原子力政策円卓会議(第9回)
議 事 録


日 時:

   1996年8月7日(水)
   13:00−17:30

場 所:

   東絛会館


  • 出席者

  • 開  会

    【伊原】 原子力委員長代理の伊原でございます。第9回原子力政策円卓会議が開催されるに当たりまして、ご多忙中にもかかわらず、皆様方にご出席いただきましたことに対して心から感謝を申し上げます。本来であれば、中川秀直原子力委員長が出席してごあいさつを申し上げるべきところでございますが、委員長は米国出張のために、やむを得ず欠席、こういうことにさせていただいております。本日の議題は、今後の原子力政策を考える上で非常に大きな課題であります核燃料リサイクルをテーマといたしまして、その点について、委員長はぜひ出席したいというお気持ちを強くお持ちでございましたが、日程の都合上、どうしても出席できなくなった、こういうことでございますので、よろしくご理解のほどお願いいたしたいと思います。
    そこで、委員長にかわりまして、私から一言ごあいさつ申し上げます。
    この円卓会議は、今回で9回目を迎えるわけでございます。毎回、さまざまな方による活発な討議が行われて、議論を深めてまいっております。本日は、第7回、これは前々回でございますが、その第7回に引き続きまして、原子力と核燃料リサイクルに関する事項について、議論を深めてまいりたいと思います。二回目の今回は、特に核燃料リサイクルそのものに焦点を当てた議論を行っていただきたいと思います。
    従来より、核燃料リサイクルの確立は、地球資源の有効活用の観点から大きな意義と可能性を秘めている。特に資源に乏しい我が国では非常に意義があるものとして、原子力政策の中心に位置づけてきております。他方、高速増殖炉の開発、高レベル放射性廃棄物の処理・処分の問題などにつきまして、さまざまなご意見があることも事実でございます。これまでの会議でも、長期的に見たエネルギーの確保、人類の進むべき道について、さまざまな意見が出されております。これらを踏まえて、核燃料リサイクルをどのようにとらえていくか、しっかりと議論を行う必要があると考えます。
    本日は、核燃料リサイクルに関係する各界の第一線でご活躍の方々にもお集まりをいただいております。ぜひ、忌憚なくご議論を深めていただきたいと思います。この会が実りの多いものになることを期待いたしまして、私のあいさつといたします。ありがとうございました。
    それでは、この円卓会議の進め方でございますが、議論を効果的に行うために、モデレーターの方々6名に議事の進行、取りまとめなどをお願いいたしております。本日は、東京大学名誉教授の茅さん。京都大学経済研究所長の佐和さん。日本経済新聞社論説委員の鳥井さん。埼玉大学大学院政策科学研究科長の西野さんの4人にお越しをいただき、議事の進行をお願いいたしております。4人のご相談によりまして、前半を佐和さん、後半を茅さんで進行をお願いいたし、鳥井さんと西野さんには、お二人のご支援をいただく、こういうことにいたしております。
    それでは、佐和さん、どうぞよろしくお願いいたします。
    【佐和】 それでは、私、佐和が議事進行をさせていただきます。ただいまから2時間後に15分間の休憩を取る予定でございますので、休憩の後の後半は、茅さんに進行をバトンタッチさせていただきます。
    まず最初に、原子力政策円卓会議の趣旨や運営に関する基本的事項につきましては、お手元の資料−1をごらんいただきたいと思います。ご一読いただきまして、会議の円滑な進行にご協力いただきますれば幸いでございます。
    円卓会議では、単に狭い意味での原子力政策、あるいは原子力関連の技術についての問題についてのご意見をお伺いするだけではなくて、原子力をめぐる幅広い広範な議論が行われるよう、議事運営してまいりたいというふうに思っております。
    それでは、まず最初に、本日ご出席いただいております皆様方のご紹介をさせていただきます。なお、国民各層、各界の方々にご参加いただく円卓会議ということでございますので、敬称はすべて○○さん、何々さんというふうにお呼びさせていただきます。
    それでは、まず、本日ご出席いただいています招へい者の皆様方からご紹介させていただきます。
    まず、電気事業連合会会長、東京電力株式会社取締役社長の荒木 浩さん。福井県知事の栗田幸雄さん。東京大学工学部教授の近藤駿介さん。柏崎市長の西川正純さん。東京大学工学部教授の鈴木篤之さん。原子力資料情報室代表の高木仁三郎さん。六ケ所村の村長の土田 浩さん。核燃をとめよう浪岡会代表、平野良一さん。日本原子力研究所副理事長、松浦祥次郎さん。九州大学大学院比較社会文化研究科教授の吉岡 斉さん。
    続いて、原子力委員の皆様方をご紹介いたします。
    先ほどごあいさつをされました原子力委員長代理の伊原義徳さん。原子力委員の田畑米穂さん。藤家洋一さん。依田 直さん。以上でございます。
    本日は、これらの方々に先ほどご紹介いただきました私たち4人のモデレーターを含めまして、合わせてちょうど18名になるかと思いますが、18名で議論を行ってまいりたいと思っております。
    本日は、既にご承知のとおり、原子力と核燃料リサイクルに関する事項について議論を行いたいと考えております。この事項につきましては、去る7月12日に行われました第7回の会議におきましてもご議論いただきました。本日は、そういった議論をさらに深めたいというふうに考えております。より具体的に申し上げますと、核燃料リサイクルの意義・展望という、総論的な項目に加えまして、再処理、プルサーマルの意義、高速増殖炉開発の意義、高レベル放射性廃棄物処分の展望といったものが、議論の項目として考えられますが、議論を進めていくための手がかりといたしまして、これまでの円卓会議におきまして、これらの項目に関してなされました発言を踏まえて、お手元の資料−3として、議論の視点といった趣旨の簡単な資料を用意してございます。これにつきまして事務局からご説明をお願いいたします。
    【事務局】 それでは、お手元の右肩のところに資料−3と書かれておりますものにつきまして、ご説明申し上げます。
    ただいま、佐和モデレーターからご紹介がありましたように、これは本日のテーマでございます核燃料リサイクルについてのご議論の手がかりといたしまして、これまでの円卓会議でなされましたこのテーマに関するご発言等を踏まえまして用意いたしたものでございます。それで、本日の会議のこの核燃料リサイクルというテーマに関しまして、既に期待される議論の項目として、今、これも佐和モデレーターからご紹介がありましたけれども、総論的な核燃料リサイクルの意義・展望、あるいは再処理、高速増殖炉の開発の意義、プルサーマルの意義、バックエンド対策、特に高レベル放射性廃棄物処分の展望、こういった形で5つの項目が提示されておるところでございます。この資料は、この1から5までの5つの項目に関しまして、これまでの円卓会議でのご議論から、それぞれの項目ごとの主要な論点を整理いたしたものというものでございます。
    順を追って1からご説明申し上げます。
    1の核燃料リサイクルの意義・展望、これはこのテーマの総論とも言うべき項目でございますけれども、これに関しましては、核燃料のリサイクルを行うことは、ウラン資源が有限であり、いずれウラン資源の制約が顕在化するということが見通されるために、核燃料リサイクルということが、エネルギーセキュリティー上の大きな意義があるという意見がある一方、この核燃料リサイクルということが、プルトニウムを利用するということであるために、その社会的な受容性という観点では、核拡散のリスクを高めることになる。あるいはその安全性、経済性、さらにこの核拡散という観点からは、国際的懸念等が提起されているというようなことから、このリサイクルということについては困難が大きいというような対峙する意見がございます。
    それから、環境への負荷という観点では、リサイクルを行う場合と、行わない場合すなわち使用済燃料の直接処分という、それぞれに関しまして、リサイクルには放射性廃棄物をコンパクトな形にして、これによって環境の保全を図っていくという観点があるといった議論がある一方、リサイクルのために、再処理をすることで、性状の異なったリサイクルしない場合には生じないような新しい廃棄物を生むといったようなことから、果たしてリサイクルということが環境保全になるのかというふうな対峙する議論がございました。
    それから、この核燃料リサイクルの政策のあり方という観点では、国が国民的な合意形成を図っていかなければならない。あるいはこのリサイクルを政策の基本とするからには、これを国策として明確に位置づけることが不可欠であるというようなご意見がある一方、リサイクルを進めようとするということであるならば、その影響といったことに関する対抗的なアセスメントが提起された上で、十分な評価検討がなされる必要があるというようなご意見が出されてございます。
    それから、2の再処理の項目に移らせていただきますけれども、再処理については、その計画性という観点で見て、再処理計画のおくれにより、発電所サイドにおける使用済燃料の貯蔵が長期化し、これに対する適切な対策が必要であるとの問題提起。あるいはこれが発電所立地地域と国事業者との間の信頼関係を低下させているといったようなご指摘、これはある意味では、再処理を促すという観点からのご議論でございますけれども、これと逆に、現状では関連の技術の状況から見て、再処理はしないで、使用済燃料は貯蔵しておくべきとの意見が出されてございます。
    それから3番目の、高速増殖炉開発の意義でございますが、この高速増殖炉開発の意義につきましては、ウラン資源を最も効率的に利用できるものであり、将来的にはウラン資源の潜在的な価値を最大限に有効に使うということであるために、その開発が非常に重要であって、日本が世界のためにこれを開発して技術を供与するということが重要であるというご議論がある一方、高速増殖炉はナトリウムの取り扱いなど、非常に困難な技術的課題があって、実用化の目標時期も開発着手当初から見て、どんどん遠のいておる。諸外国でも多くの国が開発を中止しておるという事情など、実用化の見通しがないといったような議論が出されてございます。
    それから、この高速増殖炉開発の政策のあり方という観点では、高速増殖炉について、ウラン資源の有効利用を飛躍的に高めるといった視点だけではなくて、もう少し広いいろいろな視点から、国民的合意の形成のための議論が行われるべきであるとの指摘、あるいは、開発当初から維持されてきた実験炉、原型炉と進んでいく開発のあり方、あるいは開発体制についてのご意見。さらに、「もんじゅ」の事故を踏まえた高速増殖炉の研究開発の再構築についての意見が出されてございます。さらにその「もんじゅ」でございますけれども、この「もんじゅ」につきましては、ナトリウム漏れ事故をめぐりまして、これに対する認識、あるいは「もんじゅ」の安全確保対策について、いろいろなご議論が出されておりますが、この「もんじゅ」をどうしていくかということにつきましては、「もんじゅ」は凍結するといったところから、今回の事故の教訓を踏まえながらあきらめることなく着実に計画を進めるといったような意見までが出ておるところでございます。
    それから、4番目のプルサーマルの意義でございますけれども、プルサーマルに関しましては、これもウラン資源利用上、あるいは核不拡散上の意義、さらに将来の本格的リサイクルに向けてまとまった規模でリサイクルを進めていく等の意義があって、技術的にも確立して十分な実績もあるという意見に対しまして、これと逆に、資源利用上はこれがほとんど意味なく、技術的には安全性の面でウラン利用と異なる困難がある。あるいはプルサーマルの結果生じてくるMOXの使用済燃料の再処理の問題。あるいは、その燃料の加工・輸送等の問題もあるといったようなご意見が出てございます。このプルサーマルの政策のあり方という観点からは、これを立地自治体と事業者の問題だけではなく、国が責任を持ってプルサーマルに関する合意形成を図る必要がある。あるいは、幅広い議論に立って、プルトニウム利用について国民的コンセンサスを得ていく中で、このプルサーマル計画を位置づけることが必要であるといったような指摘がなされております。
    それから、5番目のバックエンド対策、特に高レベル放射性廃棄物処分の展望でございますが、これにつきましては、処分計画の全体像が明確に示される必要があるとの観点から、処分のコストであるとか、手順がより具体的に示される必要があるとの意見。特にこの処分地の選定ということが、非常に重要な問題で、これが早期になされることが求められるといったような意見が出されてございます。
    さらに、処分対策の進め方の手順に関しましては、国民的な合意の形成の進め方、あるいはこの高レベル廃棄物の処分システムの確立と原子力利用そのもののかかわりという観点から、まず廃棄物を生み出さないことが、処分システムに関する議論を容易にするといったような考え方と、そうではなくて、諸外国を見ても、決して廃棄物を生み出さないということが議論を容易にするということではなくて、いずれにしても、これは重要な難しい問題で、しっかり議論していかなければならないという意見と、さらに研究開発を的確に進めていく必要がある。特に地下研究施設等の早期設置等に関するご議論がございました。
    こういうことで整理をさせていただぎまして、本日のご議論の手がかりということで用意したものでございます。以上、資料−3の説明を終わらせていただきます。
    【佐和】 どうもありがとうございました。
    くどいようですが、ただいまの資料−3は、これはあくまでも今までの議論を整理したということだけですので、なお、本日の議論では全く関係のない新しい問題提起をいただくことは、むしろ歓迎申し上げますし、自由な発想でご議論いただければというふうに思っております。

    自由討議

    【佐和】 それでは、具体的な議事に移りますが、本日は、これまでの円卓会議では、最初に三人程度の方に基調報告をお願いして、そしてその後、自由討議をするというふうにやっていったわけですが、本日は初めから自由な討議を行いたいというふうに思っております。ただし、お手元の資料−4にごらんのとおり、高木さんと平野さん、そして本日この場で配付されました吉岡さん、この三名の方から、発言要旨というのが提供されております。そしてこの高木さんの資料をごらんいただきたいんですが、冒頭のところに、「巻町の住民投票の結果の尊重を!」ということで、巻町の問題を取り上げていらっしゃいます。これはわずか三日前のことですので、まず最初にこの件について多少議論したいと、あるいはご意見を伺いたいというように思っております。ただし、本日のテーマは何と申しましても核燃料リサイクルということですので、とりあえず時間を限らせていただいてよろしゅうございますか。では20分ということで、皆さん方のご意見をお伺いしたいと思います。
    【高木】  ちょっと私の趣旨説明というか……。
    【佐和】  ええ、趣旨をお願いします。なるべく短時間でお願いします。
    【高木】  非常にホットな話題ですし、当然今日ここにいらっしゃっている方は、この問題を全く抜きにいきなりリサイクルという話にならないと思うんです。リサイクルの問題だって、原子力を基本的にどう国民が認識しているかという問題に深く関係していることですから、この問題を、例えば巻町の住民投票の結果というのをどう考えているか。私は住民投票の結果というのは、非常に尊重すべきものだというふうに考えていますけれども、私の意見を長く言うよりも、議題に取り上げてほしいという意味で、今、発言しているわけですけれども、そのことをやはり基本的にみんなで議論するということは、大変大切なことだと思うわけです。少しだけ言いますと、私は住民投票の結果というのは、これだけはっきりと住民がノーという声が出たというのは大変重い意味を持っていて、そのことをここの円卓会議の議論の中にも反映しないようなことでは、円卓会議そのものが国民の意見を反映するということにならないのではないかというふうに考えます。その都度の国民の声を適切に国の原子力政策に反映させるということが、そもそもの円卓会議の趣旨だと思いますから、この結果を非常に重要視したい。
    新聞等で見る限り、国の説明不足、理解不足で、住民の賛成が得られなかったんだというような、国とか電力会社の意見があるんですけれども、あれだけ大量の物量を導入し、しかももう巻の問題というは、20何年にわたって争われている問題であって、東北電力だけではなくて、他の電力会社も支援したり、通産省も科学技術庁も出かけていって、国策について説明して、住民は十分な判断をして、いろいろな総合的な判断をして、「原発NO!」という答えを出したので、これを住民エゴだとか、住民の理解不足だったというようなことで言うべきではない。それは住民を無視した、住民をばかにしたような意見だというふうに思います。私はこの住民の声を十分に、一部の新聞にもそういうふうにちゃんと出ていましたけれども、十分に材料を長い間検討して判断した上で出した非常に貴重な意見だと思いますから、この声を十分にこれからの円卓会議のあり方の問題も含めて反映させるように、ここにいろいろな関係者の方が集まっていますので、ぜひお願いしたい。住民投票の結果にもかかわらず、国策が優先するからだというような、国策の押しつけというようなことはやるべきではない。住民の意見があってこその国の政策であるということを、私は改めて強く言いたいと思います。
    【佐和】  それでは、今の点に関しまして……。はい、西川さん。
    【西川】  新潟県の柏崎市から参りました。私どもは、同じ新潟県の中で行われました巻町の住民投票について、いささか複雑な気持ちでずっと見守って、また結果も受けとめたわけであります。ほぼ、巻町と同時期に、すなわち昭和40年代の前半に私どものところでは、原子力発電所の問題が浮上してきたわけでありますけれども、詳しい経過は申し上げませんが、全部で7号機、来年平成9年度に7号機までの建設が完了いたします。同じ時期にスタートした、柏崎がいいとか、巻がいいとかということを申し上げているわけではないんですけれども、その落差といいましょうか、ちょっと今の時点での状況の違いにもちょっと複雑な気持ちを持っているわけであります。結果が出まして、私は住民投票の持つ意義とか効果とかということについては、専門家ではありませんし、また今日の本題ではないだろうと思いますので、今の段階ではその点について触れませんが、結果が出た後、いろいろなところから、同じ県内でもありますし、片一方はまだ入口のところ、我々は出口でもう終わりつつあるというところから、感想を求められるわけです。
    私、端的に二つに要約して申し上げているんですが、一つは、よく4割も賛成をしたというのが率直な印象であります。もちろん、過半数にはいっていないわけですから、どっちが多かったということになると、ノーという答えが多かった。これは事実ですから、全くまごうことなき事実でありますけれども、私の個人的な印象ですけれども、ああいう問いかけをされて、地元に原子力発電所ができるかどうか、あなた、どう思いますかという問いかけに対して、4割もの人がいいです、私のところで引き受けますという回答をしたということを、よくこれだけの方がそういう意思表示をされたなと、別のちょっと受けとめ方をしているところであります。もちろん、原子力発電所についてこういう問題をああいう住民投票でどちらに丸をつけるかという手法については、私は個人的にはかなり疑問を持っているんですが、その点については今の段階では触れません。ただ、結果について、4割もの人があの問いかけについて、「わかりました、やります」という表示をしたことのほうが、私はむしろ、一種の特別の感慨を持ちました。極端に言えば、丸が2割とか2割5分でもおかしくないだろう、こう思っていますけれども、4割もよくああいう意思表示をしたということでございます。
    もう一つの感想は、隣の町でああいう結果が出ただけに、既に建設をスタートして終わりつつある我々としては、逆の意味で、私どもの町の地域振興がより進まなければならない。そうでなければ、この結果と比べて、私どもの選択というのは一体どういうことであったのかという気持ちを強くしたところであります。別にその気持ちを今改めて持ったわけでもなく、歴代の市長さん方、市民の方々がこれまでずっと持ち続けて努力をしてきたわけですけれども、そういう今の事象が起こっただけに、改めて、現在市政を預かっている者としては、より一層そういう責務を感じた、今まで以上に頑張らなければいけないという印象を持った。この二つが私の、すぐ隣の町での感想でありますので、一つの意見として……。
    【佐和】  松浦さん、手が挙がりましたので。
    【松浦】  ありがとうございます。
    60%の方が……。
    【佐和】  ちょっと済みません。私、事務的なことを申し上げるのを忘れましたが、後日テープに基づいて議事録を作成する必要上、発言の冒頭にお名前をおっしゃっていただきたい。それから、発言時間はたかだか4分ということで、よろしくお願いします。
    【松浦】  松浦でございます。住民の方の60%がノーというのは、確かに意見として非常に重いものだと思います。しかし、一方、やはり理解を十分に進めるということが非常に重要なことじゃないかと思います。と申しますのは、私は昭和36年から18年ぐらい東海村に住んでおりましたし、今も東海村の隣の町に住んでおります。この東海村では、この原子力施設が非常に多くございます。日本原子力研究所、それから動燃事業団、原子力発電、その他14くらいの原子力事業所がございますが、ここでは今まで40年に実績に基づいて非常に住民の方々の理解が進んでおりまして、この点につきましては、東海村の須藤村長さんが、先般の円卓会議でも説明されたと思いますけれども、非常に理解が進んでいる。それによって、原子力事業所の事業に対するサポートが非常によく得られている。こういう実例を見ますと、理解を進めるということで随分変わるのではないかということも思いますので、その点、一言加えさせていただきたいと思います。
    【佐和】  それでは、平野さん。
    【平野】  平野でございます。
    やっぱり、先ほど高木さんもおっしゃいましたように、結果は率直に認めるべきである、簡単に言えばそういうことに尽きるわけですが、ただ、今に始まった問題ではなくて、以前から立地について議論をして、十分な時間を経た上での結論なわけです。そういう状況でありながら、なおかつ、国策に対して一地域がそういう決定をしていいのかどうかというようなコメントというのは、これは私ども、戦時中に暮らした人間からしてみれば、昔の滅私奉公が思い出されて非常に慄然たる思いをするわけです。やっぱり国策というものの進め方そのものが今回ひとつ問われたのだという反省はするべきではないのか。青森の場合、私よりもお隣の実際に立地されている六ケ所の村長さんがいるのに、口幅ったいような感じになりますが、青森の場合でも、やっぱり国のほうの政策だからというのだけが優先されて、地域の方々に対する情報の提供なり意見の吸い上げなりというものがなされていないという状況があります。これは後ほど議論の場でもう一遍触れたいと思いますが、そういう面が巻の場合には、ああいう結果として働いたのであろうというふうに、私は率直に思います。そういう意味あいで、この円卓会議を開いた意義も、やっぱり福井の栗田知事さんたちが「もんじゅ」の処理に関して、今後もう一遍初心に返って議論をし直そうということで始めたんだとするならば、今回の巻の問題についても、当然国の原子力政策のあり方そのもの、進め方が従来の手法でいいのかどうかということも含めて議論をされるべきではないのかと感じます。
    以上です。
    【佐和】  それでは、荒木さん。あっ、吉岡さん?
