識しているが、その際、原子力がきちんと全国民に理解されていれば、変な反応は起こらないと考える。
- 立地地域は法外なものを望んでいるわけではない。苦労をしながら大都市への電力供給の役割を担っているのであるから、都市のみなさんとの生活の差を少しでも近づけてほしいというのが、地域の願望。
- 交付金は、地域振興の一手段であると考えている。福井県嶺南地域の場合、何が不満かというと、高速道路と鉄道の整備の遅れである。これだけ原子力がありながら、なぜ整備されていないのかという不信感がある。国には、省庁の垣根を取り払った総合的な地域振興策を講じてほしい。
- かつて、地元に大阪の学校のセミナーハウス誘致の話があった。その役員会がきた時、「原子力は大丈夫か」という話になったため、実際発電所を見学してもらったところ、「見て良かった」との感想を持たれ、立地が決まった。このように都市と立地地域との交流を促進していけば、原子力は理解されると思う。
- 敦賀にも原子力関連の施設でたくさんの人が働いており、共存共栄していきたいと考えている。そういう点でも、自慢のできるようにしてもらいたい。
- 交付金として三法交付金があるが、大変制約がある。町づくりにはお金が必要であり、そういう意味での地域振興も図っていきたいことについて考えてもらいたい。
- 電気は、一般人にとって水や空気と同じになっており、かえって原子力に対する認識が国民の中に薄くなっているのではないかと思う。
┌─────────────────────────────────┐
│ 原子力委員より、原子力発電所の立地について、「アトムポリス構想」│
│にあるように、原子力をどのようにコミュニティ形成に生かしていけるか│
│を考えることが重要となっているとの意見が出された。 │
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- 最初は、立地問題を考える上で安全が最大の問題であった。そのうち、嶺南地域を中心に、原子力に対してエネルギー以外の捉え方もあるかという動き、つまり「アトムポリス構想」がでてきた。近年は、地方が原子力を考える時代へ移行しつつあると考えており、そのように地域が原子力を自らの問題として考えることは重要と認識している。
- 今後は、今までの国や集団中心の原子力から個人を対象とした原子力に移りうるかどうか、つまり原子力を総合科学技術として捉える目が大切である。ガン治療などは、原子力が個人を対象とするものの一例であり、若狭に作りつつある若狭湾エネルギー研究センターなどは非常に大切である。「アトムポリス構想」は、地元が発想した新しい地域としての原子力の捉え方であり、これは、新しい研究分野を要求することにもなるし、さらに福井県知事の考えてきた「環日本海構想」に合致するものとして、発展する構想と考える。
- 原子力開発は既に半世紀を過ぎており、原子核というパンドラの箱を開けかけてから、1世紀が過ぎた。原子力が人類文明を根幹で支えられるものにどうやったら発展できるかを考える時代になっていると考える。こうした大きな流れの中、地域や、地元は「自らのコミュニティ形成に参加できるものとしての原子力」に関していろいろなアイディアを出してほしい。
┌─────────────────────────────────┐
│ このような円卓会議を開催し政策を今一度振り返って考えようと言う時│
│期に、新たな交付金を創設するのは疑問であるとの意見に関連して、まだ│
│構想段階であるが、このような要望があることは事実。今後様々な意見を│
│踏まえつつまとめていきたいと考えているとの見解が示された。 │
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- 国が原子力の新交付金を創設するといった報道がされていた。原子力政策を今一度振り返って考えようという趣旨の「円卓会議」が開催されている最中であり、かつ第8回の円卓会議で「利益誘導型の立地政策には誤りがある。電源三法交付金などの交付金制度はやめるべき」との意見が出されているのに、片一方で国が新交付金を創設するというのでは、何のために議論をしているのか疑問。このように議論をなし崩すような姿勢では、提言を含む見直しの意見が出る素地を失わせる。
- 新交付金制度については、全くまだ構想段階であるが、今週から与党各党と議論を始めたことがきっかけで報道されたものと思う。この後、議論する中で円卓会議での議論も配慮、反映して、まとめ上げていきたいと思っている。ただし、これまでの円卓会議の中でも、とりわけ地元の苦労に対し、地域の恒久的な発展への配慮を求める意見が多数あることも事実であり、そうしたことを踏まえた今後の構想という段階である。地域自らの発展に役立つようなものになるよう配慮しながらやっていきたいと考えている。