    【吉岡】  いいですか。私は科学史を研究する吉岡という者ですけれども、今回の巻町の事件について、非常に報道を聞いて違和感を感じたことは、資源エネルギー庁の役人が、引き続き理解を求めていくべきだという、そういうコメントを出したということで、ちょっと場違いではないかと、言い過ぎかもしれませんけれども思ったんです。つまり、日本の原子力開発計画というのは、原子力委員会の長期計画ですとか、あるいは通産省ですと電源開発基本計画ですとか、みんな国家計画、いわゆる国策という裏づけを持って進められているという、そういうシステムであるから、資源エネルギー庁がしゃしゃり出てきたんだと思うんですけれども、国策としてそういうものをやっている国というのは、どうもほかにはほとんど見当たらない。しかも、国策というのが、科学技術庁にしても、通産省にしても、原子力開発を進めるという党派性を持った団体が国策を指導しているというようなことで、ですから、国策としてなされる限りにおいて、それ自体において推進という形にどうも傾いていかざるを得ないというふうに、私としては考えております。それに対してどうすればいいかというと、長期計画は国のかかわるプロジェクトに限定すべきだというのが私の意見です。電源開発計画についても、通産省が巻町の原発立地を国策として進めるというような、そこまで介入するのはやり過ぎなのではないかというふうに思っております。
    以上です。
    【佐和】  それでは、荒木さん、どうぞ。
    【荒木】  電気事業連合会の荒木でございます。
    皆さんのお話を承っておりまして、いずれも私はごもっともなご意見かなという感じがいたしておりますが、国策という言葉が出てまいりましたけれども、エネルギーの問題というのは、必ずしも私は国策ばかりだけではないんじゃないかと。要するに、我々が生きていくため、我々の生活をするため、あるいは産業を振興するためには、基本的なエネルギーというのは必要だと。ただ、こういう我々全体の国民的ないわば合意にかかわるようなことと、地域とのかかわり合いというのを、今後どういうふうに考えていくかということ、これは非常に新しい問題を私は提起されたのかなという感じがいたしております。
    それから同時に、自分の裏庭には、とにかく迷惑施設は困るという気持ちは、これは別に日本だけじゃなしに、諸外国にあるわけでありまして、ノット・イン・マイバックヤードとこう言っておりますから、そういうことがあるのは当然の話でありますけれども、私は同時に、今回の住民投票の結果というのは、単に電源立地の市町村の話だけではなくて、むしろ我々都会でその恩恵を受けている人たちが、やはり共通の認識を持つということを、この住民投票の結果を見て、我々は問い直す時期に来たのではないかということを痛感いたしております。また後でお話をいたしますけれども、私の感想は以上です。ただ、いずれにいたしましても、大変電気事業者としましては、今回の巻原発の住民投票の結果というのは、非常に残念なことでありました。
    以上です。
    【佐和】  まだ多少時間が残っています。高木さん、どうぞ。
    【高木】  繰り返すようですけれども、やはりこれだけはっきりした声が住民から出たんですから、私は国策に対して理解がなかったとか、そういうふうに言うべきでなくて、むしろ、はっきりと私は一たんここで電力会社と政府が計画を白紙撤回すべきだというふうに思います。それから、仕切り直しになるというふうに思います。原子力だけの問題ではなくて、エネルギー全体として、私たちがどういうエネルギーを選択するのか、特に都会の消費者がどういう選択をするのかというような問題について、きちっと議論しなくてはならないことは確かでしょう。それはもうそのとおりです。そのことについて、荒木さんと私の間に、そんなに認識の違いがあるとは思わない。ただ、ここで住民側のこういう声が出た、長い間、本当に何十年と町を二分するようにして争ってきた問題について、ここではっきりとしたこういう声が出た、そのことの重みというのは大変に大きなものがあるので、ここでは一たん、電力会社ははっきり白紙撤回すべきだし、政府もそれは住民の声として、電調審に入っている計画から外すべきだ、私はそう思います。その上で、また全然次元の違う問題があるのです。本当に今エネルギーを多消費していったら、今後日本がどうなってしまうのか、そのことを私たちがどう考えたらいいのかというのは、それはそれできちっと考えなければならない。一番最悪の場合には、例えばどうしても原子力を推進するというようなことを言うのだったら、じゃあ、都会に建てられるような原発を作るのかどうかというような問題になるかもしれない。
    もう一言だけ言わせてもらうと、最近のニュークリア・エンジニアリング・インターナショナルというところに、元OECD/NEAの安全規制部の次長か何かやっていた人が、スタディーという人ですが、書いていて、やはり原子力事業者は、今原子力がかなり国際的に受け入れられなくなってきていることを反対派のせいにするなということを言っている。やっぱり、炉心溶融の可能性が残っていたり、暴走の可能性が残っていたりするような原発に安住している限りだめだということを言っているんです。これは、言ってみれば、都会に原発ができないような原発だということなんです。私は原発をやるべきであるという立場ではないけれども、都会の消費者が云々というのであれば、都会に原発がつくれるんだというようなことをちゃんと言うようなところで提起をしないとだめだと思います。地方に押しつけるというようなことは、もう通用しないと私は思います。
    【佐和】  よろしいですか。じゃあ、近藤さん。
    【近藤】  近藤です。
    私もずっと考えて、結論を先になると高木さんの言ったことになっちゃうかなと思って心配しているんですけど。たしか田中明彦さんが最近出した『新しい中世』という本で、いわゆる先進国がいわゆる権力の多重構造、多層構造という、そういうことになって、国の権威、権力が相対的に低下するという、そういうのがこれからの彼の言う第一圏の姿だということを言っている。私は、それの一つの象徴というか、インディケーションとしてこの投票を見ていたんですけれども、問題はそういうような社会構造、社会の権力構造がそういう社会構造になってきているんだという、そういう認識、つまり、日本の憲法の前文は国は国民の代表者によって行動するという、憲法の前文でいうと、代表民主性をばっちり書いていますね。そういう憲法を持っているんだけれども、昨日の朝日か何かの社説にあったように、そこでは憲法は脇に置いてこれをという言葉を使っていたので、私は書き過ぎじゃないかと思ったんですけども、しかし、そういう日本の権力構造なり社会構造がそういうような構造になってきているということだとすれば、それを前提にして技術もまたそこへアダプトしていけるような技術を用意しなくてはいかん。これは高木さんが言っているところと思うんです。私は、そのことにおいては、そういう認識にしたがって、技術とインターフェースをさまざまなセットとして、そこにある種のネゴシエーションのプロセスを用意せざるを得ないんだと思います。そのネゴシエーションのプロセスがないままに、白か黒かで25年間争ってきたのが、私は巻町の姿だと思うんですけれども、これからはそういう意味の、バーゲニングという言葉は悪いですけれども、技術なり内容について、地元の、受け入れる社会の声を聞く。私どもはそれを社会中心アプローチと呼んでいますけれども、社会のリクワイアメントを反映した技術の姿というものを追及していく、あるいはそれを共同決定していくような、そういうようなことを考える時期が来ている、そういうふうな問題の整理のほうが、肩に力が入らなくていいのかなというふうに思っています。
    【佐和】  それじゃあ、平野さん。
    【平野】  平野です。
    ちょっと今日の議題からは外れるみたいな感じになるのかもわかりませんが、せっかく巻の町民の方々がああいう選択をされて、これから今までをなかったことにして町づくりをすすめようという気になっている時に、またぞろ立地を引っ込めないで、東北電力さんが理解を求め続けるということはいかがなものかという感じがしてならないわけです。そういう面では、荒木会長さんのほうからも、もうちょっとそっとしてやって、巻の人たちが選択した問題ですから、巻の人たちにこれ以上、町の中にぎすぎすしたものを持ち越さないような形で、町が一緒になって地域づくりに励めるような環境をつくってやることも、やっぱり企業としての一つの責任だというふうなご理解をいただけないものでしょうかと思うんです。
    【佐和】  荒木さん、ございませんか。
    【荒木】  私の名前が出ましたので、ちょっとお話し申し上げますけれども、確かに東北電力の八島社長は、引き続きご理解を求めたいということを言っておりまして、平野さんのご意見には、私は必ずしも賛成できかねますが、やはり今回の巻の住民投票の結果というのは、私どものエネルギーが国民にどういう位置づけになるかということについて、表面的な問題で議論が少し進み過ぎているんじゃないか、もっと本質的な問題をお話をする、要するに直接の対話ができれば、もっとご理解が進んだんじゃないかという気は私は持っております。その意味においては、私どもの努力が足りなかった、これは私どもの力不足であったというふうに思っておりますが、この辺はあるいは平野さんとは意見が違うかもしれません。
    【佐和】  土田さん。
    【土田】  土田でございます。
    巻の今までの、これまでに至りました政治のプロセスというのは、私はわかりませんから、こんなことを申し上げますと、大変な失礼な言い方になるかと思いますけれども、やはり、その町にありまして、最高意思決定者が住民投票に委ねたのはなぜなのか、そこに至るプロセスというのは、何があったのか、私はそこら辺はわかりません。やっぱり、原発をめぐるこの事業の目的が何であったのか、それからそれがどういう目的をもって、それがもたらすものが何であったかということの住民に対する理解が、議会を通し、あるいは日々の町政を通して、ああいうふうな、町を二分するような住民投票という、そういう選択の道を選んだかということについては、これはやはり、我々自治体を預かる者にとりましても、十分考えなければならないことだと思いますし、国策とするならば、国の最高意思決定者がこれらの巻の今日の結果を踏まえて、十分検討すべき大きな課題ではないのか、根本的な問題だと思います。私はできるならば、そういう問いかけをしないで、やっぱり町長や村長というのは、住民に対してできる限り、二分するような争いを起こさないような解決の道を見出す努力をすべきではなかったかと、こう思います。
    【佐和】  そろそろ、ちょうどこの議論を始めてちょうど25分たちましたが、何かぜひ一言おっしゃりたい方はいらっしゃいますか。
    それでは、とりあえずこれでこの巻の話は打ち切らせていただいて、これから先の核燃料リサイクルの議論の中でも、もう一度立ち戻っていただいても、もちろん結構でございます。
    それでは、本日のテーマである核燃料リサイクル、とりあえずは総論的な観点である核燃料リサイクルの意義と展望といったあたりから議論を始めたいと思います。
    それでは、荒木さん。
    【荒木】  荒木でございます。
    私は今回初めてこの会に出させていただきました。そういう意味で、大変光栄だと思っておるんですが、実は、今日、今、最初に発言を求めましたのは、電気事業者がこういうものについて、どういうスタンスを持っているかということを、一応ご説明させていただいて、皆さんの議論のいわば種といいますか、そういうものを提供すると同時に、私、甚だ恐縮なんですが、途中で実は中座をしなければならない所用がございますので、まことに済みません、ちょっとお話をする機会を許していただきたいと思っています。
    【高木】  いつごろまでいらっしゃるんですか。もし議論をする場合のために聞いておきたい。何時ごろまでいらっしゃるんですか。
    【荒木】  4時にはここを出なければならないです。済みません。
    私は、特に申し上げたいものは、要するに、エネルギーを、現場を預かる者の立場として実は発言をさせていただきたいというふうに考えております。
    ちょっと長くなりますが、済みません。
    私どもの電気事業者というのは、いわば電力の安定供給の確保というのが、これは昭和26年に9電力が発足して以来、一貫して経営の大きな課題であったわけです。今、皆さんご承知のように、電力の需給にはそれほど問題はございませんが、幸い価格も安定しております。しかし、これは過去に、皆さんお客様や、あるいは地域の方々、そして私どもの先輩がいろいろ努力した成果だろうと私は思っております。来るべき21世紀に電気の安定供給確保、そして我が国のエネルギーセキュリティーをいかに確保するかということが、私ども現場におる者としましては、いささかも念頭から離れることはないわけです。 特に21世紀になった場合、見逃せないのは、ちょっと話がそれて恐縮ですが、中国をはじめとする近隣アジア諸国の高度成長、それに伴うエネルギー需要の急増だと考えております。それから、CO2という解決が非常に難しい問題も、エネルギー供給の制約となる可能性を持っていると考えております。したがいまして、私どもの将来の発展基盤となりますエネルギーの安定供給をいかに確保するかはますます難しくなり、またその重要性も増してくると考えております。
    ご承知のように、我が国は第一次・第2次石油ショックによりまして、大変大きな打撃を受けたわけですが、これは産業構造の転換とか、あるいは石油代替エネルギーの開発、さらには省エネルギーということになりまして、比較的早期に日本は立ち直ったと考えております。これは官民挙げましての努力がありますけれども、基本的には、我が国経済が当時まだ若くて、成長途上にあったということが大きく寄与したと考えております。
    私ども、いずれ第三次の石油ショックの起こる可能性もないわけではないと考えます。その意味では、今から十分な用意をしておくと私は考えております。特に申し上げたいことは、仮に第三次の石油ショックが発生した場合に、我が国の経済社会に与える影響は、はかりしれなく大きいと私は思いますし、その回復には相当の時間と対策を必要とする。それは、現在、我が国の経済社会は、ご承知のようにかなり成熟化し、あるいは高齢化しているということで、変化の対応が大変弱くなっていると感じるからでございます。したがいまして、まだ私どもが、日本が壮健で体力のあるときに、極力将来に対する備えをしていく必要があると考えております。
    それでは、私どもがエネルギーのセキュリティーに対する備えは何かということを申しますと、それは一言で言えば、エネルギー源の多様化によりまして、リスクの分散を図る。すなわち電気事業者としまして、種々の選択肢を持つということが、私はこの言葉に尽きると思っております。
    幸いに電気の場合は、化石燃料、原子力、そして水力、太陽光、あるいは自然エネルギーなど、さらにはごみなどの再生エネルギーを有効に活用することも可能だと思っております。私どもは、こうした各種のエネルギーを量、質、そして経済性の面から評価して、できるだけバランスよく確保したいと考えております。そして、いかなることが起こりましても、第三次石油ショックが起きても、極力影響を少なくするように、いわゆるベストミックスといいますか、正確にはベストセカンドかもしれません。セカンドベストかもしれませんが、そういう考え方で安定供給を図っていくつもりでおります。
    各種のエネルギー源には、それぞれ特性といいますか、あるいは長所、短所というものがあると私は思っております。本日のテーマであります原子力につきましても、これまでの私どもの知見から申し上げてみましても、安全性の疑念とか、あるいは廃棄物の処理、処分、こういう種々の課題とか問題を抱えているということは事実です。しかしながら、今後の世界的なエネルギー需要の増大と環境面からの供給制約等を考えますと、原子力しかないと私は申しません。原子力を、我が国におきます基幹エネルギー源の大きな選択肢の一つとして位置づけるということが、大変重要であると私は考えております。
    一部の方には、太陽光発電とか、あるいは省エネルギーを推進、徹底すれば、原子力発電にかわり得るというご意見もあることは承知しております。もとより私は、新エネルギーだとか、また省エネルギーにつきまして、私どももこれまで以上に勉強していく、あるいは開発を進めていきたいと考えています。しかしながら、もともとエネルギー密度の低い太陽光発電、あるいは風もそうですけれども、こういう新エネルギーは、量、質、経済性の面から見まして、やはり私は、補完エネルギーとして活用することはできましても、火力とか、あるいは原子力にかわる基幹エネルギーになるということは大変難しいものではないかと思っております。
    また、省エネルギーにつきましても、一般的に、世界の中で我が国はかなり進んでおりまして、現状ではこれ以上の大幅な省エネルギーは期待できないのではないかと考えております。なお、現在の電力需要量の利用からいいますと、家庭やビルのいわゆる民生用が6割でありまして、産業用は4割、要するに家庭だとかビルの需要が大体6割、産業用が4割ということでありまして、また、毎年、この電力の伸びの、増加量の8割は、今申し上げた民生用の電力が寄与しているということを、ぜひご承知おきいただきたいと思っております。
    ちなみに、私ども東京電力の場合でございますが、私は会社の社是といたしまして、省エネルギーのテレビコマーシャルのデン子ちゃんに象徴されますように、電力の販売促進政策というのはとっておりません。私どもの経営の最大の課題というのは、お客様のご協力を得て、電力消費の増加を抑え、ロードカーブを是正し、設備投資を抑制することによりまして、電力原価の低減を図る。これをぜひこの機会にご紹介し、ご理解を賜りたいと考えております。
    私ども電気事業者は、電力の供給義務を課せられておりまして、国民生活や経済活動のインフラを預かる責任者といたしまして、不安定、不透明な新エネルギー、省エネルギーだけでは電力の安定供給を図っていくことはあまりにもリスクが大きく、どうしても、お客様からの負託にこたえるという自信が率直に言ってございません。
    ところで、先ほど原子力には種々の課題があると申しましたが、大別いたしますと、一つは安全性にかかわる社会的不安の問題、もう一つは廃棄物の処理、処分を含めてのサイクル路線についてであります。前者の社会的の不安に関して申し上げますと、原子力のような大きなプロジェクトは、社会的な信頼、地域の合意がなければ推進することができないことは言うまでもございません。
    この意味におきましては、巻町の住民投票というのは、地域の方々にご理解をいただくための私どもの努力不足を痛感させられた結果でございました。しかし、この住民投票は、一方で、原子力発電のような日本の経済社会に必要な社会インフラの整備と当該地域住民のかかわり方、さらには電源立地地域、消費地の痛みの共有と、公平な負担ということを考えるという難しい問題を提起したものと受けとめております。国民の間で広く議論しまして、考えていただくことを望むとともに、私どもといたしまして、立地地域住民との意思疎通を一層深めまして、また都会を中心とする消費者も自分自身の問題として考えていただくよう努力していきたいと考えております。
    今まで申し上げてまいりましたように、本日の円卓会議の議題であります核燃料リサイクルについて考える際にも、今後のエネルギーの選択肢の幅を大きくするという観点がどうしても重要だと私は考えております。核燃リサイクルの問題は、使用済燃料に含まれるプルトニウムを利用するか否かということでありますけれども、長期的なエネルギー需給ということを考える場合には、ウランの利用価値を大幅に広げるという点と、軽水炉から高速増殖炉までの原子力の選択の幅を広げるという観点から、リサイクルは我が国にとりまして必要な技術と考えております。さらに、我が国のエネルギーセキュリティーの確保という観点にとどまらず、アジアの経済成長等によりまして、将来の地球規模のエネルギーの需給、環境問題を考慮いたしますと、資源小国であり技術先進国である我が国は、使用済燃料から生じてきたプルトニウムを有効に利用する技術を着実に開発し、実用化するということが、ある意味では国際的な責務だと、科学技術立国としての日本の責務だと考えております。
    【佐和】  12分、時間が過ぎましたので、そろそろ締めていただければ。
    【荒木】  あと1ページだけです。
    【佐和】  そうですか、どうぞ。
    【荒木】  なお使用済燃料の直接処分におきましても、放射性廃棄物の処理、処分は大きな課題でございまして、むしろ再処理は、放射能レベルの高い廃棄物の量が減ることによりまして、取り扱いと処分がはるかに容易になるという利点があると考えております。この意味で、プルトニウムにかかわります核燃料リサイクルは、そのときどきの状況によって多少の変化形はあっても、基本路線は確たるものとしておく必要があると考えております。
    プルトニウム利用に関する私ども電気業者の責務は、再処理に関しましては、日本原燃六ケ所再処理工場の建設に最大の協力など、プルトニウムにつきましては、プルトニウム利用技術定着のために、諸外国において十分な実績があり、安全性が確認されているプルサーマルを、国内のプラントにおいて着実に実施していくということだと考えております。 もとより、プルトニウムをめぐる利用を含めた原子力開発の基本は安全と安心でありまして、その点では、放射能漏れこそなかったものの、「もんじゅ」の事故は国民に大きな不安と不信を与えたという点ではまことに残念だと思っております。国民の不安と不信を払拭するためには、拙速になることなく、徹底した事故の原因究明、再発防止対策の検討をぜひ行っていただきたいと思っております。加えまして、社会的影響も十分に考慮し、かつ現実に原子炉を運転するという観点から、地域に密着した研究開発をいかに進めるかについても、専門家によりまして十分に時間をかけ、論議されるよう要望いたしたいと思っております。
    私どもは、これらの検討から得られました教訓を実証炉以降の高速増殖炉技術開発に反映いたしまして、より安全なプラントの建設に着実に尽力していきたいと考えています。資源小国の我が国としましては、原子力は何としても必要であります。安全を最優先に、安全運転、安定運転の実績を積み重ね、情報公開に徹するとともに、地元との信頼関係を一層大切にしまして、より多くの方に原子力も電力供給の大きな柱であるということをご理解いただけるよう、今後とも全力を挙げて努力してまいる所存でございます。
    大変長くなりまして、まことに申しわけありませんでした。
    【佐和】  今、荒木さんから電気事業者の基本的なスタンスということについてご質問いただいたわけですが。高木さん。
    【高木】  高木でございます。
    リサイクル等については、後でゆっくり話をしたいと思います。私は端的に言えば、「もんじゅ」の事故は、高速増殖炉路線なんかやめたほうがいいし、プルトニウム利用なんかやめたほうがいいということを、「もんじゅ」の事故の一番大きな教訓だと思いますけれども、そのことについては後でゆっくり話します。
    今、荒木さんのほうから、少し原子力行政一般の話が出ましたので、やっぱり毎回になるんですけれども、おさまりが悪いので、円卓会議そのものについて確認したいんですけれども、一部の業界紙等々ですか、円卓会議はワンラウンドで終わるということは私も理解しているんです。次回、10回ですか、それで終わりになって、円卓会議そのものは終わりになるというようなことが書かれていたと聞いておりますし、一体、この議論の結果が、モデレーターないしは事務局になるんですか、原子力委員会になるんですか、どういうふうにとりまとまって、その先にどう発展していくのか、つながっていくのかということについて見えないと議論が不安なんです。ここで終わりになっているのか。私は、これですべて終わりなのか、どうなのかということも含めて。
    それから繰り返しになるんですけれども、誤解かもしれません。誤解であれば訂正してほしいんですけれども、前回でしたか、岩崎さんが出られたときに、話では、モデレーターとしてはまとめを特にやらないという話と、正確を期すためにお名前を出しますけれども、西野さんのご発言として、ここに出てきている意見をまとめると、何か原子力推進の意見のほうが多いようだというようなことが言われたというようなことを言ったんですけれども、私は、それはここに来ている人の人選の結果として出ている分布であって、国民の意見がここに反映されたというほどの回をやっていないと思うんですよ、この10回で。例えば九州から何人、人を呼びましたか、北海道から何人、人を呼びましたかというようなことを言っていったら、本当にわずかな人たちの意見しか聞いていないわけでしょう。それで、一方で住民投票みたいなことが行われている。相当しっかりした国民の世論の反映ということを、円卓会議としてやるという気構えがないと、円卓会議そのものが、これで国民の合意にコントリビュートしましたという話にはほとんどならないと思うんです。そこをちょっとモデレーターの方の考え方を聞いておきたい。リサイクルの話は後でちゃんとやりますから、これはぜひ聞いておきたい。
    【佐和】  私は前回、出席していませんので、茅さんのほうから。
    【茅】  今の高木さんのお話にお答えしますが、順番がちょっと逆になりまして、今の最後のところからお答えしますが、最後の話は、私は正直言って、そんな議論があったということは聞いておりません。つまり、この中の議論で、とにかく原子力賛成が多い。そういうことをまともに取り上げるなんていうことを申した記憶は全くありませんし、またそんなつもりもありません。当然、おっしゃるように……。
    【高木】  それなら、それは誤解で結構なんで、私は最初からそれを前提として……。
    【茅】  それは多分、何かの誤解だと思いますので。
    【佐和】  西野さん、特に……。
    【西野】  そういう話は私の記憶にありません。議事録がきっちり公開されておりますので、調べていただければ後ほど……。
    【高木】  前回の議事録がまだ……。
    【西野】  まだ出ていません。ただ、私はもちろんそんなことを言った記憶もありませんし、ここでは、分布をとるという発想がそもそも初めからないわけです。いろいろな意見があるというのを聞く会だというふうに理解をしております。
    【高木】  それなら、それは私の誤解で結構です。私もこだわっていませんから。
    【茅】  それでは、最初のほうに戻りますが、この円卓会議をどのように持っていくかということは、モデレーターにとっても最大の問題でございまして、これは従来、最初から私もそれを考えていたし、そのことは折に触れて申し上げたわけでございます。
    それで実際に、最初、円卓会議が始まったときに申し上げたはずなんですが、この中で、意見が比較的複数あるのがあれば、それは提言として取り上げて、原子力委員会に出すということはお約束しておりまして、一つだけ、今までやったんですね。それは何かというと、情報公開を推進しろということと、政策決定過程への参加について具体的に考慮しろということで、これはまだ原子力委員会側の返事はもらっておりませんけれども、少なくとも、提言としては、たしか三週間前でしたか出しております。原子力委員会側からは、我々は返事をいただけると確信しております。
    それから、それは今までの話なんですけれども、この後どうするかということに絡みまして、前々回、岩崎さんが来られたとき、多分、そのことを言っておられるんだと思うんですが、そのときに例の高木さんも入っておられる「参加者有志の提言」というのがありました。それを、直接原子力委員長にあてたものなんですけれども、それの話が出た折にモデレーターとしての意見を申したんですが、何を申したかというと、これもお聞きになっていると思いますが、モデレーターとしては、正直言って非常にやるせない思いをしたと、というのは、モデレーターというのは、できるだけ参加者の意見をまとめて、吸い上げて、それを提言の形にして原子力委員会に伝えるのが役割なんだけれども、残念ながら、有志のご意見というのは、モデレーターを素通りして原子力委員会に行ってしまった。これはモデレーターの力不足ということがあるかもしれないけれども、正直言って、このやり方自身に若干問題なしとはしない。例えば参加者が毎回変わってしまう。したがって、ある会で意見を聞いても、その次にそのことについての議論が返せない。それからモデレーターも、正直言いまして、これだけ頻度が高い会ですと毎回出られない。だから、まとめろと言われても、正直言って責任は非常にとりにくいといったことで、やり方を今後もっと考えるべきではないかということをそのときに申し上げています。これで、もう一回、8月22日に福井がありまして、そこで10回に達するんですが、その先についてどうすべきかということについては、したがってモデレーターの側として相談をしておりまして、こういうふうなことはぜひ考えてほしいという提言を、私としてはモデレーターの中で決めて出したいと考えております。これは多分、今月中に出せると思います。
    それから、そのときに、当然のことながら今までのことについて、なおかつ我々のほうとして言えることがあれば、できるだけ提言としてはまとめたいと思いますが、本日もございますし、福井もありますので、今、この場でどういうことを出すかということは申し上げられません。以上でよろしいでしょうか。
    【高木】  大体わかりましたけれども、できたら、いろいろな要望が、我々としても相談してあるときには、今度はモデレーターを通じて、モデレーターに対して出すようにいたしますけれども、原子力委員会に直接出たということは、我々から見ても、モデレーターの役割というのがなかなか見えにくいんです。毎回、違われますし、モデレーターの方は集まって会議をやっているのかもしれないけれども、何かモデレーターの一体性というのが見えないというところがあるものですから、原子力委員会というのは、組織としてちゃんとしていますから、そこには、あて先として言いやすいんだけれども、ただ、今のような発言がありましたから、今度は、何かお願いするときには、モデレーターの方にちゃんとお願いするということにしますけれども、再度、その点について、一言だけ要望しておきます。一番最初のときに、たしか半年ぐらい円卓会議を続けてという話があって、それでは徹底的に短過ぎると、私は意見を言ったことがあって、もっと広く意見を聞いてほしいという。茅さんもそれは場合によっては考慮しなくちゃならない意見でしょうみたいな対応が……。
    【茅】  4月に始めていますので、来月はもう少しアディショナルなものをやらなければいけないんじゃないかという議論はしていますが、そこで大体半年ぐらいになるんですけれどもね。それから、もう一つだけ申し上げますと、今、モデレーターの役割が不透明であるというご意見があったんですが、正直言って、モデレーター側も、今のモデレーターのやり方が一番いいと思っているわけじゃないんです。それで、またモデレーターがこういう選択でいいかという問題提起があることもよくわかっていますし、私自身も、そういうものは、個人的にはかなり考えるべきだと思っています。ですから、そういうことも含めて、今やっていますから。
    【高木】  ですから、私の希望としては、モデレーターの方が今まで何回かやられたことの、ある種のまとめをやられて、それについて私たちがまた、実はこうでもないかというような意見を言うチャンスがなるべくあるようにしてほしい。
    【茅】  ですから、さっき申しあげたように、参加者が毎回同じであれば、それができたんですが、そうじゃないんで、それができないというのが、我々として非常につらいところだというのをさっきから申し上げているわけです。
    【高木】  今後の課題としてお願いしておきたいと。
    【茅】  ですから、それを何とか解決したいというのは、我々が思っていることですから、それは全く同じご意見です。
    【佐和】  要するにまとめをして、それで終わりということにはしたくないと思っております。栗田さん。
    【栗田】  福井県知事の栗田ですが、前回、京都での円卓会議でも発言いたしましたので、重複する部分もありますし、また新たな提案も含めまして、私の基本的な認識についてお話をさせていただきます。
    原子力政策は、エネルギーという国民生活、あるいはまた、我が国の将来を左右する大変重要な問題であるにもかかわらず、立地地域の固有の特殊な政治・行政問題になっておりまして、そのために市町村長のリコールが起こるとか、あるいは県議会で大変な議論になるといったようなことがございました。電力を消費する消費地域を含めた全国民の関心事になっていないわけでございまして、消費地から、福井県のようなたくさん原子力発電所が立地している県につきまして、「どうしてあんなにたくさん原子力発電所を立地させているのだろうか」という自分たちの消費と、電力の生産というものが、あたかも別であるかのような認識がされている面もあるわけでございます。
    核燃料リサイクルにつきましては、特にプルサーマル利用、あるいはバックエンド対策というものに対する国民の不安が高まってきておりますし、また、その実現の見通しが明らかでないということもありまして、国民全般の合意が必ずしも十分とは言えないと思います。核燃料リサイクルの中核となります高速増殖炉「もんじゅ」の事故が去年の12月に発生いたしまして、国並びに動燃事業団の対応のまずさ等々もございまして、国民全体に、原子力政策に対する不安、また不信感を与えているわけでございます。
    地元では、使用済燃料の再処理の問題、あるいは貯蔵保管のあり方、ATR開発の中止、これに伴って、「ふげん」の運転目的をどうするかといったような問題、さらには、プルサーマル計画、「もんじゅ」の事故とFBR開発のあり方、高レベル放射性廃棄物の処分と、原子力政策の遂行に伴いまして派生するいろいろな課題に直面をしておりまして、その対応に苦慮しているわけでございます。これは、国が責任を持って国民の理解、信頼、その合意を得る努力を十分に行ってこなかったからでございまして、国のそういった努力不足というものを、いわば地元が肩がわりしていると言っても過言ではないわけでございます。
    現状の原子力政策のままでは将来展望が開かれず、閉塞した状況に陥ることは必至でございまして、国民的な議論を踏まえまして、今後の原子力政策の基本的な方向につきまして、改めて国民合意を図る必要があると考えます。
    この円卓会議やシンポジウム等につきまして……。
    【佐和】  栗田さん、済みません。時間がもう既に4分になりましたので、打ち切ってください。
    【栗田】  あと1分です。
    シンポジウム等において取り上げられた地元の意見、あるいは国民各界各層の意見を原子力政策に的確に反映いたしまして、原子力政策を現実的で柔軟性を持った、将来見通しのあるものにする必要があるというぐあいに思っております。
    そこで提言でございますが、後ほど高速増殖炉の項目がございますが、そこで詳しくお話し申し上げたいと思いますが、原子力委員会に「高速増殖炉懇談会」といったような懇談会を設置していただきまして、将来の高速増殖炉のあり方等について、十分時間をかけて議論をしていっていただくことが重要だろうと考えております。
    【佐和】  その前に、ちょっと高木さんに確認しておきたいんですが、円卓会議のあり方については、とりあえずさっきのようなことでよろしゅうございますか。必ずしもご満足がいくような答えにはなっていなかったかと思いますが。
    【高木】  わりとはっきりしないことだったなという感じがありますけれども、はっきりしないのが現状かなという気もしていますけれども、随時、またその問題はやりたいと思いますけれども、私に言わせれば、せっかくのご指名があったので一言、言いますけれども。
    【佐和】  今、ちょっと議論がそれたものですから。
    【高木】  円卓会議のあり方そのものを、かなり中心的に議題とするようなことが今までなかった気がするんです。いきなりエネルギー論とかリサイクル論とかというのに入ってしまって、例えばさっきのようなモデレーターの役割であるとか、広い国民の意見を聞くプロセスをどうしたらいいのかというような、円卓会議自身だけじゃなくてもいいんですが、そういう部分についての、国民の意見を広く聞いて、それを政策に反映させるやり方についてのことをぴしっとやる。一回、それをテーマでやるようなことがほしかったというのが私の意見で、それがどうも大変不十分である。
    【佐和】  それは、手順として何回か前に、さっき茅さんもおっしゃったとおり、原子力委員会に対して、原子力政策への国民参加ということについて見解を求めたわけですね。ですから、それは現在、原子力委員会で検討中と、かなり時間はかかっていますけれども、やがてそれに対する近々に答えが返ってくる。それを受けた形でやるのが非常にやりやすい。
    【高木】  それが出たところでまたやるということで、一応今日の段階では保留にしておきましょうという。それで納得しましたと言われると困るけれども、そういうことにしておきましょうという……。
    【佐和】  そこでつなぐということでよろしゅうございますね。
    【高木】  その先があるということでね。それ以上こだわりません。
    【佐和】  吉岡さん。
    【吉岡】  会議が始まってから1時間15分、つまり前半の半分以上が、たつんですけれども、私が残念に思うことは、今日の話はプルトニウム政策について多種多様な自由な意見を皆さんから聞かせてもらって、場合によってはディスカッションもするということにあったと思うんですけれども、残念ながら、それについての議論が、今までほとんど出ていない。
    この際、話を本筋に戻したいと思って、若干の問題提起をしてみたいんです。なるべく4分ぐらいでやめるようにします。今の時期というのは、このプルトニウム政策のあり方を考え直す絶好の時期だと思います。一つは、先進国がこぞってプルトニウム増殖政策をやめたという中で、日本がどう振る舞うかが、私は歴史家として言いますと、世界史的意味を持つものだと思います。もう一点としては、「もんじゅ」の事故というのは、やはり非常に国民のプルトニウム政策のあり方への疑惑も深めたし、関心も高めた。この時期を逃しては、せっかくの機会を失うことになるというのがもう一点です。最後の三点は、これが一番重要かもしれませんけれども、今は、プルトニウム計画というのは研究開発段階にあって、エネルギー上のメリットは全然生み出していないといってもいいぐらいですから、やめても損失はないというのが一つと、もう一つは、やめても利益の共同体がつくられていないということです。石炭政策なんかですと、いかにソフトランディング的に終息させるかということで大変に努力されたわけですけれども、プルトニウムの場合には、科学技術庁と動燃に多少犠牲を払ってもらうかもしれませんけれども、仮にやめるとしても、大した影響はないということで、今この先に、より大型化して進むか、そうでないかということを決するには、今が非常にいい時期だと思うんですね。
    この三点において、基本的な議論、是非も含めて、できれば原子力委員会の責任において、第三者の機関を設置してやっていただきたいと私は思っているわけです。その際に何が必要なのかということで、若干、私の私見を申します。先ほどの荒木さんの話ですと、原子力の意義がいろいろ語られたわけで、特に荒木さんが強調されたのは、電源の多様化によるリスク分散、これは確かに原子力の間違いないメリットであります。間違いないメリットなんですけれども、今までの賛成論、反対論を見ると、賛成論のほうはメリットばかりを列挙して、反対論のほうはデメリットばかりを列挙して、両者がかみ合わないというようなことが往々にして生じたわけです。
    両論が平行線をたどって、結局は推進論のほうが長期計画に載るというような形になっていたと思うんですけれども、この際のやり方としては、やはりエネルギー選択の路線について、どういう路線が可能なのかということを定めた上で、それについて総合評価をやるべきだと思うわけです。総合評価というのは、プルトニウム政策というのは、決してエネルギー政策といった小さい領域におさまるものではなくて、安全保障政策ともかかわるし、その他さまざまな幅広い政策領域にまたがるわけですから、軍事的な意味での合理性を含めて、経済面、あるいは資源面、安全面、その他さまざまな側面から、プルトニウム増殖という路線をやることの利害得失というのが、ほかの路線に比べてどうなのかを議論したい。直接的な比較の対象としては、軽水炉だけでいく場合の路線との利害得失というようなことについて、できれば、皆さんの率直な意見を聞きたいと、今日は出てきているわけです。時間がとりあえずきたので。
    【佐和】  鈴木さんあたりいかがですか、今の質問に対して。
    【鈴木】  そういう議論を、今日、今回はするべきだというのは私も賛成なんですが、ただ、私、戻るつもりはないんですけれども、先ほど高木さんの提起された問題で、この円卓会議はどういうことなのかという点ですね。これは、第1回もそういう議論があったと思いますけれども、私は、実は、今の吉岡さんのことにも関連があると思うんですね。結局、ここで議論しますね。それがいろいろな議論が出ていいんだと思うんですけれども、これがまた国民のみんなの意見を聞いていないんじゃないかとか、そういうことに、どういう論点を取り上げて議論をしても、そういうことが常に残るんだと思うんですね。残るといいますか、そういう問題がある。
    そうすると、私は、要するにこの円卓会議、今までの進め方というのは、私はこれだけで十分だとは、もちろん高木さんと同じように思いませんけれども、つまり、いろいろな形でいろいろな意見が出てくるようにもっと努力すべきだと思うんですが、しかし、とにかくこの円卓会議という場を設定して進めているという枠の中では、私は、これはほとんど限界に近いぐらい努力されているんじゃないかなと思うんです。つまり、メンバーの方も、たしか、私は前々回、ここに出させていただいたときに、前回の出席者についてはくじを引かれてやられていたりということもありましたし、それで十分だということはなかなか証明は難しいと思うんですが、しかし、そういう努力をかなりされているということもあるんだと思うんです。ですから、私はもし今後こういうことをさらに議論するということであるならば、円卓会議というやり方、例えばあるところで区切って、さらに別の形で、さらにこういう議論が発展するようなことを考えてもよろしいのではないかという感じがちょっとします。
    それで、プルトニウム云々なんですが、私はまず佐和さんが論点としておっしゃったリサイクルの意義、展望に関連してなんですが、これは結局、私は原子力発電を例えば日本の電源の一つとして考えた場合に、ある割合で進めていくと考えた場合には、使用済みの燃料が必ず出てきます。これをどのように考えましょうかという問題に尽きるんだと思うんですね。尽きるといいますか、つまり、そこが一番ポイントになっていて、それでいろいろなご意見があるんだと思いますけれども、私は考え方としては、これはなお有効な資源なんであって、したがって資源としてリサイクルするということが、やはり大事な考え方ではないか。それは私の考えなんです。ですから、使用済燃料というのをどのように考えようかということでとらえて議論していただければ、いろいろな具体的な議論も出てくるんじゃないか、そういうふうに思います。
    【荒木】  吉岡さんのご提起された問題に戻って恐縮ですけれども、FBRは世界がみんな撤退しちゃった。なぜに日本が一生懸命、ほかがやめたのを日本だけがやっているのかという議論につきましては、私は、これはかつての日本が先進国を追いかけていたときの発想じゃないか。要するに、かつて日本が、途上国からだんだん経済成長がしてくるときに我々が使った技術というのは、先進国の開発した技術をいわば借り物で、ある意味では、人の物まねをして、なおかつ一生懸命パイを大きくするために、各企業が横並びでいろいろと努力した。その結果、日本の経済大国が出現したんじゃないかと私は考えておりまして、今、日本は世界の第2位のGNPの大国でありますし、科学創造立国と政府も言っているように、先進国としてFBRの新しい技術開発に挑むというのは我々の責務じゃないか。それでなきゃ、日本の将来は、私はないと思いますね。