- 恒久的な地域振興策について、円卓会議でも強い要望があったことは事実。また、全原協、知事会、立地地域からの要望もある。行政としては、それを無視するわけにはいかず、新交付金の検討を始めたのは、そのとおりと認識している。ただし、「従来の利益誘導策では駄目」というのも貴重な意見として承っており、それらを含め持ち帰りたい。
┌─────────────────────────────────┐
│ 交付金制度は、地域自ら創造する力を阻害し、本当の地元振興にならな│
│いのではないかという意見に関連して、原子力委員長より、電力の3割が│
│原子力に依存している中、苦労をされている立地地域からの要望にお応え│
│することは間違っているとは思わないとの見解が表明された。 │
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- 原子力発電の交付金については、二十数年いろいろ行われてきたが、それで地域が発展したとは誰一人評価していない。敦賀では、今は中断しているが、敦賀発電所3,4号機増設の話があったが、その際敦賀商工会議所は「二十数年、国のエネルギー政策に協力してきたが、見るべき地域の発展はない」ことを理由に増設を陳情していた。これは、これまでのやり方が地域にとって長期的に有効な振興策となっていない表れである。
- これまでの原発の交付金制度は、地域が自ら創造する力、自立する力、つまり地場産業を中心に自ら発展する力を育てることをかえって阻害してきたのではないか。本当の地域振興を考えるなら、交付金制度で増設を進める姑息な手段をとるべきではないと考える。
- 交付金があるため、地域の発展を阻害するという意見には少々誤解があると思う。地域が発展するためには、自立性や創造性はもちろん必要であり、交付金もそうした地域の発展に役立つものとして使っていただこうというもの、そして必要なものであるとの認識で行っている。電力の3割は原子力に依存している中、立地地域が苦労しているという現実もある。そうした地域からの要望に対し、お応えすることは、行政当局、政治として間違っているとはいえないと思う。
- 補助金、交付金については、明治以来大蔵省を中心としたそういう統治方式を採ってきており、そういうところを一部改める必要がある。
┌─────────────────────────────────┐
│・東海村において、原子力施設との良好な関係にあるのは、原子力の研究│
│ 機関があるからであり福井県においても安全文化に関わる研究機関など│
│ を充実させるのも一つの方法ではないかという意見が出された。 │
│・これに関連して、嶺南地方にエネルギー関係の大学があってもいいとの│
│ 意見が出された。 │
│・また、原子力委員長より青森県において研究機関の充実を図ってきてお│
│ り、また、敦賀においても若狭湾エネルギー研究センターが来年スター│
│ トする段階。研究開発が地域産業おこしにつながるよう充実させていき│
│ たいとの意見が表明された。 │
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- 東海村長が村と原子力施設とは良好な関係にあり、その原因は施設者と村民がお互い顔が見えているから、と言われていた。もう一つの大きな理由は、発電所とともに原子力の研究機関が一緒にあったことではないかと考える。研究者がそこに住み、子供を地元の学校に入れ、また地元の原子力の仕事に携わるといった状況もある。世界最高級の原子力の研究機関と原子力施設とそして村民の間が密接不可分に関わって、発展してきている。地域の安心につながっているのではないか。
- 福井県も、安全文化に関わる研究機関などの施設を充実させることが今後の一つの方法ではないかと思う。それにより地域の方に大きな安心を与えることにつながると考える。どんな研究機関をおくかについては、私案であるが、解決されていない問題といわれている高レベル放射性廃棄物の分量や寿命を減らす「超ウラン元素の消滅処理」等の研究機関の立地をしてはどうかと提案したい。
- 文化的なこととしては、嶺南地方にエネルギー関係の大学があってもいいのではないかと考えている。
- 青森においても、むつ市の海洋研究所、六ケ所村の環境科学技術研究所や新しい研究設備を設けている。これらは地元の要望に応えて努力しようということでやっている。
- 放射線によるガンの治療も地方展開していきたいと考えており、福井県、立地地域でも検討してもらいたい。
- 敦賀では、若狭湾エネルギー研究センターが今年度着工し、来年からスタートするが、こういう研究開発ということが地域産業おこしにつながる展開ができるよう充実を図っていきたい。
□ 安全と安心
┌─────────────────────────────────┐
│ 原子力の地下立地について一般参加者の意見に関連して、 │
│・地下立地については、既に検討されており、メンテナンスがしにくいな│
│ どのデメリットがある割にはその安全面のメリットは少ないということ│