    やはり途上国が我々を追いかけてきているわけですから、日本が少なくとも一歩前を走るためには、何と言っても私は科学技術だと考えておりまして、その意味ではFBRの開発も、ほかがやめたと言っても、日本はやるべきだと思っております。
    それからもう一つ、最後のほうにご提起された、要するに各エネルギーの利害得失を論じようということにつきましては、全く私は同感でありまして、私は、さっき長々とまことに時間を長くちょうだいして恐縮でしたけれども、そういう問題提起をしたつもりでございます。以上です。
    【佐和】  それでは、吉岡さん、今の反論がありましたら。
    【吉岡】  返事なので、簡単に言わせていただきますと、私の意見では、やはり文明の先進国、後進国というのは歴然とあるものであって、それはヨーロッパが先進国で、アメリカがそれに次いで、日本がそれについていったというようなことだと思うんですけれども、先に進んだものがやめ始めた。ほとんど大方がやめてしまった。これは何なのかというと、売り言葉に買い言葉みたいですけれども、日本は脱プルトニウムの後進国じゃないかと私は思っています。つまり、先端技術を進めるのが先進国だというような価値観は、19世紀から20世紀ごろまでの時代の支配的な価値観であって、先端技術は何でも前に進めるのが正しいんだという時代では、おそらくは21世紀はなくなってきているし、既に1970年代ぐらいからはそうではなくなってきている。その最初の例というのがSSTだったと思うんですけれども、脱プルトニウムというのが、技術に対して先進的な取り組みだと私は考えております。以上です。
    【佐和】  西川さん、平野さん、高木さんの順で、それぞれ三分以内でお願いします。
    【西川】  これだけいろいろな立場の人が、それぞれ勝手にしゃべるわけですから、意見として集約できるというか、一定の方向でまとめて議論をしていくというのはなかなか難しいだろうと、最初から思っておりますので、勝手にしゃべらせていただきますが、今日の9回目のこの円卓会議のテーマは核燃料サイクルであります。それを承知の上で出席をしていながら、こういう発言をするのは、少し身もふたもないかもしれませんが、私がつくづく感じますのは、これは我々が議論するテーマなんだろうか。それとともに、何で今ごろこんなことを、こんなことを言っては語弊があるかもしれませんが、議論しなければならないかというのが、出席者の一人としての私の立場での感想であります。
    原子力発電所が有効かどうか、それから、どういうふうな位置づけをするかという議論はちょっとさておきまして、既に日本においては原子力発電所が存在をして、毎日、発電をしているわけです。今日、ここのライトも、テレビカメラも、その電力を使って動いているのが相当あるだろうと思っておりますけれども、そういう前提に立つと、今、我々がこういう核燃料サイクルについて考えなければならない選択というのは、そんなに幅がないのだろうと思っております。原子力発電所を稼働させている限りにおいては、使用済燃料というのは自動的に出てくるわけであります。さっき、どなたかの先生がおっしゃいましたけれども、その使用済燃料についてどう対処するかだけの選択でありますから、そんなに幅がないのだろうと思います。
    一つは言ってみれば、リサイクルをして、少しでも有効活用をしていくかという選択を、するか、ないしは直接処理というのでしょうか、というような解決の方法、直接処分でしょうか、その2つしかないんじゃないか。さらにもう一つ、極端に言えば、原子力を全部とめてしまうということも、使用済燃料の処置の方法としてあるかもしれませんけれども、でも、現実に考えて、3分の1を負っている原子力をある日突然やめたと言ってとめてやるほどの勇気が、日本の国民は、選択するそういうものを持ち合わせていないと思いますから、やっぱり前段の2つに収れんされるんだろうと思いますが、そういう狭い選択の中の議論を私どもの立場の者が、なぜこの場で改めて考えなければならんのか。今まで、そういうことを考えるべき立場とか、進めてきたとか、もっと基本のところでそういうことを考えるべき、そういうものは一体どこへ行っちゃったんだろうか。
    たまたま今、私どもはこういう場に祭り上げられたとは言いませんけれども、議論をさせていただく機会を与えていただきましたけれども、よく考えてたどると、根っこのところはそういうところへ行くんじゃないか。そういうことが、巻をああいうふうに町を2分させて、住民投票までしなければならないという選択をさせた、巻の方々を追い込んでいった遠因でもあるだろうと考えているところです。それじゃ、おまえはどういう選択をするんだということですけれども、正直に申し上げれば、そういうどっちの選択をするかという正確にして、十分な情報とか、知識とかいうものを個人的に持っていないものですから、自信のある発言は、そこから先はできがたいところです。
    【佐和】  よろしいですか。それでは、平野さん。
    【平野】  平野です。
    今日のテーマは、主たるものが核燃料サイクルということであるということで、何か青森に一番関係があるのではないのかというような意味合いで出席を承諾させていただいたわけですが、今までの議論を聞いてみて、何かしら、青森から見て、どこか外国へ迷い込んだような感じがしてならないんです。
    というのは何かといいますと、荒木さんもおっしゃったように、いつも言われることは、エネルギーの必要性については言われるわけです。これは、私どもも使っているから、エネルギーの重要性は認識をしています。ところが、それがなぜ青森なのか。しかも青森の将来にどれだけのものが運ばれるのかというのは一切不透明なんです。ですから、2年以上前になりましたが、当時の北村さんという知事さんが、原子力の現在の新長計のご意見を聞く会でもご発言をしていますし、7回目に今の木村知事さんもここの場で発言をしていますように、青森だけがなぜというのが率直な県民の気持ちなんです。これは、土田さんも、多分現職という立場からそんなに強くは言えないで、もどかしさをある意味で感じているのではないかと思うんですが。しかも、原発を始めた時点から、ごみが出る、使用済燃料が出るということは承知をしておったはずなのに、それの始末をどうするのかということについて、本当に真剣に考えていただいていたんだろうか、そういう気がしてならないんです。
    青森で現在進められているものとしては、もう既にウラン濃縮工場と低レベル廃棄物と、それから海外返還廃棄物の貯蔵施設とが操業しているわけですが、これの将来計画というものも、現在は事業者からこれこれの申請が出ていますという、現在の説明はされるわけですが、将来的にどうなるのかというのは一切不明確のままです。そういう形で情報が出てこないで、しかも説明を求めればエネルギーの必要性だけを説かれる。これでは、青森県民の間にいつまでたっても不安も懸念も解消されないということなわけです。
    私はここへ来て、せっかく青森からはるばる来たわけですので、もうちょっと議論をかみ合わせて帰りたいと思っていたのですが、何か、私ども田舎者のせいか、前もって資料を出せと言われれば、ない頭を振り絞って資料を出したりして、発言の時間が制限されるでしょうから、後でお読みをいただいたことによって、こちら側の考えも酌み取ってもらえるのではないかという気がしたりして出したわけですが、そういう面では、荒木さんあたりの先ほどの発言も、前もって私どもに資料なりでお配りをいただいて、その要点を説明させていただいて、議論がかみ合うような形にでもしていくのでなければ、何のためにここにこういう会議の場を設定したのかもわからんという感じもします。
    そういう意味合いで、円卓会議に出てきてよかったのか悪かったのか、せいぜいふだん考えていることを4ページにまとめさせていただいて、提出をさせていただいたので、そのことだけは科技庁の方々はじめ、原子力委員会の方々も目を通していただいて、できればそれに対するお答えなり、それを取り上げて真剣になって検討していただくなりということをしてほしいということだけをまず申し上げさせていただきたいと思います。
    【佐和】  今、平野さんのご意見の中に、円卓会議の運営の仕方という問題がまた出てまいりましたので、茅さんから……。
    【茅】  これは単なる説明ですが、今、平野さんがおっしゃったように、平野さんの出されたものがここにございますけれども、最初のときは、こういったものは皆さんに出していただいて、そしてそれを説明するというタイプのことを最初にやりまして、それからその後に議論というふうにやったんです。ところが、現実にやってみますと、これはかなり弊害もありまして、皆さんがそれをほとんど読むような形になってしまって、それだけでほとんど時間が過ぎてしまった。これでは、フリーなディスカッションができないということで、そういうふうなやり方を変えたというのが第一点です。
    第2点は、この円卓会議で、皆さんに非常に立派なものをつくっていただいて、あらかじめ出すということになると、かなり前に準備をしてお願いをしないとだめだ。ところが、この円卓会議は、ご承知のように、4月からもうこれで9回目という具合で、かなり頻度が高いものですから、そういう時間的な余裕がなくて、皆様方にそういうお願いができないというのも、もう一つの理由です。
    ですから、そういった意味で、一応おっしゃったようなご趣旨はよくわかりますが、そういうことの持っている問題点をいろいろ我々のほうとしても考えて、今日のようなやり方になったんだということでご了解をいただければありがたいと思います。
    【佐和】  高木さん、どうぞ。
    【高木】  高木です。
    今の問題からちょっと入りたいんですけれども、おそらく青森の住民の方が出られるのは初めてじゃないかと思うんです。そうではないですか、この円卓会議に。
    【佐和】  自治体の長の方は別にしてですか。
    【高木】  ええ、自治体の立場の方は別にして、実際の……。
    【佐和】  だと思います。
    【高木】  だと思うんです。ですから、やはりそういう青森の、やっぱり非常に一つのセンターになっているところですから、今、青森というのは。特に今日のリサイクルという問題に関して。そういう住民の方がせっかく出てきたときに、荒木さんに対して、私は何も恨みはないですけれども、荒木さんは12分だか十何分しゃべったけれども、平野さんは4分というのは、やはり平野さんをもう少し尊重してあげたっていいと思いますよ、私は。そのくらいの配慮はしたって、私は十何分欲しいとは言いませんけれども、それはモデレーターの方、考えてほしいと思います。
    それを一つ言った上で、2分だけ本来の私の意見を言います。
    先ほど荒木さんから、海外ではFBRをやめたけれども、だからこそ日本としてはやるんだという話がありましたけれども、そういう議論は別の言い方が幾らでもできるんです。だからこそ日本は、日本の知恵と技術を絞って太陽エネルギーのようなことをきちっと、薄くて使いづらいということがあるというようなことも含めて、それをどう人間の知恵で使っていくかということとか、省エネルギーの一定の努力はしていると言いますけれども、まだコージェネであるとか、日本の産業構造の中でこれでいいのか、もっとエネルギー依存型でない文化をどう発展させるのか、文明の問題になってくると思いますけれども、やっぱり今の文明はエネルギー依存型だから、こういう問題が起こるということが相当あると思うんです。そういうことも含めて、アジアの中でこれからエネルギーの問題は本当に大事になってくると思います。日本が先進的な役割を果たすのは、そういうところにこそ努力をすべきだという言い方ができるわけで、私はそう思います。
    リサイクルについて一言だけ。
    リサイクルの意義について言えば、私は、リサイクルというのは、鈴木さんのような考え方があるのはもちろん承知の上ですけれども、なおかつ、その中では、リサイクルの持っている、それが核燃料サイクルを全体を煩雑にし、プルトニウムの問題をつくり、いろいろな厄介な問題をつくっていくという側面を除いて、考え方としてリサイクルはプラスだというようなだけではいかなくて、それはマイナス面が非常に多い。ただですら、軽水炉ですら合意が成立していない。軽水炉ですら、そこそこ大事故は起こさなかったということはあるかもしれない。それは海外の先行経験をうまく日本が生かしたということはあるかもしれないけれども、それだって、いつ何が起こるかわからないということに、日本の多くの人が不安を持っているというのが巻の住民投票であり、その現実じゃないですか。そのときに、そのややこしさを拡大するようなリサイクルなんていうのは、私はやめるべきだというふうに一言で言っておきます。細かい議論はまた後でやりたいと思います。
    【佐和】  ここらで、原子力委員会の側のあまたの問題点が提起されたわけですが、特に今まで、ぜひ答えておきたいという点はございますでしょうか。
    【高木】  ちょっといいですか、その点についてなんですけど。
    先ほど私は、巻の結果について、原子力委員会は撤回すべきだという話をしたわけですが、それに対する原子力委員会の意見をぜひ聞きたい。
    それから、今の平野さんは、青森にどういう廃棄物が来るのか、海外から返ってくるとか、そういうことの全貌が見えないという話。それについては、ぜひ原子力委員会から、こういうふうになっているんだということについて、あるいは電事連のほうとしては、こういうものを青森に持ち込むという、その全貌についてちゃんとした答えが欲しいと思います。
    【佐和】  それは荒木さんにもということですか。
    【高木】  両方です。原子力委員会……。
    【佐和】  それでは、伊原さん。
    【伊原】  巻の問題につきましては、中川委員長がこういう発言をしておられます。「今回の住民投票において、原子力発電所建設に係る巻町住民の意思表示がなされました。いずれにしても、原子力施設の設置に当たっては、地元をはじめとする国民のご理解とご協力を得ることが重要であり、今後とも原子力に対する一層のご理解とご協力が得られるよう、さらなる努力を行ってまいりたい」。こういうことでございまして、特に原子力施設の安全問題というのが非常に大きな問題であったかと思いますけれども、そういう面について、さらに安全のレベルを高める努力をいたしながら、原子力発電というものがどういう意味を持つかということについて、さらに努力を重ねてまいる必要があると思っております。
    それから、廃棄物の問題でございますが、基本的には、将来にわたって青森県に高レベル廃棄物がいつまでもあるということではないということを県知事さんにお約束しておるわけでございます。この廃棄物の処分の責任を持つ実施……。
    【平野】  ちょっと違うんですが、将来持っていくとかいかないとかではなくて、この地域に、土田さんの六ケ所村に、一体どれだけの廃棄物を集めるつもりなのか。そのことが見えないと言っているんです。例えば、SHPが先立って中間取りまとめを発表されたわけですが、あの中では、3万8,000本ケースから7万本のガラス固化体にして最終処分をするケースまで出されたわけですが、とすれば、7万本、六ケ所に一時貯蔵するということなのか。あるいは使用済燃料をリサイクルして使った後の使用済燃料もまた青森へ持ってくるということなのか。
    【伊原】  7万本につきましては……。
    【平野】  ウラン濃縮にしても、例えば原料ウランを持ってきて、持ち出されるのが 一割ちょっとなんですよね。あとは劣化ウランで、全部地元にそのまま残っている。しかも、入ってくるときは電力さんの所有物なんですが、残された劣化ウランというのが、電力さんが所有権を放棄されて、原燃さんのものだという。だとすれば、これはもうウラン廃棄物という形なのか、そういった内容の説明が残念ながらないので、土田さんあたりも、村の中の人たちに対する説明も、まさか村がその責任を持って説明するというわけにもいかん。その辺をはっきりしてほしいというのが、国策の位置づけを明確にという、木村知事さんなり、当時の北村知事さんが、そういうことを望んで発言しているということをやっぱり理解をしていただきたいと思います。
    【伊原】  その点はよく承知をいたしております。ただ、今のご発言はかなり細部にわたる数字も必要かと思いますので、ちょっと事務当局のほうから補足説明をさせたいと思います。よろしゅうございましょうか。
    【事務局】  科学技術庁の原子力局長でございますけれども、平野さんからご質問のございました廃棄物の問題、二つの問題があろうかと思いますが、一つは、低レベルの放射性廃棄物の問題については、最終的には300万本のドラム缶をお願いしたいということで、ただし、現在の許可を得ておりますのが20万本相当ということで、全体像を明らかにしながら、現在の施設の建設は20万本ということで説明をさせていただいておると思っております。
    それからもう一点、高レベルのガラス固化体の、いわゆる一時貯蔵の問題でございますが、この点につきましては、海外で再処理を委託した結果発生します高レベル廃棄物については、最終的に3千数百本ということの持ち帰りがあるわけでございます。ただし、これも、現在の施設につきましては1,440本という内訳で、今、施設が成り立っておるということのご説明は申し上げていると存じます。
    【高木】  ちょっと細部について質問があるんですけど……。
    【佐和】  ちょっとお待ちください。
    【近藤】  近藤です。
    ちょっと私、何か高木さんが司会、チェアマンをやっているんじゃないかと思うんです。私は、こういう進行の仕方というのは意外というか、モデレーターがきちんとある種のポリシー……。私どもは招へい者ということでここに座っていて、等しい立場で意見を言うと……。
    【佐和】  いや、手を挙げていただければ……。
    【近藤】  いや、そうじゃなくて、議事進行の仕方についてです。先ほど、高木さんが発言されて、この人の意見を聞くべきだというと、それをモデレーターが、そうですかと振ってしまうというのは、私はちょっと意外というか、そういう……。
    【佐和】  今、原子力委員会に振ったことですか。
    【近藤】  そうです。それから、やっぱり基本的にその辺は、全くここはそういう……。原子力委員会には発言してほしくないという考え方もあると思うんです。原子力委員会はよくよくこの円卓会議でご意見を聞いて、モデレーターがそれをどうするか知らないけれども、サマライズするか、提言をまとめて、それをある実感をもって、それに対して原子力委員会として意見をまとめて、しかるべき方法でそれを出していく。あるいは先ほど既に吉岡さんから提案があったように、今日は議論をするんだけれども、吉岡さんもそういうふうにおっしゃった。つまり、ある種の部会などをつくってきちんとした議論をする場をつくってほしいとおっしゃった。そういうようなことであって、ここで原子力委員の追及集会みたいな運営というのは、私は非常に不可思議というか、円卓会議という名になじまないというふうに思います。
    【佐和】  要するに、18人で会議をするというのがもともとの建前で、モデレーターと原子力委員と招へい者10人ないし12人ということでやってきて、過去の円卓会議の場合は、むしろ原子力委員会の方の発言はもっと多かったと思うんです。今日は、今まで全然ご発言がなかったので、質問をそちらに振ったということで、特に原子力委員会を追及するとか、そういうつもりは毛頭ございません。ですから、原子力委員会の今、局長から答えがあったわけで、そして次に荒木さんにお願いしようと思っていたんですけれども、よろしいですか。
    それじゃ、荒木さん、特にございませんか。
    【荒木】  私は、今、原子力局長がすべてお答えいただいたので、私からご説明することはありません。
    【高木】  そう言われたんですけれども、私は、原子力委員会を今まで追及するような立場で話をしているつもりはないんです。ただ、場合によっては原子力委員会の考え方を聞いておきたいということは当然あるわけです。事実を確かめておきたいということはあるわけで、今、原子力局長のお話、もうちょっと伺いたいんです。平野さんもお聞きしたいことじゃないかと思うんですけど、その海外返還廃棄物の中で、低レベル、中レベル、中低レベルについても六ケ所村に返ってくるのかどうか。スワッピングという話も、一部高レベルに関してという話も、イギリスでは少なくとも文書に出ているようですけれども、それについてさらに説明を少し伺いたい。
    【事務局】  原子力局長の岡崎でございます。
    今の高レベル以外の廃棄物の返還の問題もあります。高木さんがおっしゃいましたスワッピングの問題というのも、一つの可能性としてイギリスが検討しているということも事実でございます。したがって、そういった問題に今後、事業者がどのように取り組み、その結果として、どういう施設をどこの地点にお願いするかというのは、今後決められていく問題であって、今はまだその問題が決められたということにはなっておりません。
    【高木】  六ケ所村に返ってくるという話にも決まっていないということですか。
    【事務局】  具体的に、最初に、六ケ所村にお願いをした中に、海外からの全体の廃棄物の返還をお願いするということの全体としての位置づけはございますけれども、具体的にどの程度の量をどういう施設でお願いするということの具体化には至っていないということであろうかと思います。あるいは、むしろ荒木会長のほうからご説明があったほうがいいかもしれません。
    【佐和】  松浦さん、どうぞ。
    【松浦】  松浦でございます。
    吉岡さんの提案された問題に返ってよろしゅうございますでしょうか。
    吉岡さんは今、プルトニウム政策を考える世界史的なチャンスだと言われましたが、私もまさにそういう時点であろうと思います。ただ、立場は大分違うと思いますが。その中で吉岡さんは、先進国は全部プルトニウムを使うのをやめたと言われましたけれども、確かにアメリカは、いわばノン・プロリファレーションという立場からやめることを決定しておりますけれども、先進国でもフランスはやめておりませんし、ロシアもやめておりませんし、やがて先進国になるのではないかと思われる中国もこれからやろうとしているというわけで、先進国が全部やめたというのは当たらないと思います。
    それからもう一つ、やめても大して損失はないとおっしゃいましたけれども、実は核燃料リサイクルというのは、私は、実施しなければ、将来的には非常に大きな損害を生ずると思います。これはプルトニウム、プルトニウムと、核燃料サイクルの場合、プルトニウムが先に言われますけれども、実は核燃料リサイクルの一番本質的なところは、ウランの238を使うことでありまして、プルトニウムは単にその媒体物にすぎないんです。ウラン238をどれだけ使うかということが一番本質的なところだと思うんです。この物事の大切さというのは、今大切だけれども、将来大切でない、今大切でなくて、将来大切でない、今はあんまり大切じゃないけど、将来非常に大切だと、こういうふうにあると思うんですけれども、本当の大切さはこの掛け算で決めるべきだと思うんです。核燃料サイクルの場合、特に238のウランを十分に使うかどうかというのは、今は確かにまだそれほどの重要性を持っていないけれども、将来においては、特に21世紀の人口が増え、エネルギーの利用が増え、そういう状況を見たときには非常に大切な問題になってくる。したがって、今やめても大して損害はないというのも当たらないのではないか。
    それからもう一つ、先進的な技術をどんどんやっていくというのだけが、先進的な考え方というのはもうおくれた考え方だと。今はそういう世の中ではないというご指摘がありましたが、そして、その例としてSSCの失敗を挙げられましたが、SST……、SS……。
    【吉岡】  超音速旅客機です。
    【松浦】  ああ、そうですか。私は、SSCの核物理の衝突実験と取り違えました。衝突実験について言いますと、これは、ある意味でいうと、まだ十分進んでいない技術で先端的なことをやろうとしたから失敗したのであって、十分先端的な技術が進んだときには、また同じことがちゃんとなされるであろう。私は、そのSSCの加速器のことを考えましたので間違えましたけれども、例えば、あれは何十キロという加速器をつくろうとしたから失敗したので、現在既にアイデアが出ているレーザープラズマ加速というような新しい技術を考えれば、成功すれば、それはもう何百分の一という距離になりますので、将来、やはり同じことが追求されるであろう。これは人類の知見の進歩の方向としては、やっぱりその方向に行っているのではないか、こんなふうに思います。
    【佐和】  平野さん。
    【平野】  私が問題提起みたいにしたのは、私に答えを出してくれと言っているのではないんです。青森の不安、懸念を解消するようなことを科技庁なり原子力委員会なりが考えていただきたい。また同時に、電力の場合でも、ただ単にエネルギーを使うことだけではなしに、それと同時に発生をする廃棄物についてどうするのかということの答えもきっちり持って、その上で進めるという努力をしてほしい。そういう説明を青森へ来てやるということをここで議論するという形で、問題提起をしたつもりなんです。私に答えを言われて、それで納得しますかなんていうようなことでやっても、何にも意味がないわけですよね。
    ここでやるのは、いつも斜め読みですが、今までの円卓会議の議論を聞かせていただいても、どちらかというと、一つは、エネルギーが必要だという観点に立っての議論、これが一つ。それからもう一つは、立地点、福井の知事さんや柏崎の市長さんを含めまして、そこでは、やっぱりもっと地元に対する配慮が必要だということと同時に、ある意味で荷物とも言われている使用済燃料を早く持ち出してほしい、そういう約束があったじゃないかと言わんばっかりの議論があるわけです。そこのところの使用済燃料を国全体としてどうするのかという議論がなされないままに、エネルギーの必要論ばっかりやられている。そういうことでは困るということと同時に、ある意味では、そうなっては、一応三法交付金を当て込んだ青森の立地地域としては、入ってこなくなれば、これもまた地域振興がストップするのでは困るということにもなるだろうし、そうなった場合には、ただ単に後追いみたいな形で、立地をしたから交付金を出して、これこれのものに使いなさいという金の出し方ではなくて、原子力と共存していった場合には、こういう地域のつくり方がありますよというような見本を土田さんあたりに、もっとちゃんとしたコンサルタントもお世話をしたりして、それをやっていくみたいな議論をしてみればいいんじゃないですか。そういうかみ合うみたいなことをやらないで、ただ片一方でやって、片一方ではお金を出しているからいいじゃないかという進み方に対して、私は、巻がノーと言ったんだと思うんです。
    【佐和】  土田さん。
    【土田】  土田でございます。
    今、返還廃棄物の明確な量を委員会とか電事連の会長に求めたって、私は無理だと思います。なぜならば、私の知る限りでは、量そのものを極めてコンパクトに少なくしようという科学的な努力が今進められているわけでありまして、各国では、特にフィルターの性能が上がったことによりまして、いろいろな形での廃棄物の量を減らそう減らそうという努力はされているわけですから、従来から考えていた、いわゆる再処理を委託している使用済燃料の量から割り出した固化体の量がそのとおり来るのかというと、私は来ないと思いますし、今ここで、だから何千本来るんだというようなことを、私は明確に答えを求めたいとは思っておりません。これも、やはり年々各国の原子力に対する情報公開が、技術公開、あるいは交換がされて、非常に進歩しているということも私も見たり聞いたりしてわかっておりますし、これは変わってくるのではないかと思います。
    それと、いろいろサイクル事業、あるいはバックエンドの問題、議論をやっていますけれども、先ほど西川市長さんがおっしゃっておりましたけれども、やっぱり、じゃあ、我が国が年々2%ずつ電力需要が伸びていくというのに、原子力をやめて、それにかわるエネルギーを生み出すことができるかどうか。聞くところによりますと、今、青森県の竜飛崎で、風力発電が東北電力で試験的に行われておりますけれども、津軽半島から能登半島まで適地に並べても、100万キロワットの電力ができるかできないかという、そういうこと自体を国民の方々が理解するならば、いかに代替エネルギーを求めるのは難しいということはおわかりになるんじゃないでしょうか。じゃあ、スイスみたいに国民投票によって原発をノーと言った。水力発電もだめ。それじゃあ、主要な道路の信号機を全部外し、国鉄の遮断機を外して、しかも自動販売機は国鉄の駅に一カ所だと。ハイウエーのライトが日暮れどきには全部つくけれども、夜中には10分の1しかつけていないというような、日本人がそんな辛抱をできるでしょうか。できなければやっぱりもともと原子力に当分は頼らなければならないということから、この話は進んでいるんですから、やっぱりプルトニウムにしろ、リサイクルにしろ、いろいろこれから安全性を高めつつ、日々進歩していく科学の技術を信頼しながらやるということに、国民の同意を得るような努力を私はぜひ委員会でやっていただきたいと思います。
    以上です。
    【佐和】  そろそろ予定の3時半が迫っています。吉岡さん、手を挙げている。1分で済むならば今発言して、もしそれ以上時間がかかるようだったら後半に。
    【吉岡】  じゃあ、1分でやりますと、松浦さんに言われたので、一応コメントをします。先進国が全部やめたのは当たらないと言っていますが、フランスは、プルトニウム燃焼用の研究炉としてスーパーフェニックスを使うので、増殖はしないと思います。ロシアは、GNPでいうと先進国かどうかはよくわからない。中国についても同じです。ですから、うそは、私は言っていない。
    もう一つは、将来的にプルトニウムをやめることが大きな損失をもたらすかどうかですけど、これは非常に間違った考え方だと思っていまして、つまり、プルトニウム技術というのは、半世紀やりましたけれども、いまだに小型の発電炉で事故を起こして何カ月もとまるという、そういう欠陥技術であって、経済的にもなっていない。果たしてフィージビリティーがあるのかということが問題であって、フィージビリティーがあるかないかわからないものについて、将来ものになるぞという想定に立って、大きな損失をもらたすということが初めて言い得るわけであって、これは、私の言い方では、未来に宝くじで当たることを想定して、老後の設計を立てるものだというふうに思います。
    先端技術を何でも進めるのは必ずしも正しくないというのが私の意見であって、先端技術は全部だめだというのではなくて、冷静な判断に立って、だめなものはだめ、いいものは進めるという、そういう方向づけをすべきだという見解です。
    以上です。
    【佐和】  それでは、今の論点はまた後半に譲るとして、ここで休憩に入りたいと思います。後半の開始は3時45分ということにさせていただきます。約15分間の休憩でございます。よろしくお願いします。

    (休 憩)


    【茅】  それでは、後半を続けたいと思います。私、茅でございますが、後半の司会をさせていただきます。
    始める前に、先ほどの議論を聞いておりまして、近藤さんがおっしゃったことは、確かにモデレーターとしても少し考えるべきことだと思いますので、後半の運営の仕方を改めて確認させていただきますが、仮に、ある方が発言されて反論される場合でも、すぐそこで話し出さないで、必ず手を挙げていただけますか。そして、手を挙げていただいて、私が指名をさせていただきますので、その上でご発言をいただきます。そうでない場合には、場合によっては私は抑えさせていただきますので、ご了解をお願いします。
    そういう形でやらせていただきますが、先ほどいろいろな議論がございましたけれども、核燃料リサイクルそのものの話には、なかなかどうも到達していかないというのが、正直言って、私が感じているもどかしさでございます。したがいまして、できるだけその点を中心に議論を展開していただきたいと思うんです。
    この問題には、当然いろいろな側面がございます。それは最初に事務局側から説明があったとおりなんですけれども、今までの前半の中で出てきた一つの論点というのは、まずFBR、これを推進していくというのは、やはりどうしても我々はウラン238を利用しなければいけない。いわば資源という側面から考えるべきだという、そういった側面でFBR路線というものを推進したいというお考えが一つ出てきたわけです。
    そして、例えば吉岡さんの側から、その考え方に対しての疑念が表明されている。これは、いわばFBR推進側の考え方の一つの大きなポイントだと思うんですが、この問題を例えば一つのポイントにいたしまして、この考え方について賛成論、反対論、あるいは一般的なご意見があればいただいて、それから現実に今、ワンススルーで実際に処理をしているわけですけれども、それから先のFBR路線に変わる段階でどういうマイナスがあると考えるか。これは、例えば、今日何人かの方からペーパーをいただいておりまして、その中にも多少指摘してあるわけですが、この辺についても触れていただいて、それを中心に議論をする、そんな形にできればよろしいなと思っております。
    なお、この中で、先ほど荒木さんが4時過ぎにお帰りになるという話がありましたので、あと10分ぐらいしかないんですが、できればお帰りになる前に一言言っていっていただきたいと思います。今のような線で今日の後半を進めていきたいと思いますが、よろしゅうございますか。
    それでは、最初にさっき申しましたように、ウラン資源の有効利用という立場から、やはり核燃料リサイクル、FBR路線を進めるべきであるというご意見がございましたが、これにつきましてご意見を伺いたいと思います。
    まず、吉岡さん、どうぞ。
    【吉岡】  4時までに時間がないので、早めに話します。
    私の意見では、総合評価として、プルトニウム増殖路線と、軽水炉だけの路線を比較すべきだという見地であります。
    資源の有効利用というのは、その資源的側面の一つではあるわけですけれども、総合評価のうち、資源的側面というのはその一つでしかなくて、しかも有効利用というのは、さらにまたその一つの側面でしかないということであって、ですから、資源をとにかくリサイクルして使い切るという、そういう観点からだけ、あるいはそういう観点を特別に重視して論を立てたのでは、やはり総合的判断を誤るおそれが大きいのではないかというふうに考えます。
    それで、資源的側面からいえば、FBR方式と軽水炉方式が、メリット・デメリットがどこにあるのかということを考えると、重要なのは、経済を抜きにしますと、資源の安定供給がいかに行われるかということであって、私の意見では、FBR方式のほうが資源の安定供給が損なわれる、不安定になるという意見であります。
    というのは、70年代後半以降のアメリカ等の国際社会の動きを見ればおわかりになるように、プルトニウムの利用というのは非常にホットな国際政治の問題であって、世界の核状況が少し変わるだけで、それがプルトニウム民生利用、あるいは民事利用に非常に大きく響いてくる問題であって、その点でプルトニウムを扱うということは、不安定なエネルギーを扱うんだというような側面が非常に大きい。むしろその意味では、エネルギーセキュリティーにとって、軽水炉だけをやる場合は、これは国際社会で、それはいいんだという合意が一応成立していると思いますので、問題は小さいと思うんですけれども、プルトニウム利用の場合には、非常にそれが不安定であるというマイナスがあるのではないか。資源的にエネルギーセキュリティーの上ではマイナス、ただ、資源の有効利用という点では若干のプラスがあるというふうに思われますけれども、トータルで見ると、プルトニウム利用というのは賢明ではないというのが私の意見です。
    【茅】  それでは、荒木さん、どうぞ。
    【荒木】  荒木でございます。
    今、吉岡さんからお話がありましたように、資源の有効利用という点で、吉岡さんも異論はない。こういうお話であると思いますが、結局、今の軽水炉路線を続ける限り、必ず使用済燃料というのは出てくるわけです。使用済燃料の中には必ずプルトニウムが含まれている。だから、これをどう処分するかということに結局尽きるのではないかと思っているわけです。一つはご案内のようにワンススルー。もう一つはリサイクルでありますけれども、リサイクルは先ほどから申し上げてきましたように、少資源の日本にとりましては、この資源を再資源化するということは、これはそう異論がないんじゃないかと。結局、プルトニウムをどう処分するかということになりますと、今申し上げましたリサイクルの路線では、資源を有効活用し、なおかつプルトニウムの、いわゆる廃棄物を少なくとも 40%減容して、しかもその廃棄物のレベルにおいてこれを処分できるというメリットがある。ただ、これに対しまして、いわゆるワンススルー、直接処分ということになりますと、これでもプルトニウムはあるわけです。抽出するかしないかは別としまして、必ずプルトニウムはある。プルトニウムをどう処分するかということを、直接処分ということが実はあんまり議論をされていないのじゃないかと私は考えています。
    この議論を進めた場合に、結局いずれかの道を選択せざるを得ない。私は直接処分というのは大変難しいことだと、技術的にも、あるいはコスト的にも。それでは、直接処分もだめだ、再処理路線もだめですということになるとすると、もとへ戻って、要するに軽水炉を否定するということになりますと、結局、今現在の、これはちょっとあんまり話が脱線して恐縮ですけれども、エネルギーの中で3分の1を占めている原子力というものをもしもないと考えた場合に、電気のないリスクと、それから資源を有効利用していくかというリスクのどちらを選択するかというのが、私はやはり国民的な課題じゃないかというふうに考えております。
    【茅】  近藤さん。
    【近藤】  近藤でございます。
    今、吉岡さんのお話に対しての荒木さんのコメントがあったわけですが、吉岡さんの美しい表、これを見ながらお話を伺っていたんですが、これでは既に1、2、3という路線の評価が完了している。つまり、非原子力路線はビューティフルな将来技術があって、化石燃料もビューティフルな技術がある。いやビューティフルじゃないのかな、で、3はどうしようもない技術と評価が完了しちゃっているんです。
    だけど、今、これをターゲットとして研究開発をしているわけです。ですから、未来は我々の手中にありというのが、つまりそういういいものが実現できるプリンシプルがある。そうすると、問題はそれに対してどういうリクワイアメントを我々は課すか。それは技術的、社会的、まさに吉岡さんがおっしゃったように、さまざまなリクワイアメント、単に技術的のみならず、社会的リクワイアメントを課して、その中で、それを満足する技術をこれからつくっていく。そのつくっていくということに関して、フィージビリティーがありやなしやが議論されるべきだと思うんです。この表はそこの議論に、よその国ではもうそのフィージビリティースタディーを終わってしまって、バッテンをつけたから、私もバッテンをつけましたというふうに読めてならないんですけど、私はそこがちょっと、そんなものでもないんじゃないかと。
    さまざまな研究開発ですから、長期の研究開発というのは、ある意味では限られたリソースをどこへどれだけ投入するかという、そのコストベネフィットでそれぞれの国がそれぞれの事情で決めていくことであって、我が国として、我が国の置かれた環境の中で投資するとして、そのときに、こういう問題、ピース、セーフティー、例えばセーフティーだけとって見ても、高速炉の安全性についてBCDと書けるだけのデータベースがありますかと。つまり、およそ私が理解している、例えば『サイエンス』とか、『サイエンスアメリカン』とか、それぞれ雑誌に出ている一般的なやや原子力に批判的な方ですら、この辺についてはそんなに差をつけていない。むしろ、順番が逆転したデータを公表している方もいらっしゃるわけです。しかも、未来ものは技術開発中ですから、我々の手中にあるわけで、そういうご批判をいただきながら、技術開発者がよりいいものにしていく。その結果を、むしろ、ちゃんとチェックできる仕組みが必要ということがポイントであって、今ある過去の成果というか、そういう事で未来を決めてしまうというのは、私は多分正しくないご議論だと思います。
    【茅】  吉岡さんには反論があるだろうと思いますが、後でまとめてやっていただきますので、先にほかの方を。
    【鳥井】  モデレーターも、個人として発言をすることが許されているわけでございまして、私、ちょっとこういう視点はどうかなということを申し上げてみたいと思います。 例えば石油資源みたいなエネルギー資源が、いつ枯渇するかというのはよくわからないわけですが、枯渇するような状況のときを考えますと、埋蔵量の半分ぐらいを使っちゃったというような状況を考えますと、これは相当、国際紛争のもとになるような気がするわけです。過去の戦争を見てみましても、かなりエネルギー資源の奪い合いというのが戦争の原因になってきたわけで、軍事力に大変自信を持っていたり、核兵器をお持ちの国は、まあ、戦争になっても、頑張ってとってくりゃいいやという選択肢もあり得るような気がするわけですが、日本のように、国際紛争を軍事力で解決しないんだという国が、どうやったらその事態に対処できるか。多分、戦争して奪い合う以外に、何かこういう道もあるよ、ああいう道もあるよということを、世界に向かって示すことではないかという感じがするわけです。
    そういう意味で言いますと、もちろん太陽もですが、プルトニウムもトリウムなんかも考えて、多様な選択肢というのを、世界に示し得るような技術を持っている必要があるんだという感じがするわけでございます。そういう意味で、荒木さんが最初におっしゃった選択肢の幅を広げるということが、日本の安全とか世界の平和ということに、やっぱりものすごく大きく影響するんじゃないか、こういうふうに考えている次第でございます。
    【平野】  まず、今までの進め方、休憩前に返るみたいで恐縮なんですが、結局のところは、エネルギーの必要性をにしきの御旗みたいな形にして、あたかも今、進めなきゃならんみたいな錯覚を起こさせているではないのか。ところが、私は、今の現状は、もうちょっと時間をかけて議論していくだけの余裕があるのではないのかという気がしています。そういう意味合いで、本当に原子力の選択よりないのかどうかも含めまして、もう一遍じっくりした議論をして、その集約の上に立って、国のエネルギー政策なりというものをつくり上げていくということがなされていいんじゃないのか。何かしら今までのところは、ある意味で便宜主義的に、無責任とでも言いたくなるみたいなやり方で進められてきたのが、今の原子力政策なのではないのか。10年来、同じ表現なんですね、原子力長期計画を拝見してみましても。あるいは、今年の基本計画を見ましても、4年ほど前の基本計画と比べてみても、ほとんど表現に変わりがないみたいな形で。結局、既成事実は一方で進められているけれども、根本的に、負の部分に対しての配慮というのが非常にない。
    それからもう一つは、今まではある意味で実験炉、原型炉、実証炉、商業炉というような手順を踏んでやられてきたみたいな感じがするんですが、ここのところへ来て、それが一足飛びに、全く最初から実用炉を考えた形になっている。その一番いい例が、青森の大間の、ATRからABWRのフルMOX燃焼炉という形で打ち出されたことなのではないのか。そういうことではなしに、もうちょっとみんなが議論し合って、納得をし合って進めていくということを、もう一遍振り返っていただけないものかというのが私の率直な気持ちなんです。
    【茅】  今のお話は、前半のときに出ました栗田さんのご提案とも関連するんですが、それは後でもう一遍議論することにさせていただいて、なお、今の資源という側面についてのご意見をもうちょっと伺いたいと思います。高木さん。
    【高木】  資源という観点ですけれども、あえてそこにこだわって、もとをただすと、エネルギーとしての原子力はどうかというところに行っちゃうところがあるんですけれども、一応そこは置いておいて、資源ということにただしますけれども、ウラン238がどうかという問題だけではないと思うんですね。つまり、プルトニウムを増殖するために、ほかのいろいろな手間暇をかける、人的資源もかけるし、労力もかけるし、環境上のいろいろな問題も生じるとすると、これは、ウラン燃料が増大するかどうかというような話だけで、資源の効率ということを言うわけにはいかない。そういう全体が、私は決してプラスにならないと思うわけです。