│ になった。 │
│・技術的な安全の観点からは効果は少ないが、それで安心感を得られると│
│ 言うのであれば、再検討してみることも必要。 │
│との意見が出された。 │
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- これまで30年の歴史で、放射能の漏洩に関しては原子力発電所の「安全」は確保されてきたが、それだけでは問題が解決しない時期になりつつあることは認識している。「安心」は社会的問題を含む。地下立地については、技術的安全確保の観点からは効果は小さい。しかし、安心の観点から議論して、これで社会的合意がえられるのであれば、技術的には対応は可能である。
- ノルウェーやスウェーデンではかつて地下立地を行ったことがある。スウェーデンでは都市から約15キロ離れた岩山に穴を掘り、熱出力で10万〜15万キロワットぐらいの軽水炉をつくり、そこで発生した蒸気を都会に運び、暖房用に使うということであった。しかしメンテナンスがしにくい等の理由により途中でやめた。
- 地下立地はかなり高くなる。安全上のメリットはない。過去に技術的な検討はいろいろされていたが、検討に参加していた技術者は、技術的に地上立地で問題ない安全なものを、なぜ地下に立地しなければならないのかという考えだった。
- 地下立地に関連して発言するが、現在は安全論、技術論を超えた世界に入ってきていると思う。今まで、技術論で効果は小さいとされたものであっても、合意形成が得られるのであれば、もう一度再検討してみる必要はあると考える。
[《一般公募・原子力モニター参加者からの意見》における関連意見]
□ 安全関係:2番目意見
┌─────────────────────────────────┐
│ 原子力の安全と安心について、 │
│・安全については、確立していると思われるが、今後とも事故ゼロに向け│
│ て努力することが必要との意見が出された。 │
│・安心感を得るためには、事業者や原子力技術が信頼されることが不可欠│
│ であり、安全に対する取り組み、またその取り組みを含む様々な情報を│
│ 一般の人にもわかりやすく提供することなどが重要との意見が │
│ 出された。 │
│・また、安心に関連して、事故時の不正確な情報提供や、当初考えていた│
│ 安全施設を取りやめたり、原子力施設付近の断層を当初から教えてくれ│
│ なかったりでは、不信感が生じるとの意見が出された。 │
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- 技術的安全を社会的信頼につなげていくためには、情報提供、情報公開、安全実績の積み重ねが重要。また単に原子力の情報を提供するだけでなく、環境、資源、経済、コスト評価、ライフスタイルとの関り等、幅広く平易に国民に伝えることが重要。
- 安全については工学的には確立されていると認識。人為的ミスがトラブルにつながっている。「危ないと思ったらすぐ止める」といったマニュアルをはっきりと作成し、国民に公開していくべき。
- 安全とは何かということについてはよくわからないが、安心はイコール信頼と考えている。何かについて、信頼があると安心がある。信頼は何かということからすべては始まる。
- 放射能を外に漏らすことを未然に防ぐための、幾重の防護施設など安全を得るための装置なり制御があると聞いている。そういう安心感を得るための取り組みが広くわかれば、安心して原子力を受け入れていくのではないか。
- 「還元」ということを言った方がいたが、それは、地域振興のための金額で「安全と安心」を地域の方に提供するということか。
- 国家全体にメリットがあるのならば、地元振興に還元してもいいといったのであって、安全の対価ということではない。
- 原発がくると道がよくなるとか大きな建物が立つが危険が付いてくるという考えしかないが、安心感を与えるために国が何をやってくれるのかよくわからない。
- 技術的な安全についてはパーフェクトを求めて技術革新をしつつ確保する努力をするべき。
- 技術的な安全だけでなく見える形での安全というのが今求めれらているのだと思うが、そのためには、原子力発電所を見てもらうこと、わかりやすい形での情報提供をすること、地元の人に顔の見えるような原子力の事業者であること、などの努力が必要。
- 原子力は、悪ければ止めるという経営方針と、決められた期間での確実なメンテナンスをきちんとやることにより、安全と安心は得られると思う。
- 安心とは、危険度がゼロに近いという認識で安らかに生きることができるという心の安定。安心は、安全からきており、結局は技術力への信頼。しかし、技術がどこまでということについては、1000分の1か、1万分の1か、ゼロか、社会条件や放射能ということもあるのでなかなか判断できない。