    ウラン238にかなり限定して言えば、高速増殖炉をやらない限りは大した意味はないということでしょう。資源的な意味がないと思うわけですね、軽水炉MOXでは。ただ、高速増殖炉というのは、先ほどから吉岡さんの話も出ていますけれども、実はもう何十年もやって、現実には海外でもうまくいかないし、日本でも「もんじゅ」で、原型炉の段階であんなになっちゃっているというような技術で、そういう原子力委員会の計画からしても、何十年先に実用化するかもなかなかわからないというような話になっていく。それは、ただ夢物語みたいなものにできると長年言い続けている人がかけている夢だけであって、もう少し現実を厳しく見れば、宝くじじゃないけれども、期待できるようなものではないと思います。だから、今、当面の問題は、軽水炉MOXということになるわけですけれども、軽水炉MOXというのは、あくまで高速増殖炉につなぐステップとして位置づけられていると思いますから、高速増殖炉をそもそもやる必要がなければ、僕は軽水炉MOXなんていうのはやる必要がない。
    しかも、軽水炉MOXについては、私はせっかく、今日、図を一つ提出してあるので、この図をちょっとだけ説明したいんですけれども、軽水炉でウランを燃やして、その後、プルトニウムを使うためには、再処理をやり、MOX加工をやり、これは全部、その間に輸送が入りますし、それから、また軽水炉へ持っていって燃やしたものを、さらに使用済みのMOX燃料もまた再処理をやるかどうかという話になってくる。あるいは、これがまた廃棄物になるかもしれない。それから、MOX加工をやればやるで、それに伴う廃棄物も出てくるし、その安全性や核拡散や防護上の問題とか、経済性の問題とか、すごい広がりを持つ問題が出てくる上に、これらの輸送等の問題が含まれれば、情報公開の持つ社会的な問題も非常に大きな問題を拡大してしまう。そういう全体の問題をそれだけ出して、実は、じゃ、軽水炉MOXというのは、経済的にも、エネルギー上も、ほとんどメリットはないというので、私はこういう路線は、現在、軽水炉にある問題を複雑化するだけで、軽水炉是非論を置いて言えば、問題を複雑化しない分だけ、使用済燃料の直接貯蔵、可能ならば処分という、処分はかなり先のまた議論の問題でしょうけれども、それを図るほうがよほど賢明な選択であると思います。
    【茅】  鈴木さんのご意見は今のに絡む話でしょうか、それとも先ほどの資源論の話でしょうか。
    【鈴木】  今、高木さんも、幾つか指摘されたと思うんですけれどもね。
    【茅】  じゃ、ちょっと待っていただけますか。その前に、先ほどの話の残りで、多分、吉岡さんがご意見があると思いますので、それを伺ってからにしますから、吉岡さん、どうぞ。
    【吉岡】  表を配ったのは、フロアにあるかどうかわかりませんけれども−−ありますか。この表というのはどういう意義があるかというと、核を使わない道、ワンススルーだけで行く道、プルトニウム増殖の道と、それぞれについていろいろなデメリット・メリットは列挙できるんですけれども、総合的に見てどうなのかの見通しをよくするために、三つの路線のさまざまな項目を総合しての比較を試みました。このアプローチじゃなきゃまずいんじゃないか、個別の論点をあまり強調し過ぎてもよくないんじゃないか、バランスを崩すんじゃないか、そういう観点から出したものです。ここでABCDを付けましたけれども、私も、いまひとつ自信がない項目というのも多々ありますし、近藤さんのおっしゃるように、各項目にどういう評点をつけるかはこれから議論していきたい。むしろ、これから議論していくことに、プルトニウム政策の是非とあり方を決めるこれからの作業に、私は大いに期待しているということで、まあ、オープンなものだとお受け取りください。
    それで、研究開発の途上にあるものを、こういうふうに確定的に評価できるのかという問題なんですけれども、半分はできる、しかし、完全にはできない。かつて科学者を目指した者としては、完全にはできないということは認めなければいけません。しかし、半分できるというのは歴史的にできるということであって、1940年代から開発が始まって、まあ、50年たっているわけですけれども、50年たってみて、ここまでしか来なかったというような歴史が一方では厳然とあるわけです。もう一方では、60年代ぐらいからは、日本の原子力委員会も「チェック・アンド・レビュー」ということを掲げるようになったわけですけれども、そのチェック・アンド・レビューが果たしてうまく機能してきたかということもやはり問題であって、長期計画が改定されるたびに、加速度的に目標時期が遠のいていく、これを一体どう受けとめるのか。これは強い言い方をすれば、こういう無責任な計画というのに、責任をとるべきだというようなことも、もしかしたら言えるかもしれません。2030年というのは、予想がつかないようなものです。我々にとって将来全く不確か、確かなことがある程度は、わかるというのは、10年ぐらいまでで、それ以上先のことというのは基本的にはわからないと思うんですね。こういう計画自体が、基本的に間違っていたのではないかと思います。まあ、歴史から見ると、チェック・アンド・レビューがかかったと言いながら、実はかかっていないような形で、ずるずると目標時期が遅れてきたということで、これは、やはり何らかのけじめが必要であろう。そのけじめをどのようにきちんとつけるのかということに関して、チェック・アンド・レビュー方式自体の基本的な改革を行う必要がある。私から見れば、もう50年たってだめなら、ほとんど時期が来ているとは思うんですけれども、そうでないという意見もあるでしょうから。しかし、少なくとも、きちんとした評価システムの確立が必要だというのが私の意見です。
    【茅】  今の吉岡さんのご意見は、高木さんの意見と基本的には似ていて、要するに資源の問題だけではなくて、他のいろいろな側面を見て、総合的に評価すべきことだというご意見だと思うんですが、先ほど申しましたように、私は最初、資源論から入っていって、このFBR路線というものを考えた場合のマイナスのポイントについても、いろいろ議論していただきたいと申し上げたわけです。既にそこに入ってきておりますので、それに触れていただいて結構でございますので、さらにご意見をいただきたいと思います。
    【佐和】  吉岡さん、この評点、僕はちょっとおかしいと思うのは、これを見ると、1の路線は、2の路線よりもすべての項目について大なり、ベター・ザンということになっているでしょう。そうしたら、1が圧倒的にいいわけですね、文句なしに。つまり、総合的な評価というのは、メリットがありデメリットがあって、初めて総合的評価が必要になってくるのが知りたいことだと思う。1は2より完全にベターである、2は3よりベターである。話は非常に簡単なんですね。すべての項目について、今のオーダリングが成り立つというんだったら、話は非常に簡単ですね。
    【吉岡】  それは、私の主観を交えての評価ですから。私の主観に基づいて、このまま1は2よりよし、2は3よりよしというように議論するのを私はためらったと。もうちょっとこの評価自体のことを議論したい、これはたたき台にすぎない。
    【佐和】  これはいろいろあり得るというわけですね、AとかB。
    【吉岡】  はい。
    【鈴木】  幾つかあるんですけれども、一つは、とにかくゆっくり考えたらいいんじゃないんですかと、例えば平野さんからのお話がありましたけれども、私も、つまり、こういう場もありますし、みんなでちゃんと議論したほうがいいということも確かにそれはあると思うんですね。これ、例えば今、吉岡さんからのお話がございました、高速炉をどうやったらいいのかということなんかが、まさにそうではないかと思うんです。したがって、先ほど、栗田さんからのご提案にもありましたけれども、しかるべき場を設けて、そのことについて徹底的に議論する。そういうような持っていき方というのが、こういう円卓会議の成果として出てくれば、これは非常に有意義なことではないか。茅さんは、後でそれを議論したいとおっしゃったような気もしますが、それが一点。
    2点目は、リサイクルするというのは、実は非常に面倒なことであって、いろいろな困難があるんだと、高木さん、あるいは吉岡さんからのご指摘なんですが、ある意味で私は、資源のリサイクルというのはそういうものだと思うんですね。資源のリサイクルは、ごく簡単にだれでもやりたいことならば、これは、おそらくそういうことが社会的に要請されなくても、自然にできていくんだと思うんですけれども、それがなかなか難しいということは、やはりある意味ではその側面を持っているというのは、私もそう思うんです。したがって、おそらく電気事業というのも、これは基本的には私企業ですから、利潤を追求することが重要な規範であって、そういうことに非常に際立ってそちらの方向に行きますと、資源のリサイクルはやめましょうということだって、これはあり得ると思うんですね。しかし、こういう場でこういうことが議論されているということが、そこがまさに非常に重要なことであって、いわゆる単純な経済原則では、これからはうまくいかないんじゃないかということがあって、じゃ、資源のリサイクルじゃないか、こういうことになっているんじゃないかと思うんですね。
    私、先ほど、ちょっとプルトニウムの議論で、資源論なのかもしれませんが、要するにウラン238の問題だという議論があったんですけれども、プルトニウムを一つのオプションだというようなお話も出ましたが、私は、理解の仕方としては、これは資源のリサイクルだ。つまり、使用済燃料は有効な資源なんだという考え方じゃないかと思うんですね。つまり、プルトニウムというものを完全に分離して、それを新たな物質として考えていくということではなくて、むしろ、原子力発電に伴って必然的に発生する使用済燃料を、有効な資源として考えるかどうか。その中にたまたま、もちろんプルトニウムというのが入っていますし、プルトニウムを有効に利用することが、結局は資源の有効利用につながるというのはそのとおりなんですけれども、理解の仕方としては、あくまでも原子力発電の一環としてとらえるべきだと思うんです。
    というのは、例えば高木さんが言われるように、とにかく使用済燃料が出てきたら、それは、どこかに貯蔵したりしておけばいいんじゃないかというような感じになってしまっている国もありますし、そういうことが合理的なようですが、そうじゃなくて、それはむしろ無責任なんじゃないかと思うんですね。原子力発電をした以上、それはご指摘のように使用済燃料が出てくるわけですから、これをどうするかということについて、これは計画的に進めていく。ですから、私は、再処理をして、リサイクルをするということを着実に計画を進めるということ、これは今、日本の原子力発電計画にとっては非常に重要なことじゃないかと。また、それが、いわゆる責任のある態度ではないかという気がいたします。
    最後にプルサーマルなんですが、プルサーマルというものは、資源の節約につながるといっても、それはわずかだというご指摘があるんですが、これもいろいろなとらえ方があるわけですけれども、私は、いわゆる天然ウランを外国から買っている日本の立場からすると、外国からどのぐらいの量の天然ウランを今後とも買わなきゃいけないかという、その量をちょっと計算していただければわかると思いますけれども、これは立派な資源の節約だと思いますね。これが一つ。
    それから、もう一つは、要するに将来、例えば高木さんも、高速炉に、もしプルトニウムを利用するならするべきだということをおっしゃっているわけですが、そういう方向を進めていこうとするときには、一足飛びにそういう利用の仕方に持っていくというところに、これは無理があるのであって、着実にそういう利用ができるような技術を育てていくという考え方が大事なので、その一環として、プルトニウムを軽水炉にリサイクルするというのは、これは非常に重要なステップじゃないか、こんなふうに思います。
    【松浦】  先ほど吉岡さんから、FBRというのが50年もやっていてだめなものだから、そういうものはだめではないかというご意見がありました。そういう見方もできないことはないと思います。しかし、吉岡さんは、科学史をご専攻だということでございますので、今までの科学技術の発展の歴史から十分ご理解があると思うんですけれども、一般に言って、確かに原子力の技術というのは発展が遅いです。これは確かにそのとおりです。別に研究者がなまけているわけでなくてそうなんです。一方、その対比に考えますとコンピューターですが、これは半導体の最初の発明・発見から見て、ものすごいスピードで進んだ。考えますと、こういう科学技術、あるいは技術の発展というのは、一つの世代のものがどのぐらいの長さを持っているか、そのサイクルが何回繰り返されるかによって、世代ごとに発展していくんですね。コンピューターの基本となる半導体、あるいは集積回路みたいなものは、発展のサイクルが非常に短い。したがって、非常に速く進展できる。FBRあるいは原子力一般につきまして、これは一つの世代が長いんですね。したがって、 50年やっているといいますけれども、実は世代にしますとそうやっていないんです。そういう意味で研究開発の努力というのは、今まで一生懸命やっているけれども、十分尽くされているとは言いがたいところがあるので、これは将来の重要性から考えて、まだその努力を傾注していっていいのではないかというのが考えるところです。
    【茅】  前半のところで栗田さんからご発言がありまして、実は時間の都合でやむなく途中で打ち切ったような形になってしまったんですが、その中に今後、FBRの研究の進め方ということについてご提案がありまして、これは先ほど、平野さんがおっしゃった、もっと考えるべきだというご意見にも通じますし、また、鈴木さんからご指摘があったことにも通ずるかと思います。そこで、この問題を含めて、栗田さんのほうからご発言いただきたいと思います。
    【栗田】  FBR路線についてですが、まず、今回の「もんじゅ」の事故につきましては、時間と労力を惜しまないで、想定事故の考え方も含めまして、設計思想あるいは安全審査のあり方までさかのぼって、その基本的な考え方、あるいは方法、内容についても徹底的に調査・検討を行いまして、その結果も踏まえまして、あらゆる角度から設備あるいはシステム全体を総点検して、「もんじゅ」全体の安全性を確認する必要があると考えております。そして、「もんじゅ」事故の検討結果等を踏まえながら、核燃料リサイクル体系の中で高速増殖炉のあり方を議論し、今後、「もんじゅ」をどのように位置づけていくかということを明確にする必要があろうと考えております。
    そこで、FBRについてでございますが、国民の合意の形成を図るために、長期計画の視点だけでなく、いろいろな視点からぜひ国民的議論をする必要があろうと考えます。長期計画では、高速増殖炉というものを、将来の核燃料リサイクル体系の中核として位置づけるということ、また、将来の原子力発電の主流にしていくべきものである、そういうぐあいにうたっているわけでございますが、こういった視点だけでなく、幅広い論議をする必要があろうと考えております。これまでの経緯を踏まえながら、将来の高速増殖炉のあり方につきまして、軽水炉技術の高度化も含めまして十分時間をかけて、幅広く議論をする必要があると考えまして、原子力委員会に「高速増殖炉懇談会」というものを設置するよう提案いたしたいと思います。
    なお、プルサーマル計画でございますが、プルトニウム利用についての国民的な合意が、現段階では必ずしも十分でないと考えておりまして、プルサーマル導入のスケジュールを見てみますと、要するに余ったプルトニウムを持たない、いわゆるプルトニウムバランス論によって、単なる数字合わせをしようということだとすれば、国民の理解を得られないんじゃないかというぐあいに考えております。プルサーマル計画は、「もんじゅ」やプルトニウム利用を中心とした、我が国の長期計画の見直しの中の中心的課題であろうと考えておりまして、福井県内で、このプルサーマルを実施するということについては、プルトニウム利用への国民的な合意が不可欠であろうと考えておりまして、現段階ではなかなか困難ではないかと考えております。
    【高木】  一つだけ最初に、鈴木さんが、私が高速増殖炉をやるべきだと言ったように言われた点について−−「やるべきだ」と言ったわけじゃなくて、増殖ということを考えれば、高速増殖炉しか意味がないだろうということを言ったのであって、私は高速増殖炉をやるべき論ではないですから、議事録の問題もありますから訂正しておきます。
    その上でですけれども、「リサイクル」という言葉が出て、その問題に今、入っていると思いますので、そのことに触れたいんですけれども、「リサイクル」という言葉は、私は一般には使わないんです。今日は「リサイクル」というテーマになっていますから使っていますけれども、リサイクルというのは、資源の大半があるリサイクルのプロセスに乗って、あまり余分なごみが出ないというような場合には使ってもいいと思いますけれども、この場合に、軽水炉に戻すというようなことをやった場合には、プルトニウムのごく一部が燃料サイクルに戻るだけであって、かなり大量な廃棄物は、リサイクルされようもない廃棄物なわけです。しかも、再処理ということ自身が、かなり大量の環境への放射能放出、トリチウムとかクリプトンとかというような放射能放出を出しますし、再処理自身が、低レベル廃棄物も含めれば、むしろボリューム的には、体積的には廃棄物を増大させるということがあります。これはリサイクルと称して、「環境に優しい」なんていうような表現を使うことがありますけれども、私は、こんなのは非常にまやかしの言葉であって、たしかこの間、松田さんがいらしたときに、リサイクルというような表現はおかしいということを、同じように言うべきでないというようなことをおっしゃっていたと思うんですけれども、私もそのとおりだと思って、安易に「リサイクル」とか、「環境に優しい」と言ってほしくないと思います。
    【茅】  今の点につきまして、どなたかご意見はおありでしょうか。
    【平野】  前もって提出した中で、既に私の見解は申し述べてあるわけですが、再処理をすることによって新たな廃棄物を生み出すわけですし、それを使用した後に、また新しい、より始末に困る使用済燃料が発生をするという問題があります。そういったものを含めてもう一遍議論をして、その上で進めるということでないと、ただ、先送りをしていくだけという感じにしかならんわけですね。そういう面で今、言われたみたいに、一遍使ったものを、ただ、ごみで捨てるのではなくて、もう一遍使うからいいことずくめみたいな感じを与えていますが、私は、かえって始末のできないごみを、次から次と増やしていくだけであって、FBRがプルトニウムの増殖というならば、再処理路線というのは、むしろ放射性廃棄物の増殖路線なのではないのかという理解をしているんですが。
    【鈴木】  今、高木さん、平野さんからのご指摘なんですが、再処理という技術は、ご承知のように随分歴史がありまして、初期のころの再処理工場のイメージが非常に強いんだと思うんですね、環境、安全性というような意味で考えますとね。したがって、これは廃棄物を非常にたくさん出して、むしろ環境を汚すものだというようなイメージが実際問題としてかなりあると思うんです。ところが、これ、先ほど、土田さんがおっしゃったことが多分そうだと思うんですけれども、例えばフランスの新しい再処理工場というのは、これは私もびっくりするぐらいなんですが、廃棄物の管理、処理の面では、やはり過去の反省がもちろんあるんですけれども、非常に進んでいるんですね。私は、そういう最近の状況から見ますと、再処理は廃棄物をむしろつくり出すものだというような過去のイメージというのは、随分変わってきていると思うんですね。そのことを第1点で申し上げたいんですが、同時に、おっしゃった中で、私はむしろ抜けているんじゃないかと思いますのは、実はワンススルーに比較をするならば、使用済燃料中に含まれている放射能と、それから再処理をした後の放射能の比較をまずすべきだったんですね。これは明らかに再処理をしたほうが、先ほど、プルトニウムが増すという話がありましたけれども、これは私はかなり自明だと思うんですね。再処理したほうが少ない、放射能が。ですから、それももちろん総合的に判断すべきだと思いますけれども、そういうことも含めて、実は再処理プラントというのは設計されるべきだし、つくられるべきだし、運転されるべきなんですね。まあ、その点が覆い隠されているというようなことは私はないんじゃないかと思うんですけれども、情報が十分行き渡っていないということかもしれません。
    【平野】  鈴木さんから、私は一番最初に、再処理をやることによってウランの同位体が、面倒なものが発生をするということを大分お教えを受けた記憶があるんですが、そういうことと同じように、現にフランスのUP−3でやっているからというのが、六ケ所の再処理工場のモデル工場だということを言われています。ところが、実際問題、土田さんはUP−3をごらんになって感心されてきているみたいですが、私どもはなかなか行く機会もありませんが、実際そこで何が行われているのかというのを教えてほしいということを、事業者である原燃さんに質問を出しているんですが、これが4月の段階で質問をしたものが、いまだにお答えも説明もないというようなことさえあるわけです。ですから、その辺がはっきり説明がなされるということがやっぱり必要なわけです。
    それからもう一つは、私どもが、物理とか、原子核とかという学問的な知識はさっぱりありませんが、現実に生活している者の感覚としてとらえてみれば、休憩前にも申し上げたわけですが、ウラン原料が入ってきても、出ていくのはほんのちょっぴり、あとは全部残されて、それについても将来、資源になるからというだけで、具体的な説明が何らなされない。例えば再処理にしても同じこと。再処理をした後のものは、やっぱり青森へとどめられ、そして、そこから取り出されたものを再利用されて、新たに発生した使用済燃料もまた青森へ帰ってくるということだとすれば、なぜ青森だけがということにまた返らざるを得なくなっちゃうわけです。そういったようなことも含めて、きっちりした説明なりというものがなされない限りは、現地としては、なかなか理解がいかないということだけを申し上げておきたいと思います。