- 六ケ所の濃縮工場の事故時の情報の不正確さや、「もんじゅ」の事故の1ヶ月前に、裁判で科学技術庁の安全顧問の方が「あれに関しては、施設で全然心配ない。何かあってもアフターケアができることになっている。」と証言していたりする。そういうことがあるから、一般市民が信じられなくなる。誇大妄想で不安を感じているのではなく、何かマイナスの事象により、こういう問題について疑義や不安を持つ。
- 六ケ所の再処理工場は、最初は放出放射能の除去施設をつけるとして申請しているが、着工するときには技術的に困難だから付けないといっている。反対している根拠は事実であり、単なる不安からではない。
- 安全神話という実態のないことに頼らない、事実を直視したその存在を認めた上でのパートナーシップが安心の前提。信頼の絆はそこから生まれる。そのためには、我々にも理解できる情報公開が必要。
- 原子力発電所ができるくらいだから地震がない場所なのだろうと考えていたら、大きな断層が何本かあることを後から知った。そのことは、最初の1号炉が建設される時からわかっていたこと。このようなことは後での信頼関係に大きな揺るぎが出る。すべてのことはオープンにしてもらいその俎上の上で議論することが重要。
- 理科系の人は「安全イコール安心」を当然のこととして技術開発をしてきた。実はそうではなかった。すなわち理系社会が科学技術を支配してきたことに限界があったのではないかと思う。理系の人から一般の人への言葉の翻訳の問題等に努力することが必要。
- 「放射能が漏れなければいい」ではなく、事故ゼロを目指して努力することが安心感につながる。また、小さい事故でも通報してもらうことが安心感を生むので、通報義務を法律上明確にすることも重要。
┌─────────────────────────────────┐
│ 原子力委員より原子力の安全審査についての、取り組み、考え方が示さ│
│れた。 │
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- 原子炉の設置にあたっては、法律に基づき許可を得る必要があり、申請を受けた規制当局は原子炉の基本設計が許可基準に合致するか審査し、それを安全委員会がチェックする。これを安全審査と呼んでいる。
- 安全審査の前提は、「人は過ち、機械装置は故障し破損することもあり得る」ということ。事故は起きないよう努力はするが、万が一の事故が起きてもそれが災害にいたらないように「多重防護」の考え方に従って何重にも防護措置をとることにより、放射性物質の外部への異常な放出の防止を図っている。
- すなわち、安全審査では、事故が起きても災害の防止上支障のない設計になっていることを確認している。
- 従って、安全審査に合格したにも関わらず事故が起きたことをもって、直ちに安全審査にミスがあったということではない。「事故は起きたが安全は確保された」ということは他分野での人類活動においても十分あり得ることであり、原子力も例外ではない。
- しかし、原子力の安全が安心につながるためには、透明性が重要。「敷地の中で起こっていることがわからない」というのでは、周辺の住民の方々が不安を感じるのは当然であり、発電所に何が起こったか知っていただき理解していただくこと、つまり情報公開が、安心につながる。
- また、原子力施設で働く従業員が平素から周辺の方々に信頼されていることも非常に大きな要素。
- 日本の原子力技術が世界でもトップであることは、諸外国が認めている事実であり、技術への信頼ということについて、これは世界のトップと理解いただきたい。
- また、このような考え方を地元の皆様方に繰り返し説明することによりご理解を得る努力をしていきたい。
┌─────────────────────────────────┐
│ 安全と安心に関連して、原子力防災対策や、廃炉対策への取り組みを国│
│としてもきちんとしてもらいたいとの意見が表明された。 │
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- 原子力防災対策について、災害対策基本法とは別に特別立法を要請しているので、ぜひ実現してもらいたい。
- 廃炉対策について、2000年頃までに国の政策を確立してもらいたい。
□ 教育・理解増進関係
┌─────────────────────────────────┐
│ エネルギー、原子力教育の必要性について一般参加者からの意見が出さ│
│れたことに関連して、原子力委員長より、文部省もある程度やっており、│
│教科書も公平な記述がされていると認識しているが、受験の関係もあり教│
│育現場ではパスされてしまうこともある。その点については、科学教育学│
│会総会でもお願いしているとの意見が出された。 │