    【茅】  平野さんは、先ほどからそういった現地に対する十分な説明ということを強調していらっしゃいますが、これに関しましては、おそらくここにいらっしゃる方ほとんどが同感であろうと思います、私もそうなんですけれども。ただ、残念ながら、ここにはそれに対応する方もおられませんし、また、目的が、そのことについての申し開きをするのがこの円卓会議の目的ではございませんので、それに対しての反論云々という議論はここでは差し控えていただきますので、そこはご了承いただきます。
    【高木】  鈴木さんは、再処理をやることによって放射能の量が減るというお話をされたんですけれども、それは基本的には放射能の量は、まあ、分量するだけで、むしろ、それをプルトニウムの形で燃した場合にどうなるか。その燃したプルトニウムから出てくる、仮に軽水炉で燃やしたMOX燃料から出てくる廃棄物、あるいは使用済みMOX燃料そのものをどうするのか、その中に含まれている成分が、どの程度放射能というか、毒性で比較するのがいいかと思うんですけれども、長期的な毒性で、どの程度環境に影響を与えるかというようなことのちゃんとした評価が問題なのであって、単純に再処理したから放射能が減るというものではない。しかも、再処理そのものに伴う環境放出というのも、これは大きな問題で、再処理に伴っては、どうしても気体放射能は必ず出るわけですし、何百万キュリーというクリプトンが出るわけですし、何十万キュリーというトリチウムも液体あるいは気体の形で環境放出されるわけですから、再処理に伴って放射能が減るというような認識はできないと私は思います。
    その点はそれだけ言っておいて、一言なんですけれども、私は、先ほどから出ている議論をかなり踏まえて言えば、まあ、この場で決着がつくという話じゃないと思いますけれども、これだけいろいろな議論が出ているんですから、平野さんは説明を求めるというような形でおっしゃいましたけれども、私は、前から言っていることの復元になるかもしれませんけれども、栗田さんのおっしゃったことと関連して、こういうことをきちっと進めて評価をして、全体像を明らかにして、それを国民に提示するというプロセスがどうしても必要になってくると思います。そのことを、せっかくこういうところでみんな話し合っているわけですから、今後につなぐことにならないだろうかなと思います。
    【茅】  今のお話は二つポイントがあって、一つは、現実にはリサイクルのプロセスが本当にきれいかどうか。つまり、リサイクルしたほうがいいか、しないほうがいいかという面の問題と、もう一つは、具体的にそれをどういう場で評価し、国民にどういうふうに伝えるか、二つのポイントがあると思うんですが、後半につきましては、先ほどの栗田さんのご提案と関連があると思います。
    前半につきましてちょっと先にやりたいんですが、ほかの方にもご意見があると思うんですが、これはやや技術的な問題があるんですけれども、そうしますと、松浦さん、近藤さんのほうで何かご意見おありですか。
    【松浦】  前半というと、環境を汚染するという、その点でございますか。
    【茅】  ええ。リサイクルをするほうがきれいか汚いか、単純な言い方で恐縮ですが。
    【松浦】  私も、基本的には鈴木さんと同じように、リサイクルするほうが環境影響は少なくて済むと考えております。確かに高木さんの言われますように、トリチウムとかクリプトンとか再処理の過程で出ますけれども、これに関しては安全審査の過程で、どういうふうに影響が出るかという評価がちゃんとなされております。実は一切そういうのを出さないのがクリーンだという考え方もあるかもわかりませんが、人間がエネルギーを使う限りにおいては、何らかの意味でそういう廃棄物は出しているわけです。化石燃料を燃やしますと化石燃料というのはやっぱり出る。そういうものと比較して、かなり長期にわたってそういう排出物と比較したときに、再処理で出るトリチウムとかクリプトンとかというのが、許容できないぐらいの量が出るかという、そういう点に関しましては安全指導の過程で評価がされておりまして、それはそういうものではないという評価が出ているわけでございますので、そういう点では私は、基本的に鈴木さんと同じような意見を持っているわけです。
    【近藤】  今の点、私の理解では、茅先生のお話の二つの点はリンクしていて、懇談会でそういうようなデータの議論がなされるんだろうという理解をしていましたけれども、ここでコメントするとすれば、今、松浦さんがおっしゃったのは、それは技術の変数だと多分おっしゃったと思うんですが、そういう面があるわけです。だから、あるリクワイアメントを課して、その結果として大小が決まってくる面があるので、なかなか簡単に決めがたいと思うんです。
    こういうのは好きでないけれども、例えばアメリカで最近出たナショナル・リサーチ・カウンシルの「Nuclear Waste」という、これはアメリカ国内で直接処分と、今はそういう路線をとって、そのために努力をしているわけですけれども、それ以外のオプションについてもさまざまな提案があるところ、それを比較・検討するという作業をもう三年ぐらいかけてやって、最近、その結論が出ているわけですけれども、それは責任をとらないように非常に慎重な言い回しになっていますが、あまり差がないという表現をしております。むしろ、非常に興味深いのは、そこが差であるというよりは、むしろ、資源論なんですね。資源論から考えて、本当に直接処分でずっといっていいのかしら、そこに関してはやはり留保して、彼らの表現だと二つ。一つは「リトリューバブル」、100年間は再取り出し可能にしておくということを提言する。第2が「分離」「転換」というか、そういう表現を使っていますが、高速炉を使ったり、加速器を使うということもありましょう、そういうものの研究開発をやはりきちんとやるべきである。
    しかし、そういうものをリアライズして事業としてやるには、アメリカの過去の歴史から、皆さんがご指摘のように、極めて政権ごとに方針が変わる、こういう国ではできない。ですから、持続する長期的な国のコミットメントがあって初めて可能で、これは現在のアメリカでは可能とは思わない、そういう表現になっていまして、今のご質問に関してはそういうスタディもありますので、我々というか日本でもそれに匹敵するというか、当然のことながら、そういう議論は、さまざまな形でデータは出ているんですけれども、さて、こういうところで、じゃ、これをという決定版というものがないというのも私は事実じゃないかと思うんですけれども、そういう意味で先ほどの懇談会等でご議論されたらと思いますけれども、私は、少なくとも今までのさまざまな研究開発の中で、それぞれについての答えはあって、それに基づいて、今、鈴木さん、松浦さんがコメントされたという理解をしています。
    【茅】  今に関連したことですか、どうぞ。
    【高木】  一点だけです。再処理の安全審査が適切であるかどうかという、適切さについての批判は持っているということを私は言っておきますけれども、同じようなレベルで、例えば直接処分がどういうふうに可能で、それが環境影響を少なくするにはどういうふうにしたらいいかというような技術開発とか、それに対する努力は、まだ日本では徹底的に不足していると思うんですよ。そういう部分を抜いて議論はできないと思いますね。またこれから、そこのところをきちっと議論しなくちゃいけない問題がいっぱいあると思う。
    【鈴木】  私が、先ほど放射能で比較ということを申し上げたら、いやいや、そうじゃないというような話になってしまって、この点は、はっきりしておいたほうがいいと思うんですけれども、今まさに言われた高レベル放射性廃棄物、使用済燃料の直接処分云々の問題を議論するときのまずベースは、高レベル放射性廃棄物、つまり、ワンススルーの使用済燃料、再処理だと高レベル廃棄物、これの比較がまず大切ですね。そのほかのことももちろんあるわけですよ。しかし、放射能の面から見ると、まずそこが出発点、これは今まさにおっしゃった点だと思うんですね。そこで、私は、その点ではリサイクルしたほうが放射能はプルトニウムがない分だけは明らかに低くなると思うんですが、それはともかくとして、今おっしゃった、それじゃ、研究開発、日本では徹底的に不足している。私が思うんですけれども、それはもちろん研究開発、必要なことをやらなきゃいけないかと思いますが、しかし、それを具体的に、今おっしゃっている直接処分の研究開発として、何が実際、今、徹底的に不足されているとおっしゃったんですけれども、何が不足しているというか、じゃ、今、重要なんでしょうか、研究開発でしょうか。それをちょっと教えていただかないと、私どもはちょっと……。
    【高木】  国際的には、ドイツなんかではかなりやられていることで、直接処分、まあ、コンディショニングと言いますけれども、処分ということは簡単かどうかというのは、直接処分なんていうこと、そもそも使用済燃料の直接であれ、高レベル廃棄物であれ、そんな容易な問題だとは私は思いませんから、処分が簡単にできるというようなことはないでしょうけれども、貯蔵及び処分、直接なのか、再処理をしてガラス固化体にするのかということの比較で、直接処分について言えば、直接に使用済燃料を、ボリュームを減らすためにコンディショニングして、なるべく余分なものを取り払って、本体のままで安全に長期的に貯蔵して、地層に処分する。その場合に、結局、高レベルでもそうですけれども、低レベルでもそうですけれども、ガラス固化体にせよ、直接処分もそうですけれども、どういう放射性物質が、例えば地下水を汚染する可能性があるのか。その可能性によって危険性も違ってくるわけですね。そういうことについての基礎的な研究というのが、まだまだ私は不足していると思います。
    【鈴木】  ディテールに入ってよろしいですか。
    【茅】  今、ポイントですので言ってください。
    【鈴木】  じゃ、ちょっとだけ。今のお話を伺っていますと、結局、私は、それじゃ、プルトニウムなのかなと思うんですね。直接処分と再処理後の廃液を固化したものとの差で一番大きいのは、まあ、細かい点は幾つかありますけれども、それはプルトニウム、今おっしゃっている。つまり、直接処分についての研究がされていない。それは今のご指摘だとすれば、私の理解はプルトニウムなのかな。だけど、プルトニウムをそうやって処分するということに関して、そういう研究を今、日本でどうやってやるのかということを考えますと、これは外国でもそうだと思いますが、今の再処理廃液を固化したものの研究をまず優先すべきだということなのであって、そのことについて特段、今のやり方は非常に偏っているとか、あるいは考えが非常に……。そういうような感じではないと思うんですけどね。
    【高木】  それは誤解です、違います。プルトニウムじゃなくて、使用済燃料そのものを直接処分するときの話をしている。結局、それが、例えば熱的に地層にどういう影響を与えて、あるいは、例えば地下水等々とのインターラクションがどうなるかという問題で、そういう基礎的な研究の問題になってくると思うんですね。今、プルトニウムとおっしゃるけれども、まあ、再処理したところで結局、プルトニウムを、さっきから出ている議論ですけれども、MOXとして燃やすとすれば、その使用済燃料がまた出てくるわけですから、プルトニウムは消えちゃう話じゃないわけで、しかも、そのときに、アクチナイドといいますか、もっと超ウラン元素が出てくるわけで、何かプルトニウムが消えちゃうような話を鈴木さんはされているけれども、そんな簡単な話ではないわけですから、どっちのオプションにどういう問題があるかということについて言うと、かなり緻密な議論が必要になってきますよ。そんなに簡単にプルトニウムがなくなるという話ではない。
    【茅】  今の点はやや技術的な内容なので、私も実は大事だと思うんですが、正直言いますと、お二人だけしか議論ができないので、ちょっと全体を考えて合わないものですから、そういう議論があるということだけにさせていただきます。
    【高木】  だから、私はさっき、そういうつもりで言ったのではなくて、そういうことの緻密な評価は、どこか別のところできちっとやったほうがいいということを言っただけであって、質問があったので、そういう方向に入っちゃったけれども、私も、あんまり賢明な議論ではないと思います。
    【茅】  じゃ、よろしいですか。
    【西川】  今、しばらく技術的なお話が続いていたので、そういうレベルになりますと、私どものとても太刀打ちできるところじゃないので、拝聴していたわけですけれども、お聞きしてつくづく感じるのは、私の先ほどの発言ともリンクするんですけれども、これから原子力発電所をやろうかどうかという今、段階ではなくて、こういう時期に発電が続き、使用済燃料がコンスタントに生まれつつあるという段階なのに、今なおこういう議論がかわかないで行われているというところに、大変矛盾といいましょうか、少し釈然としないものを感じているという、さっきの私のコメントにもつながるわけであります。そんなに私、幅広い選択があるわけじゃなくて、まあ、吉岡先生のこの表が妥当かどうかは別にしても、三通り、しかし、1番目のノン・ニュークリアについては、そういう選択が許されないと私は思っていますので、そうすると2か3だと。この2、3のABCDの評価が妥当かどうかは別にしても、要するにこういう範疇の選択なんだと。
    そうすると、それが国策と呼んでいいのかどうかわかりませんけれども、やはりだれかがどこかでいわゆる総合評価をしたり、こっちが完璧だということはもうないだろうと思うので、みんなそれぞれ一長一短だと思いますけれども、いろいろな情報公開といいましょうか、正確な議論とデータを提示していただきながら選択をどこかでやる、そのための努力ということをだれかがやっていただかないと、私ども現場で少しずつ使用済燃料を生み出しているものとしては、とてもじゃないけれども、たまったものじゃないというのが正直なところであります。それにつながることが、こうした今回、初めての試みの円卓会議なんだろうというふうには理解をいたしますけれども、一定の結論を目指しての、当事者が国なのか、原子力委員会なのか、電力会社なのか微妙なバランスは私はわかりませんけれども、いずれにしても、国としての一つの方向づけをきちんとしていただく一層の努力が必要なんじゃないか。そうでない段階で、プルサーマル計画というものが、私どもののど元にまだあいくちを突きつけられているわけではありませんけれども、どうだろうかというような風ぐらいは、何となく吹いてきているという気はしているわけです。この場でこのメンバーでこれだけの議論をしているのに、私どもの段階で、一つの結論だけ、これでどうでしょうかと言われても、地元の自治体をあずかる者としての自信のある判断を市民の皆さんとしろというのが無理だろうと、賛成か反対かの前に、そういう疑念といいましょうか、立場にあるということをご理解いただいて、それにお答えいただく立場の方がいらっしゃらないとさっきの茅さんのお話ですから、それで結構なんですけれども、そういう声をしっかりつないでいただきたいと思っております。
    【茅】  わかりました。
    【吉岡】  先ほどの高木さんと鈴木さんのお話に、私はあまり立ち寄らなかったんですけれども、これは基本的な問題でない。なぜかというと路線の問題が重要であって、使用済み核燃料が出た場合に、出たという前提で再処理をするか、直接処分をするか、どちらかという問題はあまり本質的ではない、より本質的なのは路線の問題だから、わりあい細かいところに陥り過ぎたなと思いました。私は、技術にもそれほど詳しい知識はないという点でも、この議論にかかわらなかったんです。今の議論をちょっと整理させていただきますと、放射能のキュリーで表示した、あるいはベクレルで表示した絶対量が減るというのは、まあ、そのとおりですけれども、それは一つの次元です。もう一つの次元は、容積が増えるかどうかというトータルな中レベル、低レベルも含めた問題がもう一つある。第三の次元は、環境影響がどうなるかということです。環境影響については、いろいろ試算がなされているということをお聞きしましたけれども、別の意味では歴史的にはこれは検証できることです。ただ、ウエストバレー再処理工場がどれだけ外に放射能を出したかとか、あるいはウインズケールがどれだけ出したかと、そういうことは不確かな要素もありますけれども、実証できることである。ただし、その競争相手である直接処分がどれだけ外に放射能を出したかというのは、必ずしも実証できないことだと思うんです。その辺から歴史的に、ある程度評価は可能じゃないかと思うんですけれども、私は詳しい技術的な知識はありませんけれども、その辺はいかがでしょうか、今までの研究の状況として、鈴木さんなんかは……。
    【鈴木】  その点だけちょっと申し上げますと、先ほども申し上げましたように、歴史的には、再処理工場というのは非常に古いものがあって、それについては環境を非常に汚染したということが私もあると思います。それは最初に、先ほど申し上げたと思うんですけどね。そういう印象が非常に強いというのはそうだと思うんですが、ただ、そういうことに対する反省もあって、例として申し上げたのはフランスの新しい再処理工場、これは運転も相当実績はあるわけですが、こういうものを見ていただきますと、あるいは公表されたデータもありますのでそれをごらんいただきますと、それはびっくりするほど、私からしてもびっくりするほど廃棄物の発生量は減っている。これはボリュームも私が理解している範囲では、いわゆる直接処分と申しましても、いわゆる処分できる状態に使用済燃料をすると、これはいろいろなものを周りにつけなきゃいけませんので、ボリュームが随分増えるんですね。そういうものと比較しますと、フランスは、むしろ、再処理リサイクルをしたほうが少なくなると言っています。それはそのとおり、私自身は信用しているというよりも、そのとおり受け取るべきかどうか、やはり慎重さを欠くべきではないのであって、私なりに少し余裕を見て考えてみても、その点ではほとんど変わらなくなっているというのが私の理解です。
    それから、環境放射能といいますか、先ほど、クリプトンだ、トリチウムだというお話がございましたが、こういう問題は、原子力発電所において環境放出される放射能による放射線の潜在的な影響、そういうことと基本的には同じ考え方で環境安全性が確保されるべきなのであって、これは、私はそういうふうに理解しています。
    【茅】  先ほど、西川さんのご意見で、現実に日本の原子力発電所が存在して、これだけ廃棄物も出ている。そういう中でこういう議論が行われていることに、まあ、抵抗といいますか、やや不満を感じるというご意見があったんですが、それは私自身としても、痛いほど大変よくわかるわけです。ただ、現実の問題として、この原子力円卓会議というのは、そういう議論をやるという前提条件でこれはやられておりますので、我々としては、そういう議論をここでやるということが前提で、その辺はご了解いただければありがたいと思います。特に今は、ワンススルーか、あるいは核燃料リサイクルかということで議論が分かれているわけですが、これはむしろ、この議論の分かれ目がどこにあるかということを明確にすることが一つの大きな目的ですので、今のような議論というのは私は非常に大事ですし、その点をご理解いただければありがたいと思います。
    それと、先ほど、栗田さんのほうからご提案がございましたけれども、いずれにいたしましても、この問題につきまして何らかの対応を、原子力委員会としても多分考えなければいけないのではないかということは私も感じております。たまたまご提案も出ましたし、皆さん、ご意見が出ましたので、ここで、原子力委員会側のご意見を一応伺うべきかと思いますので、お願いいたします。
    【伊原】  まず第一点、「もんじゅ」について徹底的に検討して、「もんじゅ」全体の安全性を確立すべし、このご意見はまさにそのとおりでございまして、規制当局も安全委員会もその方向で今、ご努力いただいておると承知いたしております。2番目の、高速増殖炉懇談会につきましては、それを設置させていただくという方向で、その内容を十分詰めさせていただきたいと思います。三番目の、プルトニウムの軽水炉利用。これは、数字合わせということではございませんで、将来の高速増殖炉の実用化に向けた、実用規模の核燃料リサイクルが必要な技術をまず確立する、それから体制の整備を行う、そういう観点から非常に重要だと認識しておるわけでございます。また、エネルギー供給面で一定の役割を果たす、こういうこともあるわけでございます。そういうことでございますので、今後、国民的な合意が得られるように、引き続き努力してまいりたいと考えております。
    【茅】  今のことに関して、何か皆さんのほうからご意見はございますか。
    【吉岡】  この前も言ったことなんですけれども、高速増殖炉の実用化の目標時期が、1956年の段階では70年だったのが、今は2030年に技術体系を確立するということになっていますね。実用炉を作るのは、作るかつくらないかもわかりませんけれども、もっと後だということなんです。それと同じようなことで、プルトニウム需給計画が数字合わせではないと言われましたけれども、今までの長期計画というのを伺っていると、計画がどんどん後ろにずれて、時間がたつより、より速いスピードで時間がずれてきているということで、需給計画の場合にもおそらく……。私はそのような予想をしているわけです。つまり、消費のほうが足りなくて、生産のほうがどんどんたまっていく、これをどうするかということなんです。数字合わせではないと言われるからには、もし計画が違っていたら、一体どのような責任をとられるのかということ、あるいは責任のとり方をどのようにするかの制度的な仕組みも含めて、もうちょっと計画についてしっかりした対応をとる必要があると思うんですけれども、どうでしょうか。
    【茅】  先ほども、前半でもちょっと話が出たわけですが、この円卓会議自身は、参加者の方と原子力委員会の対決の場では別にございませんので、そこで、たまたま何か原子力委員会側が言われたことで責任をとるというふうなことになりますと、原子力委員会としては、一々すべて相談をして、その上でないとご返事できないことになります。したがって、そういう形は私としては、時間の都合もありましてとりたくございませんので、今のポイントはまことによくわかりますが、ここでは原子力委員会側にご返答いただくこと、私としては避けさせていただきます。よろしいですか。