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- 教育問題については、文部省の指導要綱、教科書検定等、いろいろ公平な立場での議論をある程度やっており、教科書についても、かなり公平な記述が一般的にはなされていると認識している。しかし、現実には大学受験への出題がないため、教育現場ではパスしてしまうケースもあると聞いている。その点、先日、全国の科学教育学会総会の場でも、公平な立場での教壇での努力をお願いしてきたところである。
[《一般公募・原子力モニター参加者からの意見》における関連意見]
□ 教育・理解増進:5番目意見
┌─────────────────────────────────┐
│ 原子力をとらえる上で、マスコミの影響は大きく、センセーショナルな│
│報道、世論操作まがいの報道は改めてもらいたいという意見に対して、セ│
│ンセーショナルな報道、世論の誘導などは考えたことはないが、色々な意│
│見を謙虚に受け止め、努力していくべきであるとの意見が出された。 │
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- 記者の勉強不足や社内の事情というものもあるだろうが、センセーショナルに言葉を使うというようなことは、意識を改めてもらいたい。
- 一般の人の原子力の情報源は、マスコミ以外になく、その影響は非常に大きい。だから、記者の勉強不足があるかもしれないという安易な意見は、原子力をとらえる上で考えられない考え方。マスコミのチェック体制がどうなっているか聞きたい。
- マスコミも万能ではないので、勉強はしている。また、これまでの状況を集積したり、色々な資料を見て主観的な判断をする場合もあるが、記者の良心を信頼するしかない。ただし、勉強はしなければいけないし、色々な意見を謙虚に受け止め努力していくべき。
- これまでの都市と地元の関係、風評の最大の原因はマスコミ。何か事故があると一つの視点の記事は洪水のように流れるが、それに対する原子力委員の報道は、後で、小刻みに、わかりにくい言葉で、しかも非常に小さくしか載らない。これで理解しろといわれても難しい。
- 一部のマスコミのセンセーショナルな報道で被害を受けていることは事実である。放射能という点だけ取り上げていけば、関心のない都市の人もその報道を見ていれば自然にその傾向が出てくるという世論操作ではないかと思う。そういう点から見てマスコミの責任は大きい。
- 三十何年マスコミに籍を置いていて、世論の誘導など考えたこともないし、そのようなことをしたことも一回もない。
[《一般公募・原子力モニター参加者からの意見》における関連意見]
□ 教育・理解増進:5番目意見
□ 情報公開関連
┌─────────────────────────────────┐
│ 情報公開について一般参加者からの意見が出されたことに関連して、原│
│子力委員長より、円卓会議から提言を受けており、原子力委員会、原子力│
│安全委員会、行政当局で鋭意検討しているとの見解が示された。 │
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- 情報公開の問題については、安全に係わる情報は公開、という原則で、原子力委員会、原子力安全委員会、行政当局で検討している。これは、円卓会議で提言のあったテーマでもあり、一つの方式というのを、鋭意検討して答えを出していきたい。
[《一般公募・原子力モニター参加者からの意見》における関連意見]
□ 情報公開関係:1番目意見
┌─────────────────────────────────┐
│ 情報公開について、 │
│・原子力の情報公開で公開に制約があるのはわかるが、どの部分が非公開│
│ かについては、一方的に決めるのではなく、きちんと議論して基準を決│
│ めるべき。 │
│・8月のはじめに科学技術庁に資料の公開を要求したがどうなっているの│
│ か。 │
│との意見が出された。 │
│これに対して、 │
│・原子力委員長より、情報公開のあり方について、円卓会議からの申し入│
│ れも踏まえ、原子力委員会としての考え方を9月中には示したい。 │
│・事務局から、要求のあった資料については、現在、作業中であるが、量│
│ も膨大なこともあり時間がかかっている旨の説明があった。 │
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- 必要とする情報が出なければ、情報公開といえない。原子力に関して公開に制約があるのは承知しているが、非公開の領域を一方的に決めるのではなく、きちんと議論して基準を設けるべき。
- 8月のはじめに動燃と科学技術庁に公開してもらいたい情報を、理由と根拠を示してリストを提出したが何の音沙汰もない。どうなっているのか。
- 円卓会議からも、政策決定に対する市民参加、情報公開について申し入れがあり、モデレーターとも相談しつつ、原子力委員会の考え方をできれば9月中にも答えを出したいと考えている。安全に関する情報は基本的に全面的に公開することを原則としながら考えていきたい。しかし、核物質防護の関係で出せない部分もあるということは区別し、考え方を出して、また、最終決定までに皆様の御意見を伺うなど、何段階かそういうことをやっていくことが政策への市民参加になるとも考えている。
- 非常に膨大な量の資料の公開要求があり、国、動燃のどちらが所有しているか、内容としても公開可能であるかつめている状況で時間を要している。また、公開できるものはバラバラと公開するのではなく、まとめて公開したい。
□ 円卓会議の運営関係
┌─────────────────────────────────┐
│ 円卓会議の出席者は推進派ばかりとの意見に対して、原子力委員長より│
│、一般公募も抽選でしており、そのような恣意的な人選はしてないとの見│
│解が示された。 │
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- 円卓会議は推進派ばかりで進められており、出るべきではないと言われたが、国の政策に意見が言えると考え出席した。
- 円卓会議の人選は恣意的に原子力の賛成派ばかり集めるようなことは考えていない。一般からの招へい者も一般公募等で抽選により選んでいる。
┌─────────────────────────────────┐
│ 円卓会議の今後のあり方について │
│・原子力に依らないエネルギー政策を議論する会議の設定して │
│もらいたい。 │
│・意見を聞きっぱなしでなく今後の政策に取り入れてもらいたい。 │
│・これだけのメンバーを集め今後何回もやるのは困難なので、一度区切り│
│ をつけ、論点を絞るべき。 │
│・原子力委員が立地県を回ってやる形式にしてはどうか。 │
│という意見がでた。 │
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- 原子力政策円卓会議なので、原子力ありきで進めざる得ない。原子力に限らないエネルギー政策、クリーンエネルギーの議論をする円卓会議を設定してもらいたい。
- 新エネルギー開発については、通産省、科学技術庁などで実施しており、例えば、サンシャイン計画、ムーンライト計画など色々な形で、少々でないお金をつぎ込んで研究開発をやっているが、現実には発電できる量も足りないし、規模も足りない。この会議の場でも、新エネルギーでは、現実的に間に合わないという議論もあった。総合的に全力をあげていくことが国の方針。原子力に頼らない政策についても視野に入れてこの円卓会議で議論はしている。
- ご提案なのでモデレーターで検討させていただく
- いつまでも円卓会議をやるのは聞こえはいいが、この会議には行政の最高の幹部が出席しており、行政が足踏みするというマイナス点もある。これだけのメンバーを捕まえて何回もやるのは無理ではないか。あるところで区切りをつけて必要な問題に絞ってやるべき。
- 円卓会議で出された事項を聞きっぱなしでなくて、今後の政策に取り上げて欲しい。
- ATRの実証炉の中止、「もんじゅ」の事故、新増設の遅延、第一再処理工場建設計画の大幅変更などあり、そういうことを背景に長計の見直しを行うべき。そのためには、まず専門部会を設置するべきであるし、見直しの過程を明らかにしてやってもらいたいし、徹底的な情報公開への特別な取り組みが必要。
- 同じ形式でやるのは得策ではない。原子力委員会が立地県を回ってこのような地域を中心とした会議を開催したらどうか。
《モデレーター閉会時発言》
- これまで参加いただいたのべ119名の招へい者の方々、一般公募等により参加して頂いた方々、傍聴いただいた皆様に感謝。
- 第1回から第4回までの議論では、極めて多くの論点が表明され、大方の議論は出し尽くした。
- これを踏まえ、第5回目以降は、各回テーマを設定しより深い議論をお願いしてきたが、時間に限りもあり、「エネルギー問題の中での原子力の位置づけ」、「プルサーマル、高速増殖炉、高レベル放射性廃棄物をどうするか」などについては、議論が足りないと感じており、このため、9月18日に第11回目の円卓会議を開催することとする。
- さらにその後については、議論を整理する過程においてそのあり方を検討したい。
- また、この議論の整理を通じて、円卓会議として、原子力委員会に対する何らかの提言を9月下旬から10月を目指してとりまとめたい。
《中川原子力委員会委員長閉会挨拶》
- 深く掘り下げた議論、かみ合った議論であったとの印象。
- 今日の多くの御意見を、政策にきちんと反映するべく、モデレーターからのまとめの意見も頂きながら、原子力委員会としての責任のある答えを出していきたいと考えている。
- 立地地域においても夢と誇りが持てるような展開が確保できるようなことを21世紀は目指すべきと痛感しており、そういう意味から我々も全力を尽くしていきたい。
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