    【近藤】  今の吉岡さんの問題提起なんですけれども、つまり、計画が遅れる、よく「逃げ水現象」とかと言っているわけですけれども、そのことについては、そのプロセスの正当性の議論が起きますと、それはプロセスで合意しているわけですね。その限りにおいては、そこで責任の問題は終結しているというのがごく普通の考え方だと私は思います。そこで、その合意をするときに、計画を遅らすことを合意したときに、そこで責任問題が済んでいる。それは、そこで責任をとるべきだという議論があって、ワンセットで遅らせているかもしれないし、そういう計画の更新の仕方もありましょうし、だから、正当性の問題は置いて、それがまさによく使われる言葉で、密室審議で決められたことであってけしからんという正当性の問題があると言われれば、そこについては議論が残るんですけれども、計画というのは、私は、そういう性格があるということは、吉岡さんはよくご存じだと思います。
    【高木】  今の問題ですけれども、プロセスの正当性の問題と中身の問題とはかなり関係してきちゃうんですよ。プロセスの正当性がないということは、私はずっと今まで−−近藤さんも知っていますけれども、いろいろ言ってきたことですから、私はその点にかなりこだわっています。ただ、計画そのものの中身についても、「責任問題」という表現が適当かどうか私はわかりませんけれども、例えば時間が何十年もかかって逃げ水になって、最終的に実現しないような、高速増殖炉の計画が何年もかかるというかもしれないけれども、結局、何十年もお金をかけて答えは何も出なかったというようなことにはならないようにしなくちゃいけないですね。そういうものだったら早くやめたほうがいいということはあるわけで、そこのところの冷静な判断というのは、かなり大勢の人間がいるとやれるんです。密室審議でない。やらないといけない。ですから、今、栗田さんのほうから懇談会というお話がありましたけれども、これもまた密室審議にならないようにぜひお願いしたいと思うんですね。これもまた一種のファミリーみたいな人たちだけで何かやったというようなことになってしまうと、何をやっとるんだかわからなくなってしまうということがありますから、この点だけはちょっと言っておきたいと思います。
    【茅】  わかりました。ほかにいかがでしょうか。
    【鈴木】  先ほど、吉岡さんからのご指摘で、いわゆるプルバランスというようなことに関連したお話がありましたが、これは私の個人的な理解なので、別に原子力委員会のお考えとは違うかもしれませんけれどもね。私は先ほども申し上げましたように、使用済燃料なんですね、出発点は。プルトニウムじゃないんですね。使用済燃料は、やはり、原則、リサイクルをしたほうがいいという考え方に立ちますと、再処理をするということになりますが、しかし、その再処理をするというのは、これは工場を建てなきゃいけませんし、それなりの手続も踏まなきゃいけませんし、もちろんお金もかかりますしということで、したがって、それについては適正な計画規模を決めなきゃいけないということになると思うんですけれども、それが今の計画だと私はそう理解していますね。ですから、大事なことは、それじゃ、その再処理工場から回収されるプルトニウムについて、十分使い道がありますかということなんですけれども、これは細かいディテールの話はちょっとここではやめておいたほうがいいと思うんですが、一つのイメージとして私なんかが持っているのは、こういうことなんですね。
    今の六ケ所村で計画されている再処理工場から将来回収されると予定されるプルトニウムが、毎年、例えばどのぐらいかというのが推定はできるわけですけどね。これがどのぐらい資源のリサイクルとして、日本中の原子力発電所にプルサーマルという形で、もし地元の方々にご了解を得られればできるかといいますと、私の試算では日本全体の原子力発電の燃料所要量に対して10%以下なんですね。ですから、そのぐらいの規模であれば、これは私なんかから考えますと、外国の例なんかも見て考えますと、適正な規模と一応考えられるのかな、そういうのが私なんかのイメージです。
    もう一つ大事なことは、先ほど西川さんからご指摘のあった、あるいは高木さんもおっしゃっているんですが、いわゆるプルサーマルをやった後の、MOX燃料の使用済燃料をどうするんですかという問題があると思うんですね。これも、もちろん将来的には、リサイクルするというのが私個人としてはいいと思いますが、これはご指摘のように、いわゆるウラン燃料の再処理とはワンクッションというか、一つプロセスが余計にかかっていますから、それなりの技術開発をきちんと、まあ、技術の安全性なら安全性について確認をとるステップがやはり必要なのであって、そういう意味ではこれについては、それじゃ、MOX燃料の使用済燃料についてはどうしたらいいか。つまり、これは、いわゆるウラン燃料の使用済燃料よりは貯蔵する期間が長くなるかもしれませんね。しかし、私は、それは計画的に貯蔵するという考え方が大事。つまり、将来的には高速炉でそれを利用する。先ほど、平野さんからも、再処理しても回収したウランは使わないじゃないかというお話が何かあったような気がするんですが、あるいは書かれているものを先ほど読ませていただいたらご指摘があったと思いますが、私は将来的には、これは高速炉で利用するというのが一番好ましい方法ではないかと思うんですが、そういうことも含めて長期的に蓄えていくという考え方を、今後どのように国民的なコンセンサスを得ながらやっていくかということも、これは別途、ぜひご検討いただけたらと思います。
    【高木】  結局、今のお話になってくると思うんですが、使用済燃料問題であることは確かなんです。しかも、結局、MOXをやっても、MOXの使用済燃料という問題は延々と出てきますから、それによって放射能が減るということにはならないというのが私の考え方です。
    もう一つ、さっきのことで言っておきたいんですけれども、あまり技術のディテールには入らないようにしたいと思いますけれども、一つだけ言っておきたいんですけれども、UP−3はうまくいっているというようなお話があって、昔の再処理はまずかったけれども、今の再処理はいいんだというような話があったけれども、私はそうは考えないし、実際にUP−3でも、トリチウムやクリプトンが出ていますし、最近、ヨウ素129というのが、UP−3のヨウ素129というのはヨウ素の非常に寿命の長い放射能ですけれども、それが陸地の環境や海の環境で、明らかに再処理工場の影響と思われるヨウ素が放出されることが確認されていて、つまり、これが長期的に環境にどう影響を与えるかということについては、いろいろな評価があるところでしょうけれども、こういうふうに環境に放射能なんかを出さないで済めば、それにこしたことはないということはみんなが認めるところだと思うんですよ。だから、そういう再処理というのは余分なプロセス、環境放出というのを持っているということもはっきり認めておくべきだと思います。
    【平野】  今、鈴木さんが大変結構なお話をされたわけですが、ただ、私が何遍も言いましたように、結局、使用済燃料が常に繰り返されて出てくるということ。しかも、今の状況を見ますと、六ケ所でこれから再処理をやろうとしているのは、UP−3と比べると大分燃焼度が違うわけですね。現実にUP−3では、今、六ケ所でやろうという燃焼度の再処理については、割増料金を負担してもらっているわけですね。ということは、それだけ再処理そのものが難しいということだから、割増料金だと私どもは理解せざるを得ないんですが。それと同時に、片一方では、使用済燃料が原発サイトにたまってくるのを、できるだけそのスピードを落としたいというようなことからか、ここのところ、既存の原子炉でも燃焼度を高くして、そのことによって使用済燃料の発生量を減らそうというような動きさえある。そういったようなこと自体が、もうちょっとみんながわかるような議論をしてもらいたいということなわけです。そういう意味合いでエネルギーの利用についてはいいわけですが、それと同時に出てくる負の部分に私は相当すると思うんですよ。資源だとは言いますが、資源も含まれてはいますが、現実的には、負の部分として処理されるまで貯蔵されなければならないような、使用済燃料の扱いをどうするのかということ。それから、貯蔵期間中に本当に安全なのか。安全だとするならば、どの程度までの燃焼度がベターなのかというような議論さえも、オープンな場で私どもが理解できるような形で示してほしいと思うわけです。
    【鈴木】  今、燃焼度のお話がありまして、それは再処理料金が高くなっているんじゃないかというお話がございました。料金のこと、詳しいことは私は当事者ではありませんので知りませんが、ただ、こういうふうに理解していただければ、普通は理解しやすいんだと思うんですね。つまり、燃焼度というのは、ウランを原子炉の中で利用してエネルギーを取り出した場合に、取り出したエネルギーに比例した量なんですね。したがって、電気エネルギーにかえたものに比例していると思っていただければいいわけですね。そうすると、電気エネルギーというのは、キロワット・アワーならキロワット・アワー幾らということになりますから、それに比例して、廃棄物もある意味では発生しているわけでありまして、したがって、使用済燃料は、例えば使用済燃料1トン当たり幾らというような計算をしますと、もちろん燃焼度が高いものについては、それだけいわゆる高レベル廃棄物と言われているものが比例して増えていますから、それに伴って再処理にコストがかかるということは、まあ、一応あり得るんですね。私はそういうふうに理解しています。ですから、それはそんなに不都合なことではないのではないかと思います。 【吉岡】  先ほどの西川さんの話に戻るんですけれども、廃棄物が出ているのに再処理すべきかどうかという議論を今、出していることが問題と言われました。けれども、なぜそうなのかというと、つい一昔前までは再処理をやるのが当然、増殖炉は当然だというふうに、少なくとも日本の原子力委員会は考えてきたわけです。その正当性がどうかということが、世界が次々にやめるとかいろいろな問題が噴出して、現在問われているからこそ、さあ、どうしようかという議論が沸騰していると思うんです。その議論を、今回はもうできないかもしれませんけれども、もうちょっと徹底してやってほしいというのが私の意見なんです。先ほどの鈴木先生の話にかかわって言うと、私の表では三つの分類にしたんですけれども、プルトニウムをやるからには増殖である。プルトニウムを、軽水炉プラス再処理でやる、というのはあまり合理的でなくて話にならない、そういう先入観があって、初めから落としているわけですけれども、お好みならば、この2と3の間にもう一つ入れて4つの選択で議論してもいいわけです。いずれにしても重要なことは、使用済燃料だからリサイクルのために再処理しなければいけない、そういうのは一つの考え方であって、おそらくそれは原子力委員会の考え方とは違うかもしれませんし、鈴木さん個人の意見だと思うんですけれども、そういうふうに議論されると、やはり私としては少し困る。つまり、三つの路線あるいは軽水炉プラス再処理というのを間に入れて4つの路線、これが総合的にどうなのかというようなことであくまでも議論しなければいけないので、使用済燃料だから再処理しなければいけないというのは、これは鈴木さんの個人のお考えであって、だれもがそう考えているわけではないということを一言言っておきたいと思います。
    【茅】  吉岡さんの表がしばしば出てきますので、ちょっと確認なんですけれども、ここに出ている項目がありますね、フィージビリティーから始まってヒューマンバリューまで。この項目については私自身も、いろいろな総合評価という立場から大変おもしろいと思うんですが、その評点そのものについては、吉岡さんも、この点でいいかどうかについては、まだ留保しておられる、こう考えてよろしいですね−−(吉岡氏同意)はい、わかりました。
    【平野】  結局、燃焼度によって、プルトニウムの同位元素も変わってくるわけですね、同位体、アイソトープが。それと同じような形で汚れがひどいから、俗に言う、私らの理解でいけば、汚れがひどくなるから、それだけ再処理料金についても割増をいただかなきゃならんということになるわけでしょう。それと同じように、例えばプルサーマルで利用した使用済燃料が、軽水炉でのウランの使用済燃料と比べて処理が難しいので時間を要するという、鈴木さん、さっきご説明されているのと、ややその中間的な形にならざるを得ないわけです。
    【鈴木】  簡単にしたいと思います。「汚れ」とどういう意味でおっしゃっているかちょっとわからないんですけれども、いずれにしてもはっきりしていることは、燃焼度が進んでいるということは、それだけエネルギーをたくさんとりましたから、いわゆる核分裂生成物と呼ばれているものが、それに比例してたくさん含まれているということは確かですね。それから、プルトニウムについてのお話は、これは「汚れている」という表現はあまりされていないと思いますが、プルトニウムについては、よりアイソトープの番号の高いものの割合が増えているというのも確かだと思うんですね。したがって、再処理をする場合には、出てきたプルトニウムをもちろん有効に利用するということですから、そうすると、これは、いわゆる軽水炉にリサイクルするよりは、高速炉で利用したほうが有効だからというのが一番大きなポイントなんですね。MOXの燃料を、使った後の使用済燃料をどうしようかというときには、まあ、やはり、高速炉の燃料として使おうと。そうすると、高速炉については時間をかけて開発していくということだと思いますので、その間は計画的に、私は備蓄、貯蔵するということがいいと思うんですが、それは私個人の意見ですので、そういうことも含めて、ぜひご議論いただけたらと申し上げたんです。
    【松浦】  先ほどからいろいろ、使用済燃料をどうするかという議論がありまして、そして、ご提案のように、FBR懇談会をつくったらどうかということで、ここで議論をされていますが、そのときにぜひ議論を十分していただきたいと思うんですけれども、こういうFBRはもちろんですが、再処理にしましても、まだ今、進歩しつつある技術に基づいている。決して今、窮極的な技術でやっているのではないと。研究者のほうはいろいろアイデアで、いや、FBRもこういうタイプがあるよ、再処理についてもこういうのがあるよ、スペント・フューエルの使い方もこういうのがあるよ、高レベル廃棄物も将来はこういう使い方があるよと、いろいろなアイデアは出てくると思うんですが、しかし、今や、研究者が後方からそういうのをやらせてくださいよと言うだけでは話が進まないという世の中だと、我々も思っておりますので、そういう議論の中で将来、21世紀、その中ごろ、あるいはその終わりごろに、一体、日本という国の中で、エネルギーというのはどういうのかということをちゃんとベースに置いて、技術的にこういうものが必要なんだということを議論の上、計画をセットするというのが、研究開発をするという立場から言うと非常に重要だと思いますので、ぜひそういう点を入れていただきたいと思います。
    【土田】  先ほどからリサイクルの問題、最終的に出ます廃棄物の問題、いろいろ論議されておりますけれども、いずれにしろ、エネルギーとして活用した残りの負の遺産には間違いないわけですね。それを世代間の公平な分担で、我々の時代にそれをきちんとしなきゃならないかという論議を、私はもっとすべきではないかと思うんですね。今、ようやく高レベル廃棄物の、あれはボルト方式と言うんですか、あれで一次貯蔵が進められておりますし、高レベル廃棄物の最終処分については、現地試験が先進国でやられていますけれども、いずれも、方法すらどうすればいいか、大体の方向としては地層処分がいいんだろうという。これは先ほども言いました、後世代の方々に迷惑をかけてはならないという発想で、今つくり出した我々の世代に、きちんと始末をしようというあせりがあるのではないのか。私は、もっともっと大事なものを研究者の皆様方が、きちんと突き詰めた経済性、安全性というもの、それから国民的な合意を得る方法は何かというのを、私はこれから始めても遅くないのではないかと思います。
    【高木】  その問題というか−−時間が非常に押しているという感じがして、私も、あまり今日遅くなれないので、廃棄物問題に全く、バックエンドの話というのは最後のテーマに残っていたと思うんですけれども、触れないわけにいかないんじゃないかと思うので、ほかのこともいろいろあるんですけれども、それだけちょっと触れておきたいと思って、そっちの議題に、今、土田さんの話があったので移ってよろしいでしょうか。
    【茅】  実は私も最後に言おうと思っていたんですが、今日はそこまでいかなかったんです。ですが、少しでも触れたほうがいいと思うので、どうぞ。
    【高木】  前回もちょっと言いかけて、多少、鈴木さんとのやりとりで誤解があったような気がするので、今回初めての方もいらっしゃるので言っておきたいんですけれども、私は、世代責任の問題は厳然としてあって、これを反対派だからほっといていいということは言うつもりはないんです。したがって、この問題を議論、あるいはきちっと研究する必要はあると思います。研究するときには、事業者、産業界の利害と独立な研究主体というのをちゃんとつくらなくてはいけないと私は考えます。これは私の考えですけれども、そういう意味では動燃が今、研究主体になっていますが、動燃は廃棄物を発生する事業者ですから、私は明らかにこれは適当でない。私は、廃棄物を現に発生している事業者がこのプロセスに絡んでくると、どうしても簡単に捨てられるという方向に流れがちですから、国際的にもそうですけれども、そういう利害と独立の研究主体をきちっと確立すべきだという私の意見を、どうしても言っておきたいと思います。
    【栗田】  使用済燃料の貯蔵の問題ですが、福井県内の原子力発電所でも、2001年あるいは2002年には貯蔵プールが満杯になるという状況になります。そこで、こういった長期化にどう対応するかということですけれども、ぜひ敷地外に中間貯蔵施設を設けてもらうということで、2010年ぐらいまでにはそういうものをつくってもらう。そして、今、県内の敷地内にプールされているものを中間施設に移すことができるように、そのことをぜひお願いいたしたいと思います。
    【茅】  今の問題も大変重要な問題だと思いますが、正直言って、今日はちょっと議論をする時間がございません。時間があと、二、三分しかないんです。したがいまして、私として、一応、議論は今日はここで打ち切らせていただきたいと思うんですが、当初、一応の論点として幾つかの点を事務局のほうから説明いたしました。しかし、今の高木さんのお話にもありますように、例えば高レベル廃棄物の処分の問題といったことについては、今回は残念ながら全く触れることができませんでした。それから、実は今日の中でも、例えば核拡散の問題というのは、少しだけおっしゃった方がおられますけれども、ほとんど触れられておりませんで、やはりこれも今後考える場合の、一つの大きな論点かと思います。そういうわけで、例えばこの核燃料リサイクル、この一つの問題にしましても、十分議論を尽くしたということは当然思っておりません。
    それから、最後に松浦さんのほうからお話がございましたけれども、原子力、あるいはさらにその先のFBR路線というものを、エネルギー全体との関連でどう位置づけるべきかという問題がありましたが、これは、一度そういう議論をしようと試みた円卓会議があります。ところが、残念ながら、そこではほとんど議論が進まなくて、もう一遍やらなければいけないということを私が最後に申した記憶があります。そんなことで実は、今まで9回円卓会議をいたしましたが、まだまだ議論が十分行われたとは思えません。また、先ほど申し上げましたように、円卓会議は別に10回でやめるというわけではなくて、むしろ、今のようにこれまでどういう議論が行われ、そして、そこで何が不足であったのかということをとりあえずは整理をいたしまして、その先の円卓会議のやり方を整理して、モデレーターのほうで協議をした上で考えていきたいというのが今、持っている考えでございます。
    具体的なやりかたにつきましては、今、この場ではまだ申し上げる段階にはきておりませんけれども、いずれにいたしましても、最初に私が申し上げましたように、この円卓会議の進め方、その他につきましての皆さんのご意見、ここにいらっしゃらない参加者のご意見、あるいはモデレーターが感じておりますいろいろな問題点というのは、私どもとしてはわかっているつもりでございまして、それを、何とか今回以降の円卓会議に反映していきたいと思っております。もちろん、モデレーター自身も未来永劫、こんなメンバーでやるわけではございません。私も正直言いますと、モデレーターをやっているのはそろそろつらくなりまして、ちょうど相撲と同じなんですが、私は本来、相撲取りのほうだと思うんですが、いつの間にか行司にされて、大変そういう意味では口を封じられた感じでつらい状況でございます。したがいまして、どこかで相撲取りに戻りたいと思っておりますけれども、いずれにいたしましても、そういうことで、こういう円卓会議のあり方について、少しこちらのほうで検討させて、次へ進めるというふうにしたいと思います。

    閉  会

    【茅】  最後に、伊原委員長代理から一言お願いします。
    【伊原】  本日は、非常に長時間にわたりまして貴重なご意見、ご議論をいただきましてまことにありがとうございました。核燃料リサイクルに関しての2回目の会議でございました。前回の討論を一層深め、実りのある議論ができたと思うわけであります。特に資源の有効活用、こういった観点から見た核燃料リサイクルの意義、そういう大きな流れ、あるいは再処理の問題点、またプルトニウム利用についての意義、安全性など、核燃料リサイクル全般について焦点を絞った議論を出していただきました。極めて有意義であったと存じます。本日はもとより、これまでの円卓会議の議論、これを十分整理いたしまして、それを検討する。それをこれからの原子力政策に的確に反映していく。こういう努力をしてまいりたいと思います。本日は誠にありがとうございます。
    −−了−−

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